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第五十三話
しおりを挟む私の名前はクレア・ロウリア。
ロウリア王国の第二王女です。
幼い頃から蝶よ花よと育てられた私は、危ないからという理由で絶対に城の外には出してもらえませんでした。
「お父様。私城の外に出たいです。庶民の街がどのようなものなのか、非常に興味があります」
「だめだ。お前には危険すぎる」
私は外の世界に出たくて何度もお父様に懇願しましたが、しかしお父様は私が城の外に出ることを許してくれませんでした。
そんな私の生活に転機が訪れます。
城に勇者様たちが訪れたのです。
勇者様はお告げの巫女によって辺境村から拾い上げられ、勇者となるための修行の間、城で生活するということでした。
私は、城の外からきた人に非常に興味がありました。
なので誰にも内緒でこっそり会いにいくことにしました。
「勇者様?開けてください。お願いします。私、第二王女のクレアと言います」
「帰ってくれ……今は誰とも話したくない…」
誰にもバレないように勇者様の部屋へ行ったのですが、残念ながら勇者様には会えませんでした。
それでも私は諦めきれず、城に泊まっているという勇者様のご友人に会いにいくことにしました。
そして私は運命の出会いを果たすことになります。
グレンに出会ったのです。
「第二王女のクレアと言います……グレン様。私を外に連れ出してくださらないかしら?」
本来勇者様にする予定だった私の無理な頼みを、グレンは快く聞いてくれました。
そして私に王都の街を案内してくれました。
初めて歩いた城の外は目新しいものだらけで、夢のような時間でした。
途中財布が盗まれたり、慣れない靴で歩いたせいで靴擦れしたりと、いろんなハプニングがありましたが、グレンがたちまち解決してくれました。
グレンは私にとって城の外に連れ出してくれる王子様でした。
私はその日から、グレンのことばかり考えるようになってしまいました。
何をしていても、頭の中にグレンのことがあります。
またグレンと王都の街を歩きたいなとそんなことばかり考えるようになってしまいました。
「クレア。お前の結婚相手が決まった。それは勇者だ。世界を救う英雄だ。きっとお前にふさわしい相手だ。嬉しいだろう?」
ですが世界は残酷です。
なんとお父様は私を勇者様と結婚させたいようなのです。
私はお父様に逆らえませんでした。
私は王族なので結婚相手を選べないことは知っていました。
ですが、私の心の中には常にグレンがいます。
私は勇者様とは結婚したくありませんでした。
けれど、お父様は私の気持ちを無視して、皆の前で魔王を倒した暁に私を勇者様の妻にすると宣言しました。
護衛騎士のデュークだけが、私の味方になってなんとか婚約を阻止するために勇者様と戦ってくれましたが、しかしデュークは勝てませんでした。
私はショックでした。
婚約を宣言した場にはグレンの姿もありました。
グレンは私と勇者様が婚約したのを見て、私の気持ちを勘違いしたかもしれません。
私はせめて自分の気持ちをグレンに知ってほしいと思いました。
なので、王の間での婚約の宣言の後、グレン様の部屋を訪れて、そこではっきりと自分の気持ちを伝えました。
グレンを特別に思っている、と。
グレンは私の告白を受けて、少しの間何かを考えた後、突然大根役者にでもなったみたいに、私の胸を揉みたいなどと言い出しました。
私はちょっとグレンらしくないなと思ったのですがけれど、グレンに触れられるのは悪くないと思いました。
なので自分から胸を差し出しました。
するとグレンが慌てたように謝ってきて、部屋を追い出されました。
…なぜなんでしょう?
それから数日後、私は再びグレンと王都の外に出る機会に恵まれました。
グレンは最初の時のように私をエスコートしてくれて、夢のような時間が続きました。
その途中、ふとグレンが案内したい場所があると言い出しました。
私はグレンについていくことにしました。
グレンは王都の騒がしいところを離れて、どんどん脇道へと入っていきます。
どこか涼む場所でも探しているのでしょうか。
そんなことを思っていると、突然後からスリの子供がやってきてグレンの財布を盗んでいきました。
グレンは慌ててその子供を追い、私もその後に続きます。
迷路のような路地裏をなんとかグレンの背中を見失わないように走り、やがてグレンの財布を盗んだ子供は行き止まりに追い詰められました。
子供は痩せていて、汚れた気の毒な子供でした。
私たち王族の失政によって生み出された、哀れな子供たちです。
私はグレンなら、そんな子供に乱暴はしないだろうと思いました。
しかし、グレンは信じられないことに教育だなどと言ってその子供に暴力を振るいました。
私は信じられませんでした。
あの優しいグレンがこんなことをするなんて…
しばらく呆気にとられていましたが、途中から奇妙なことに気がつきました。
蹴られているはずの子供が、あまり痛そうには見えないのです。
どこか演技のような感じがするというか、グレンも表情は怒っているように見えますが、あまり本気で蹴っているようには見えません。
私はこの二人がグルで、演技をしていると判断をしました。
…でもどうしてでしょう?
なぜそんなことをするのでしょう。
わからないですが、私は演技に気づいていないふりをすることにしました。
「酷い…!!あなたがそんなことをする人だとは思いませんでした…!」
私はグレンにそう言って心の中で申し訳ないと思いつつ、その頬を張り、そしてその場から去りました。
我ながら名演技だったと思います。
そしてさったふりをして、物陰に隠れて二人の様子を伺いました。
するとグレンに暴力を振るわれていた子供が何事もなかったかのように起き上がり、報酬としてグレンからお金をもらっていました。
どうやらグレンは私を騙すつもりで、子供を買収し、仕込んでいたようでした。
…どうしてそんなことをしたのでしょう?
まさか私を遠ざけるためですか?
私がグレンに失望してしまうようにわざと私に暴力を振るうところを見せたのですか?
これは遠回しに、グレンは私のことなどなんとも思っていないという意思表示なのでしょうか?
酷いです。
でも不思議です。
そのことがわかった今でも、グレンに対するこの気持ちは全然冷めないんです。
ああ、グレン、好き。
私のグレンです。
誰にも渡しません。
勇者様となんか結婚したくないです。
私が好きなのはグレンだけです。
なんで私を遠ざけようとしてそんなことをしようとしたのか私にはわかりません。
何が事情があるのでしょうからしばらくは騙されたフリをしてあげます。
でも……絶対に逃しませんからね?グレン。
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