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第十七話
しおりを挟む「食料の確保は当分は大丈夫だとして…モンスターに襲われないうちにレベル上げはしておきたいな…」
俺はこれからすべきことを頭の中でリスト化しておく。
収納スキルのおかげで、今現在俺の元には一ヶ月分以上の食料がある。
よって食料の確保は当分の間問題ないだろう。
「今なら俺は無抵抗なモンスターに一方的に攻撃できる…モンスターを倒してレベル上げして、スキルもゲットする…そして万一この特性が失われた時でも生き延びられる力を手に入れないと…」
よって、次にするべきことは普通に考えてレベル上げだろう。
現状、俺はモンスターに襲われない。
そこらに徘徊しているモンスターを倒し放題だ。
モンスターを倒せばレベルが上がり、スキルも増える。
特にスキルは、一つ一つが強力で、生存にモロに関わってくるため、一つでも多く獲得しておくに越したことはない。
今後、このモンスターに襲われないという俺だけの特性がいつ失われるかもわからないし、今のうちにモンスターを倒し、スキルポイントをより多く獲得しておく必要があるだろう。
「あとすべきことは…」
俺はやらなくてはならないことを必死に考える。
が、レベル上げとスキル確保以上に重要なことは今の所思いつかなかった。
とりあえずはこの家を拠点に、モンスターを倒しレベル上げをしていく方向で良さそうだ。
「…しかし、二人はどこいったんだ?」
自分にモンスターに襲われない特性があることがわかり、余裕が出てきた俺は、思わず両親のことを考えてしまった。
俺を見捨てて逃げた両親は今、どうしているだろうか。
どこかに避難したのか?
それともモンスターに殺されたのか?
「いや…まだ見捨てたかどうかはわからないよな…」
見捨てたと決めつけるのは早計だろう。
現状では確かに俺は両親に見捨てられた可能性が高いが、あくまで可能性の段階で確定事項ではない。
やむを得ない事情が何かあったのかもしれない。
「一応…レベル上げが終わったら探してみるのもありか…?」
たとえ見捨てられたとしても、ここまで育ててくれた自分の両親だ。
簡単には切り捨てられない。
もし順調にレベルを上げ、たくさんのスキルを獲得することが出来たなら、両親を探してみるのもありかもしれないと俺は思った。
「あいつらはどうしてるだろうなぁ…」
モンスターに襲われる心配がない状況下で、食料まで確保出来て、内心安堵したからだろうか。
俺は次々に他人のことを考えてしまう。
思い浮かぶのはクラスメイトたちの顔だ。
ひどい目にあって引きこもりになった俺だが、しかし全員が俺をいじめていたわけではなかった。
仲間になってくれる奴もいたし、手を差し伸べてくれる奴もいた。
「特にあいつは…」
俺の頭の中に、とある幼馴染の顔が浮かぶ。
引きこもりになった俺のことを気にかけ、唯一部屋の外に連れ出そうとしてくれたのはあいつだけだったな。
放課後になると何度も何度もここにきて、ドア越しに俺に語りかけてきたっけ?
『ひろちゃん。学校に行こう…?何があっても私が守ってあげるから』
引きこもり始めてから一ヶ月の間、毎日毎日飽きもせずに放課後にやってきては2時間以上ドアの前でそう囁いて俺を説得しようとしてきたっけ…?
まぁ、一回俺が『目障りなんだよ、消えろ!』と大声で怒鳴ってドア叩いたら来なくなったけど。
「今考えてみると最低だな、俺…」
本当に馬鹿だったと思う。
あぁ…
謝りたい。
会って謝って…そしてお礼を言いたい。
こんな俺のことを気にかけてくれてありがとうって。
「まさか…もう死んでたり…しないよな?」
頼むから生きていてほしい。
他のクラスメイト…特に俺をいじめていた連中がどうなっていても構わない。
だがあいつだけは、モンスターに殺されずに生きていてほしいとそう心から思う。
「…はぁ…どうすっかなぁ…」
色々考えて、気分はどんどん沈んでいく。
俺はため息をついて座り込んだ。
『クゥン…!』
餌を食べ終えたらしいクロが、そばに寄ってきて頭を擦り付けてくる。
「よしよし…」
俺はクロの頭を撫でながら、頭ではあることを考えていた。
「確か災害時の避難場所って…学校だったよな…もしかしたら…」
余計なことを考えている。
そう自覚していても、俺はもはや一度頭に浮かんだ思いつきを振り払うことはできなかった。
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