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祝祭の影
テロ
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抜刀の瞬間、祝祭の音が遠ざかった。
刃が空気を裂く音だけが、やけに鮮明に響く。
シンの一歩は速い。
いや――正確だった。
地面に仕掛けられた魔力無効化魔道具。
半径三・五メートル。その円の内側。
魔術師にとっては死地。
だが――
「来るぞ!」
ローレンスの声が届く前に、シンは踏み込んでいた。
黒装束の男が、群衆の影から躍り出る。
短剣。毒塗り。完全に殺しに来ている動き。
――遅い。
シンは最短距離で懐に入り、柄打ち。
骨の砕ける感触と共に、敵は地面に沈んだ。
次の瞬間、左右から二人。
ミオが動く。
双刃が唸りを上げ、円を描いた。
魔力による身体強化は使えない。
それでも――
「邪魔」
純粋な筋力、技量、間合い。
刃が交差した瞬間、敵の武器が弾き飛ばされる。
返す刃で一人。
肘打ちで、もう一人。
倒れる音が、祭りの太鼓に紛れた。
「……魔力なしでも、この人ほんと化け物」
ローレンスは舌打ちしながら後退する。
詠唱はできない。
だが、彼はすでに状況を読んでいた。
「無効化範囲は固定だ! 外に出れば――」
「それまで、持たせる」
サラが前に出た。
手にした短いナイフ。
その指先に、わずかに残る補助魔術の名残。
防御魔法の壁が、半透明の膜となって広がる。
完全な魔術ではない。だが――
「十分」
投擲。
刃は一直線に飛び、敵の足元を貫いた。
悲鳴。転倒。
シンが追撃し、意識を刈り取る。
だが――
空気が変わった。
敵の動きが、揃う。
統率された撤退行動。
「……指揮官がいる」
ミオが低く呟いた瞬間。
地面が、軋んだ。
重い足音。
人混みを割って現れたのは――
「久しいな。王国の影ども」
男は、笑っていた。
上半身裸。
傷だらけの筋肉。
手には、血に濡れた諸刃の大剣。
ルドルフ・メッセンジャー。
その名を、ローレンスが知っていた。
「……元、騎士団」
「正解」
剣が振るわれる。
風圧だけで、敷石が砕けた。
ミオが正面から受ける。
火花が散る。
「っ……!」
重い。
純粋な腕力が、規格外だった。
シンが横から斬り込む。
だが、ルドルフはそれを読んでいた。
「甘い!」
蹴り。
シンの身体が宙を舞う。
受け身だ。
即座に立ち上がる。
サラの魔法壁が、追撃を防いだ。
「撤退だ」
ルドルフは、そう判断した。
深追いはしない。
最初から目的は別にある――そんな動きだ。
「また会おう」
煙幕。
次の瞬間、敵影は霧散していた。
⸻
騎士団と影裁による、合同調査。
臨時の詰所で、シンは椅子に腰掛けていた。
「はい、じっとして」
サラが手当を施す。
軽食の乾パンを噛みながら、シンは天井を見上げた。
「……思ったより、騒ぎにならなかったな」
「騎士団が、情報統制してる」
ローレンスは魔道具を調べながら答える。
「この無効化装置、紛争時代の遺物だ。
皮肉にも、作ったのは騎士団自身」
「……笑えないね」
ミオは腕を組み、調査の様子を眺めていた。
不自然なほど、スムーズ。
まるで――
最初から答えを知っているかのように。
「合同調査なのに、主導権は完全に向こう」
その呟きは、小さかった。
だが、確かに残った。
テロは終わっていない。
本当の目的は、まだ見えない。
そして――
その闇は、騎士団の内側にある。
シンは、そう直感していた。
刃が空気を裂く音だけが、やけに鮮明に響く。
シンの一歩は速い。
いや――正確だった。
地面に仕掛けられた魔力無効化魔道具。
半径三・五メートル。その円の内側。
魔術師にとっては死地。
だが――
「来るぞ!」
ローレンスの声が届く前に、シンは踏み込んでいた。
黒装束の男が、群衆の影から躍り出る。
短剣。毒塗り。完全に殺しに来ている動き。
――遅い。
シンは最短距離で懐に入り、柄打ち。
骨の砕ける感触と共に、敵は地面に沈んだ。
次の瞬間、左右から二人。
ミオが動く。
双刃が唸りを上げ、円を描いた。
魔力による身体強化は使えない。
それでも――
「邪魔」
純粋な筋力、技量、間合い。
刃が交差した瞬間、敵の武器が弾き飛ばされる。
返す刃で一人。
肘打ちで、もう一人。
倒れる音が、祭りの太鼓に紛れた。
「……魔力なしでも、この人ほんと化け物」
ローレンスは舌打ちしながら後退する。
詠唱はできない。
だが、彼はすでに状況を読んでいた。
「無効化範囲は固定だ! 外に出れば――」
「それまで、持たせる」
サラが前に出た。
手にした短いナイフ。
その指先に、わずかに残る補助魔術の名残。
防御魔法の壁が、半透明の膜となって広がる。
完全な魔術ではない。だが――
「十分」
投擲。
刃は一直線に飛び、敵の足元を貫いた。
悲鳴。転倒。
シンが追撃し、意識を刈り取る。
だが――
空気が変わった。
敵の動きが、揃う。
統率された撤退行動。
「……指揮官がいる」
ミオが低く呟いた瞬間。
地面が、軋んだ。
重い足音。
人混みを割って現れたのは――
「久しいな。王国の影ども」
男は、笑っていた。
上半身裸。
傷だらけの筋肉。
手には、血に濡れた諸刃の大剣。
ルドルフ・メッセンジャー。
その名を、ローレンスが知っていた。
「……元、騎士団」
「正解」
剣が振るわれる。
風圧だけで、敷石が砕けた。
ミオが正面から受ける。
火花が散る。
「っ……!」
重い。
純粋な腕力が、規格外だった。
シンが横から斬り込む。
だが、ルドルフはそれを読んでいた。
「甘い!」
蹴り。
シンの身体が宙を舞う。
受け身だ。
即座に立ち上がる。
サラの魔法壁が、追撃を防いだ。
「撤退だ」
ルドルフは、そう判断した。
深追いはしない。
最初から目的は別にある――そんな動きだ。
「また会おう」
煙幕。
次の瞬間、敵影は霧散していた。
⸻
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臨時の詰所で、シンは椅子に腰掛けていた。
「はい、じっとして」
サラが手当を施す。
軽食の乾パンを噛みながら、シンは天井を見上げた。
「……思ったより、騒ぎにならなかったな」
「騎士団が、情報統制してる」
ローレンスは魔道具を調べながら答える。
「この無効化装置、紛争時代の遺物だ。
皮肉にも、作ったのは騎士団自身」
「……笑えないね」
ミオは腕を組み、調査の様子を眺めていた。
不自然なほど、スムーズ。
まるで――
最初から答えを知っているかのように。
「合同調査なのに、主導権は完全に向こう」
その呟きは、小さかった。
だが、確かに残った。
テロは終わっていない。
本当の目的は、まだ見えない。
そして――
その闇は、騎士団の内側にある。
シンは、そう直感していた。
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