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薬師寺翔は、高校入学を控えた平凡な少年。部活動とは無縁な中学生活を送り、唯一の特技といえば将棋アプリで全国1位を獲ったことくらい。そんな翔だが、幼馴染みの二宮楓花の頼みで、放課後はよく近所の公園に呼び出されていた。
楓花は小中学校で全国屈指の実力を誇るソフトテニス後衛。気の強い性格と華のある技巧派プレーで誰もが認める天才だったが、翔の前ではどこか嬉しそうに、そして照れくさそうにラケットを振っていた。
「翔だけは、ずっと隣にいてほしい」
そんな想いを胸に秘めた楓花は、全国の名門校からの誘いを断り、翔と同じ近所の高校を受験する決断をする。だがその帰り、些細な口論の末に翔のもとから走り出した楓花は、横断歩道で車と接触し、命こそ助かったものの車椅子での生活を余儀なくされてしまう。
ソフトテニスも、将来の夢も、全てを奪われた楓花。
その現実に打ちひしがれる彼女を前に、翔は初めて「守れなかった悔しさ」に向き合うことになる。
そして翔は決意する——
「今度は俺が、楓花を支える番だ」
未経験ながらもソフトテニス部の門を叩き、楓花が愛したスポーツに真正面から挑む翔。
失われたコートへの道を、二人は別々の立場で、しかしまた一緒に歩き始める。
これは、天才少女が希望を失い、平凡な少年が希望を抱く、
再生と絆の青春ストーリー。
文字数 4,403
最終更新日 2025.12.11
登録日 2025.12.07
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