この恋は狂暴です

三三

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この恋は狂暴です【日和編】

この恋は狂暴です【日和編】

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(日和編)

俺が日和と出会ったのは、俺が中学2年のとき、
14歳の夏休み。 

親戚のやってる喫茶店が、夏のかきいれ時期で忙しい事もあって駆り出された。
ま、バイト代も入るし、俺には今欲しいものもあった。

でも
そこで出会ってしまった

・・はっきりいって俺の一目ぼれ。



初めて、日和を店で見たときは、マジで見とれてしまった。

ゆるく巻いてある茶色の長い髪。
細くて白い手足。 
色っぽいしぐさ ・・少し、垂れ目がちな瞳。

最初、日和にオーダーを取りにいったときは声、震えたっけ(笑)



それから日和が店に来るたび、俺はいつも目で追うようになってた。

どう見ても、俺より年上。 相手になんてされるワケがない。
でも、それでもいい、会えるだけで。


ある時、一緒にバイトしていた大学生にいたずらで香水をつけられた。
「薫くん、香水くらいつけないと、中坊ってバレるよ♪」
そんな事を言われて。

その時は、こんなくせーもんつけやがってって思ったんだけど、
まさか、
その香水が日和と話すキッカケになろうとは
・・夢にも思わなかったんだ。



俺が日和のところへオーダーを取りにいくと、

「ん?」
―――――――――――――――っつ!え?!俺の、か、顔の側にっ、彼女の顔っ?!!!

「えっと!! ――っあ、あのっ!」 俺は焦った。
「あ、ごめんね。なんか、好きな香りがしたから」 と言って日和は、ニコッと笑う。

カ―――――――――――――――ッ/// 顔が赤くなるのがわかるっ。

だって反則っ!そんな顔っ!

今までずっと片思いしてた、高嶺の花だった人が今、俺のすぐ側で微笑んでんだぜっ!!
テンぱらないワケないっ!!!!

「こ、香水、詳しいんすか? えっと・・」
「日和です。」
ぐあ―――――――――――――――っ!!っつ!だっ、だからッ反則だってっ!!

「君は、えっと ・・」 日和は俺の胸のネームプレートをじっと見て、
「薫くん?でいいのかな?」 そう首をかしげた。

ボッ!
 な、名前呼んでもらっちゃった

「は、はい、薫です。あ、の ・・日和さん」 俺は照れながら、初めて知った日和の名前を言った。

そんな俺を見て、日和は微笑み、
「香水、全然、詳しくないよ。ただ ・・いい香りは好き♪ いいなぁどこのだろ?」 と聞いてくる。
「あ、俺もちょっと忘れたから、この香水の写メ撮って送りましょうか?」
俺は大学生のバイトヤローにつけられたとは言わないで、そう日和に聞き返した。

すると、日和は パ――――ッと明るい顔をして、
「えっ?いいの?お願いっ♪」 と子供みたいに喜ぶ。

「あの、 じゃ、メアドかライン教えてもらっていいすか?」 そんな日和に見とれていた自分を誤魔化すように、俺はそう言って、ポケットの中からスマホを取り出す。
日和もすぐ、カバンの中からスマホを取り出し、赤外線でお互いのメアドを交換した。

「平日の日中しか ・・ メール送らないでね。」 日和は交換した後、そんな事を言った。


その時は、その言葉を深く考えなかった。
その言葉の意味も。




俺はその後、すぐに裏の控え室へ行って大学生ヤローのつけた香水を探したが、持ち帰ったらしくそこには置いてなかった。

「ちっ!あいつ、明日早番だったな。しかたない、明日の朝、俺も店に来るか。
どうせ日中しかメール送れないし ・・ な。」


店が終わると、俺はいつものたまり場に行った。

「ちわーすっ♪」

「お、なんだ薫?今日はえらくご機嫌じゃん?」 
「ホント、ホント、愛しの彼女に会えたの~?」
そう言ったのは大紀くんと、その彼女で泉。 たまり場には、その他に3、4人 の族関係の人たちがたむろってた。

大紀くんはLALIELという暴走族のNO.2で、総長の和己さんとLALIELを立ち上げた人。
ムチャクチャ、ケンカが強くて、カッコいい。威張らなくて、面白くて面倒見のいい人だ。

で、その彼女の泉は、キレイでスタイルもいい。が、 
超、おっかないっ!! 女王で、誰もこいつには逆らえない。

「え?なんでわかった?ってか! 彼女とメアド交換しちゃいましたっ!♪」
俺はスッゴク嬉しくて、皆にそう言って回った。

「おー良かったじゃん薫っ♪」  「進展進展!よくやった薫!」
皆に祝福された♪
1人、泉だけは、 「超、ウザっ」 と顔を歪ませたけど。
俺は今、チョー機嫌がいいから、んなコト、気にならないっ♪


「名前は日和って言うんだって!♪ 明日、メールすることになってんだー♪」
俺のその言葉に、泉が
「なんで明日?メールってもっと自由にするもんでしょ、変なの。」 と言う。

――――――――――――――!! 
言われてみれば、そうだよ・・な。

「男いんじゃないのー?すっごくキレイな人なんでしょ?」
泉が追い討ちをかける。

「うっせーよ!泉。」 俺はそれ以上言えなかった。

――――――――― あんなキレイで大人の日和がモテないわけがない、
マジで男がいないほうがおかしい。


俺はモヤモヤした気持ちで、たまり場を後にし、そのまま家に帰った。



次の日、朝早くに俺はバイト先である親戚の店へと行った。

お、いたいた大学生くん♪

「あれ?薫くん、早番だったっけ?」 バイトの大学生くんは俺に気付いて聞いてくる。
「ううん、今日は遅番!ちょっと用があってさ。」
俺は大学生くんを見てにっこり笑った。

「え?俺に?」キョトンとした顔をする大学生くん。

俺はさっそく香水を借りると、写メをとり軽く香水をつけさせてもらった。
お礼を言って店を出ると、ガードレールに男の人が座って電話している。

俺が通り過ぎようとした時、  「日和、」  
――って ・・聞こえた?

「!!」 俺は驚いて、その男を見ると、

「迎えにきてよ、日和~♪」  やはり、その男は(日和)って言った。 ――――――― ・・
で、でも、あの日和さんかどうかなんてわからない、 
たしかに(日和)って名前はめずらしいケド。

「やった!ありがと♪日和、愛してるっ!」
「!!」
い、いくら、あの日和さんの事じゃなくても(日和)って名に愛してるなんて言うんじゃねぇよっ!
俺は顔を歪ませる。


男はそう言うと、電話を切り立ち上がった。
そして、
立ち尽くしている俺に目を向けたが、フィと無視して、俺のバイト先の喫茶店の方へと歩いていった。


俺はなんだか、すごく気になって、その男の姿を目で追っていた。

喫茶店の前に来ると、男は店に入るワケでもなく、今度は店前のガードレールにもたれかかる。


それから何分たっただろう。
赤いアウディが、その男の付近に止まった。 
車から
降りてきたのは・・

「!!」    

俺は身動きがとれなかった。


そこに
あの男の前に現れたのは・・まぎれもない
俺の大好きな ・・・ 日和さんだった。

男は日和さんに気がつくと、笑って日和さんの事を抱きしめた。

――――――――――――――――――――――― っつうっ!!!

「男、いるんじゃないの?」
頭の中で、昨日の泉の言葉が響く。


2人は車に乗り込むと、俺の横を走り去って行った。


俺は立ちつくしたままで。

あいつは日和さんの何なんだろう 
あの言葉といい、
当たり前のように日和さんの事を抱きしめてっ、
――・・
くっ ・ ・ そぉ!
俺は男が座っていたガードレールを蹴飛ばした。
ポケットからスマホを取り出して、日和さんのメアドを出し【削除】を押す。
でも。その後の【OK】――が、どうしても押せなかったっ!っく!

「日和さんっ!」 俺はスマホを握り締めた。
その時、

~~♪~♪~~~♪
いきなり着信音が鳴る。
「わっ、っと、なんだよ!鳴るなよ、こんなとき・・」
途中で言葉が止まった。
メール・・  ディスプレイには、えっ?ひ、【日和さん】 っつ?!!

「は?!日和さんから?」
俺はドキドキしながら、メールを開く。

内容は 【2時に薫くんの喫茶店近くで会えない?かな】 だった。

俺はさっきの不安も飛んで、すぐにメールを返した。
内容はもちろん
【了解です。】


ホントに
バカだよな。 ・ ・ 俺って。



俺はその帰りに、いつものたまり場に寄った。

そこには、和己さんと女が寝ていて

和己さんは俺に気付くと、 「ん?どおした?薫。」 って聞いてきた。

「和さん、頼み事があって」 俺は和己さんの前で片膝をついた。
「なんだ? 薫、深刻な顔して」
和己さんは女をどけると俺の方へ顔を近づけた。

「・・バイク、貸してもらえないっすか」

俺のその言葉に、和己さんは少し驚いて、
「・・女か?」 と聞いてきた。
コクッと頷くと、和己さんはため息をもらし、

「前、乗ってたやつが、俺んちにあるから、ソレ乗ってけ。」 そう言ってキーケースから、1本の鍵を外し、俺に投げてよこす。

「まぁ、がんばんな♪」 和己さんはニッコリ笑った。

「あ、ありがとうございますっ!」 俺は頭を下げると、急いで和己さんちへ向かった。


裏のガレージの前まで来ると、すぐにそれは目に付いた。
和己さんが乗ってたバイク。
あいかわらずカッコいい
あの人とは、ケンカばっかしてる仲だけど、ここぞって時は絶対に力になってくれる。
表だっては言えねーけど、俺は和己さんを尊敬している。 んな事、本人目の前にしてはゼッテー言わないけど(笑)


しかし、よく手入れされてるな。

俺はエンジンをかけると、すぐに乗り込み、ふかした。
「やっぱ、カッケーな♪この音っ!」

そして、家までバイクを走らせた。
家につくと、もうすぐ昼になるところで、
「あ~ 、なにか買ってこれば良かったかなー・・・」 と、冷凍庫の中を物色する。
俺んちは、2人(父さん・母さん)とも、働いてて、ほとんど家にいない。
その為か、絶えず冷凍食品だけは常備してあった。
数ある中からチャーハンの袋をチョイスして、レンチン。
それを食べおわると、シャワーをあびた。

ガキくさいと思われたくないから、和さんに頼んで、バイクまで借りたんだ。
着てく服も考えないとな。
俺は、明るい色を避け、黒のTシャツにジーンズを履き、シルバーのネックレスをつけた。

茶色の髪をセットし終わった頃には、もう1時を過ぎていた。

2時までもう少しだな。
こんなに時間が長いと思ったコトない。

ふー と息を吐く。

さっきの男と日和さんの姿が目に浮かぶ。
もし、あの男が日和さんの彼氏だったら、俺なんかと会っていいんだろうか
それとも、初めから俺のコト男として見てないのかな、日和さん。


そんなコトを考えてたら、1時半を過ぎてた。
「そろそろ行くかな。」
バイクのキーを持つと部屋を出た。

ここから店まで、バイクだと10分程度。 余裕で間に合う。
「女、待たすワケにはいかないもんな」 俺はエンジンをかけ、店へと向かった。


店に着いた俺は、裏の駐車場にバイクを停め、時計を見た。

1時50分。

~~♪~~~♪  ん、メール音。
画面を開くと、日和さんからで 【もう着いてる?どこらへんにいる?】 と書かれている。
俺はすぐに、【喫茶店の裏の駐車場にいます】と打って送った。

間もなくして、見覚えのある赤いアウディが駐車場に入ってきた。
今朝、見たから覚えている。間違いなく、日和さんだろう。

車を枠内に停めたのを見ると、俺はその車の方へ歩いて行った。

ウィ――ン ・ ・
助手席の窓がおりて、運転席にいる日和さんは手招きして「暑いでしょ?乗って。」 と言う。
俺は少し、戸惑いながらも、助手席に乗り込んだ。

「あのバイク、薫くんの?」 日和さんはバイクを指して聞いてくる。
「あ―――先輩のやつです、俺のは今度、バイト代が入ったら買おうと思ってて」
俺は緊張しながら話した。

「ふー・・ん。 なんかカッコいいねっ。」 日和はそう言ってニッコリ笑う。

うっ―――――――――――――― っく!!やべぇ、 マジでキレイっ !!
顔が赤いのと緊張を悟られないように、俺は外の景色を見るふりをした。


「――あ、!そうだ!」 俺は日和さんに頼まれていた香水のコトを思い出し、スマホを取り出す。
「ん?どうしたの?」
「昨日、日和さんに頼まれてた香水、データに入れといたから。」 俺はそう言い、画面を開いてデータを探していると、 


「薫くん」
「・・ん?」



「・・今朝、そこに居たね。」

「!!」

いきなりだった。
まさか、日和さんから切り出してくるとは思わなかった。


「え、あ、 ・・ はい。」
俺は迷ったけどそう答えた。



「あの人ね。
私の、だんな ・ ・ なの。」




は  ? 



あまりの言葉に、俺は何も言えなかった。

彼氏どころの問題じゃない 
・ ・ だんな って、  け、結婚してたの ? ・ ・ 日和さん

な、な・・んだ、 そっか。
じゃ俺なんて全然無理じゃん。

俺がどんだけ思ってもっ、ダメじゃんかっ!!!

「あ、あ――― だから、この香水、そのだんなさんにって?」
俺は開き直って聞いた。

「え?」 
「日和さんが好きだって言ったこの香り、だんなさんにつけてもらいたかったんでしょ?!だから俺を呼び出してまでっ!」 

っ、―――――――――――――― っつえ!!
ええっ?!!!

お、
俺  ・ ・ 今、 ・ ・ 何されてる ?

茶色のやわらかい巻き髪が、俺の顔にかかって 
・・ 白く細い腕が、俺の首に巻きつかれ 
・・甘い日和さんの香りが、目の前で ・・

「 ・ ・ ちがう ・ ・よ、薫くん。そんな事 ・・ ちがうよ」

――――――――――――――――― っ、俺 っ、今、日和さんに抱きしめられてる?

「っつ!!」
あまりの衝撃に俺は頭の中がパニくったっ!

「っ?!か、おる・・く・・」

気がついたら俺は日和さんにキスをしていた。


だんなもいる。
結婚している人ってわかってるのに、俺の気持ちは止まらなかった。



最後まで、してしまった。



「 ・ ・ か ・おるくん」 日和さんが潤んだ瞳をして呟く。

俺は後戻りしない。 俺は、ホント大バカだ!
でも抑えきれないんだ・・っ、――っつ!!!

「俺、日和さんが好きっ!結婚してよーが関係ない! ――――― っ!もっと、一緒にいてーよっつ!!」 俺は心の奥から叫んだ。

そんな俺を、日和さんは、優しく頭を撫で
「・・ 薫くん ・・ それでいいの? つらくなる ・・よ?」
日和さんの瞳から涙がこぼれた。

「うん ・ ・でも日和さんにとっては、迷惑だよね。」
俺は俯いた。

俺だけの気持ちをぶつけたって、実際、日和さんにはだんながいるワケで。
日和さんが困るんであれば、苦しいけど
もう会うことも出来なくなってしまう。

だけど、

「イヤな思いもさせちゃうかもしれないけど、私も薫くんと ・・ また会いたいよ。」

日和さんは、そう ・・ 言ってくれた。

俺は、その言葉がすごく嬉しくて、
つい 涙がこぼれた ・ ・ 



なんで
なんでこんなに好きなんだろう。なんでこんなに好きになってしまったんだろう。 

それから俺たちは付き合った。

電話もメールも俺からは絶対にしない。
喫茶店ではいつでも会えるけど、二人っきりで会えるのは、週に1回あるかないか。
でも、それでも嬉しかった。

俺たちが愛し合うのは、いつも車の中で。
日和は、やはり人目が気になるらしく、人気のない場所を探したりしてると、あっというまにリミット時間がきてしまう。
俺は、それがすごくもったいなくて、もっと日和を感じたくて、

親に初めて頼み事をした。

「小さくていいから、部屋を借りてほしい。」 と。
普段、親を頼ったりしない俺からの初めての頼み事とあってか、両親ともすぐ承諾してくれた。

「理由はきかない。でも、責任もって使いなさい。」 それだけを言って。

本当に感謝した。

これで、今以上に日和といられる。人目を気にする事もなく、この部屋で少しでも日和と一緒にいられる。



「ばかじゃないのっつ!!!」
久しぶりにたまり場へ顔を出すと、いきなり泉に怒鳴られ、どつかれた。
「いって――――っ!手加減ぐらいしろよなっ!クソ泉っ!」
「は?あんたにクソ呼ばわりされたくないねっ!バカ薫っ!」

「まぁまぁ」 俺たちの間に割り込んできたのは大紀くん。
「ちょっと!大紀、ジャマしないでよっ!こいつには今日こそガツンと言ってやらなきゃダメなのよっ!」 泉はそーとーキレている。
「なにをだよっ!っつたく!」 俺はどつかれた箇所をさすった。


「あんな女っ!やめときなっ!」
「!!」
どうやら泉は、俺が不倫してる事が許せないらしい。

「泉には関係ないだろ」力なく答えると、
「だんなもいるのに、他の男にも手ぇ出して、その女、サイテーッ!」
ガタンッ!!
泉のその言葉に俺はキレた。

「俺の事はいい、日和の事を悪く言うのは許さねぇ!!」
俺が泉を強く睨むと、その間に大紀くんが立った。

「薫、泉はマジで心配してんだよ、わかってんだろ、お前だって。」
大紀さんはそう言うと、泉の頭をポンポンと叩いた。
泉は泣きそうな顔をしている 。 
あの泉が・・

「あ・・う ・・ ん。 ごめん、でも、俺 ・ ・」そう言いかけたとき

「ま、どんなことになっても最後はココに来な。」 
大紀くんが笑って、そんな事を言ってくれた。

俺は、その時、泣きそうだった。


本当は辛かったっ 、
会いたいときに会えない 、声さえも聞けない。
でも会ったときは、そんな不満を言って困らせてはいけないっ、
こんなに、辛い恋なんて初めてで。


でも やめられないんだ ・ ・ 
泉の言うとおり。

俺はバカだ。


こんな俺を、この人達は見捨てないと言ってくれる

「大紀くん、泉 ・・ごめんっ!」
俺はそれだけ言って、たまり場を出た。
出た途端、中から泉の泣き声が聞こえた。

ごめん泉。 心配かけて ・ ・  ホント、ごめんっ 



そして日和と会える日。

俺は日和を、あの部屋へ連れて行った。

「え?ここ ・ ・ 」
「俺と日和の部屋。」
「え? ・ ・ 薫?」 状況が読み込めていないのか日和はポカンとしている。

そんな日和の手を取り、俺は部屋の中に入った。

部屋は12畳のフローリングが一部屋、そしてキッチン、バスルーム・トイレ付きで、2人でいるスペースとしては十分だった。

「日和。」 俺はもう我慢できなくて、日和を抱きしめる。
日和もそれに答えてくれた。

その部屋で2人して愛し合った。
片時も離れず、時間いっぱいまで抱き合った。


「愛してる ・ ・ 日和」 俺は何度も繰り返す。

「薫・・ 私も愛してる」 日和のその言葉が嬉しくて

このまま ・ ・ 帰したくなくなる。


でも

「薫 ・ ・ ごめん。 もう行かなきゃ ・ ・ 」 日和がそう呟く。
「――――――――――― う・・ん・・っ、」

俺はもう少しで本音を言うところだった、 ヤバイ ・ ・
この頃、抑えがきかなくなってるっ

【イヤだ!行かせない!】 俺の心がそう叫ぶ。
顔が歪む。 

それに気付いて、
「薫・・ごめん。 薫に嫌な思いばかりさせて、・・もう やめ ・ ・」

日和がその言葉を言おうとした瞬間に、俺は日和の唇をキスで塞いだ。


聞きたくないっ!! ――――――――――― そんな言葉っ!!
体が震えた

唇を離し、俺は俯く。


「か ・ ・ お ・る?」
「言うな」
「え?」

「――――――――――― もうやめるなんて!言うなよっ!!」
俺は力の限り叫んだ。



その言葉に日和は涙を流した。



俺には、まだ
日和が流したその涙の意味はわからなくて。



それから一ヶ月。日和からの連絡は一切なかった。
夏休みも終わって、バイトも無くなったから喫茶店にも行かなくて、余計に日和と会えなくなっていた。

俺は、あの部屋で1人、ボーッとしている事が増えた。

そんな俺を心配して、大紀くんや泉が、度々、電話やメールをくれる。


~♪~~♪
また大紀くんかな、それとも泉か ・ ・ な。

ボヤーっと画面を開くと、 そこには 【日和】の文字!
俺は飛び起きた!
メールを開くと、 【明日、3時頃、そこへ行きます。薫はいるかな?】 と書かれている。

俺はすぐに 【3時には必ずいるようにする】 と打って送った。


久しぶりに会えるっ! 日和に会えるっ!!
俺はテンションが上がった。

そして、ある事を思いつき、俺は街へ出た。



着いた先はLALIEL専属のバイク屋。
今までの貯金と、この間のバイト代で、俺は念願のバイクを買った。
ずっと欲しかったバイク。和己さんと同じ、KAWASAKIの♪
未成年の俺でも、ここのバイク屋は顔なじみのせいで快く売ってくれる。
ま、その前に和己さんに連絡入れてもらっているってのもあるけど(笑)

俺は一応、店から離れた所までバイクを押して歩いた。
「建て前上、店から離れた場所から乗ってよ」 と店の人に言われたから。
この店に迷惑かけると、LALIELにも迷惑をかけるコトになってしまう。

俺は重いバイクを押しながらも、顔はにやけていた♪
念願のバイク♪
明日は日和に会える♪ イイことづくしだ。


「あれ?薫くんじゃない?」  「え?あ、ホントだぁー♪」

どこかの女共が、なんか俺を見つけて騒いでいる。
そいつらは、俺の近くに寄ってくるなり、
「これ、薫くんのバイク~?」と聞いてきた。
「そうだけど?」俺は面倒くさそうに答えると、
「カッコいい~♪」
「ねぇ、乗せてよー♪」

は?
「無理。」
「え~!いいじゃん、乗せてよ~♪」
「だから、無理 ・ ・」 


「ね、
・・乗せて」    

「!!」  ――― え・・?
いきなり後ろから声がした。
しかも、この声っ!!
俺はバッと振り向く。

「!!」 ――――――――――――― っつ!!!


「日和っ?!」 
そこに立っていたのはまぎれもない、 日和 ・ ・ で

な、なんで?


「薫、乗せて。」
「え?あ、ああ。」 俺は日和の言葉と出現に驚いたが、とりあえずメットを日和にかぶせ、後ろに乗せるとエンジンをかけた。

「え―――!なにソレッ!!」 女共が騒ぐ。
「悪いな!こいつ俺の女だから♪」 それだけ言うと、バイクを走らせた。


心臓がまだバクバクしている。
俺のバイクの後ろに日和がいる。 夢みてぇ ――――――――っ!!


―――――――― すっげぇー嬉しいっつ!!!
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