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この恋は狂暴です【日和編】
この恋は狂暴です【日和編】
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(日和編)
俺が日和と出会ったのは、俺が中学2年のとき、
14歳の夏休み。
親戚のやってる喫茶店が、夏のかきいれ時期で忙しい事もあって駆り出された。
ま、バイト代も入るし、俺には今欲しいものもあった。
でも
そこで出会ってしまった
・・はっきりいって俺の一目ぼれ。
初めて、日和を店で見たときは、マジで見とれてしまった。
ゆるく巻いてある茶色の長い髪。
細くて白い手足。
色っぽいしぐさ ・・少し、垂れ目がちな瞳。
最初、日和にオーダーを取りにいったときは声、震えたっけ(笑)
それから日和が店に来るたび、俺はいつも目で追うようになってた。
どう見ても、俺より年上。 相手になんてされるワケがない。
でも、それでもいい、会えるだけで。
ある時、一緒にバイトしていた大学生にいたずらで香水をつけられた。
「薫くん、香水くらいつけないと、中坊ってバレるよ♪」
そんな事を言われて。
その時は、こんなくせーもんつけやがってって思ったんだけど、
まさか、
その香水が日和と話すキッカケになろうとは
・・夢にも思わなかったんだ。
俺が日和のところへオーダーを取りにいくと、
「ん?」
―――――――――――――――っつ!え?!俺の、か、顔の側にっ、彼女の顔っ?!!!
「えっと!! ――っあ、あのっ!」 俺は焦った。
「あ、ごめんね。なんか、好きな香りがしたから」 と言って日和は、ニコッと笑う。
カ―――――――――――――――ッ/// 顔が赤くなるのがわかるっ。
だって反則っ!そんな顔っ!
今までずっと片思いしてた、高嶺の花だった人が今、俺のすぐ側で微笑んでんだぜっ!!
テンぱらないワケないっ!!!!
「こ、香水、詳しいんすか? えっと・・」
「日和です。」
ぐあ―――――――――――――――っ!!っつ!だっ、だからッ反則だってっ!!
「君は、えっと ・・」 日和は俺の胸のネームプレートをじっと見て、
「薫くん?でいいのかな?」 そう首をかしげた。
ボッ!
な、名前呼んでもらっちゃった
「は、はい、薫です。あ、の ・・日和さん」 俺は照れながら、初めて知った日和の名前を言った。
そんな俺を見て、日和は微笑み、
「香水、全然、詳しくないよ。ただ ・・いい香りは好き♪ いいなぁどこのだろ?」 と聞いてくる。
「あ、俺もちょっと忘れたから、この香水の写メ撮って送りましょうか?」
俺は大学生のバイトヤローにつけられたとは言わないで、そう日和に聞き返した。
すると、日和は パ――――ッと明るい顔をして、
「えっ?いいの?お願いっ♪」 と子供みたいに喜ぶ。
「あの、 じゃ、メアドかライン教えてもらっていいすか?」 そんな日和に見とれていた自分を誤魔化すように、俺はそう言って、ポケットの中からスマホを取り出す。
日和もすぐ、カバンの中からスマホを取り出し、赤外線でお互いのメアドを交換した。
「平日の日中しか ・・ メール送らないでね。」 日和は交換した後、そんな事を言った。
その時は、その言葉を深く考えなかった。
その言葉の意味も。
俺はその後、すぐに裏の控え室へ行って大学生ヤローのつけた香水を探したが、持ち帰ったらしくそこには置いてなかった。
「ちっ!あいつ、明日早番だったな。しかたない、明日の朝、俺も店に来るか。
どうせ日中しかメール送れないし ・・ な。」
店が終わると、俺はいつものたまり場に行った。
「ちわーすっ♪」
「お、なんだ薫?今日はえらくご機嫌じゃん?」
「ホント、ホント、愛しの彼女に会えたの~?」
そう言ったのは大紀くんと、その彼女で泉。 たまり場には、その他に3、4人 の族関係の人たちがたむろってた。
大紀くんはLALIELという暴走族のNO.2で、総長の和己さんとLALIELを立ち上げた人。
ムチャクチャ、ケンカが強くて、カッコいい。威張らなくて、面白くて面倒見のいい人だ。
で、その彼女の泉は、キレイでスタイルもいい。が、
超、おっかないっ!! 女王で、誰もこいつには逆らえない。
「え?なんでわかった?ってか! 彼女とメアド交換しちゃいましたっ!♪」
俺はスッゴク嬉しくて、皆にそう言って回った。
「おー良かったじゃん薫っ♪」 「進展進展!よくやった薫!」
皆に祝福された♪
1人、泉だけは、 「超、ウザっ」 と顔を歪ませたけど。
俺は今、チョー機嫌がいいから、んなコト、気にならないっ♪
「名前は日和って言うんだって!♪ 明日、メールすることになってんだー♪」
俺のその言葉に、泉が
「なんで明日?メールってもっと自由にするもんでしょ、変なの。」 と言う。
――――――――――――――!!
言われてみれば、そうだよ・・な。
「男いんじゃないのー?すっごくキレイな人なんでしょ?」
泉が追い討ちをかける。
「うっせーよ!泉。」 俺はそれ以上言えなかった。
――――――――― あんなキレイで大人の日和がモテないわけがない、
マジで男がいないほうがおかしい。
俺はモヤモヤした気持ちで、たまり場を後にし、そのまま家に帰った。
次の日、朝早くに俺はバイト先である親戚の店へと行った。
お、いたいた大学生くん♪
「あれ?薫くん、早番だったっけ?」 バイトの大学生くんは俺に気付いて聞いてくる。
「ううん、今日は遅番!ちょっと用があってさ。」
俺は大学生くんを見てにっこり笑った。
「え?俺に?」キョトンとした顔をする大学生くん。
俺はさっそく香水を借りると、写メをとり軽く香水をつけさせてもらった。
お礼を言って店を出ると、ガードレールに男の人が座って電話している。
俺が通り過ぎようとした時、 「日和、」
――って ・・聞こえた?
「!!」 俺は驚いて、その男を見ると、
「迎えにきてよ、日和~♪」 やはり、その男は(日和)って言った。 ――――――― ・・
で、でも、あの日和さんかどうかなんてわからない、
たしかに(日和)って名前はめずらしいケド。
「やった!ありがと♪日和、愛してるっ!」
「!!」
い、いくら、あの日和さんの事じゃなくても(日和)って名に愛してるなんて言うんじゃねぇよっ!
俺は顔を歪ませる。
男はそう言うと、電話を切り立ち上がった。
そして、
立ち尽くしている俺に目を向けたが、フィと無視して、俺のバイト先の喫茶店の方へと歩いていった。
俺はなんだか、すごく気になって、その男の姿を目で追っていた。
喫茶店の前に来ると、男は店に入るワケでもなく、今度は店前のガードレールにもたれかかる。
それから何分たっただろう。
赤いアウディが、その男の付近に止まった。
車から
降りてきたのは・・
「!!」
俺は身動きがとれなかった。
そこに
あの男の前に現れたのは・・まぎれもない
俺の大好きな ・・・ 日和さんだった。
男は日和さんに気がつくと、笑って日和さんの事を抱きしめた。
――――――――――――――――――――――― っつうっ!!!
「男、いるんじゃないの?」
頭の中で、昨日の泉の言葉が響く。
2人は車に乗り込むと、俺の横を走り去って行った。
俺は立ちつくしたままで。
あいつは日和さんの何なんだろう
あの言葉といい、
当たり前のように日和さんの事を抱きしめてっ、
――・・
くっ ・ ・ そぉ!
俺は男が座っていたガードレールを蹴飛ばした。
ポケットからスマホを取り出して、日和さんのメアドを出し【削除】を押す。
でも。その後の【OK】――が、どうしても押せなかったっ!っく!
「日和さんっ!」 俺はスマホを握り締めた。
その時、
~~♪~♪~~~♪
いきなり着信音が鳴る。
「わっ、っと、なんだよ!鳴るなよ、こんなとき・・」
途中で言葉が止まった。
メール・・ ディスプレイには、えっ?ひ、【日和さん】 っつ?!!
「は?!日和さんから?」
俺はドキドキしながら、メールを開く。
内容は 【2時に薫くんの喫茶店近くで会えない?かな】 だった。
俺はさっきの不安も飛んで、すぐにメールを返した。
内容はもちろん
【了解です。】
ホントに
バカだよな。 ・ ・ 俺って。
俺はその帰りに、いつものたまり場に寄った。
そこには、和己さんと女が寝ていて
和己さんは俺に気付くと、 「ん?どおした?薫。」 って聞いてきた。
「和さん、頼み事があって」 俺は和己さんの前で片膝をついた。
「なんだ? 薫、深刻な顔して」
和己さんは女をどけると俺の方へ顔を近づけた。
「・・バイク、貸してもらえないっすか」
俺のその言葉に、和己さんは少し驚いて、
「・・女か?」 と聞いてきた。
コクッと頷くと、和己さんはため息をもらし、
「前、乗ってたやつが、俺んちにあるから、ソレ乗ってけ。」 そう言ってキーケースから、1本の鍵を外し、俺に投げてよこす。
「まぁ、がんばんな♪」 和己さんはニッコリ笑った。
「あ、ありがとうございますっ!」 俺は頭を下げると、急いで和己さんちへ向かった。
裏のガレージの前まで来ると、すぐにそれは目に付いた。
和己さんが乗ってたバイク。
あいかわらずカッコいい
あの人とは、ケンカばっかしてる仲だけど、ここぞって時は絶対に力になってくれる。
表だっては言えねーけど、俺は和己さんを尊敬している。 んな事、本人目の前にしてはゼッテー言わないけど(笑)
しかし、よく手入れされてるな。
俺はエンジンをかけると、すぐに乗り込み、ふかした。
「やっぱ、カッケーな♪この音っ!」
そして、家までバイクを走らせた。
家につくと、もうすぐ昼になるところで、
「あ~ 、なにか買ってこれば良かったかなー・・・」 と、冷凍庫の中を物色する。
俺んちは、2人(父さん・母さん)とも、働いてて、ほとんど家にいない。
その為か、絶えず冷凍食品だけは常備してあった。
数ある中からチャーハンの袋をチョイスして、レンチン。
それを食べおわると、シャワーをあびた。
ガキくさいと思われたくないから、和さんに頼んで、バイクまで借りたんだ。
着てく服も考えないとな。
俺は、明るい色を避け、黒のTシャツにジーンズを履き、シルバーのネックレスをつけた。
茶色の髪をセットし終わった頃には、もう1時を過ぎていた。
2時までもう少しだな。
こんなに時間が長いと思ったコトない。
ふー と息を吐く。
さっきの男と日和さんの姿が目に浮かぶ。
もし、あの男が日和さんの彼氏だったら、俺なんかと会っていいんだろうか
それとも、初めから俺のコト男として見てないのかな、日和さん。
そんなコトを考えてたら、1時半を過ぎてた。
「そろそろ行くかな。」
バイクのキーを持つと部屋を出た。
ここから店まで、バイクだと10分程度。 余裕で間に合う。
「女、待たすワケにはいかないもんな」 俺はエンジンをかけ、店へと向かった。
店に着いた俺は、裏の駐車場にバイクを停め、時計を見た。
1時50分。
~~♪~~~♪ ん、メール音。
画面を開くと、日和さんからで 【もう着いてる?どこらへんにいる?】 と書かれている。
俺はすぐに、【喫茶店の裏の駐車場にいます】と打って送った。
間もなくして、見覚えのある赤いアウディが駐車場に入ってきた。
今朝、見たから覚えている。間違いなく、日和さんだろう。
車を枠内に停めたのを見ると、俺はその車の方へ歩いて行った。
ウィ――ン ・ ・
助手席の窓がおりて、運転席にいる日和さんは手招きして「暑いでしょ?乗って。」 と言う。
俺は少し、戸惑いながらも、助手席に乗り込んだ。
「あのバイク、薫くんの?」 日和さんはバイクを指して聞いてくる。
「あ―――先輩のやつです、俺のは今度、バイト代が入ったら買おうと思ってて」
俺は緊張しながら話した。
「ふー・・ん。 なんかカッコいいねっ。」 日和はそう言ってニッコリ笑う。
うっ―――――――――――――― っく!!やべぇ、 マジでキレイっ !!
顔が赤いのと緊張を悟られないように、俺は外の景色を見るふりをした。
「――あ、!そうだ!」 俺は日和さんに頼まれていた香水のコトを思い出し、スマホを取り出す。
「ん?どうしたの?」
「昨日、日和さんに頼まれてた香水、データに入れといたから。」 俺はそう言い、画面を開いてデータを探していると、
「薫くん」
「・・ん?」
「・・今朝、そこに居たね。」
「!!」
いきなりだった。
まさか、日和さんから切り出してくるとは思わなかった。
「え、あ、 ・・ はい。」
俺は迷ったけどそう答えた。
「あの人ね。
私の、だんな ・ ・ なの。」
は ?
あまりの言葉に、俺は何も言えなかった。
彼氏どころの問題じゃない
・ ・ だんな って、 け、結婚してたの ? ・ ・ 日和さん
な、な・・んだ、 そっか。
じゃ俺なんて全然無理じゃん。
俺がどんだけ思ってもっ、ダメじゃんかっ!!!
「あ、あ――― だから、この香水、そのだんなさんにって?」
俺は開き直って聞いた。
「え?」
「日和さんが好きだって言ったこの香り、だんなさんにつけてもらいたかったんでしょ?!だから俺を呼び出してまでっ!」
っ、―――――――――――――― っつえ!!
ええっ?!!!
お、
俺 ・ ・ 今、 ・ ・ 何されてる ?
茶色のやわらかい巻き髪が、俺の顔にかかって
・・ 白く細い腕が、俺の首に巻きつかれ
・・甘い日和さんの香りが、目の前で ・・
「 ・ ・ ちがう ・ ・よ、薫くん。そんな事 ・・ ちがうよ」
――――――――――――――――― っ、俺 っ、今、日和さんに抱きしめられてる?
「っつ!!」
あまりの衝撃に俺は頭の中がパニくったっ!
「っ?!か、おる・・く・・」
気がついたら俺は日和さんにキスをしていた。
だんなもいる。
結婚している人ってわかってるのに、俺の気持ちは止まらなかった。
最後まで、してしまった。
「 ・ ・ か ・おるくん」 日和さんが潤んだ瞳をして呟く。
俺は後戻りしない。 俺は、ホント大バカだ!
でも抑えきれないんだ・・っ、――っつ!!!
「俺、日和さんが好きっ!結婚してよーが関係ない! ――――― っ!もっと、一緒にいてーよっつ!!」 俺は心の奥から叫んだ。
そんな俺を、日和さんは、優しく頭を撫で
「・・ 薫くん ・・ それでいいの? つらくなる ・・よ?」
日和さんの瞳から涙がこぼれた。
「うん ・ ・でも日和さんにとっては、迷惑だよね。」
俺は俯いた。
俺だけの気持ちをぶつけたって、実際、日和さんにはだんながいるワケで。
日和さんが困るんであれば、苦しいけど
もう会うことも出来なくなってしまう。
だけど、
「イヤな思いもさせちゃうかもしれないけど、私も薫くんと ・・ また会いたいよ。」
日和さんは、そう ・・ 言ってくれた。
俺は、その言葉がすごく嬉しくて、
つい 涙がこぼれた ・ ・
なんで
なんでこんなに好きなんだろう。なんでこんなに好きになってしまったんだろう。
それから俺たちは付き合った。
電話もメールも俺からは絶対にしない。
喫茶店ではいつでも会えるけど、二人っきりで会えるのは、週に1回あるかないか。
でも、それでも嬉しかった。
俺たちが愛し合うのは、いつも車の中で。
日和は、やはり人目が気になるらしく、人気のない場所を探したりしてると、あっというまにリミット時間がきてしまう。
俺は、それがすごくもったいなくて、もっと日和を感じたくて、
親に初めて頼み事をした。
「小さくていいから、部屋を借りてほしい。」 と。
普段、親を頼ったりしない俺からの初めての頼み事とあってか、両親ともすぐ承諾してくれた。
「理由はきかない。でも、責任もって使いなさい。」 それだけを言って。
本当に感謝した。
これで、今以上に日和といられる。人目を気にする事もなく、この部屋で少しでも日和と一緒にいられる。
「ばかじゃないのっつ!!!」
久しぶりにたまり場へ顔を出すと、いきなり泉に怒鳴られ、どつかれた。
「いって――――っ!手加減ぐらいしろよなっ!クソ泉っ!」
「は?あんたにクソ呼ばわりされたくないねっ!バカ薫っ!」
「まぁまぁ」 俺たちの間に割り込んできたのは大紀くん。
「ちょっと!大紀、ジャマしないでよっ!こいつには今日こそガツンと言ってやらなきゃダメなのよっ!」 泉はそーとーキレている。
「なにをだよっ!っつたく!」 俺はどつかれた箇所をさすった。
「あんな女っ!やめときなっ!」
「!!」
どうやら泉は、俺が不倫してる事が許せないらしい。
「泉には関係ないだろ」力なく答えると、
「だんなもいるのに、他の男にも手ぇ出して、その女、サイテーッ!」
ガタンッ!!
泉のその言葉に俺はキレた。
「俺の事はいい、日和の事を悪く言うのは許さねぇ!!」
俺が泉を強く睨むと、その間に大紀くんが立った。
「薫、泉はマジで心配してんだよ、わかってんだろ、お前だって。」
大紀さんはそう言うと、泉の頭をポンポンと叩いた。
泉は泣きそうな顔をしている 。
あの泉が・・
「あ・・う ・・ ん。 ごめん、でも、俺 ・ ・」そう言いかけたとき
「ま、どんなことになっても最後はココに来な。」
大紀くんが笑って、そんな事を言ってくれた。
俺は、その時、泣きそうだった。
本当は辛かったっ 、
会いたいときに会えない 、声さえも聞けない。
でも会ったときは、そんな不満を言って困らせてはいけないっ、
こんなに、辛い恋なんて初めてで。
でも やめられないんだ ・ ・
泉の言うとおり。
俺はバカだ。
こんな俺を、この人達は見捨てないと言ってくれる
「大紀くん、泉 ・・ごめんっ!」
俺はそれだけ言って、たまり場を出た。
出た途端、中から泉の泣き声が聞こえた。
ごめん泉。 心配かけて ・ ・ ホント、ごめんっ
そして日和と会える日。
俺は日和を、あの部屋へ連れて行った。
「え?ここ ・ ・ 」
「俺と日和の部屋。」
「え? ・ ・ 薫?」 状況が読み込めていないのか日和はポカンとしている。
そんな日和の手を取り、俺は部屋の中に入った。
部屋は12畳のフローリングが一部屋、そしてキッチン、バスルーム・トイレ付きで、2人でいるスペースとしては十分だった。
「日和。」 俺はもう我慢できなくて、日和を抱きしめる。
日和もそれに答えてくれた。
その部屋で2人して愛し合った。
片時も離れず、時間いっぱいまで抱き合った。
「愛してる ・ ・ 日和」 俺は何度も繰り返す。
「薫・・ 私も愛してる」 日和のその言葉が嬉しくて
このまま ・ ・ 帰したくなくなる。
でも
「薫 ・ ・ ごめん。 もう行かなきゃ ・ ・ 」 日和がそう呟く。
「――――――――――― う・・ん・・っ、」
俺はもう少しで本音を言うところだった、 ヤバイ ・ ・
この頃、抑えがきかなくなってるっ
【イヤだ!行かせない!】 俺の心がそう叫ぶ。
顔が歪む。
それに気付いて、
「薫・・ごめん。 薫に嫌な思いばかりさせて、・・もう やめ ・ ・」
日和がその言葉を言おうとした瞬間に、俺は日和の唇をキスで塞いだ。
聞きたくないっ!! ――――――――――― そんな言葉っ!!
体が震えた
唇を離し、俺は俯く。
「か ・ ・ お ・る?」
「言うな」
「え?」
「――――――――――― もうやめるなんて!言うなよっ!!」
俺は力の限り叫んだ。
その言葉に日和は涙を流した。
俺には、まだ
日和が流したその涙の意味はわからなくて。
それから一ヶ月。日和からの連絡は一切なかった。
夏休みも終わって、バイトも無くなったから喫茶店にも行かなくて、余計に日和と会えなくなっていた。
俺は、あの部屋で1人、ボーッとしている事が増えた。
そんな俺を心配して、大紀くんや泉が、度々、電話やメールをくれる。
~♪~~♪
また大紀くんかな、それとも泉か ・ ・ な。
ボヤーっと画面を開くと、 そこには 【日和】の文字!
俺は飛び起きた!
メールを開くと、 【明日、3時頃、そこへ行きます。薫はいるかな?】 と書かれている。
俺はすぐに 【3時には必ずいるようにする】 と打って送った。
久しぶりに会えるっ! 日和に会えるっ!!
俺はテンションが上がった。
そして、ある事を思いつき、俺は街へ出た。
着いた先はLALIEL専属のバイク屋。
今までの貯金と、この間のバイト代で、俺は念願のバイクを買った。
ずっと欲しかったバイク。和己さんと同じ、KAWASAKIの♪
未成年の俺でも、ここのバイク屋は顔なじみのせいで快く売ってくれる。
ま、その前に和己さんに連絡入れてもらっているってのもあるけど(笑)
俺は一応、店から離れた所までバイクを押して歩いた。
「建て前上、店から離れた場所から乗ってよ」 と店の人に言われたから。
この店に迷惑かけると、LALIELにも迷惑をかけるコトになってしまう。
俺は重いバイクを押しながらも、顔はにやけていた♪
念願のバイク♪
明日は日和に会える♪ イイことづくしだ。
「あれ?薫くんじゃない?」 「え?あ、ホントだぁー♪」
どこかの女共が、なんか俺を見つけて騒いでいる。
そいつらは、俺の近くに寄ってくるなり、
「これ、薫くんのバイク~?」と聞いてきた。
「そうだけど?」俺は面倒くさそうに答えると、
「カッコいい~♪」
「ねぇ、乗せてよー♪」
は?
「無理。」
「え~!いいじゃん、乗せてよ~♪」
「だから、無理 ・ ・」
「ね、
・・乗せて」
「!!」 ――― え・・?
いきなり後ろから声がした。
しかも、この声っ!!
俺はバッと振り向く。
「!!」 ――――――――――――― っつ!!!
「日和っ?!」
そこに立っていたのはまぎれもない、 日和 ・ ・ で
な、なんで?
「薫、乗せて。」
「え?あ、ああ。」 俺は日和の言葉と出現に驚いたが、とりあえずメットを日和にかぶせ、後ろに乗せるとエンジンをかけた。
「え―――!なにソレッ!!」 女共が騒ぐ。
「悪いな!こいつ俺の女だから♪」 それだけ言うと、バイクを走らせた。
心臓がまだバクバクしている。
俺のバイクの後ろに日和がいる。 夢みてぇ ――――――――っ!!
―――――――― すっげぇー嬉しいっつ!!!
俺が日和と出会ったのは、俺が中学2年のとき、
14歳の夏休み。
親戚のやってる喫茶店が、夏のかきいれ時期で忙しい事もあって駆り出された。
ま、バイト代も入るし、俺には今欲しいものもあった。
でも
そこで出会ってしまった
・・はっきりいって俺の一目ぼれ。
初めて、日和を店で見たときは、マジで見とれてしまった。
ゆるく巻いてある茶色の長い髪。
細くて白い手足。
色っぽいしぐさ ・・少し、垂れ目がちな瞳。
最初、日和にオーダーを取りにいったときは声、震えたっけ(笑)
それから日和が店に来るたび、俺はいつも目で追うようになってた。
どう見ても、俺より年上。 相手になんてされるワケがない。
でも、それでもいい、会えるだけで。
ある時、一緒にバイトしていた大学生にいたずらで香水をつけられた。
「薫くん、香水くらいつけないと、中坊ってバレるよ♪」
そんな事を言われて。
その時は、こんなくせーもんつけやがってって思ったんだけど、
まさか、
その香水が日和と話すキッカケになろうとは
・・夢にも思わなかったんだ。
俺が日和のところへオーダーを取りにいくと、
「ん?」
―――――――――――――――っつ!え?!俺の、か、顔の側にっ、彼女の顔っ?!!!
「えっと!! ――っあ、あのっ!」 俺は焦った。
「あ、ごめんね。なんか、好きな香りがしたから」 と言って日和は、ニコッと笑う。
カ―――――――――――――――ッ/// 顔が赤くなるのがわかるっ。
だって反則っ!そんな顔っ!
今までずっと片思いしてた、高嶺の花だった人が今、俺のすぐ側で微笑んでんだぜっ!!
テンぱらないワケないっ!!!!
「こ、香水、詳しいんすか? えっと・・」
「日和です。」
ぐあ―――――――――――――――っ!!っつ!だっ、だからッ反則だってっ!!
「君は、えっと ・・」 日和は俺の胸のネームプレートをじっと見て、
「薫くん?でいいのかな?」 そう首をかしげた。
ボッ!
な、名前呼んでもらっちゃった
「は、はい、薫です。あ、の ・・日和さん」 俺は照れながら、初めて知った日和の名前を言った。
そんな俺を見て、日和は微笑み、
「香水、全然、詳しくないよ。ただ ・・いい香りは好き♪ いいなぁどこのだろ?」 と聞いてくる。
「あ、俺もちょっと忘れたから、この香水の写メ撮って送りましょうか?」
俺は大学生のバイトヤローにつけられたとは言わないで、そう日和に聞き返した。
すると、日和は パ――――ッと明るい顔をして、
「えっ?いいの?お願いっ♪」 と子供みたいに喜ぶ。
「あの、 じゃ、メアドかライン教えてもらっていいすか?」 そんな日和に見とれていた自分を誤魔化すように、俺はそう言って、ポケットの中からスマホを取り出す。
日和もすぐ、カバンの中からスマホを取り出し、赤外線でお互いのメアドを交換した。
「平日の日中しか ・・ メール送らないでね。」 日和は交換した後、そんな事を言った。
その時は、その言葉を深く考えなかった。
その言葉の意味も。
俺はその後、すぐに裏の控え室へ行って大学生ヤローのつけた香水を探したが、持ち帰ったらしくそこには置いてなかった。
「ちっ!あいつ、明日早番だったな。しかたない、明日の朝、俺も店に来るか。
どうせ日中しかメール送れないし ・・ な。」
店が終わると、俺はいつものたまり場に行った。
「ちわーすっ♪」
「お、なんだ薫?今日はえらくご機嫌じゃん?」
「ホント、ホント、愛しの彼女に会えたの~?」
そう言ったのは大紀くんと、その彼女で泉。 たまり場には、その他に3、4人 の族関係の人たちがたむろってた。
大紀くんはLALIELという暴走族のNO.2で、総長の和己さんとLALIELを立ち上げた人。
ムチャクチャ、ケンカが強くて、カッコいい。威張らなくて、面白くて面倒見のいい人だ。
で、その彼女の泉は、キレイでスタイルもいい。が、
超、おっかないっ!! 女王で、誰もこいつには逆らえない。
「え?なんでわかった?ってか! 彼女とメアド交換しちゃいましたっ!♪」
俺はスッゴク嬉しくて、皆にそう言って回った。
「おー良かったじゃん薫っ♪」 「進展進展!よくやった薫!」
皆に祝福された♪
1人、泉だけは、 「超、ウザっ」 と顔を歪ませたけど。
俺は今、チョー機嫌がいいから、んなコト、気にならないっ♪
「名前は日和って言うんだって!♪ 明日、メールすることになってんだー♪」
俺のその言葉に、泉が
「なんで明日?メールってもっと自由にするもんでしょ、変なの。」 と言う。
――――――――――――――!!
言われてみれば、そうだよ・・な。
「男いんじゃないのー?すっごくキレイな人なんでしょ?」
泉が追い討ちをかける。
「うっせーよ!泉。」 俺はそれ以上言えなかった。
――――――――― あんなキレイで大人の日和がモテないわけがない、
マジで男がいないほうがおかしい。
俺はモヤモヤした気持ちで、たまり場を後にし、そのまま家に帰った。
次の日、朝早くに俺はバイト先である親戚の店へと行った。
お、いたいた大学生くん♪
「あれ?薫くん、早番だったっけ?」 バイトの大学生くんは俺に気付いて聞いてくる。
「ううん、今日は遅番!ちょっと用があってさ。」
俺は大学生くんを見てにっこり笑った。
「え?俺に?」キョトンとした顔をする大学生くん。
俺はさっそく香水を借りると、写メをとり軽く香水をつけさせてもらった。
お礼を言って店を出ると、ガードレールに男の人が座って電話している。
俺が通り過ぎようとした時、 「日和、」
――って ・・聞こえた?
「!!」 俺は驚いて、その男を見ると、
「迎えにきてよ、日和~♪」 やはり、その男は(日和)って言った。 ――――――― ・・
で、でも、あの日和さんかどうかなんてわからない、
たしかに(日和)って名前はめずらしいケド。
「やった!ありがと♪日和、愛してるっ!」
「!!」
い、いくら、あの日和さんの事じゃなくても(日和)って名に愛してるなんて言うんじゃねぇよっ!
俺は顔を歪ませる。
男はそう言うと、電話を切り立ち上がった。
そして、
立ち尽くしている俺に目を向けたが、フィと無視して、俺のバイト先の喫茶店の方へと歩いていった。
俺はなんだか、すごく気になって、その男の姿を目で追っていた。
喫茶店の前に来ると、男は店に入るワケでもなく、今度は店前のガードレールにもたれかかる。
それから何分たっただろう。
赤いアウディが、その男の付近に止まった。
車から
降りてきたのは・・
「!!」
俺は身動きがとれなかった。
そこに
あの男の前に現れたのは・・まぎれもない
俺の大好きな ・・・ 日和さんだった。
男は日和さんに気がつくと、笑って日和さんの事を抱きしめた。
――――――――――――――――――――――― っつうっ!!!
「男、いるんじゃないの?」
頭の中で、昨日の泉の言葉が響く。
2人は車に乗り込むと、俺の横を走り去って行った。
俺は立ちつくしたままで。
あいつは日和さんの何なんだろう
あの言葉といい、
当たり前のように日和さんの事を抱きしめてっ、
――・・
くっ ・ ・ そぉ!
俺は男が座っていたガードレールを蹴飛ばした。
ポケットからスマホを取り出して、日和さんのメアドを出し【削除】を押す。
でも。その後の【OK】――が、どうしても押せなかったっ!っく!
「日和さんっ!」 俺はスマホを握り締めた。
その時、
~~♪~♪~~~♪
いきなり着信音が鳴る。
「わっ、っと、なんだよ!鳴るなよ、こんなとき・・」
途中で言葉が止まった。
メール・・ ディスプレイには、えっ?ひ、【日和さん】 っつ?!!
「は?!日和さんから?」
俺はドキドキしながら、メールを開く。
内容は 【2時に薫くんの喫茶店近くで会えない?かな】 だった。
俺はさっきの不安も飛んで、すぐにメールを返した。
内容はもちろん
【了解です。】
ホントに
バカだよな。 ・ ・ 俺って。
俺はその帰りに、いつものたまり場に寄った。
そこには、和己さんと女が寝ていて
和己さんは俺に気付くと、 「ん?どおした?薫。」 って聞いてきた。
「和さん、頼み事があって」 俺は和己さんの前で片膝をついた。
「なんだ? 薫、深刻な顔して」
和己さんは女をどけると俺の方へ顔を近づけた。
「・・バイク、貸してもらえないっすか」
俺のその言葉に、和己さんは少し驚いて、
「・・女か?」 と聞いてきた。
コクッと頷くと、和己さんはため息をもらし、
「前、乗ってたやつが、俺んちにあるから、ソレ乗ってけ。」 そう言ってキーケースから、1本の鍵を外し、俺に投げてよこす。
「まぁ、がんばんな♪」 和己さんはニッコリ笑った。
「あ、ありがとうございますっ!」 俺は頭を下げると、急いで和己さんちへ向かった。
裏のガレージの前まで来ると、すぐにそれは目に付いた。
和己さんが乗ってたバイク。
あいかわらずカッコいい
あの人とは、ケンカばっかしてる仲だけど、ここぞって時は絶対に力になってくれる。
表だっては言えねーけど、俺は和己さんを尊敬している。 んな事、本人目の前にしてはゼッテー言わないけど(笑)
しかし、よく手入れされてるな。
俺はエンジンをかけると、すぐに乗り込み、ふかした。
「やっぱ、カッケーな♪この音っ!」
そして、家までバイクを走らせた。
家につくと、もうすぐ昼になるところで、
「あ~ 、なにか買ってこれば良かったかなー・・・」 と、冷凍庫の中を物色する。
俺んちは、2人(父さん・母さん)とも、働いてて、ほとんど家にいない。
その為か、絶えず冷凍食品だけは常備してあった。
数ある中からチャーハンの袋をチョイスして、レンチン。
それを食べおわると、シャワーをあびた。
ガキくさいと思われたくないから、和さんに頼んで、バイクまで借りたんだ。
着てく服も考えないとな。
俺は、明るい色を避け、黒のTシャツにジーンズを履き、シルバーのネックレスをつけた。
茶色の髪をセットし終わった頃には、もう1時を過ぎていた。
2時までもう少しだな。
こんなに時間が長いと思ったコトない。
ふー と息を吐く。
さっきの男と日和さんの姿が目に浮かぶ。
もし、あの男が日和さんの彼氏だったら、俺なんかと会っていいんだろうか
それとも、初めから俺のコト男として見てないのかな、日和さん。
そんなコトを考えてたら、1時半を過ぎてた。
「そろそろ行くかな。」
バイクのキーを持つと部屋を出た。
ここから店まで、バイクだと10分程度。 余裕で間に合う。
「女、待たすワケにはいかないもんな」 俺はエンジンをかけ、店へと向かった。
店に着いた俺は、裏の駐車場にバイクを停め、時計を見た。
1時50分。
~~♪~~~♪ ん、メール音。
画面を開くと、日和さんからで 【もう着いてる?どこらへんにいる?】 と書かれている。
俺はすぐに、【喫茶店の裏の駐車場にいます】と打って送った。
間もなくして、見覚えのある赤いアウディが駐車場に入ってきた。
今朝、見たから覚えている。間違いなく、日和さんだろう。
車を枠内に停めたのを見ると、俺はその車の方へ歩いて行った。
ウィ――ン ・ ・
助手席の窓がおりて、運転席にいる日和さんは手招きして「暑いでしょ?乗って。」 と言う。
俺は少し、戸惑いながらも、助手席に乗り込んだ。
「あのバイク、薫くんの?」 日和さんはバイクを指して聞いてくる。
「あ―――先輩のやつです、俺のは今度、バイト代が入ったら買おうと思ってて」
俺は緊張しながら話した。
「ふー・・ん。 なんかカッコいいねっ。」 日和はそう言ってニッコリ笑う。
うっ―――――――――――――― っく!!やべぇ、 マジでキレイっ !!
顔が赤いのと緊張を悟られないように、俺は外の景色を見るふりをした。
「――あ、!そうだ!」 俺は日和さんに頼まれていた香水のコトを思い出し、スマホを取り出す。
「ん?どうしたの?」
「昨日、日和さんに頼まれてた香水、データに入れといたから。」 俺はそう言い、画面を開いてデータを探していると、
「薫くん」
「・・ん?」
「・・今朝、そこに居たね。」
「!!」
いきなりだった。
まさか、日和さんから切り出してくるとは思わなかった。
「え、あ、 ・・ はい。」
俺は迷ったけどそう答えた。
「あの人ね。
私の、だんな ・ ・ なの。」
は ?
あまりの言葉に、俺は何も言えなかった。
彼氏どころの問題じゃない
・ ・ だんな って、 け、結婚してたの ? ・ ・ 日和さん
な、な・・んだ、 そっか。
じゃ俺なんて全然無理じゃん。
俺がどんだけ思ってもっ、ダメじゃんかっ!!!
「あ、あ――― だから、この香水、そのだんなさんにって?」
俺は開き直って聞いた。
「え?」
「日和さんが好きだって言ったこの香り、だんなさんにつけてもらいたかったんでしょ?!だから俺を呼び出してまでっ!」
っ、―――――――――――――― っつえ!!
ええっ?!!!
お、
俺 ・ ・ 今、 ・ ・ 何されてる ?
茶色のやわらかい巻き髪が、俺の顔にかかって
・・ 白く細い腕が、俺の首に巻きつかれ
・・甘い日和さんの香りが、目の前で ・・
「 ・ ・ ちがう ・ ・よ、薫くん。そんな事 ・・ ちがうよ」
――――――――――――――――― っ、俺 っ、今、日和さんに抱きしめられてる?
「っつ!!」
あまりの衝撃に俺は頭の中がパニくったっ!
「っ?!か、おる・・く・・」
気がついたら俺は日和さんにキスをしていた。
だんなもいる。
結婚している人ってわかってるのに、俺の気持ちは止まらなかった。
最後まで、してしまった。
「 ・ ・ か ・おるくん」 日和さんが潤んだ瞳をして呟く。
俺は後戻りしない。 俺は、ホント大バカだ!
でも抑えきれないんだ・・っ、――っつ!!!
「俺、日和さんが好きっ!結婚してよーが関係ない! ――――― っ!もっと、一緒にいてーよっつ!!」 俺は心の奥から叫んだ。
そんな俺を、日和さんは、優しく頭を撫で
「・・ 薫くん ・・ それでいいの? つらくなる ・・よ?」
日和さんの瞳から涙がこぼれた。
「うん ・ ・でも日和さんにとっては、迷惑だよね。」
俺は俯いた。
俺だけの気持ちをぶつけたって、実際、日和さんにはだんながいるワケで。
日和さんが困るんであれば、苦しいけど
もう会うことも出来なくなってしまう。
だけど、
「イヤな思いもさせちゃうかもしれないけど、私も薫くんと ・・ また会いたいよ。」
日和さんは、そう ・・ 言ってくれた。
俺は、その言葉がすごく嬉しくて、
つい 涙がこぼれた ・ ・
なんで
なんでこんなに好きなんだろう。なんでこんなに好きになってしまったんだろう。
それから俺たちは付き合った。
電話もメールも俺からは絶対にしない。
喫茶店ではいつでも会えるけど、二人っきりで会えるのは、週に1回あるかないか。
でも、それでも嬉しかった。
俺たちが愛し合うのは、いつも車の中で。
日和は、やはり人目が気になるらしく、人気のない場所を探したりしてると、あっというまにリミット時間がきてしまう。
俺は、それがすごくもったいなくて、もっと日和を感じたくて、
親に初めて頼み事をした。
「小さくていいから、部屋を借りてほしい。」 と。
普段、親を頼ったりしない俺からの初めての頼み事とあってか、両親ともすぐ承諾してくれた。
「理由はきかない。でも、責任もって使いなさい。」 それだけを言って。
本当に感謝した。
これで、今以上に日和といられる。人目を気にする事もなく、この部屋で少しでも日和と一緒にいられる。
「ばかじゃないのっつ!!!」
久しぶりにたまり場へ顔を出すと、いきなり泉に怒鳴られ、どつかれた。
「いって――――っ!手加減ぐらいしろよなっ!クソ泉っ!」
「は?あんたにクソ呼ばわりされたくないねっ!バカ薫っ!」
「まぁまぁ」 俺たちの間に割り込んできたのは大紀くん。
「ちょっと!大紀、ジャマしないでよっ!こいつには今日こそガツンと言ってやらなきゃダメなのよっ!」 泉はそーとーキレている。
「なにをだよっ!っつたく!」 俺はどつかれた箇所をさすった。
「あんな女っ!やめときなっ!」
「!!」
どうやら泉は、俺が不倫してる事が許せないらしい。
「泉には関係ないだろ」力なく答えると、
「だんなもいるのに、他の男にも手ぇ出して、その女、サイテーッ!」
ガタンッ!!
泉のその言葉に俺はキレた。
「俺の事はいい、日和の事を悪く言うのは許さねぇ!!」
俺が泉を強く睨むと、その間に大紀くんが立った。
「薫、泉はマジで心配してんだよ、わかってんだろ、お前だって。」
大紀さんはそう言うと、泉の頭をポンポンと叩いた。
泉は泣きそうな顔をしている 。
あの泉が・・
「あ・・う ・・ ん。 ごめん、でも、俺 ・ ・」そう言いかけたとき
「ま、どんなことになっても最後はココに来な。」
大紀くんが笑って、そんな事を言ってくれた。
俺は、その時、泣きそうだった。
本当は辛かったっ 、
会いたいときに会えない 、声さえも聞けない。
でも会ったときは、そんな不満を言って困らせてはいけないっ、
こんなに、辛い恋なんて初めてで。
でも やめられないんだ ・ ・
泉の言うとおり。
俺はバカだ。
こんな俺を、この人達は見捨てないと言ってくれる
「大紀くん、泉 ・・ごめんっ!」
俺はそれだけ言って、たまり場を出た。
出た途端、中から泉の泣き声が聞こえた。
ごめん泉。 心配かけて ・ ・ ホント、ごめんっ
そして日和と会える日。
俺は日和を、あの部屋へ連れて行った。
「え?ここ ・ ・ 」
「俺と日和の部屋。」
「え? ・ ・ 薫?」 状況が読み込めていないのか日和はポカンとしている。
そんな日和の手を取り、俺は部屋の中に入った。
部屋は12畳のフローリングが一部屋、そしてキッチン、バスルーム・トイレ付きで、2人でいるスペースとしては十分だった。
「日和。」 俺はもう我慢できなくて、日和を抱きしめる。
日和もそれに答えてくれた。
その部屋で2人して愛し合った。
片時も離れず、時間いっぱいまで抱き合った。
「愛してる ・ ・ 日和」 俺は何度も繰り返す。
「薫・・ 私も愛してる」 日和のその言葉が嬉しくて
このまま ・ ・ 帰したくなくなる。
でも
「薫 ・ ・ ごめん。 もう行かなきゃ ・ ・ 」 日和がそう呟く。
「――――――――――― う・・ん・・っ、」
俺はもう少しで本音を言うところだった、 ヤバイ ・ ・
この頃、抑えがきかなくなってるっ
【イヤだ!行かせない!】 俺の心がそう叫ぶ。
顔が歪む。
それに気付いて、
「薫・・ごめん。 薫に嫌な思いばかりさせて、・・もう やめ ・ ・」
日和がその言葉を言おうとした瞬間に、俺は日和の唇をキスで塞いだ。
聞きたくないっ!! ――――――――――― そんな言葉っ!!
体が震えた
唇を離し、俺は俯く。
「か ・ ・ お ・る?」
「言うな」
「え?」
「――――――――――― もうやめるなんて!言うなよっ!!」
俺は力の限り叫んだ。
その言葉に日和は涙を流した。
俺には、まだ
日和が流したその涙の意味はわからなくて。
それから一ヶ月。日和からの連絡は一切なかった。
夏休みも終わって、バイトも無くなったから喫茶店にも行かなくて、余計に日和と会えなくなっていた。
俺は、あの部屋で1人、ボーッとしている事が増えた。
そんな俺を心配して、大紀くんや泉が、度々、電話やメールをくれる。
~♪~~♪
また大紀くんかな、それとも泉か ・ ・ な。
ボヤーっと画面を開くと、 そこには 【日和】の文字!
俺は飛び起きた!
メールを開くと、 【明日、3時頃、そこへ行きます。薫はいるかな?】 と書かれている。
俺はすぐに 【3時には必ずいるようにする】 と打って送った。
久しぶりに会えるっ! 日和に会えるっ!!
俺はテンションが上がった。
そして、ある事を思いつき、俺は街へ出た。
着いた先はLALIEL専属のバイク屋。
今までの貯金と、この間のバイト代で、俺は念願のバイクを買った。
ずっと欲しかったバイク。和己さんと同じ、KAWASAKIの♪
未成年の俺でも、ここのバイク屋は顔なじみのせいで快く売ってくれる。
ま、その前に和己さんに連絡入れてもらっているってのもあるけど(笑)
俺は一応、店から離れた所までバイクを押して歩いた。
「建て前上、店から離れた場所から乗ってよ」 と店の人に言われたから。
この店に迷惑かけると、LALIELにも迷惑をかけるコトになってしまう。
俺は重いバイクを押しながらも、顔はにやけていた♪
念願のバイク♪
明日は日和に会える♪ イイことづくしだ。
「あれ?薫くんじゃない?」 「え?あ、ホントだぁー♪」
どこかの女共が、なんか俺を見つけて騒いでいる。
そいつらは、俺の近くに寄ってくるなり、
「これ、薫くんのバイク~?」と聞いてきた。
「そうだけど?」俺は面倒くさそうに答えると、
「カッコいい~♪」
「ねぇ、乗せてよー♪」
は?
「無理。」
「え~!いいじゃん、乗せてよ~♪」
「だから、無理 ・ ・」
「ね、
・・乗せて」
「!!」 ――― え・・?
いきなり後ろから声がした。
しかも、この声っ!!
俺はバッと振り向く。
「!!」 ――――――――――――― っつ!!!
「日和っ?!」
そこに立っていたのはまぎれもない、 日和 ・ ・ で
な、なんで?
「薫、乗せて。」
「え?あ、ああ。」 俺は日和の言葉と出現に驚いたが、とりあえずメットを日和にかぶせ、後ろに乗せるとエンジンをかけた。
「え―――!なにソレッ!!」 女共が騒ぐ。
「悪いな!こいつ俺の女だから♪」 それだけ言うと、バイクを走らせた。
心臓がまだバクバクしている。
俺のバイクの後ろに日和がいる。 夢みてぇ ――――――――っ!!
―――――――― すっげぇー嬉しいっつ!!!
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