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夏休み編
33 不吉な予感
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寺の狭い庭があり、その奥に崩れそうなお堂が立っている。
ここまで、近づいてようやく悪い瘴気に気付いた。
土帝は、周りを見渡し、悪霊がちらほら見えるのを確認する。しかし、祓われるのが嫌なのか、こちらには近付こうとしない。
多分、土帝は霊能力があり、陰陽師だと言うことにも気付いているのだろう。
だが、それより厄介なものがある。妖怪だ。妖怪は、悪霊達と違い、実態がある。
そして、能力があっても平気で襲ってくる輩がいる。
物理的攻撃は通用するものの致命傷を与える事は出来ず、札や霊術で封印するしかない。
土帝は、護身のため札を数枚いつでも持ち歩いている。陰陽師とは言え、いや陰陽師だからこそ、妖怪には狙われやすかった。
きっと邪魔者をすぐにでも排除したいのだろう。
今、土帝が感じている瘴気。間違いなく妖怪。そして、妖怪の中でも厄介な存在……"鬼”。
そして、この瘴気。誰かのモノによく似ている。
「田中蛍。お前の目的は一体なんだ?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……誰か来たようだな」
お堂の中で鬼八がそう言った。
「おいっ!これを外せ!」
坂本は縄のような物で、手を後ろに縛られて床に転がされていた。
すぐ隣にはなずなも同じような格好で縛られている。
「うるせえな。てめえはついでだ。用があるのは、そこの小娘……小娘!起きろ!」
鬼八は、気を失っているなずなの髪を掴み、無理やりなずなを起こす。
「いっ……」
「おうおう。可哀想になあ……閻魔の倅と関係しちまったせいでこんな目にあっちまっあて」
鬼八は、下衆な笑みを浮かべなずなを見る。なずなは、何とか逃れようと藻掻くが、身体が思うように動けない。
それを見て、坂本は自分のした事を強く後悔する。そして、なずなを何とか助け出せないか頭を捻る。
「……さて、さっきからいる人間を何とかするか。来い!」
鬼八は、いったんなずなの髪を放し、今度は腕を引っ張る。なずなは、よろめきながら御堂を出た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
御堂から2つ声がする。一つは坂本、もう一つは聞いたことがない声だ。
間違いなくなずなの声ではない。誰かといるなどと坂本からは聞いていない。
やはりこの気配……。
土帝は、ポケットから札を取り出し、構える。
すると、御堂の扉が開くと巨体とそれに腕を引っ張られ縛られているなずなが出て来た。
「なずな!」
「宋ちゃん……」
なずなが力無くこちらを見ている。巨体は口を開いた。
「おいおい、俺は無視か?」
巨体は顔を歪ませ、土帝を見る。
「……貴様、鬼だな?」
「その通りだ。鬼八っていうんだ。この小娘の知り合いか?」
そう言ってなずなを前に出す。
「なずな!」
「宋ちゃん……助けて」
なずなの顔は恐怖で引き攣っていた。
「おい。小娘、てめえは蛍を呼び寄せる餌なんだ。他の奴に助けて貰っちゃ困るんだよ!!」
そう言って、鬼八はなずなの腕を強く握る。
「あぁ!」
「やめろっ!」
鬼八は、舌打ちをしてなずなの腕を離すと、なずなはよろめいてその場に座り込むように尻もちをつく。
「うるせえな!とりあえずてめえは血祭りにあげてやる」
鬼八は、御堂から離れ、土帝に殴りかかろうとする。瞬時に土帝は、腕をクロスさせ防御体制に入る。
鬼八の拳が土帝に当たる瞬間だった。
「蓑火」
緑の炎の玉が鬼八の拳に当たる。
「あっちい!!」
鬼八は慌てて、炎を振り払う。
「……鬼八。久しぶりだな……と言ってもあまり会いたくなかったけど」
「ああ。てめぇか、蛍。相変わらず憎たらしい顔してやがる」
睨んでいる蛍をにやにやと顎を摩り、鬼八は見下ろす。
「田中蛍!こいつは知り合いのか?」
「だから、フルネーム呼び止めろよ。知り合いも何もこっちは知りたいとも思ってないんだ」
蛍は指を指し宣言する。
「ぺんぺんを返してもらうぞ!」
「あ?ああ、あの小娘か……」
なずなが今にも泣きそうな顔で蛍達を見ている。
「ちょっと乳くせェが、ありゃいい女になるぜ……蓮華みてぇにな!」
「母さんの名前を呼ぶな!!」
蛍がそう怒鳴ると、土帝は驚いたように蛍を見る。ただ、大声に驚いたと言うより、そんな声を出すのかという感じであった。
それと同時に不吉な予感と恐怖を覚える。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
頭が痛い……蛍は、鬼八が母の名を口に出した時からそう感じた。
頭だけでなく、吐き気、眩暈、イライラ。それから、動悸。周りのものを全て破壊したい気分だった。
「自分で殺しておいて、母ちゃんが恋しいか?」
鬼八は、蛍の胸ぐらを掴む。
「あの小娘は蓮華の代わりだ。蓮華に出来なかった事、してやるよ」
そう言われた瞬間、蛍の額から角のようなモノが生え始める。
蛍は鬼八の腹を膝で蹴り上げた。
すると、鬼八は腹を抑える。
「懲罰が必要なようだな!!」
ここまで、近づいてようやく悪い瘴気に気付いた。
土帝は、周りを見渡し、悪霊がちらほら見えるのを確認する。しかし、祓われるのが嫌なのか、こちらには近付こうとしない。
多分、土帝は霊能力があり、陰陽師だと言うことにも気付いているのだろう。
だが、それより厄介なものがある。妖怪だ。妖怪は、悪霊達と違い、実態がある。
そして、能力があっても平気で襲ってくる輩がいる。
物理的攻撃は通用するものの致命傷を与える事は出来ず、札や霊術で封印するしかない。
土帝は、護身のため札を数枚いつでも持ち歩いている。陰陽師とは言え、いや陰陽師だからこそ、妖怪には狙われやすかった。
きっと邪魔者をすぐにでも排除したいのだろう。
今、土帝が感じている瘴気。間違いなく妖怪。そして、妖怪の中でも厄介な存在……"鬼”。
そして、この瘴気。誰かのモノによく似ている。
「田中蛍。お前の目的は一体なんだ?」
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「……誰か来たようだな」
お堂の中で鬼八がそう言った。
「おいっ!これを外せ!」
坂本は縄のような物で、手を後ろに縛られて床に転がされていた。
すぐ隣にはなずなも同じような格好で縛られている。
「うるせえな。てめえはついでだ。用があるのは、そこの小娘……小娘!起きろ!」
鬼八は、気を失っているなずなの髪を掴み、無理やりなずなを起こす。
「いっ……」
「おうおう。可哀想になあ……閻魔の倅と関係しちまったせいでこんな目にあっちまっあて」
鬼八は、下衆な笑みを浮かべなずなを見る。なずなは、何とか逃れようと藻掻くが、身体が思うように動けない。
それを見て、坂本は自分のした事を強く後悔する。そして、なずなを何とか助け出せないか頭を捻る。
「……さて、さっきからいる人間を何とかするか。来い!」
鬼八は、いったんなずなの髪を放し、今度は腕を引っ張る。なずなは、よろめきながら御堂を出た。
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御堂から2つ声がする。一つは坂本、もう一つは聞いたことがない声だ。
間違いなくなずなの声ではない。誰かといるなどと坂本からは聞いていない。
やはりこの気配……。
土帝は、ポケットから札を取り出し、構える。
すると、御堂の扉が開くと巨体とそれに腕を引っ張られ縛られているなずなが出て来た。
「なずな!」
「宋ちゃん……」
なずなが力無くこちらを見ている。巨体は口を開いた。
「おいおい、俺は無視か?」
巨体は顔を歪ませ、土帝を見る。
「……貴様、鬼だな?」
「その通りだ。鬼八っていうんだ。この小娘の知り合いか?」
そう言ってなずなを前に出す。
「なずな!」
「宋ちゃん……助けて」
なずなの顔は恐怖で引き攣っていた。
「おい。小娘、てめえは蛍を呼び寄せる餌なんだ。他の奴に助けて貰っちゃ困るんだよ!!」
そう言って、鬼八はなずなの腕を強く握る。
「あぁ!」
「やめろっ!」
鬼八は、舌打ちをしてなずなの腕を離すと、なずなはよろめいてその場に座り込むように尻もちをつく。
「うるせえな!とりあえずてめえは血祭りにあげてやる」
鬼八は、御堂から離れ、土帝に殴りかかろうとする。瞬時に土帝は、腕をクロスさせ防御体制に入る。
鬼八の拳が土帝に当たる瞬間だった。
「蓑火」
緑の炎の玉が鬼八の拳に当たる。
「あっちい!!」
鬼八は慌てて、炎を振り払う。
「……鬼八。久しぶりだな……と言ってもあまり会いたくなかったけど」
「ああ。てめぇか、蛍。相変わらず憎たらしい顔してやがる」
睨んでいる蛍をにやにやと顎を摩り、鬼八は見下ろす。
「田中蛍!こいつは知り合いのか?」
「だから、フルネーム呼び止めろよ。知り合いも何もこっちは知りたいとも思ってないんだ」
蛍は指を指し宣言する。
「ぺんぺんを返してもらうぞ!」
「あ?ああ、あの小娘か……」
なずなが今にも泣きそうな顔で蛍達を見ている。
「ちょっと乳くせェが、ありゃいい女になるぜ……蓮華みてぇにな!」
「母さんの名前を呼ぶな!!」
蛍がそう怒鳴ると、土帝は驚いたように蛍を見る。ただ、大声に驚いたと言うより、そんな声を出すのかという感じであった。
それと同時に不吉な予感と恐怖を覚える。
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頭が痛い……蛍は、鬼八が母の名を口に出した時からそう感じた。
頭だけでなく、吐き気、眩暈、イライラ。それから、動悸。周りのものを全て破壊したい気分だった。
「自分で殺しておいて、母ちゃんが恋しいか?」
鬼八は、蛍の胸ぐらを掴む。
「あの小娘は蓮華の代わりだ。蓮華に出来なかった事、してやるよ」
そう言われた瞬間、蛍の額から角のようなモノが生え始める。
蛍は鬼八の腹を膝で蹴り上げた。
すると、鬼八は腹を抑える。
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