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すれ違うココロ side遼太
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ゆっくりと唇を離して、舌が離れる。
「ひよ」
「ん?」
今なら聞きたかった事が素直に聞ける。
「昨日学校でその、野球部の誰かに、何かされなかったか?」
ひよりの目が、泳いだ。
「あの、えと……」
明らかに答えに困ってる。確か、高橋のやつ、付き合ってくれ、って言ったとか誰かが言ってたな。
冗談じゃないぞ。でも、俯いてしまったひよをこれ以上問い詰めて、泣かしてしまったらせっかくの仲直りが台無しだ。
それ以上のことは何もなかった。そう信じよう。危ないけどな、かなり。
俺は今の立場では、ひよりを確実に自分のモノにする事はできないんだよ、ひよ。
「わかった、もう聞かないから、ひよ、顔上げて」
顔を上げたひよのピンク色の唇に、優しいキスをした。
「ねえ、遼ちゃん」
何度も何度も舌を絡めて、お互い吸って、吸われて、ゆっくりと唇を離した時、ひよが上目使いに、俺を見た。
ん? と俺が返事をすると、ひよは遠慮がちに小さな声で聞いた。
「あたし、遼ちゃんとなら、その、あの、せっく、す? っていうの、しても、いいよ……?」
耳を、疑った。ひよりの可愛い唇から出たのは、予想もしない言葉。俺は――どう応えたらいいんだ?
いつ、こんな事を覚えてきた? なんて問いは愚問だな。このくらいの年頃なら、いくらでもそんな話を仲間内でするだろう。ヘタすれば、躰で覚えるよりも耳からの情報の方が豊富になる。
いくら疎いひよりでも――それならば。一気に最後までいってしまおうか。
一瞬俺の頭をそんな考えが過り、ひよりの顔を見た。真っ直ぐに俺を見る瞳は澄んでいて、ここにいるのはいつものひより。
本当はヤりたいよ、ひよりと。今すぐにでも!
俺は、目を閉じてグッと唇を噛んでひよりを抱き締めた。強く、強く――。
「遼ちゃん、苦しいよ」
胸にあたる、柔らかいスベスベとした肌の感触。ひよりの小さめの胸の膨らみがまた気持ちが良かった。
ーーヤりたいけど。
俺、今高校生だったら良かったのにな。
同じ高校生だったらひよは俺を〝幼なじみのお兄ちゃん〟なんて思わない。同じ高校生だったらひよの〝大好き〟はそのままの〝大好き〟と受け取れるのに。
ひよの、俺に対する好き〟が特別な〝好き〟じゃないとダメなんだよ。いや、それだけじゃないな。自分の〝立場〟という壁以前に、ひよりの気持ちを確かめる勇気がないんだ。
初めてだ、こんな臆病な自分。今まで――無理矢理押し倒してヤった事なんてもちろんないけど――相手の気持ち、なんて考えた事なんてなかった。
相手の女が自分に対して本気かどうか、なんて関係ない。女がヤりたい、ヤってもいい、そう言えば迷わずヤる。そうしてきた。
ひよは、ダメなんだ。ちゃんと自分に対して本気になってくれないとこれ以上は進めない。
「ひよ」
惜しむような、ちょっと複雑な気持ちで抱き締めたひよを少しだけ離して顔を見た。変わらない可愛い顔が俺を見る。
「最後まで、っていうのは、絶対に大事な人としかしちゃダメなんだ。だから、俺は今のひよりとは出来ないんだ」
この言葉がとんでもなく間違った言い回しだった事、ひよりの表情がその時悲しく曇った事、なんて愚かな俺はまったく気付かなかった。
でも、今はまだこの気持ちは、ひよに伝えられないから。こう言うのが精いっぱいいだったんだよ。
「でも!」
これだけは言いたかった。
「俺以外の男に身体触らせたら絶対にダメ」
考えてみたら、何言ってんだ、俺。
取りようによっちゃ、最後まではしてやんないけど、他のヤツとヤるのもダメ……みたいな?
それってサイアクな男のすることだ。ひよりが突然あんな事言うからだ。
俺を見上げるつぶらな瞳は、一点の曇りもなく。
「あたしは遼ちゃん以外の人とは絶対に‘なかよし’しないよ?」
やっぱりひよはよくわかってない、んだろう。
もしかしたら、一歩踏み込むチャンスだったのかもしれない。だとしてもやっぱり、こんな形でヤっても、と、悶々と後悔の念にかられた挙句、頭の隅に追いやってあえて目を瞑っていた〝自分が教師でひよりが生徒〟という事実に改めて悩まされもした。
結局、自分の中の押し問答にこれといった解答はなく、今はヤる時ではなかったんだ、そう無理矢理自分を納得させた。
いい香りがするひよりの身体を舌で愛撫して捩る躰と、その可愛く鳴く声に本当に泣きそうなくらい我慢して耐えながら。
*
「わぁー、おばさんの手料理大好き!嬉しい!」
「ガキの好物ばっかじゃん。運動会の弁当かって」
男3人育ててきた母の料理は、豪快だ。鳥の唐揚げなんてモモ肉一枚丸ごとなんてザラ。エビフライに至っては、頭どころか足もついてて姿揚げか? っていう代物だ。……もう、言葉では言い尽くせない。
まだガキの頃、ひまりさんの作った夕食に招待された時は何故かわからないが、テーブルに着いた途端涙が出た記憶がある。
なんでかな、いや、子供心にショックを受けたんだろうな。どんなものがその食卓に出されたかは覚えていないが、きっと毎日の自分の家の食卓とのあまりの違いに悲しくなった、のかな。
そんな母の料理を嬉しそうに、おいしそうにつまむひよりを、テーブルに頬杖をつきながら見ていた。
人の好意は必ず素直に受け取り、まったく嫌味のない喜ぶ姿を見せ、周りを幸せな気持ちにさせる。それがひより。本当に可愛いと思う。
ひよりを見てる自分の顔は、にやけてるかもしれない。
この大事なひよりを悲しませるような事を、これから自分がしてしまうなんて、この時は、考えもしなかった――。
「ひよ」
「ん?」
今なら聞きたかった事が素直に聞ける。
「昨日学校でその、野球部の誰かに、何かされなかったか?」
ひよりの目が、泳いだ。
「あの、えと……」
明らかに答えに困ってる。確か、高橋のやつ、付き合ってくれ、って言ったとか誰かが言ってたな。
冗談じゃないぞ。でも、俯いてしまったひよをこれ以上問い詰めて、泣かしてしまったらせっかくの仲直りが台無しだ。
それ以上のことは何もなかった。そう信じよう。危ないけどな、かなり。
俺は今の立場では、ひよりを確実に自分のモノにする事はできないんだよ、ひよ。
「わかった、もう聞かないから、ひよ、顔上げて」
顔を上げたひよのピンク色の唇に、優しいキスをした。
「ねえ、遼ちゃん」
何度も何度も舌を絡めて、お互い吸って、吸われて、ゆっくりと唇を離した時、ひよが上目使いに、俺を見た。
ん? と俺が返事をすると、ひよは遠慮がちに小さな声で聞いた。
「あたし、遼ちゃんとなら、その、あの、せっく、す? っていうの、しても、いいよ……?」
耳を、疑った。ひよりの可愛い唇から出たのは、予想もしない言葉。俺は――どう応えたらいいんだ?
いつ、こんな事を覚えてきた? なんて問いは愚問だな。このくらいの年頃なら、いくらでもそんな話を仲間内でするだろう。ヘタすれば、躰で覚えるよりも耳からの情報の方が豊富になる。
いくら疎いひよりでも――それならば。一気に最後までいってしまおうか。
一瞬俺の頭をそんな考えが過り、ひよりの顔を見た。真っ直ぐに俺を見る瞳は澄んでいて、ここにいるのはいつものひより。
本当はヤりたいよ、ひよりと。今すぐにでも!
俺は、目を閉じてグッと唇を噛んでひよりを抱き締めた。強く、強く――。
「遼ちゃん、苦しいよ」
胸にあたる、柔らかいスベスベとした肌の感触。ひよりの小さめの胸の膨らみがまた気持ちが良かった。
ーーヤりたいけど。
俺、今高校生だったら良かったのにな。
同じ高校生だったらひよは俺を〝幼なじみのお兄ちゃん〟なんて思わない。同じ高校生だったらひよの〝大好き〟はそのままの〝大好き〟と受け取れるのに。
ひよの、俺に対する好き〟が特別な〝好き〟じゃないとダメなんだよ。いや、それだけじゃないな。自分の〝立場〟という壁以前に、ひよりの気持ちを確かめる勇気がないんだ。
初めてだ、こんな臆病な自分。今まで――無理矢理押し倒してヤった事なんてもちろんないけど――相手の気持ち、なんて考えた事なんてなかった。
相手の女が自分に対して本気かどうか、なんて関係ない。女がヤりたい、ヤってもいい、そう言えば迷わずヤる。そうしてきた。
ひよは、ダメなんだ。ちゃんと自分に対して本気になってくれないとこれ以上は進めない。
「ひよ」
惜しむような、ちょっと複雑な気持ちで抱き締めたひよを少しだけ離して顔を見た。変わらない可愛い顔が俺を見る。
「最後まで、っていうのは、絶対に大事な人としかしちゃダメなんだ。だから、俺は今のひよりとは出来ないんだ」
この言葉がとんでもなく間違った言い回しだった事、ひよりの表情がその時悲しく曇った事、なんて愚かな俺はまったく気付かなかった。
でも、今はまだこの気持ちは、ひよに伝えられないから。こう言うのが精いっぱいいだったんだよ。
「でも!」
これだけは言いたかった。
「俺以外の男に身体触らせたら絶対にダメ」
考えてみたら、何言ってんだ、俺。
取りようによっちゃ、最後まではしてやんないけど、他のヤツとヤるのもダメ……みたいな?
それってサイアクな男のすることだ。ひよりが突然あんな事言うからだ。
俺を見上げるつぶらな瞳は、一点の曇りもなく。
「あたしは遼ちゃん以外の人とは絶対に‘なかよし’しないよ?」
やっぱりひよはよくわかってない、んだろう。
もしかしたら、一歩踏み込むチャンスだったのかもしれない。だとしてもやっぱり、こんな形でヤっても、と、悶々と後悔の念にかられた挙句、頭の隅に追いやってあえて目を瞑っていた〝自分が教師でひよりが生徒〟という事実に改めて悩まされもした。
結局、自分の中の押し問答にこれといった解答はなく、今はヤる時ではなかったんだ、そう無理矢理自分を納得させた。
いい香りがするひよりの身体を舌で愛撫して捩る躰と、その可愛く鳴く声に本当に泣きそうなくらい我慢して耐えながら。
*
「わぁー、おばさんの手料理大好き!嬉しい!」
「ガキの好物ばっかじゃん。運動会の弁当かって」
男3人育ててきた母の料理は、豪快だ。鳥の唐揚げなんてモモ肉一枚丸ごとなんてザラ。エビフライに至っては、頭どころか足もついてて姿揚げか? っていう代物だ。……もう、言葉では言い尽くせない。
まだガキの頃、ひまりさんの作った夕食に招待された時は何故かわからないが、テーブルに着いた途端涙が出た記憶がある。
なんでかな、いや、子供心にショックを受けたんだろうな。どんなものがその食卓に出されたかは覚えていないが、きっと毎日の自分の家の食卓とのあまりの違いに悲しくなった、のかな。
そんな母の料理を嬉しそうに、おいしそうにつまむひよりを、テーブルに頬杖をつきながら見ていた。
人の好意は必ず素直に受け取り、まったく嫌味のない喜ぶ姿を見せ、周りを幸せな気持ちにさせる。それがひより。本当に可愛いと思う。
ひよりを見てる自分の顔は、にやけてるかもしれない。
この大事なひよりを悲しませるような事を、これから自分がしてしまうなんて、この時は、考えもしなかった――。
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