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予想外
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あたしは、怒ってます。
パパから衝撃のお話聞いたあの日、遼ちゃんにLINEでメッセージ、送りました。
でも。
上手く説明出来なくて、順番もめちゃくちゃで、伝わったかどうか分からないです。
とにかく、パパとあんな約束しちゃった遼ちゃんに怒ってるんです。
それが伝わってくれたらいいの。
遼ちゃんから、メッセージ届いてたけど、謝ってばっかりで〝どうしたらいい?〟って。
知りませんよ。そんなの。
怒ってるんだから、あたし。
遼ちゃん、あたしに会えなくても平気なの?
会いたいよ、って一言言ってくれたらいいのに!
あれから2日経ちました。
あたしと遼ちゃんは今ちょっとだけ、ギクシャクしてます。
あたしは走れないから、昼休みの中庭にも行ってなくて。
遼ちゃんのお顔、こんなに見ないのは初めてかもです。
「宮西さん、診察室へどうぞ~」
悲しくなってうつ向いた時、受付から呼ばれた。
あたしは慌ててスマホをバッグの中に入れた。
でもね。
なんとなく、分かってはいるんです。
このままじゃいけないって。
プンプンしてるままだと、引っ込みつかなくなっちゃうよ、ってあたしの中でもう一人のあたしが囁いてる。
診察室には先生と。
「こんにちは」
周りにカサブランカのお花が咲いて見えるくらい麗しい緒方さん、がいました。
結局、学校に近いこの病院に通う事にしちゃったのですが。
「緒方さん?」
初めてこの病院に河井先生に連れて来てもらってから何回か来ましたが、緒方さんはいらっしゃらなかったのだけど……
「ああ、緒方君ね」
ニコニコ福顔の先生が笑顔で説明してくれた。
緒方さん、ここでの研修は終わったのだけど、緒方さんを先生が気に入ってしまって春休みにお手伝いをお願いしているとか。
「緒方君いると女性患者さん喜ぶからなぁ。このまま医者になってうちに来てくれたらいいなぁ、という願望もーー」
「何度も申し上げてますが、僕は整形には行きませんよ」
緒方さん、ニッコリしたまま先生の言葉をバッサリ遮る。
先生「そんな事言わないで~」と緒方君に手を合わせる仕草。
あの、上下関係がおかしな事になってますよ?
「先生、宮部さんがドン引きしてますよ」
緒方さん、麗しの笑みを浮かべたまま先生に私の方を向くよう言う。
美し過ぎる笑みだけど、笑ってないです。先生、肩を竦めて「はーい」だって。
せ、先生……。
「うん。どうかな、少しは良くなったかな」
先生がどれどれ、と私の足首を持って確認した。
「なんだか、少し走ったりしてちょっと無理したとか言ってたからね。ちゃんと治しておかないと、痛みがなかなか引かない事もあるけど、まあまだ10代だもんな」
診察が始まると先生も緒方さんもカルテとレントゲンのパソコン画面みて真面目なお顔でお話しを始めた。
あたしは、ちらっと緒方さんを見た。
白衣姿で真剣なお顔の緒方さん。
あまりにもカッコよくて、直視できなくなったあたしは目を逸らしてしまった。
うつむいて顔を上げないあたしにおじさんがクックと笑った。
「そうだなぁ、緒方君はかなりのイケメンだから、やっぱり照れちゃうかぁ」
ひぇえぇえーっ!
「そ、そんなんじゃなくてぇですね!」
慌てて顔を上げたあたしは、両手を振った。緒方さんは困ったお顔で先生を軽く睨む。
「先生、余計なことは言わなくていいですよ」
「はいはい」
肩を竦めた先生はあたしの足のマッサージを始めた。
「晴れは引いたしもう大丈夫だろ。診察は今日でもう終わりでいいよ。けど、あまり無理したらいかんよ」
あたしが、はい、と答えると。
「宮部さん、今日はもう帰るのかな?」
先生に聞かれて私は首を振った。
「いえ、これから学校に戻ってーー」
言いかけてあたしは口籠った。
えっとですね。実はですね。
ほ、補講がですね、あるんですよ……。
理由は恥ずかしくて言えないので、必死に考えた。
「学校戻るのか」
「あ、はい」
とくに理由は言わなくてもいいと気付いて、明るく返事をしたら。
「緒方君、君今日車で来てたね!」
え、え?
緒方さん、え? というお顔で先生を見た。
あたしも先生が何を言い出すのか分からずにキョトンとする。
「緒方君は今日は朝から来てくれてるからね。そろそろ上がっても大丈夫だよ。それで、ついでと行っては何だが、宮部さんを学校まで乗せて行ってあげたらいい」
はい?
唐突な展開に緒方さんも呆気に取られてます。
「いやはや」
先生、楽しそうに話し出した。
「実はね、河井君がね、もし緒方君がいる時に宮部さんと一緒になったらーー、なんて話をね」
緒方さん、親指と人差し指で眉間を押さえていらっしゃいました。
先生、あたしでも分かります。
それは多分オフレコ……。
受付で会計をしていると、白衣を脱いで私服になった緒方さんがジャケット片手に出て来ました。眩しいくらいに爽やかな笑顔で。
「ひよりちゃん、玄関で待ってて。車持ってくるから」
「あ、はい。あれ」
「あ、すみませんっ!」
受付のお姉さんが、緒方さんに見惚れてお釣りを落としてチャリンチャリンと音がした。
気付けば、皆、見てます、緒方さん。
遼ちゃん、どうしよう。学校まで、緒方さんに送ってもらうことになっちゃいました。
病院からあたしの通う学校までは、路線バスで15分くらいです。車だと、もっと近いかな。
「ごめんね、あの先生、いつもあんな調子なんだ。僕の担当教授の仲間だとかで、春休み借り出されてた」
「そうだったんですね」
「この展開はまさかだけど」
「あはは……」
あたしと緒方さんは一緒に笑った。
ホントにまさかの予想外でした。
カーラジオから流れてくる、明るいDJの声と程よい音楽が間を繋げてくれる中、あたしは、ハンドル握って前を向く緒方さんの横顔をちらりと見上げた。
彫りが深くて、お鼻がスッとしていて、横顔もすごく綺麗です。
こんなに素敵な人と一緒にいたらどうしても緊張しちゃいそうだけど。
不思議なんです。緒方さんは、変に緊張しちゃうような気持ちにさせない。
この前お家まで送ってくれた時もそうだった。
気持ちを和ませてくれる雰囲気を作ってくれる。なんだか、ゆりかごの中に、いるみたいな時間を。
あっという間の時間でした。
「到着です」
緒方さん、ギアを操作してサイドブレーキかけて、にっこり。
その笑顔は、ちょっと反則技ですよ。ドキンとしちゃって、焦ったあたしは慌てて降りて。
「ひよりちゃん、バッグバッグ」
ああっ!
手ぶらで車から降りて頭を下げたあたしに、緒方さんが後ろの座席に置いてあったバッグを取って渡してくれた。
「すっ、すみませんっ」
恥ずかしいよー。
もう一度頭を下げて、ドアを閉めようとしたあたしに緒方さん、少し身を乗り出してやわらかく微笑んで言った。
「ちゃんと遼太に報告しておかないとダメだよ」
あたしは一瞬、どうしてそんなことを言ったのか分からなくて首を傾げた。
緒方さんはクスクス笑う。
「僕はそんな器用なタイプじゃないからね。ごまかしのテクニック、豊富に持ち合わせていないから」
ごまかしの……てくにっく?
あたしの頭の中をいろんなことが一気にぐるぐる。
あ、そうだ、緒方さんに会った事とか、遼ちゃんに全然話してない!
「遼太、何も言ってこないから、もしかして、と思ってた」
「言います、ちゃんと! で、でも! 別に隠していたわけじゃないんだけど」
言いそびれて、そのまま忘れちゃって。
「分かるよ。そんなことだろうな、って思ってた」
優しい笑みをみせてくれていた緒方さんは、そうだ、と何か思い出したみたいに車のダッシュボードから小さなカードを一枚取り出してボールペンで何か書き始めた。
書き終わると、それをあたしに渡して言った。
「これ、僕の名刺。裏にID書いてあるから。ひよりちゃん、遼太とのこと、誰にも相談できないでしょ。何かあったら、僕に連絡してごらん。少しは役に立てると思うよ。遼太のことは、よーく知ってるからね」
「緒方さん」
緒方さんは、あ、でも、と言ってフッと笑った。
「これは、最後の最後。本当にどうしようもないくらいにひよりちゃんが困った時の最終手段だよ。それまでは、しまっておくこと」
よく、分からなくて小首を傾げたあたしに緒方さん、優しく言った。
「遼太と何かあって話しずらくなるようなことがあっても、がんばって向き合わないとダメだってこと。そうしないと、ほんの些細なすれ違いが拗れに発展して、最悪、修復不可能な亀裂や溝になってしまうかもしれないからね。何かあった時は、我慢しないで遼太にぶつけてごらん。遼太は、そのくらいちゃんと受け止められる大きな男だから」
遼ちゃんのことを、こんなにはっきりと親友である緒方さんが褒めてくれたことが、なんだか自分のことみたいに誇らしく感じてしまって。
そうなの、遼ちゃんは、あたしをずっぽり包んでしまうくらい、大きくて。
大好きなの。
「いい顔してる」
緒方さんが、フワッと笑った。
「じゃあ、またどこかで会えたら」
緒方さんは、そう言って身を乗り出して、助手席のドアを自分で締めた。助手席側のパワーウィンドが下ろされるのと、車がゆっくり走り出すのはほぼ同時。
手を振る緒方さんに、あたしは頭を下げた。
お洒落な車が走り去って行くのをしばらく眺めていたあたしは、補講の時間を思い出して慌てて学校の中へ戻った。
この後、案外直ぐ、緒方さんに会うことになるなんて、あたしはこの時は思いもしなかった。
パパから衝撃のお話聞いたあの日、遼ちゃんにLINEでメッセージ、送りました。
でも。
上手く説明出来なくて、順番もめちゃくちゃで、伝わったかどうか分からないです。
とにかく、パパとあんな約束しちゃった遼ちゃんに怒ってるんです。
それが伝わってくれたらいいの。
遼ちゃんから、メッセージ届いてたけど、謝ってばっかりで〝どうしたらいい?〟って。
知りませんよ。そんなの。
怒ってるんだから、あたし。
遼ちゃん、あたしに会えなくても平気なの?
会いたいよ、って一言言ってくれたらいいのに!
あれから2日経ちました。
あたしと遼ちゃんは今ちょっとだけ、ギクシャクしてます。
あたしは走れないから、昼休みの中庭にも行ってなくて。
遼ちゃんのお顔、こんなに見ないのは初めてかもです。
「宮西さん、診察室へどうぞ~」
悲しくなってうつ向いた時、受付から呼ばれた。
あたしは慌ててスマホをバッグの中に入れた。
でもね。
なんとなく、分かってはいるんです。
このままじゃいけないって。
プンプンしてるままだと、引っ込みつかなくなっちゃうよ、ってあたしの中でもう一人のあたしが囁いてる。
診察室には先生と。
「こんにちは」
周りにカサブランカのお花が咲いて見えるくらい麗しい緒方さん、がいました。
結局、学校に近いこの病院に通う事にしちゃったのですが。
「緒方さん?」
初めてこの病院に河井先生に連れて来てもらってから何回か来ましたが、緒方さんはいらっしゃらなかったのだけど……
「ああ、緒方君ね」
ニコニコ福顔の先生が笑顔で説明してくれた。
緒方さん、ここでの研修は終わったのだけど、緒方さんを先生が気に入ってしまって春休みにお手伝いをお願いしているとか。
「緒方君いると女性患者さん喜ぶからなぁ。このまま医者になってうちに来てくれたらいいなぁ、という願望もーー」
「何度も申し上げてますが、僕は整形には行きませんよ」
緒方さん、ニッコリしたまま先生の言葉をバッサリ遮る。
先生「そんな事言わないで~」と緒方君に手を合わせる仕草。
あの、上下関係がおかしな事になってますよ?
「先生、宮部さんがドン引きしてますよ」
緒方さん、麗しの笑みを浮かべたまま先生に私の方を向くよう言う。
美し過ぎる笑みだけど、笑ってないです。先生、肩を竦めて「はーい」だって。
せ、先生……。
「うん。どうかな、少しは良くなったかな」
先生がどれどれ、と私の足首を持って確認した。
「なんだか、少し走ったりしてちょっと無理したとか言ってたからね。ちゃんと治しておかないと、痛みがなかなか引かない事もあるけど、まあまだ10代だもんな」
診察が始まると先生も緒方さんもカルテとレントゲンのパソコン画面みて真面目なお顔でお話しを始めた。
あたしは、ちらっと緒方さんを見た。
白衣姿で真剣なお顔の緒方さん。
あまりにもカッコよくて、直視できなくなったあたしは目を逸らしてしまった。
うつむいて顔を上げないあたしにおじさんがクックと笑った。
「そうだなぁ、緒方君はかなりのイケメンだから、やっぱり照れちゃうかぁ」
ひぇえぇえーっ!
「そ、そんなんじゃなくてぇですね!」
慌てて顔を上げたあたしは、両手を振った。緒方さんは困ったお顔で先生を軽く睨む。
「先生、余計なことは言わなくていいですよ」
「はいはい」
肩を竦めた先生はあたしの足のマッサージを始めた。
「晴れは引いたしもう大丈夫だろ。診察は今日でもう終わりでいいよ。けど、あまり無理したらいかんよ」
あたしが、はい、と答えると。
「宮部さん、今日はもう帰るのかな?」
先生に聞かれて私は首を振った。
「いえ、これから学校に戻ってーー」
言いかけてあたしは口籠った。
えっとですね。実はですね。
ほ、補講がですね、あるんですよ……。
理由は恥ずかしくて言えないので、必死に考えた。
「学校戻るのか」
「あ、はい」
とくに理由は言わなくてもいいと気付いて、明るく返事をしたら。
「緒方君、君今日車で来てたね!」
え、え?
緒方さん、え? というお顔で先生を見た。
あたしも先生が何を言い出すのか分からずにキョトンとする。
「緒方君は今日は朝から来てくれてるからね。そろそろ上がっても大丈夫だよ。それで、ついでと行っては何だが、宮部さんを学校まで乗せて行ってあげたらいい」
はい?
唐突な展開に緒方さんも呆気に取られてます。
「いやはや」
先生、楽しそうに話し出した。
「実はね、河井君がね、もし緒方君がいる時に宮部さんと一緒になったらーー、なんて話をね」
緒方さん、親指と人差し指で眉間を押さえていらっしゃいました。
先生、あたしでも分かります。
それは多分オフレコ……。
受付で会計をしていると、白衣を脱いで私服になった緒方さんがジャケット片手に出て来ました。眩しいくらいに爽やかな笑顔で。
「ひよりちゃん、玄関で待ってて。車持ってくるから」
「あ、はい。あれ」
「あ、すみませんっ!」
受付のお姉さんが、緒方さんに見惚れてお釣りを落としてチャリンチャリンと音がした。
気付けば、皆、見てます、緒方さん。
遼ちゃん、どうしよう。学校まで、緒方さんに送ってもらうことになっちゃいました。
病院からあたしの通う学校までは、路線バスで15分くらいです。車だと、もっと近いかな。
「ごめんね、あの先生、いつもあんな調子なんだ。僕の担当教授の仲間だとかで、春休み借り出されてた」
「そうだったんですね」
「この展開はまさかだけど」
「あはは……」
あたしと緒方さんは一緒に笑った。
ホントにまさかの予想外でした。
カーラジオから流れてくる、明るいDJの声と程よい音楽が間を繋げてくれる中、あたしは、ハンドル握って前を向く緒方さんの横顔をちらりと見上げた。
彫りが深くて、お鼻がスッとしていて、横顔もすごく綺麗です。
こんなに素敵な人と一緒にいたらどうしても緊張しちゃいそうだけど。
不思議なんです。緒方さんは、変に緊張しちゃうような気持ちにさせない。
この前お家まで送ってくれた時もそうだった。
気持ちを和ませてくれる雰囲気を作ってくれる。なんだか、ゆりかごの中に、いるみたいな時間を。
あっという間の時間でした。
「到着です」
緒方さん、ギアを操作してサイドブレーキかけて、にっこり。
その笑顔は、ちょっと反則技ですよ。ドキンとしちゃって、焦ったあたしは慌てて降りて。
「ひよりちゃん、バッグバッグ」
ああっ!
手ぶらで車から降りて頭を下げたあたしに、緒方さんが後ろの座席に置いてあったバッグを取って渡してくれた。
「すっ、すみませんっ」
恥ずかしいよー。
もう一度頭を下げて、ドアを閉めようとしたあたしに緒方さん、少し身を乗り出してやわらかく微笑んで言った。
「ちゃんと遼太に報告しておかないとダメだよ」
あたしは一瞬、どうしてそんなことを言ったのか分からなくて首を傾げた。
緒方さんはクスクス笑う。
「僕はそんな器用なタイプじゃないからね。ごまかしのテクニック、豊富に持ち合わせていないから」
ごまかしの……てくにっく?
あたしの頭の中をいろんなことが一気にぐるぐる。
あ、そうだ、緒方さんに会った事とか、遼ちゃんに全然話してない!
「遼太、何も言ってこないから、もしかして、と思ってた」
「言います、ちゃんと! で、でも! 別に隠していたわけじゃないんだけど」
言いそびれて、そのまま忘れちゃって。
「分かるよ。そんなことだろうな、って思ってた」
優しい笑みをみせてくれていた緒方さんは、そうだ、と何か思い出したみたいに車のダッシュボードから小さなカードを一枚取り出してボールペンで何か書き始めた。
書き終わると、それをあたしに渡して言った。
「これ、僕の名刺。裏にID書いてあるから。ひよりちゃん、遼太とのこと、誰にも相談できないでしょ。何かあったら、僕に連絡してごらん。少しは役に立てると思うよ。遼太のことは、よーく知ってるからね」
「緒方さん」
緒方さんは、あ、でも、と言ってフッと笑った。
「これは、最後の最後。本当にどうしようもないくらいにひよりちゃんが困った時の最終手段だよ。それまでは、しまっておくこと」
よく、分からなくて小首を傾げたあたしに緒方さん、優しく言った。
「遼太と何かあって話しずらくなるようなことがあっても、がんばって向き合わないとダメだってこと。そうしないと、ほんの些細なすれ違いが拗れに発展して、最悪、修復不可能な亀裂や溝になってしまうかもしれないからね。何かあった時は、我慢しないで遼太にぶつけてごらん。遼太は、そのくらいちゃんと受け止められる大きな男だから」
遼ちゃんのことを、こんなにはっきりと親友である緒方さんが褒めてくれたことが、なんだか自分のことみたいに誇らしく感じてしまって。
そうなの、遼ちゃんは、あたしをずっぽり包んでしまうくらい、大きくて。
大好きなの。
「いい顔してる」
緒方さんが、フワッと笑った。
「じゃあ、またどこかで会えたら」
緒方さんは、そう言って身を乗り出して、助手席のドアを自分で締めた。助手席側のパワーウィンドが下ろされるのと、車がゆっくり走り出すのはほぼ同時。
手を振る緒方さんに、あたしは頭を下げた。
お洒落な車が走り去って行くのをしばらく眺めていたあたしは、補講の時間を思い出して慌てて学校の中へ戻った。
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