ライラックの花が咲く頃に【完結】

深智

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献呈

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 グランドピアノを象ったアンティークオルゴールが、柔らかで繊細なピチカートの音色を奏でる。

 流麗で甘美なメロディーに乗せて、あなたが囁いた。

「Du meine Seele,du mein Herzu,――〝君は僕の魂 僕の心〟」

 優しいメロディーに乗せた囁きは、その歌の歌詞。

 甘くて低くて響きのよいあなたの声に心が溺れて、躰が痺れる。

〝君は僕の魂 君は僕の心
 僕の歓び 僕の苦しみ
 君は 僕の生きる世界
 僕がただよう天国――〟

 ドイツの作曲家、ロベルト・シューマンが愛する妻、クララ・シューマンに結婚前夜に贈ったこの歌が、あなたがわたしに贈ってくれた愛の証となった。

「わたしはずっと、あなたを待っていたのかもしれない」

 あなたの手が、頬に触れる。

 涙が零れる。

 痺れる。

 この手も、指も。

 この腕も。



「会いたかった――」
「それは、僕のセリフです」

 わたしは、手をのばした。

 あなたにもっと触れたい、あなたを包みたい、あなたを、抱きしめたい!



 でも、でも今のわたしには――!





 
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