空からのI LOVE YOU

奈津 柚亜里

文字の大きさ
23 / 35
ラスト・デート

17

しおりを挟む
「うぅ…」

文化祭の日から体調が悪い。そろそろなのかな…。

「おはよう、こよみ」

こうやって菜緒と道を歩けるのは何回あるんだろう…。今日が最後とかだったら嫌だなぁ。

いつもの昼休み。四人みんなで食べるお昼ご飯。私は食欲がなくて箸が進まない。すると矢野くんがそれに気づいて声をかけてくれる。

「あれ、こよみちゃんお腹いっぱい??」

「あ…うん。朝食べすぎちゃって」

もうそろそろ体調を誤魔化すのがキツい…。

「…な、四人でどこか行こう」

珍しくそう言ったのは明だった。大抵誘うのは菜緒か矢野くん。

「…うん、行こう。じゃあ、週末だね」

三人に色々話さないといけない。それに……これが最後かもしれないから。

「…っ。ごめ…私先生に呼ばれてた。…先、行くね」

「わかったー」


__________ジャー…

「ごほっ…ケホケホ」

本当は先生に呼ばれてなんていない。私は今トイレにいる。もう私の身体は固形物を受け付けられなくなりつつあった。

「保健室…行こう」

「あら、こよみちゃん。しんどいの?」

最近お世話になっている保健医の先生。私の病気を知っている。

「最近…病院行ってないの。実は…ご飯食べてもすぐ吐いちゃって。もうそろそろ入院だよね…でも…まだ。みんなと、一緒にいたいの…っ」

入院したらもうみんなと会うことはもうない。あるとしても私が深い眠りについた後だ。

「…今から行っといで。私が上手く誤魔化してあげるから、ね?」

「…そうします」




「こよみちゃん、元気にしてた?久しぶりね!」

元気にしてたらこんなところ来ないよ…。それは先生もわかっているみたいで、検査しようね?と私の頭を撫でた。



「…検査の結果、余命宣告したより早く死んじゃうかもしれないわ…」

わかってたよ、そんな気がしてた。私が一番分かってるよ。私のロウソクはもうあと少しなんだね。ロウソクがなくなったら…それは死が待っている。

「私としてはまだまだ学校に行ってもらいたいの。でも…医師として、それは出来ない。ごめんね…」

「いいんです、もうわかってたから。でも…今週の日曜日まで待ってください…お願いします」

頭をさげる。みんなと…思い出を作っておきたいから。

「…わかったわ。じゃあ日曜日に荷物入れ、入院は月曜日ってことにしましょうか。学校の子たちにも挨拶しなきゃだしね」

「あ…有難う…ございます」


家までの帰り道、お母さんになんといったらいいのかずっと考えてた。でも、それを伝えると案外普通で…。

「私ね、こよみが延命治療を受けないって言ったとき、すごく悲しかったけど、嬉しかったの。だって、こよみが自分の意思を私たちに言ったのって初めてだったから」

そう言ってくれたお母さんはそれに…、と付け足して

「最近楽しそうなのって明くんのおかげでしょう?」

え、なぜそれを…。
お母さんを見るとふふふ、と笑っている。年の功ってやつよ、とおかは言うけれど、本当に??

「明日、デートなんでしょ。早く寝て、明日は可愛くしていかないとね」

「うん」

…ありがとう。

最初で最後の…デートだもんね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...