アンティーク影山の住人

ひろろ

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いらっしゃいませ

老女がやって来た! ☆

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「すみません、ちょっとお尋ねします。
ここは、骨董品の引き取りをしてくれるとかって、知り合いから聞いて来てみたんですけど、そうなんですか?」


 七分袖のブルーの花柄のブラウスにレースの白いカーディガン、黒っぽいズボンを履いた小柄な老女が、入って来るなり話した。


 小さめのショルダーバッグを掛け、手には紺と白の千鳥柄のエコバッグを持っている。
 

(うわっ!買取りを希望しているのね!やっばいわぁ、私は目利きなんてできないもの!
ここは一旦預かって、お義父さんに教えてもらおう……)


 新米店主は、強張こわばった笑顔で言う。


「はい、当店は買取りをしております。
ですが、私は最近、店主になったばかりですので、鑑定に少々、お時間を頂くこともございます……よろしいでしょうか?」
 
 
「良かった、引き取ってくれるんですね。
じゃあ、これを……」


 老女は、エコバッグの中から木の箱を取り出し、レジカウンターの上に置き、蓋を開けた。


「これね、本物の銀製品の茶器セットです。
急須に湯のみ茶碗が2個ついています。

ここに刻印があるでしょう?正真正銘、本物の銀ですよ。

昔、私が嫁入り道具として実家から持ってきた物なんだけど、捨てるには惜しくてね。
誰かに使ってもらいたくて、もってきました」


 新米店主は、ルーペを取り出し確かめる。


「はい、確かに刻印があります。
買取価格をご提示するのは、明日みょうにちになっても、よろしいでしょうか?」


「いえ、いえ、引き取って下さるなら、お金はいりません。実は、先日、これを息子に捨てられていて、私が発見して拾ってきたんです。だから、これの価値がわかる方に使ってもらえたら……と思って。

だから、あげます。誰かに安く売るか、あげて下さい。それでは、お世話様でした」


 そう告げた老女は、さっさと立ち去ったから、新米店主は慌てて店の外へと追いかけて出た。


「そんな!大切な物なのに!せめて連絡先を教えて下さい!」


「私は、余命幾ばくもないんですよ。
だからね、あの茶器を大切にしてくれる方を探してもらえれば、それで満足なんです。
どうか、よろしくお願いしますね」


 そう言って老女が深いお辞儀をしたから、新米店主も深いお辞儀を返した。


 美紗子は、老女の姿が小さくなるまで見送り、店の中へと入る……。


「えっ、無い!はあ?何で?」


 レジ台の上に置いてあった木の箱が無くなっていたのだった。


「新米さん、箱ならこっちですわ」


 窓際のテーブルに木の箱があって、四人の妖精が集まっていた。


「ぎゃっ、また、出た!」


(しつこいドッキリだなぁ!新米って、私のことなのね。失礼な人!)


「新米さん、出たなんて言って、わたくし達は、幽霊じゃないわ!

まあ、そんな事よりも、この急須!
問題ありありですわよ」


 真剣な顔をしてルシェが言った。


 メイド姿のルシェは、色白の目鼻立ちハッキリクッキリで美人だが、真剣な顔は少し怖い。


「おい、新米店主!まんまと茶器を押し付けられちまったな!

これをこのまま置いておくと、この店が潰れちまうかもしれんぞ……」


「え?何?タヌ爺……さん、意味が分からない!ど、どういう事?押し付けられたって、どうしてそんな事を言うのかしら?」


 美紗子は、庄三郎のことをタヌ爺とインプットしたようだ。


「タヌ爺じゃないぞ!庄三郎だと言っておるだろう!って、この新米店主は、人の話しを聞いておらんな……」


(あの お婆さんは、悪い人には見えなかったし、銀の刻印もあったし、こちらはお金を出しているわけでもないし!
押し付けられたなんて、酷い言われようね)


「新米店主さん、この急須をよく見てごらんなさい。周りに黒いモヤが見えるでしょう?」


「はあ?柱さん、モヤなんて見えませんけど?」


「誰が柱ですかっ!私はモロブだ!」


 「あ、ごめんなさい、モロブ……。
えっと、黒いモヤなんて見えないし、高級な急須にしか見えないですけど?」


美紗子がそう答えたら、四人はコソコソ話しだした。


(あら内緒話、感じ悪いわね。もうドッキリ企画に付き合うのも疲れてきたし、そろそろ種明かしをしてもらいましょうか)



「あのぉ、もうドッキリ企画に騙された振りをするのはキツイわ。私、とっくに気づいちゃっていますから!

どこに隠しカメラがある……」



 ガタガタガタ!


 美紗子が言いかけた時に、茶器が入っている箱ごと、小刻みに揺れ動いた。


「はああぁ?箱が動いた!何これ!」




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