俺とお前、信者たち【本編完結済み/番外編更新中】

知世

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本編

態とだったのか

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[触り心地が良く軟らかい髪、知性的な美しい瞳、雪のように白い肌…。奏は響に似ているな。特に、灰色の髪と瞳が]

髪と、瞳と、肌…。

父さんが、綺麗だと褒めてくれたのは、好きだと言ってくれたのは、母さんと同じところ。

髪は染めてないし、カラコン(カラーコンタクトレンズ)もしてない。

ただ…。

痣だらけになった肌は、白さより、他の色が目立つ。

…父さんは…これを見たら、どう思うだろう。

怒る?悲しむ?落胆する?

わからない。

俺にとって、父さんは大切な人だけど…俺に関しては、何を考えているのか、よく分からない。

心も、体も、遠い。

「…寒い…」

―温もりを分けてくれる人は、ここにはいない。





…副会長の真顔は初めて見たな。

胡散臭い笑顔、にこやかな顔、優しく微笑む顔、真剣な顔、困った顔、考え込んでいる顔、苦笑した顔、宥めている顔、心配した顔、苛立っている顔、不快そうな顔、見下した顔、嘲笑う顔、蔑むような顔…意外と色んな顔を見ていたらしい。

基本的に、俺に向けられるのは、悪意や敵意がある顔だが。

副会長の顔面バリエーションが一つ追加された。

が、それどころではない。

絶体絶命だ。…残念ながら、囲まれている。

逃げ場は後ろの教室だけ。

といっても、教室に入ったら出入口を塞がれて、結局捕まる。

ここは三階だから、窓から逃げることも出来ない。

…終了時間まで当分ある。

時間稼ぎをしたところで、無駄な足掻きにしかならない。

せめて、まともな人間に捕まりたいが…そうもいかないようだ。

副会長には好意的でも、俺には害意しかない。当然だな。俺達を囲んでるのは、親衛隊だから。

しかも、親衛隊の中で一番面倒な…過激派の連中だ。

会長と会計の親衛隊だな。こいつらの顔と名前は覚えている。俺に集団リンチの制裁をしてきた奴らだ。

身元だけでなく、その他の詳細も把握済みだが。

「…雪見くん、安心してください。制裁はさせませんから」

いや、安心できねぇよ。何言ってんだ。

小声で告げられた言葉に、つい胡乱げ(うろんげ)に見てしまうのは仕方ないだろう。

敵か中立かすら分からない相手を、簡単に信じられるわけがない。俺はそんなに純粋でも能天気でもない。

副会長の囁きに、一瞬気を取られた時―

ガラッ

ぽんっ

背後で扉が開く音、そして避ける間もなく、肩を叩かれた。

「捕まえた」

『………』

数秒、その場は静まり返り、

『えぇえぇーーっ!!?』

すぐに複数人の絶叫が響いた。





「副会長、すみませんでした」

「謝らなければいけないのは、こちらです。原因は僕ですから。すみません」

鬼に捕まったのは俺だが、追われている途中で副会長が躓いた(つまずいた)為、逃げるのが遅れて囲まれたのは事実だ。

…二日連続で走らされたら、誰でも疲れる。

だから、副会長のせいではないが…。

ーいや、そもそも新歓を鬼ごっこにしたのが失敗だな。たとえ体力がある人間でも、休みなく走り続けるのは厳しい。いくら進藤に頼まれたからとはいえ、捕まれば自分の首を絞めることになる。…何で実行したんだ、生徒会(湊除く)。

「…では…お互いに落ち度があったということで、この話は終わりにしませんか」

「そうですね。謝罪の応酬を繰り返すのは無意味ですし」

頷いた副会長が、「社(やしろ)くんは…」と言葉を続ける。

「雪見くんと一日付き合いたいと言っていましたが…断らなくても大丈夫ですか?」

「社の予定に一日付き合うくらい大丈夫です」

映画と買い物と食事、時間があればボーリングもしたいと言っていたな。

疲れそうではあるが、それくらいなら問題ない。

「…そうですか。無理強いされそうになったら、すぐに逃げてください。…彼は、その、個性的な人みたいですし」

社のことを変人と評するのは憚られた(はばかられた)のか、言葉を濁して、個性的と言った。

副会長も周囲と同じように認識しているらしい。

あいつが変人なのは間違ってないが…。

「振り回されることはあっても、無理強いされることはないですよ。…社は少し変わってますが、人の嫌がることはしないので」

基本的にはな。

…あいつ天然で自由人だから、時々やらかすんだよ。悪気なく、無自覚で。

質が悪いけど、仕方ない。そういう人間だ。いちいち怒ってたら、俺の方が疲れる。

「…社くんと仲が良いんですね。同室者だからでしょうか」

「…仲が良いと言うほどでは…普通だと思います」

三年も同室だから、気心の知れた相手ではある。

社の突飛な言動に、毒気を抜かれて、思わず素で接してから、隠し事はやめた。

…素顔…というより、全裸を見られて、隠すことはなくなった、というのが正しいが。

あの時は結構驚いた。タイミング悪く、風呂上がりに遭遇し、全裸の俺を見て、「雪見には兄がいたのか。いや、双子という可能性もあるな。あとは、従兄弟や再従兄弟か」とか言い出すし、それを否定したら、「雪見が男を連れ込んでいる…」と誤解するし、大変だった。

社は相手を自分のペースに取り込むのが上手い。本人は無意識で…いや、無意識だから、癇に障らない。

計算なのかと一時は疑ったが、良くも悪くも正直者だと知り、その線はなくなった。

…何で社のこと考えてんだ。天然野郎の話は終わり終わり。

「……ますね」

「? 何ですか?」

副会長が何か呟いたが、声が小さくて聞こえなかった。

「…いえ」

浮かない顔のまま、緩く首を振る副会長を怪訝に思いつつ、本題に入る。

「副会長、俺に話があるとお聞きしましたが」

「ええ。雪見くんは生徒会のリコールを防ぐ為に動いてくれているそうですね。まともに機能してない生徒会が解散するのは当然だと思いますが…何故手助けしてくれるのですか?」

「叶先輩がリコールしたくないと言ったので。心から反省している知り合いに、最後のチャンスが与えられて、自分が出来ることだったから、手伝っているだけです」

「僕を含めて、叶くん以外の役員が、生徒会に相応しくないとしても、ですか」

「相応しくなければ、リコールされて終わりです。…何の道(どのみち)、風紀委員会に負担を掛けたまま、叶先輩一人で続けることは不可能です」

「リコール回避の為には、風紀委員会から最低条件が出されたはずです」

「生徒会長か副会長に本来の務めを果たしてもらうことです。ー失礼を承知でお尋ねしますが、副会長は放棄した執務をする気はありますか?生徒会長は当てにならないので、副会長が無理なら、リコールを受け入れるしかないんです」

「本音を言うと、現生徒会はリコールした方が良いと思っています。一人の人間に心を奪われただけで、掻き乱され、責務を放棄するような人間の集まりでは、組織として機能しなくなるのは、既に証明されましたし」

「…他人事みたいに言ってますが、副会長もその一人ですよ」

「そうですね。ーけれど、僕はもう、茶番に付き合うつもりはありませんよ」

「取り巻きになっていたのは、態とですか」

副会長は態とだったのか。腹黒いだけでなく、演技派だな。

「僕は浅慮でしたが、物好きではありません。…僕が思いを寄せている方は、素敵な人です」

「そうですか。…現生徒会はリコールすべき、というお考えは、今後も変わりませんか?」

「リコールするのは、騒動が落ち着き次第ですね。今引き継いでも、次の方々が困るでしょう。…本当は、とっくにリコールされている予定でしたが、これ以上無責任なことはしたくありません」

どうやら、俺と湊が副会長の計画を潰したらしい。

あのまま何も行動しなければ、風紀は生徒会を新歓前にリコールする手筈だった、と咲哉さんが事も無げに言っていた。

当然だな。義務を果たさない人間に権利はない。それが特権なら尚更。

「雪見くん。この度はご迷惑とお手数をお掛けしました。申し訳ございません。それと、ありがとうございます」

「いえ」

「風紀委員会に謝罪と報告をします。…僕と一緒にいると、あらぬ疑いと火種を生むかもしれないので、お先にどうぞ」

話は終わった。

副会長の厚意に従い、生徒会室の扉へ向かう。

…ああ、そうだ。個人的に聞きたいことがあった。

「副会長。俺の正体を見破れたのは、何故ですか?」

普段の俺を見慣れている彼方が太鼓判を捺したほど、変装の出来は完璧だ。

俺がへまをしたのか?だとしたら、何時・何処で。

「三年前の音楽室で見掛けました」

三年前ーあの日か。

「休日の早朝です。今日みたいに、私服でピアノを弾いていました。ただ、音楽室を出る前に変装をして、寮ではなく正門の方向へ向かってましたよ」

…母さんの命日で、墓参りに行く前、今より少しはましにピアノが弾けたから、何曲か演奏して、迎えに来てくれた彼方の車に乗ったんだった。

俺は寮の自室と風呂に入る時以外では変装を解かない。

例外は、二回だけ。三年前と、今日。

運悪く見られたのか。

「雪見くん。変装のことは口外しません。理由も聞きません。…僕自身ではなく、何も起こらなかった三年を、信じてもらえませんか」

「副会長がお喋りではないと分かってます」

メリットがなければ、誰にも口外しないはずだ。

時と場合にもよるだろうが…。

と思ったが、真摯な目で俺を見つめる副会長に、考えを改めた。

「だから、その言葉を信じます」

今はまだ、副会長を信じることはできない。

だけど、誠実な人には、誠意を示したい。


聞きたいことも、言いたいことも、なくなった。

「お先に失礼します」

今度こそ、俺はその場を立ち去った。





これにて、本編(小説)は終了です。

次から、小説未満小ネタ以上の小話になります。

…碧(副会長)編は、あと一話で終わりなので、できれば更新したいと思っていますが…碧視点が意外と難しくて、なかなか書けません…。内容は決めているんですけど…。

さて。

次回から最後まで、ずっと小話なので、クオリティーは下がりますが、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。

宜しくお願い致します。

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