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本編(小話)
奏と雪見(幸せの終わり、地獄の始まり)
しおりを挟む―願いは打ち砕かれた
悲しみが癒えていない上に、いきなり現れた祖父と叔父を名乗る親戚に戸惑う奏に、教育虐待をした(奏が二人を信用して着いてきたのは、響のアルバムを見せたから)
奏は知識欲が旺盛で、勉強は好きだが(知らないことを知り、分からないことが理解できるようになることが嬉しい)、最愛の母を亡くし、目標を失った(母に恩返しがしたい。母と自分の欲しいものを手に入れて、好きに生きたい)今、頑張る気になれなかった
「母さんの死を受け止めるまで…受け入れて、前に進めるようになるまで、待ってください。気持ちの折り合いをつける時間がほしいんです」と伝えたが、聞き入れてもらえなかった
引き取られた次の日から、帝王学を含む学問やマナーを徹底的に叩き込まれる
少しでも間違えたり失敗したら、睡眠時間を減らされたり、食事抜きにされた
時には「躾の一貫」だと称し、暴行した(奏を精神的に追い詰めることで、恐怖で支配し、従順な人間に洗脳しようとした)
度重なる暴力と暴言、教育虐待に、奏の幼い心は磨り減っていく
そうして、ある日、純粋だった奏は変わり、「世の中クソだな」と思った
権力や金に拘る汚い大人で、傲慢で強欲で醜悪な祖父と叔父はクソ、偽善者ぶってるくせに俺を叩いて興奮してる教育係もクソ、暴力を振るわれた傷だと分かっているのに「次は気を付けようね」とか言う金を握らされた医者もクソ、俺を同情するだけで自分を優しい人間だと勘違いしたり悦に浸る使用人もクソ、俺が殴られても蹴られても叩かれても、睡眠や食事すら自由にできなくても、何も起こってないと見て見ぬふりをする使用人もクソ
「ここにいたら殺される。体は無事でも、確実に心は死ぬ」そう確信した奏は、深夜になって脱走した(奏の私物は、響が遺してくれた貴重品と、アルバムだけなので、持ち出すのはリュック一つで済む)
しかし、敵だらけの屋敷からは逃げられず、捕まる
仕置き(今まで以上の暴行。もはや拷問に近い)を受け、ボロボロになった奏に、雪見は止めを刺す
ぐったりして動く気力も体力もない奏の目の前で、響のアルバムを燃やす(雪見家に置いていた写真のみならず、奏が持っていたものも全て)
燃やされる直前、火事場の馬鹿力で抵抗したが、数人に押さえつけられ、どうにもできなかった
灰になったアルバムを目にし、奏の心が遂に折れた
…俺は何で生きてるんだろう…。幸せにしたかった母さんもいなくて、夢も目標も叶えられない…。いつか父さんの跡を継ぐ為に努力しろって命令されてるけど、まず俺の父さんは誰なんだよ。どの家を継ぐんだ。…もう、どうでもいい…。俺の世界は、屑ばっかりだ…。父さんのことは何も知らないけど…母さんの葬式にすら現れなかった父さんなんて…。…もう、いい…。全部、どうでもいい…
何の支えも希望もなく、心を折られた奏は無気力になる(暴力にも暴言にも、睡眠させなくても食事を与えなくても、一切反応しなくなった)
衰弱して、緩やかに死を迎えようとする奏に、流石に焦った雪見は、奏には恐怖による支配ができないと知り、響の遺品で脅した(効果覿面)
それから奏は、抵抗することなく、学問もマナーも、ノルマのように淡々とこなした(没収されたものの、遺品は処分されていないので、それだけは守りたかった)
…どこにも逃げられない、抗う力すらない、無力な俺もクソだ
そう思いながら、鬱々とした日を過ごしていた奏の前に、要が現れる(雪見家に引き取られて三ヶ月後)
全てを監視していた神楽が、野心家ではあるが小物の雪見では奏を任せられないと判断した(最高峰の教育さえ施せたら、他は目を瞑るつもりだったが、言いなりの操り人形では意味がない)
突然父親を名乗る、絶世の美男が現れたと思ったら、妻子持ちだと告げられ、混乱する奏(表情筋が死んでいる為、分かりづらいが)
混乱しつつも、父親が自分を引き取ること、妻子が賛成しているので同じ家に住むこと、は理解した
理解すると同時に、勢いよく首を横に振った
いくら本人たち(奥さんと子供…俺の弟らしい)がいいと言ってくれたとしても、愛人の子供がお世話になるなんて、図々しいにも程がある!いや、図々しいなんてレベルじゃない!烏滸がましいだろ!何考えてんだ!
無言の奏に思い切り拒絶された要は、「決定事項だ。お前に拒否権はない」と告げ、奏の腕を掴み、その場を去ろうとした
すると、使用人を含む、雪見一家が勢揃い
要は慌てる彼らを冷たく睥睨(へいげい)し、怯える雪見に耳打ちした
睥睨…横目でじろりと睨み付けること
耳打ちされた彼は土下座をし、許しを乞うた(死人のような顔色で、必死に「お許しください!!お慈悲を…!どうか!お願い致します!」と涙ながらに頼み込んだ)
要は控えていた執事に、奏を車に乗せるよう指示した
奏の姿が消えると、要は無表情のまま、懇願する雪見の頭を踏みつけた
頭を踏まれ、額の次は頬も地面に擦り付けながら謝罪と懇願を繰り返す雪見を見下ろし、要は嗤う
「事実だろう」
「もう一度言ってやろうか。…俺の息子を随分可愛がってくれたらしいな」
「貴様ら全員同罪だ。…俺はゴミ掃除は得意なんだが…どうしてくれようか」
「…奏は生き地獄を味わったのだから、同じ目に遭わせてやろう。…安心しろ。貴様らがしてきたことを、それぞれ同じように返すだけだ」
「一人残らず別邸に連れて行け。…貴方は特別に地下室へ招待しましょう、響のお父上」
「響のみならず、奏も道具にしようとした罪、償ってもらおう」
「貴様には死すら生温い。生きて苦しめ」
要が響の死と奏の現状をすぐに把握できなかった理由
神楽の特異体質を熟知している父親が、契約を反故にするとは考えなかった(神楽の特異体質については、後日分かります)ことと、家督を継いだばかりの若輩者である要より、情報操作や隠蔽は神楽の方が上手だった
※神楽との契約は、響と奏に危害を加えないことは勿論、全ての危険から守り、緊急時であれば支援する、というもの
また、日々激務に追われ、余裕がないことも、要因の一つ(日本だけでなく、世界の表と裏を牛耳るのは、並大抵のことではない。常人であれば、とっくに過労死しているレベル。もしくは心を病む)
自分の立ち位置が安定するまで、響と奏に接触しないと決めていたのも、悪かった(中途半端な立場で会うと、二人に迷惑や危害が及び、そして要自身が離れ難くなってしまう為、二人の様子を知ることすら我慢して、必死に働いていた)
…天才だけど、色々不器用な男なんです、要は
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