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第0章 そのザマァ、本当に必要ですか?

第4話 勃発!婚約破棄事件

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(何で浮気した挙句に婚約破棄なんてするかなぁ)

 第一王子オーウェンの婚約者は自分の強力な後ろ盾であるニルゲ公爵の令嬢イーリヤである。

 王妃の肝いりで決まったイーリヤと結婚する事で、オーウェンの王位継承が盤石なものになるはずだった。

 それなのに、何をとち狂ったのか何処ぞの馬の骨とも知れぬ男爵令嬢に入れあげて、人目もはばらず浮気してしまった。

(ニルゲ嬢に何の不満があったのやら)

 第一王子オーウェン・マルトニアの婚約者イーリヤ・ニルゲ。

 才色兼備を絵に描いたような令嬢である。

(あれ程の女性はいないだろうに)

 艶やかな黒い髪、鋭く光る赤い瞳、生命力と迫力に溢れた絶世の美女。気品も所作も他者を圧倒しているが、それだけに留まらない。

 剣を握らせれば騎士科の生徒達を薙ぎ倒し、魔術を使わせれば教師陣を驚かせ、学問においては常に学年トップ。

 しかも、見た目の派手さに反して情に厚く好感の持てる人物でもある。

 容姿、才能、人柄、人望、血統……どれを取っても超一流で非の打ち所がない。

 そんな彼女を大衆の面前で、自分の浮気相手を虐めたなどと難癖をつけて婚約破棄を宣言したのだ。

 更にまずいのは、オーウェンが浮気相手と側近達を引き連れて、イーリヤを断罪しようとしたことである。

 一人の罪なき令嬢を多数で囲み暴力まで振るおうとした所業は、もはやかばいようもなくオーウェンは失脚した。

 そのせいで、国王の座がエーリックに回ってきてしまったのだ……本人は望んでいなかったのに。

(だけど、僕も王族である以上は責任から逃れられない)

 だからエーリックは立太子する……ゆくゆくは即位する覚悟はできている。

(でも、ウェルシェと別れるのだけは耐えられない!)

 ウェルシェはグロラッハ侯爵の至玉である一粒種。
 彼女の夫となる者が次のグロラッハ家当主となる。

 だから、エーリックが国王になるなら大切な一人娘との婚約解消を求めてくると予想されるのだ。

 これからエーリックはウェルシェにその相談をしようとしていた。

 いつもなら、ただただ楽しい婚約者との逢瀬の時間……しかし、これからウェルシェに告げる内容を思うと、暗澹あんたんたる気持ちにエーリックの足が重くなった。
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