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第2章 その入学、本当に必要ですか?

第19話 腹黒令嬢の親友

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 ウェルシェがマルトニア学園に通うようになって3ヶ月が過ぎた。

 学業、魔術ともに優秀な成績を収めているウェルシェの学園生活はそれなりに順調である。『それなり』と言うのは、一部の交友関係でエーリックの危惧していた事が生じていたからだ。

 ただ、別にウェルシェが他の男に惚れたわけではない。
 周りの男どもがウェルシェにアプローチし粉をかけてきたのだ。

「どうしてあの方達はしつこく誘ってこられるのかしら?」

 ウェルシェは困惑していた。

「ウェルシェは美人だし、グロラッハ侯爵家との縁は魅力的だからじゃない?」

 そう答えたのは、ウェルシェが学園で初めて作った友人のキャロル・フレンド伯爵令嬢である。

 キャロルは特別美人ではない。だが、栗毛色のくせっ毛に琥珀色の瞳を持つ彼女はとても愛嬌があって親しみやすい。

 そんな裏表の少なそうなクラスメートは最初からウェルシェに気安く接してくれたので、彼女と仲良くなるのに時間はそうかからなかった。

「ですが、私には婚約者のエーリック様がいますわ。だから、殿方のお誘いは受けられないと申し上げていますのに」

 ウェルシェは自分が結婚相手として垂涎すいぜんものであるとの自覚はあったが、それでも婚約者がいると宣言すれば言い寄られる事もないだろうと考えていた。

 だが、何故かいくら断っても諦めない者達が少なからずいるのだ。婚約者のいる令嬢を口説こうとする彼らの思考がウェルシェにはどうにも不可解でならない。

「ウェルシェほどの好条件なら、多少の無理は押しても手に入れたいって思っているんじゃない?」
「私の婚約者は第二王子のエーリック様ですよ。王家を敵に回すおつもりですか!?」

 キャロルの推測はリスクとベネフィットが釣り合わない。損得勘定と合理的思考が基本のウェルシェはいよいよ混乱した。

「それほどウェルシェが魅力的なのよ。なんせマルトニア学園3大美少女の一角なんだから」

 入学早々、ウェルシェは学園の話題を掻っ攫った。

 1年に儚げな妖精の如き絶世の美少女が入ってきたと……

 しかも、エーリックに擬態がバレるわけにもいかないので猫かぶりはそのままなのだ。

 白銀の髪をした幻想的な美少女が、優しげでふんわりした雰囲気を醸し出している。その人気が爆上がりするのは当たり前だ。

 今も男女を問わずウェルシェの人気は高騰を続けている。気づけば『妖精姫』とか『白銀の妖精』とかあだ名されていた。

 そして、不本意にもマルトニア学園3大美少女などと訳の分からない分類に組み込まれていたのだった。
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