あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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第3章 その兄弟喧嘩、本当に必要ですか?

第38話 その婚約ピンチですか?

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「王命にも等しい婚約にセギュル様がとやかく申し立てるのは不敬ではございませんの?」

 今でこそ相思相愛(という見せかけ)であるが、もとは王妃オルメリアが持ち込んだ婚約である。国王も承認している契約に茶々を入れるなどあるまじき行為だ。

「それはそうだが時として間違いを正す諫言は必要だろう」
(賢臣、忠臣を退けたお方が良く言う!)

 オーウェンの斜め上な発言に心の中でウェルシェは激しく突っ込んだ。

(それに王命に対して国王陛下ではなくエーリック様に言い掛かりをつけるのは諫言ではないでしょう)

 ずれたオーウェンの見解にウェルシェは眩暈がする。

「愛の為に命を賭して勇気ある発言をするとはケヴィンもなかなかやるな」
「恐れ入ります殿下」

 訳の分からない陶酔劇を見せられ、ウェルシェはぞわわわと鳥肌が立った。

「私はエーリック様をお慕いしておりますし、セギュル様へ想いを寄せている事実はございません!」
「ふっ、王命を畏れて真実を語れない囚われの姫よ」
「安心したまえ、君の心の内はアイリスから聞いている」

 またアイリスだ。

(何の恨みがあって私の邪魔をするの!)

「令嬢の身では言いにくいだろう。俺から婚約を解消するよう父上に進言しておこう」
「兄上、それはあまりに勝手過ぎます!」
「勝手なのはお前だエーリック」
「そうです。親の力を使って私達の仲を引き裂くなど恥ずかしいとは思わないのですか」
「すぐにグロラッハ嬢を解放するんだ」

 ――気持ち悪い

 ウェルシェは全く話が通じないオーウェン達に何とも言えない気味悪さを覚えた。
 ウェルシェは合理主義者ではあるが、世の中に理屈の通らない人間がいるのは理解している。だが、将来この国の王になる者が、その側近達が、これ程まで意思疎通が困難である事に眩暈を感じた。

「父上と母上に憚り本心を明かせぬとは憐れだな。俺から両陛下へ言上しておこう」
「ま、待ってください!」

 好き勝手に自分達の妄想でエーリックを糾弾し、勝手にウェルシェは悲劇の姫に仕立て上げられ、とんでもない捨て台詞と共にオーウェン達は去って行った。

 エーリックとウェルシェの言葉に1ミリも耳を傾ける事なく……

 憐れエーリック――何の落ち度もないのに、何故か責められ婚約者まで奪われようとしているのだった。
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