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第4章 その暗躍、本当に必要ですか?
第39話 第二王子、魂の叫び
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「僕はウェルシェが好きだ!」
エーリックの魂の叫びがグロラッハ家の庭園に響き渡った。
「控え目に言って大好きだ!!」
「そんなはっきり告白されると照れてしまいますわ」
「いったい何をやっているんですか」
エーリックの熱烈アピールにウェルシェが赤らめた頬に両手を添えて恥ずかしがり、そんなやり取りをカミラが呆れた目で見ている。
ここは二人がいつも逢引するグロラッハ家の小さな白い四阿。
下校の時間となり、エーリックは王城へと戻らずウェルシェと一緒にグロラッハ侯爵家へと訪れていた。
「だけどウェルシェは僕を好きじゃないんだ!」
「何でそうなりますの!?」
「忙しない方達ですねぇ」
嫌われたんだと絶望のエーリック、嫌ったと思われて驚愕のウェルシェ、何の茶番かと呆れ顔のカミラ。
「私がお慕いしておりますのはエーリック様だけですわ」
必死に自分の気持ちを訴えるウェルシェの態度は真摯である。もっとも、カミラには「エーリック様」の後に(の婚約で得られる特権)と副音声が聞こえていたが。
「でも、みんなウェルシェはケヴィン先輩が好きなんだって言うし……ウェルシェは僕との婚約が本当は嫌だったけど断れなかったのかなって」
「誓って私がケヴィン様をお慕いしている事実はございません!」
王家から優遇されているエーリックと利益の薄いケヴィンを比べるならば、エーリックを選ぶのが腹黒令嬢ウェルシェである。
利のない結婚はノーサンキューだ。
「でも、ケヴィン先輩は令嬢達に人気があるし……」
冗談ではない!
ケヴィンに色目を使う頭の緩い令嬢達と一緒にされるなど、ウェルシェにとって侮辱以外の何ものでもない。
「僕、自信なくなってきたよ」
「私を信じてくださいませんの?」
ウェルシェは目をうるうる潤ませて訴えた。
「だけど、みんなウェルシェは僕にもったいないって思ってるんだ」
「他の誰がどう思おうと関係ありません。私はエーリック様が良いのです」
カミラには聞こえる。
エーリック様の後に(との婚約に付随する特典)との副音声が。
「まあ、落ち着いてお茶でも召し上がってください」
「ああ、ありがとう」
だが、カミラは野暮な指摘はせず、小さな白い丸テーブルを挟んで座るお客様と主人に慣れた手付きでお茶を淹れていく。
「変わった香りのお茶だね」
ティーカップを持ち上げると少し強めの芳香がエーリックの鼻腔をくすぐった。
「これはウォルリント産なんですの」
「薔薇の香りかな?」
城の薔薇園に漂う香りを思い出して訊ねれば、ウェルシェはその通りですと頷いた。
「気に入っていただけまして?」
「うん、美味しいよ……それに、とてもホッとする」
鎮静効果のある薔薇の成分を含む茶を飲み、エーリックは幾分か落ち着きを取り戻したのだった。
エーリックの魂の叫びがグロラッハ家の庭園に響き渡った。
「控え目に言って大好きだ!!」
「そんなはっきり告白されると照れてしまいますわ」
「いったい何をやっているんですか」
エーリックの熱烈アピールにウェルシェが赤らめた頬に両手を添えて恥ずかしがり、そんなやり取りをカミラが呆れた目で見ている。
ここは二人がいつも逢引するグロラッハ家の小さな白い四阿。
下校の時間となり、エーリックは王城へと戻らずウェルシェと一緒にグロラッハ侯爵家へと訪れていた。
「だけどウェルシェは僕を好きじゃないんだ!」
「何でそうなりますの!?」
「忙しない方達ですねぇ」
嫌われたんだと絶望のエーリック、嫌ったと思われて驚愕のウェルシェ、何の茶番かと呆れ顔のカミラ。
「私がお慕いしておりますのはエーリック様だけですわ」
必死に自分の気持ちを訴えるウェルシェの態度は真摯である。もっとも、カミラには「エーリック様」の後に(の婚約で得られる特権)と副音声が聞こえていたが。
「でも、みんなウェルシェはケヴィン先輩が好きなんだって言うし……ウェルシェは僕との婚約が本当は嫌だったけど断れなかったのかなって」
「誓って私がケヴィン様をお慕いしている事実はございません!」
王家から優遇されているエーリックと利益の薄いケヴィンを比べるならば、エーリックを選ぶのが腹黒令嬢ウェルシェである。
利のない結婚はノーサンキューだ。
「でも、ケヴィン先輩は令嬢達に人気があるし……」
冗談ではない!
ケヴィンに色目を使う頭の緩い令嬢達と一緒にされるなど、ウェルシェにとって侮辱以外の何ものでもない。
「僕、自信なくなってきたよ」
「私を信じてくださいませんの?」
ウェルシェは目をうるうる潤ませて訴えた。
「だけど、みんなウェルシェは僕にもったいないって思ってるんだ」
「他の誰がどう思おうと関係ありません。私はエーリック様が良いのです」
カミラには聞こえる。
エーリック様の後に(との婚約に付随する特典)との副音声が。
「まあ、落ち着いてお茶でも召し上がってください」
「ああ、ありがとう」
だが、カミラは野暮な指摘はせず、小さな白い丸テーブルを挟んで座るお客様と主人に慣れた手付きでお茶を淹れていく。
「変わった香りのお茶だね」
ティーカップを持ち上げると少し強めの芳香がエーリックの鼻腔をくすぐった。
「これはウォルリント産なんですの」
「薔薇の香りかな?」
城の薔薇園に漂う香りを思い出して訊ねれば、ウェルシェはその通りですと頷いた。
「気に入っていただけまして?」
「うん、美味しいよ……それに、とてもホッとする」
鎮静効果のある薔薇の成分を含む茶を飲み、エーリックは幾分か落ち着きを取り戻したのだった。
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