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第4章 その暗躍、本当に必要ですか?
第40話 優秀すぎる婚約者達
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「ウォルリントとは初めて聞いたけど?」
お茶は貴族の嗜み。
王家で鍛えられたエーリックも様々なお茶をテイスティングできる。
「市場に出回っておりませんので、ご存知ないのも無理ありませんわ」
だが、カミラが用意した物はかなりマイナーで、エーリックも初めて賞味するものだった。
「こちらはイーリヤ様の商会で扱っている品なんですのよ」
「イーリヤ嬢の?」
「私はイーリヤ様とは面識はございませんが、カミラがニルゲ公爵家の侍女と懇意にしていて融通してもらっているのですわ」
カミラはニルゲ公爵家のみならず様々な貴族の家人達と繋がりを持っている。ウェルシェはカミラが構築した侍女さんネットワークを非常に重宝していた。
「お陰様で珍しい商品をいち早く教えていただいたりしております」
エーリックのカップが空になると、カミラは二杯目を注ぎジャムの入った瓶を添えた。
「新しく淹れ直しても良いのですが、濃くなった二杯目に薔薇ジャムを少しばかり加えると違った味わいを楽しめます」
エーリックは教示に従って小匙一杯のジャムを混ぜた。
「本当に素晴らしい茶葉だね」
一口含めば二杯目で苦味と渋みが増した紅茶が薔薇ジャムの甘味と混ざり合い、とても深みのある味わいとなって舌を喜ばせる。
「イーリヤ嬢が経営している商会は今や我が王国で屈指になっているんだから彼女の手腕には驚かされるよ……なのに兄上は……」
エーリックは感嘆すると同時にオーウェンを思い浮かべて嘆きが漏れてしまう。
「彼女は容姿、能力、気品、性格……どれを見ても非の打ち所がない。それなのに他の令嬢を侍らせるなんて」
アイリスの戯言が原因でウェルシェとの婚約に危機を迎えているわけだから、エーリックが愚痴りたくなるのも無理はない。
「優秀過ぎるイーリヤ様に劣等感を抱いているのかもしれませんわ」
「まあ、それに関しては分からなくてもないけど」
エーリックが自嘲気味に笑うのでウェルシェは小首を傾げた。
「エーリック様は私に劣等意識がおありなのですの?」
「だって、ウェルシェは優秀だし、学園の人気者じゃないか……それに比べて僕はウェルシェと並び立てるほど優れていないし……」
「エーリック様……」
悔しそうに顔を歪ませエーリックがテーブルの上で拳を強く握り締めた。
「私は知っています」
エーリックの拳の上にウェルシェはそっと手を重ねた。
「エーリック様はいつも学園で頑張っておられます。ご自分を鍛える努力をなさっておられます」
「だけど、それでも僕は学業も魔術もウェルシェより劣っているんだよ?」
「それが何だと言うのです」
ウェルシェは思う。
「どうして私と比較なさいますの?」
自分より優れている婚約者に劣等感を持つのは構わない。だけどオーウェンのように優越感に浸りたいが為に他の女性へ逃避するのは間違っている。
「エーリック様は入学してから徐々に成績を上げているではないですか」
それに比べてエーリックは一歩一歩先へ進もうとしている努力をウェルシェはちゃんと見ていた。
お茶は貴族の嗜み。
王家で鍛えられたエーリックも様々なお茶をテイスティングできる。
「市場に出回っておりませんので、ご存知ないのも無理ありませんわ」
だが、カミラが用意した物はかなりマイナーで、エーリックも初めて賞味するものだった。
「こちらはイーリヤ様の商会で扱っている品なんですのよ」
「イーリヤ嬢の?」
「私はイーリヤ様とは面識はございませんが、カミラがニルゲ公爵家の侍女と懇意にしていて融通してもらっているのですわ」
カミラはニルゲ公爵家のみならず様々な貴族の家人達と繋がりを持っている。ウェルシェはカミラが構築した侍女さんネットワークを非常に重宝していた。
「お陰様で珍しい商品をいち早く教えていただいたりしております」
エーリックのカップが空になると、カミラは二杯目を注ぎジャムの入った瓶を添えた。
「新しく淹れ直しても良いのですが、濃くなった二杯目に薔薇ジャムを少しばかり加えると違った味わいを楽しめます」
エーリックは教示に従って小匙一杯のジャムを混ぜた。
「本当に素晴らしい茶葉だね」
一口含めば二杯目で苦味と渋みが増した紅茶が薔薇ジャムの甘味と混ざり合い、とても深みのある味わいとなって舌を喜ばせる。
「イーリヤ嬢が経営している商会は今や我が王国で屈指になっているんだから彼女の手腕には驚かされるよ……なのに兄上は……」
エーリックは感嘆すると同時にオーウェンを思い浮かべて嘆きが漏れてしまう。
「彼女は容姿、能力、気品、性格……どれを見ても非の打ち所がない。それなのに他の令嬢を侍らせるなんて」
アイリスの戯言が原因でウェルシェとの婚約に危機を迎えているわけだから、エーリックが愚痴りたくなるのも無理はない。
「優秀過ぎるイーリヤ様に劣等感を抱いているのかもしれませんわ」
「まあ、それに関しては分からなくてもないけど」
エーリックが自嘲気味に笑うのでウェルシェは小首を傾げた。
「エーリック様は私に劣等意識がおありなのですの?」
「だって、ウェルシェは優秀だし、学園の人気者じゃないか……それに比べて僕はウェルシェと並び立てるほど優れていないし……」
「エーリック様……」
悔しそうに顔を歪ませエーリックがテーブルの上で拳を強く握り締めた。
「私は知っています」
エーリックの拳の上にウェルシェはそっと手を重ねた。
「エーリック様はいつも学園で頑張っておられます。ご自分を鍛える努力をなさっておられます」
「だけど、それでも僕は学業も魔術もウェルシェより劣っているんだよ?」
「それが何だと言うのです」
ウェルシェは思う。
「どうして私と比較なさいますの?」
自分より優れている婚約者に劣等感を持つのは構わない。だけどオーウェンのように優越感に浸りたいが為に他の女性へ逃避するのは間違っている。
「エーリック様は入学してから徐々に成績を上げているではないですか」
それに比べてエーリックは一歩一歩先へ進もうとしている努力をウェルシェはちゃんと見ていた。
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