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第4章 その暗躍、本当に必要ですか?
第41話 𠮟咤激励
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「エーリック様は確実に成長なさっておられます。昨日より今日、今日より明日、努力している限り未来のエーリック様はもっと成長していきますわ」
「ウェルシェは僕なんかで良いの?」
エーリックの縋るような目にウェルシェはにこりと笑い返した。
「『なんか』ではありません。努力を重ね続ける事はとても難しいですわ。ですから、直向きに歩み続けるエーリック様を私は尊敬しておりますわ」
これに偽りはない。確かに能力が優れているに越した事はない。だが劣っていても愚直に進もうとする者をウェルシェは嫌わない。現在の己の能力に胡座をかく者よりずっと好ましいと思う。
「そんなエーリック様をどうして嫌いになりましょう」
「ウェルシェ」
「私は本当にエーリック様だけですわよ?」
オーウェンを含め、側近達を篭絡したアイリスの手口をカミラの情報源から既に掴んでいた。
婚約者に剣に魔術に学問に家庭環境に、それぞれ原因は異なるが挫折したところに耳触りの良い言葉で堕落させているらしい。
ケヴィンも出来の良い兄と比較されて腐っていたところアイリスから「あなたはお兄さんに負けてない。あなたにも優れたところがあるから胸を張って良いんだ」みたいなセリフで堕とされたそうな。
それを聞いてウェルシェが呆れたのは言うまでもない。
「ケヴィン様みたいに女生徒達と遊蕩三昧されるような方と一緒になどなりたくありませんわ」
「僕だってケヴィン先輩なんかにウェルシェを渡したくない!」
ウェルシェの焚き付けでエーリックはやっと意思を固めた。
「だけど、介入してきた兄上はどうしよう?」
と思ったらすぐに弱気になる彼の頼りなさにウェルシェは内心でため息を吐いた。
「陛下に直談判なさいませ」
「だけど、兄上達に権力を使ったって言われてしまうよ。僕は自分の力で君を守りたいんだ」
何を生っ白いこと言ってんだ。
だいたい、オーウェンが自分達の婚約に口を出すのも第一王子の地位を乱用したものではないか。それを棚上げするオーウェンにも呆れるが、真っ直ぐ過ぎるエーリックにもウェルシェはちょっと呆れた。
「エーリック様が無闇に王族の地位を乱用しないのは美徳ですが今回ばかりは事情が違いますわ」
使えるものは何でも使うのが腹黒令嬢流。
まあ、馬鹿正直にそんな事は言わないが。
「オーウェン殿下の横暴を阻止できるのは陛下だけですわ」
「だけど……」
王家が取り決めた婚約をオーウェンの意見だけで覆される可能性は低いだろう。
「何も言わねばオーウェン殿下の言が通ってしまうかもしれませんわ。きちんとご自分の意思を表明する事の何がいけませんの?」
しかし、ここで黙っているのは得策ではない。
「そうだね、確かにその通りだ。さっそく戻って父上に言上するよ!」
エーリックは愛する婚約者の説得に重い腰を上げたのだった……
「ウェルシェは僕なんかで良いの?」
エーリックの縋るような目にウェルシェはにこりと笑い返した。
「『なんか』ではありません。努力を重ね続ける事はとても難しいですわ。ですから、直向きに歩み続けるエーリック様を私は尊敬しておりますわ」
これに偽りはない。確かに能力が優れているに越した事はない。だが劣っていても愚直に進もうとする者をウェルシェは嫌わない。現在の己の能力に胡座をかく者よりずっと好ましいと思う。
「そんなエーリック様をどうして嫌いになりましょう」
「ウェルシェ」
「私は本当にエーリック様だけですわよ?」
オーウェンを含め、側近達を篭絡したアイリスの手口をカミラの情報源から既に掴んでいた。
婚約者に剣に魔術に学問に家庭環境に、それぞれ原因は異なるが挫折したところに耳触りの良い言葉で堕落させているらしい。
ケヴィンも出来の良い兄と比較されて腐っていたところアイリスから「あなたはお兄さんに負けてない。あなたにも優れたところがあるから胸を張って良いんだ」みたいなセリフで堕とされたそうな。
それを聞いてウェルシェが呆れたのは言うまでもない。
「ケヴィン様みたいに女生徒達と遊蕩三昧されるような方と一緒になどなりたくありませんわ」
「僕だってケヴィン先輩なんかにウェルシェを渡したくない!」
ウェルシェの焚き付けでエーリックはやっと意思を固めた。
「だけど、介入してきた兄上はどうしよう?」
と思ったらすぐに弱気になる彼の頼りなさにウェルシェは内心でため息を吐いた。
「陛下に直談判なさいませ」
「だけど、兄上達に権力を使ったって言われてしまうよ。僕は自分の力で君を守りたいんだ」
何を生っ白いこと言ってんだ。
だいたい、オーウェンが自分達の婚約に口を出すのも第一王子の地位を乱用したものではないか。それを棚上げするオーウェンにも呆れるが、真っ直ぐ過ぎるエーリックにもウェルシェはちょっと呆れた。
「エーリック様が無闇に王族の地位を乱用しないのは美徳ですが今回ばかりは事情が違いますわ」
使えるものは何でも使うのが腹黒令嬢流。
まあ、馬鹿正直にそんな事は言わないが。
「オーウェン殿下の横暴を阻止できるのは陛下だけですわ」
「だけど……」
王家が取り決めた婚約をオーウェンの意見だけで覆される可能性は低いだろう。
「何も言わねばオーウェン殿下の言が通ってしまうかもしれませんわ。きちんとご自分の意思を表明する事の何がいけませんの?」
しかし、ここで黙っているのは得策ではない。
「そうだね、確かにその通りだ。さっそく戻って父上に言上するよ!」
エーリックは愛する婚約者の説得に重い腰を上げたのだった……
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