145 / 515
第三章
9.気が紛れると【3】
しおりを挟む
「顔が赤いな。少し木陰に入ろう」
ヴォルに見とれて赤面していた私なのですが、それを知りもしない彼の瞳が揺れていました。
うっ……、気を使わせてしまって申し訳ありません。俯いたまま頷いた私ですが、ヴォルは背中を軽く支えるようにエスコートしながら木の下に連れていってくれました。
「大丈夫か。久し振りに陽を浴びたからな」
「あ……そうかも、しれません……。すみません、ありがとうございます」
「問題ない」
ごめんなさい、嘘です。一人で勝手に舞い上がっているだけですから──って、そんな事を言えないのですけど。
赤くなっているであろう頬を両手で覆い、気付いてしまった自分の感情に戸惑いを隠せないでいました。
「本当に大丈夫か?」
暫くそのままでいましたが、私がいっこうに顔をあげない事を心配したのでしょうか。再度問い掛けられた──までは良かったのですが、事もあろうか顎を持ち上げられてしまいました。最近これ──あごくい──が度々ありますね。
本当にこの人、何故これほど女性の気持ちを煽るのが上手いのでしょうか。勿論、一気に真っ赤になりましたよ。今の心境で真っ直ぐこの顔を見られる程、私の心は冷静ではなかったですから。
「……メル?」
僅かに見開かれた青緑の瞳に、私の驚いたような困ったような顔が映ります。そして何故か、その顔が近付いてきました。──あ、違いますね。私のではなくヴォルの顔が、でした。
「っ?!」
思わずギュッと目を閉じてしまいます。するとピタリと額が当てられました。──ん?
ソッと薄く目を開けて見ると、ヴォルの整った顔がすぐ目の前にありました。ドキッ!あ、目が合いました。さらにドキッ!
「熱はないな」
……もぅ、本当に困ってしまいます。あ、睫毛長いですね。
混乱しすぎて、関係のない事に意識が行ってしまいました。現実逃避をしていないと、卒倒してしまいそうです。
「何をしているのですかっ」
そんな超至近距離で見つめ合っていましたら、鋭い声が飛んできました。はい、この声はベンダーツさんです。
ヴォルの頭が放れたタイミングで声の聞こえた方に視線を動かす──顎を固定されているので──と、彼の後ろから大股且つ物凄い勢いで歩み寄って来るベンダーツさんが見えました。
「休憩だ」
静かな口調でヴォルが答えましたが、ベンダーツさんは怒りオーラをバシバシ出しています。いつもはキッチリと後ろに撫で付けられている灰色の髪が乱れ、少しばかり顔にかかっています。
あら、髪型が違うと意外に若く見えますね。なんて、他人事のように見ていましたが。
「ナニをする休憩ですかっ。もう少しお立場を考えて下さいっ」
息急ききって怒鳴るように告げるベンダーツさんでした。
あれ?何だかいつもより激しいですね。元々ヴォルと顔を合わせると言い合いが始まるのですけど、今回のは何処か違うようです。
ヴォルに見とれて赤面していた私なのですが、それを知りもしない彼の瞳が揺れていました。
うっ……、気を使わせてしまって申し訳ありません。俯いたまま頷いた私ですが、ヴォルは背中を軽く支えるようにエスコートしながら木の下に連れていってくれました。
「大丈夫か。久し振りに陽を浴びたからな」
「あ……そうかも、しれません……。すみません、ありがとうございます」
「問題ない」
ごめんなさい、嘘です。一人で勝手に舞い上がっているだけですから──って、そんな事を言えないのですけど。
赤くなっているであろう頬を両手で覆い、気付いてしまった自分の感情に戸惑いを隠せないでいました。
「本当に大丈夫か?」
暫くそのままでいましたが、私がいっこうに顔をあげない事を心配したのでしょうか。再度問い掛けられた──までは良かったのですが、事もあろうか顎を持ち上げられてしまいました。最近これ──あごくい──が度々ありますね。
本当にこの人、何故これほど女性の気持ちを煽るのが上手いのでしょうか。勿論、一気に真っ赤になりましたよ。今の心境で真っ直ぐこの顔を見られる程、私の心は冷静ではなかったですから。
「……メル?」
僅かに見開かれた青緑の瞳に、私の驚いたような困ったような顔が映ります。そして何故か、その顔が近付いてきました。──あ、違いますね。私のではなくヴォルの顔が、でした。
「っ?!」
思わずギュッと目を閉じてしまいます。するとピタリと額が当てられました。──ん?
ソッと薄く目を開けて見ると、ヴォルの整った顔がすぐ目の前にありました。ドキッ!あ、目が合いました。さらにドキッ!
「熱はないな」
……もぅ、本当に困ってしまいます。あ、睫毛長いですね。
混乱しすぎて、関係のない事に意識が行ってしまいました。現実逃避をしていないと、卒倒してしまいそうです。
「何をしているのですかっ」
そんな超至近距離で見つめ合っていましたら、鋭い声が飛んできました。はい、この声はベンダーツさんです。
ヴォルの頭が放れたタイミングで声の聞こえた方に視線を動かす──顎を固定されているので──と、彼の後ろから大股且つ物凄い勢いで歩み寄って来るベンダーツさんが見えました。
「休憩だ」
静かな口調でヴォルが答えましたが、ベンダーツさんは怒りオーラをバシバシ出しています。いつもはキッチリと後ろに撫で付けられている灰色の髪が乱れ、少しばかり顔にかかっています。
あら、髪型が違うと意外に若く見えますね。なんて、他人事のように見ていましたが。
「ナニをする休憩ですかっ。もう少しお立場を考えて下さいっ」
息急ききって怒鳴るように告げるベンダーツさんでした。
あれ?何だかいつもより激しいですね。元々ヴォルと顔を合わせると言い合いが始まるのですけど、今回のは何処か違うようです。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
405
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる