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【新婚旅行編】七日目:抉らんばかりに心にぶっ刺さった好きに悶えてしまっていても、バアルはお構いなし
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広間のものよりは少し小さなシャンデリアが、寝室に淡い光を灯している。
シャンデリアは、大きな波のように緩やかなラインを持つ金で出来たいくつもの腕がそれぞれ明かりを掲げており、そこから雨粒のように透き通った水晶の飾りがキラキラと連なっている。見た目は豪華なのに上品な印象を感じるのは、やっぱり作り手のセンスによるものなんだろうか。
寝室の空気は澄んでいた。
今は俺達しかいないんだから、部屋を変えたところで賑やかさに違いなんてある訳がない。だというのに、こちらの方が不思議と静かに感じてしまう。そわそわしてしまう。バアルさんの腕の中に居るのに、何だか落ち着かない。
バアルに愛でてもらうの……そういう意味でも期待しちゃってるから、なのかな……
ご機嫌そうな横顔をぼんやり見上げていると、目が合った。途端に笑みを深めた唇が、額にちょんっと触れてくれる。
「ひゃ……っ」
すぐに離れていってしまったのに。息を呑み、大げさに肩を震わせてしまっていた俺を見て、バアルさんはますます上機嫌に口角を持ち上げている。ふわふわのお髭も一緒に笑っている。
「ぅ……」
やっぱり俺のバアルはカッコいい。カッコいいのに、とびきり可愛い。
ことあるごとに何度もその絶対的な事実を分からされては噛み締めているのに、またしても改めて実感してしまっていた。
眩しい彼の魅力にときめいていると、二人で大の字になってもまだまだ余裕な広さのベッドへと優しく下ろされた。彼が横になりやすいようにと真ん中の方へと這いずっていけば、すぐに彼も腰を下ろした。手招くまでもなく俺の方へと来てくれた。
「アオイ……」
「うん……」
広げられた腕の中へと、分厚い胸元へと抱きつけば、長い腕が優しく抱き寄せてくれる。シーツがひんやりとしていたからだろうか。ほんの少しの間しか離れていないのに、彼の温もりに包まれた瞬間、ホッと安堵の息が漏れていた。
カッターシャツ越しに柔らかな胸板に頬を寄せると、低反発のクッションとは似ているようで違う弾力を感じる。そのムニムニ感が心地よくて、香ってくるハーブの匂いが大好きで、つい擦り寄ってしまう。
擽ったかったんだろうか。頭の上からくつくつと喉の奥で笑うような声が聞こえてきた。
「あ、ごめん、バアル……擽ったかったよね?」
「いえ、お気になさらず。私の妻は誠に愛らしいなと、幸せを噛み締めておりました」
また、そんな、俺が喜んじゃうことを的確に……っ!
抉らんばかりに心にぶっ刺さった好きに悶えてしまっていても、バアルはお構いなし。それはそれは嬉しそうに微笑みながら、髪の毛を梳くように丁寧に頭を撫でてくれる。
「ですから、どうかそのお調子で。もっとこの老骨めに甘えて下さい」
「はいぃ……」
元からウィンウィンなのに。そこまで求められてしまっては、何度も頷くより他はなくて。俺は湯気でも出ていそうなくらいに熱い顔を、頼もしい筋肉のついた大胸筋に埋めていた。広い背中に腕を回して、ぎゅうぎゅうと抱きついてしまっていた。
少しして、今度はご機嫌そうな鼻歌が聞こえてきた。弾むように明るいテンポのクラシックは、彼の心情を表していそう。
小さく口ずさまれている、陽気で可愛いリズムを俺も耳で楽しむ。優しい手つきで撫でられながら、温もりに包まれながらフルコーラスまで聞き終えて、次はどの曲だろうと予想していた時だった。
「……ところでアオイ、いかがなさいますか?」
雰囲気が変わった。尋ねてきた声は、穏やかだけれども少しトーンが低い。
耳元で囁かれた訳でもない。とびきりの愛の言葉を贈ってもらえた訳でも。なのに、背筋に淡い感覚が走ってしまう。腰の辺りにちょっとだけ、独特な疼きを覚えてしまう。
「いっ、いかがって?」
シャンデリアは、大きな波のように緩やかなラインを持つ金で出来たいくつもの腕がそれぞれ明かりを掲げており、そこから雨粒のように透き通った水晶の飾りがキラキラと連なっている。見た目は豪華なのに上品な印象を感じるのは、やっぱり作り手のセンスによるものなんだろうか。
寝室の空気は澄んでいた。
今は俺達しかいないんだから、部屋を変えたところで賑やかさに違いなんてある訳がない。だというのに、こちらの方が不思議と静かに感じてしまう。そわそわしてしまう。バアルさんの腕の中に居るのに、何だか落ち着かない。
バアルに愛でてもらうの……そういう意味でも期待しちゃってるから、なのかな……
ご機嫌そうな横顔をぼんやり見上げていると、目が合った。途端に笑みを深めた唇が、額にちょんっと触れてくれる。
「ひゃ……っ」
すぐに離れていってしまったのに。息を呑み、大げさに肩を震わせてしまっていた俺を見て、バアルさんはますます上機嫌に口角を持ち上げている。ふわふわのお髭も一緒に笑っている。
「ぅ……」
やっぱり俺のバアルはカッコいい。カッコいいのに、とびきり可愛い。
ことあるごとに何度もその絶対的な事実を分からされては噛み締めているのに、またしても改めて実感してしまっていた。
眩しい彼の魅力にときめいていると、二人で大の字になってもまだまだ余裕な広さのベッドへと優しく下ろされた。彼が横になりやすいようにと真ん中の方へと這いずっていけば、すぐに彼も腰を下ろした。手招くまでもなく俺の方へと来てくれた。
「アオイ……」
「うん……」
広げられた腕の中へと、分厚い胸元へと抱きつけば、長い腕が優しく抱き寄せてくれる。シーツがひんやりとしていたからだろうか。ほんの少しの間しか離れていないのに、彼の温もりに包まれた瞬間、ホッと安堵の息が漏れていた。
カッターシャツ越しに柔らかな胸板に頬を寄せると、低反発のクッションとは似ているようで違う弾力を感じる。そのムニムニ感が心地よくて、香ってくるハーブの匂いが大好きで、つい擦り寄ってしまう。
擽ったかったんだろうか。頭の上からくつくつと喉の奥で笑うような声が聞こえてきた。
「あ、ごめん、バアル……擽ったかったよね?」
「いえ、お気になさらず。私の妻は誠に愛らしいなと、幸せを噛み締めておりました」
また、そんな、俺が喜んじゃうことを的確に……っ!
抉らんばかりに心にぶっ刺さった好きに悶えてしまっていても、バアルはお構いなし。それはそれは嬉しそうに微笑みながら、髪の毛を梳くように丁寧に頭を撫でてくれる。
「ですから、どうかそのお調子で。もっとこの老骨めに甘えて下さい」
「はいぃ……」
元からウィンウィンなのに。そこまで求められてしまっては、何度も頷くより他はなくて。俺は湯気でも出ていそうなくらいに熱い顔を、頼もしい筋肉のついた大胸筋に埋めていた。広い背中に腕を回して、ぎゅうぎゅうと抱きついてしまっていた。
少しして、今度はご機嫌そうな鼻歌が聞こえてきた。弾むように明るいテンポのクラシックは、彼の心情を表していそう。
小さく口ずさまれている、陽気で可愛いリズムを俺も耳で楽しむ。優しい手つきで撫でられながら、温もりに包まれながらフルコーラスまで聞き終えて、次はどの曲だろうと予想していた時だった。
「……ところでアオイ、いかがなさいますか?」
雰囲気が変わった。尋ねてきた声は、穏やかだけれども少しトーンが低い。
耳元で囁かれた訳でもない。とびきりの愛の言葉を贈ってもらえた訳でも。なのに、背筋に淡い感覚が走ってしまう。腰の辺りにちょっとだけ、独特な疼きを覚えてしまう。
「いっ、いかがって?」
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