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第2章
(44)ケモ耳庭師、ジェイコブさん!
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「ん~、気持ちいいねえ!」
翌朝ソフィアは早速、エリック邸の広大な庭に出ていた。エリックは出て行く直前、
「気になる植物があればジェイコブに言うといい。あいつは寡黙な奴でな…他の執さん事と共に行動をとることはほとんど無い。だが、ここの庭のことは誰より知っている。なんと言っても、うちの唯一の庭師だからな」
……だって!1人でこんなに大きな庭を世話してるって聞いてびっくりしたよ。
『久しぶりに駆け回れるわ~!』
『早く行きましょ!!ソフィア~』
エルブとアズルは中級精霊だった頃の大きさになり、ソフィアの周りを飛び回って催促する。
「うん、行こう!」
『あまり遠くに行かないようにな』
「はーい!」
スピーレは精霊さん達の様子を見てくるって森に行ったの。
《わしはここにおるからのう、もし何かあれば戻るのじゃよ?》
「うん!分かった」
〈俺もついていくぞ〉
「やったー!」
マイルさんもすっと私の傍に来たよ。一緒に行くみたい…!
私達は、真っ先に見えた噴水の所まで見て回ることにしたの。
「わぁぁ、迷路みたい!それに、赤に黄、白にピンクの花がいーっぱい!色んなところに咲いてる。綺麗だね~」
『ここでお茶でも出来そうね!』
『お花見もいいわね!』
〈おっ、見えてきたな〉
噴水にだんだん近づくと、周りも開けてきたよ。
「わぁぁ……」
さっきまで迷路みたいだったのに、ここだけ開けてる。地面には茶色、ベージュ、白のタイルが敷き詰められていて、噴水以外にも屋根付きの向かい合って休憩できる椅子とテーブルが右側奥、別の道に進めそうな植物のアーケードが左側手前にあるの。
「綺麗だね……うん?」
〈しっかり掃除されているよう…ん?〉
『さっきとまた雰囲気が変わったわ~?』
『……空気も変わったわ?』
「ソフィア様、お気をつけ下さい……」
「は、はい……」
エルブとアズル、オーヴィとマイルさんが訝しげにあたりを見回してる。
〈──誰だ!〉
あれ、敵意とは違う視線を感じる……?
「((オーヴィ、そこに誰かいるみたい))」
私は草花を指さして、オーヴィに伝える。
〈エルブ、アズル!ソフィアを守れ!〉
『『うん!』』
オーヴィは器用に整えられた草花を飛び越えて視線の先へと向かった。
しばらくして、オーヴィの唸る声が聞こえ…なくなったよ?
「((オーヴィ?))」
〈((大丈夫だ))〉
大丈夫って……?
オーヴィのあとから現れたのは、白シャツに黒ズボンに緑色のエプロン姿の男の人。20代くらいかな?褐色の肌に黒目黒髪のふわふわのショートヘアで背がすっごく高いの!
「こ、こんにちは……」
「………」
反応無し!どうしよう、何も話すことが……一応自己紹介しておこう。
「えっと、ソフィアです。お世話になってます」
「………知ってる」
……知ってた!!ってそうだよね。
〈エリックも言っていた、奴が庭師だろう〉
「……ん、そう」
この人が……ジェイコブさん!うん、本当に寡黙な人だね………ん?
「ジェイコブさん?オーヴィの言葉が分かるんですか?」
「獣人族、だから………分かる」
へぇー、ジェイコブさん獣人族なんだ!
「でも、耳とか尻尾がないよ?」
「…今は、隠してるから…………」
ジェイコブさんは人間の耳がある所に手をあてると、ひょっこり獣の耳が出てきた!
「すごい!耳が!」
ジェイコブさんは……もしかして熊さん?
〈ほう……お前は人間寄りの熊族か〉
ジェイコブさんがコクっと頷く。
「エリック様から……仕事を、頂いた……ので」
──今ここにいられる。エリックさん、いい人だな…
「ジェイコブは半年前にここに来たんですよ」
マイルさんがジェイコブさんの代わりに教えてくれた。
「へぇ!じゃあジェイコブさんはここで働いて、楽しいですか?」
「………うん。みんな、優しい………俺にも、役割が出来た……から」
花の手入れをしながら、ジェイコブさんのはにかむ笑顔。本当に楽しそう。すると、小さなハサミを取り出して赤いカーネーションみたいな花をパチンと切ったの。
「………おすそ分け」
ジェイコブさんはそう言って、私の髪にその花を付けてくれた!耳をピクピク動かしながら私に笑いかける。
「ふふっ、ありがとうございます」
「俺に、敬語…いらない」
「えっ、でも──」
『『ソフィアだけ羨ましいわぁ!』』
言葉を遮るようにエルブとアズルが私の前に出る。すると、今度は別の白い花をパチンと摘んでエルブとアズルそれぞれに渡す。
『まあ、ソフィアみたいね!』
『そうね、可愛らしいわ!』
私はちょっと照れ隠し。
その後、仲良くなったジェイコブさんと一緒に夕暮れまで庭を案内してもらったよ!本当に広くてジェイコブさんがいなかったら迷子になりそうなの!泥棒が来たときは役立ちそうだね……その間にもオーヴィがグライに逐一報告してたんだって。オーヴィ、気が利く!
「ただいま~」
《おかえり、ソフィア》
『おかえり』
「おかえり、ソフィア」
スピーレもエリックさんも帰ってきてたんだ!
「久しぶりの庭はどうだった?」
「とっても楽しかったです!」
エリックさんは満足気に私の頭を撫でる。
「ジェイコブ、今日はソフィアの面倒、ご苦労だったな」
「いえ………」
「ジェイコブさん、今日はありがとうござ……」
ジェイコブさんは怪訝そうに首を横に振る。あ、そっか。
「ジェイコブさん、本当にありがとう!今度はお庭で遊びたいな」
「ソフィア様なら、全然……歓迎」
「(あの、寡黙なジェイコブが普通に話している…!それにあんな笑顔まで……)」
エリックはジェイコブの今まで見たことない表情を浮かべているのを見て、驚きが隠せなかった。
「ソフィア、よくやったな」
「え、何の事ですか?」
ソフィアは嬉しそうなエリックの顔に、首を傾げていた。
翌朝ソフィアは早速、エリック邸の広大な庭に出ていた。エリックは出て行く直前、
「気になる植物があればジェイコブに言うといい。あいつは寡黙な奴でな…他の執さん事と共に行動をとることはほとんど無い。だが、ここの庭のことは誰より知っている。なんと言っても、うちの唯一の庭師だからな」
……だって!1人でこんなに大きな庭を世話してるって聞いてびっくりしたよ。
『久しぶりに駆け回れるわ~!』
『早く行きましょ!!ソフィア~』
エルブとアズルは中級精霊だった頃の大きさになり、ソフィアの周りを飛び回って催促する。
「うん、行こう!」
『あまり遠くに行かないようにな』
「はーい!」
スピーレは精霊さん達の様子を見てくるって森に行ったの。
《わしはここにおるからのう、もし何かあれば戻るのじゃよ?》
「うん!分かった」
〈俺もついていくぞ〉
「やったー!」
マイルさんもすっと私の傍に来たよ。一緒に行くみたい…!
私達は、真っ先に見えた噴水の所まで見て回ることにしたの。
「わぁぁ、迷路みたい!それに、赤に黄、白にピンクの花がいーっぱい!色んなところに咲いてる。綺麗だね~」
『ここでお茶でも出来そうね!』
『お花見もいいわね!』
〈おっ、見えてきたな〉
噴水にだんだん近づくと、周りも開けてきたよ。
「わぁぁ……」
さっきまで迷路みたいだったのに、ここだけ開けてる。地面には茶色、ベージュ、白のタイルが敷き詰められていて、噴水以外にも屋根付きの向かい合って休憩できる椅子とテーブルが右側奥、別の道に進めそうな植物のアーケードが左側手前にあるの。
「綺麗だね……うん?」
〈しっかり掃除されているよう…ん?〉
『さっきとまた雰囲気が変わったわ~?』
『……空気も変わったわ?』
「ソフィア様、お気をつけ下さい……」
「は、はい……」
エルブとアズル、オーヴィとマイルさんが訝しげにあたりを見回してる。
〈──誰だ!〉
あれ、敵意とは違う視線を感じる……?
「((オーヴィ、そこに誰かいるみたい))」
私は草花を指さして、オーヴィに伝える。
〈エルブ、アズル!ソフィアを守れ!〉
『『うん!』』
オーヴィは器用に整えられた草花を飛び越えて視線の先へと向かった。
しばらくして、オーヴィの唸る声が聞こえ…なくなったよ?
「((オーヴィ?))」
〈((大丈夫だ))〉
大丈夫って……?
オーヴィのあとから現れたのは、白シャツに黒ズボンに緑色のエプロン姿の男の人。20代くらいかな?褐色の肌に黒目黒髪のふわふわのショートヘアで背がすっごく高いの!
「こ、こんにちは……」
「………」
反応無し!どうしよう、何も話すことが……一応自己紹介しておこう。
「えっと、ソフィアです。お世話になってます」
「………知ってる」
……知ってた!!ってそうだよね。
〈エリックも言っていた、奴が庭師だろう〉
「……ん、そう」
この人が……ジェイコブさん!うん、本当に寡黙な人だね………ん?
「ジェイコブさん?オーヴィの言葉が分かるんですか?」
「獣人族、だから………分かる」
へぇー、ジェイコブさん獣人族なんだ!
「でも、耳とか尻尾がないよ?」
「…今は、隠してるから…………」
ジェイコブさんは人間の耳がある所に手をあてると、ひょっこり獣の耳が出てきた!
「すごい!耳が!」
ジェイコブさんは……もしかして熊さん?
〈ほう……お前は人間寄りの熊族か〉
ジェイコブさんがコクっと頷く。
「エリック様から……仕事を、頂いた……ので」
──今ここにいられる。エリックさん、いい人だな…
「ジェイコブは半年前にここに来たんですよ」
マイルさんがジェイコブさんの代わりに教えてくれた。
「へぇ!じゃあジェイコブさんはここで働いて、楽しいですか?」
「………うん。みんな、優しい………俺にも、役割が出来た……から」
花の手入れをしながら、ジェイコブさんのはにかむ笑顔。本当に楽しそう。すると、小さなハサミを取り出して赤いカーネーションみたいな花をパチンと切ったの。
「………おすそ分け」
ジェイコブさんはそう言って、私の髪にその花を付けてくれた!耳をピクピク動かしながら私に笑いかける。
「ふふっ、ありがとうございます」
「俺に、敬語…いらない」
「えっ、でも──」
『『ソフィアだけ羨ましいわぁ!』』
言葉を遮るようにエルブとアズルが私の前に出る。すると、今度は別の白い花をパチンと摘んでエルブとアズルそれぞれに渡す。
『まあ、ソフィアみたいね!』
『そうね、可愛らしいわ!』
私はちょっと照れ隠し。
その後、仲良くなったジェイコブさんと一緒に夕暮れまで庭を案内してもらったよ!本当に広くてジェイコブさんがいなかったら迷子になりそうなの!泥棒が来たときは役立ちそうだね……その間にもオーヴィがグライに逐一報告してたんだって。オーヴィ、気が利く!
「ただいま~」
《おかえり、ソフィア》
『おかえり』
「おかえり、ソフィア」
スピーレもエリックさんも帰ってきてたんだ!
「久しぶりの庭はどうだった?」
「とっても楽しかったです!」
エリックさんは満足気に私の頭を撫でる。
「ジェイコブ、今日はソフィアの面倒、ご苦労だったな」
「いえ………」
「ジェイコブさん、今日はありがとうござ……」
ジェイコブさんは怪訝そうに首を横に振る。あ、そっか。
「ジェイコブさん、本当にありがとう!今度はお庭で遊びたいな」
「ソフィア様なら、全然……歓迎」
「(あの、寡黙なジェイコブが普通に話している…!それにあんな笑顔まで……)」
エリックはジェイコブの今まで見たことない表情を浮かべているのを見て、驚きが隠せなかった。
「ソフィア、よくやったな」
「え、何の事ですか?」
ソフィアは嬉しそうなエリックの顔に、首を傾げていた。
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