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魔力も使いすぎて、頭がくらくらする。



「・・・は、は。」


乾いた笑いを溢すと、気付けば景色はセピア色から元に戻っていた。
とにかく意味が分からないし、さっき見た情報が・・・うまく処理できない。
戻ってきた教室の壁掛け時計を見ると、昼休みはあと20分残っていた。
魔法を使った時間と、こちらの時間の進み方は大体同じらしい。大きな収穫だ。

時計を見ようと振り向いた動作だけで、足元がふらつく。

「・・・やべ・・・っ、倒れそ・・・」


回復魔法は自分自身にかけてもあまり効果が出ない。
ましてや、魔力を使いすぎた今の俺はそんな力も残ってないけど。
一番近くの椅子まで何とかたどり着いて頭を抱える。
思い返されるのは、あの弧を描いた菫色の瞳だった。

何なんだ。
何だって言うんだ。



「・・・俺の何が良いっつうんだ・・・?」

「勿論、全部だよ。」


無意識に呟いた俺の言葉に返ってくるはずのない返事。
それもすぐ後ろから聞こえてきて、俺は全身から汗が吹き出てくるのが分かった。


後ろをゆっくり振り返る。
あの菫色の瞳が、また俺を捉えていた。


「・・・・・・フィンリー・・・エバ、ンズ・・・・・・」

「うわぁ、嬉しい。僕の名前知ってたんだ。でも愛称フィンと呼んで欲しいな。・・・昨日ぶりだね、アル。」

「・・・・・・っ、」


ふわりと微笑んだ顔でさえ、あまりにも美しい。
睫毛は驚く程長く、外からの日差しで影ができている。


「とりあえず、少し眠ろうね。午後はナラ先生の授業だろう?僕があとで直接先生に伝えておくよ。」

「・・・は?・・・え?な、んで、俺の時間割・・・」

「アルのことだから知ってるよ。でもまだ知りたいこともあるから教えてね、沢山。」




否定するより前に、フィンリー・エバンズが呪文を唱える。
『眠りの魔法だ』と思った頃には、もう遅かった。


俺の体は嬉しそうに笑うフィンリー・エバンズの腕の中。
そして俺は、夢の中だった。
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