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番外編 パウロの話 5

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「一先ず、お互いのことをよく知ろう」という真面目なハニルさんの提案で、僕の頸にタオルは巻き付けられたまま、自己紹介の続きが行われた。

ハニルさんは今28歳で次期領主ランドルフ様の護衛兼監視が仕事。
恋人は数年前に居たっきりで、ここ数年はいない。
番になりたい、と思うほど相性のいい相手には今まで会ったことがないらしい。僕が初めてだって!!!わぁーーー!

あと、フィードさんと友達だということを話したら、めちゃめちゃびっくりしていて「フィードが迷惑かけてないか?」「あいつ馬鹿だから嫌なことは嫌って言わないと伝わらないぞ?」なんて言ってた。フィードさんどれだけハニルさんに迷惑かけたんだろう・・・。

僕はとにかくいかにハニルさんに会いたかったのか一生懸命伝えた。毎晩あのを嗅いでいたことも。そして1秒でも早く番になりたいことも。
「成人したらすぐハニルさんと一緒に暮らしたい」と伝えると「・・・家を探しておく」と、ハニルさんの口元がニヤけたのを僕は見逃さなかった。

ガバァっと飛びつき、また首元に顔を埋めて、ぐりぐりと頭を擦り付けた。ハニルさんと会うのはこれが初めてなのに、どうしてこんなに好きが溢れちゃうんだろう。番ってみんなそうなのかな。
ジルさんは凄い。あのぽやぽやしたラピ兄さん相手じゃ、番になるまで心配できっと落ち着かなかったはずだ。「過保護がすぎる」とか、小馬鹿にしてごめんなさい。僕もこれからきっとそうなります。

「ハニルさん。ハニルさん。僕、ハニルさん大好き。早く噛んでほしい。ねぇ、試しに一回だけ。お願い。」

「・・・っ、パウロは、まだ未成年だし、噛むのは16になってからだ。お願いだから、煽らないでくれ・・・!」

「だって、僕こんなにハニルさんのこと好きで好きで・・・我慢できないぃ~!」

「ダメ、だ!番になるのは、成人まで待つ・・・からな!」

「・・・・・・・・・じゃあ、キスしてくれたら我慢する。」

「・・・はっ??!」

「だから!キス!あっ、もちろん口だよ!じゃないと、僕今日無理にでもハニルさんの頸噛むから!」

「・・・・・・・・・だ、」
「ダメって言わないで!!!僕、誰かを好きになるのも初めてなんだよ?番は・・・・・・今日は我慢するか、んむっ、」

ぶちゅっと、唇に温かい何かが当たった。「あ、ハニルさん、めちゃめちゃ興奮してる」と気付いたのは唇が重なってからで、ハニルさんの唇は少し血の味がした。我慢しすぎて唇を噛んでた・・・のかな、多分。怒られるかもしれないけど、僕は嬉しい。

ちゅ、ちゅ、と何度か唇がくっついたり、離れたりした後、パチリとハニルさんと目があった。ゆっくり僕の頭を撫でて、またちゅ、とキスをしてくれた。僕の心臓はドキドキと煩く騒ぎっぱなしだ。

「パウロ、あんまり煽られると・・・我慢できない。君を、大事にしたいんだ。分かってくれ。キスは・・・・・・良しとしよう。内緒だぞ。特に・・・ダレスには。」

「~~っ!うん!内緒にする!ハニルさん大好き!だぁいすき!!くっつくのはいいよね?ね?」

「俺の話聞いてたか・・・?俺試されてないか・・・?」

「試して・・・ない!あ、番はまだダメ・・・でも、恋人はいい?」

「・・・勿論。よろしくな、パウロ。」

「やっっったぁ!!これから沢山デートしよう!ナディル?様のお店にも行きたい!あ、僕、絵を描くのが趣味なんだけど、今度ハニルさんの絵も描かせて!妄想上のハニルさんならもういっぱい描いてあるから!はぁ~~嬉しい!大好き!!」

「落ち着け。・・・あとでおそらくランドルフ様から質問攻めにあうから・・・パウロもそのつもりで。悪い人ではないんだが・・・はぁ・・・」

「うん?わかった!ハニルさんのことも沢山知りたいし、知り合いも増やしておかなくちゃ!僕、愛想振りまくのがんばる!」

「・・・ぷはっ!愛想、か。俺の恋人はなかなか計算高いようだ。パウロのこともこれからたくさん教えてくれ。楽しみにしてる。」

ハニルさんの笑い顔・・・好き!歳上で、顔怖いけど、そんな可愛い顔で笑うんだ!
僕は顔が勝手にニコニコしていく。これからもっとハニルさんのこと知って、もっともっとハニルさんのこと好きになるんだ、きっと。そう思うだけで幸せな気持ちになる。
そんな僕の気持ちが伝わったのか、膝の上から全く降りようとしない僕の頭をゆっくり撫でるハニルさんの顔も、幸せそうだった。














「成人までは恋人、ということに落ち着いた。いずれ親戚になるな、ダレス。」

「・・・・・・騎士団に親戚はいらなかったな・・・」

「ダレスさんっ!僕の旦那様にそんな失礼なこと言わないでください!怒りますよ!」

「・・・アッハッハ!こりゃ、たまらんな!ダレス、愛しのリリーに急いで報告しに帰るといい。休みやるぞ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「リリー姉さんには僕が今日報告して帰るよ。今から一緒に行こう?ハニルさん。」

「・・・・・・分かった。行こう。」

「アハハハハハハハハ!!!!堅物のハニルも、番には甘いのか!!新しい発見だ!」

番ではありません。恋人です。」

「・・・早く番って言ってほしい。」

「パウロくんそんな顔もするんだね~、ね、ジル。ラピくんにはいつ言うの?驚くだろうね!」

「ラピ兄さんには成人して番になるまで言いません。ああ見えてしつこく聞いてきますから、絶対。」

「・・・パウロくんがそうしたいなら、そうしよう。帰りはどうすればいい?俺も一緒についていくか?」

「んーん、乗合の馬車で帰るから大丈夫。途中までハニルさんに送ってもらうし。リリー姉さんのところには2人で行きたいから、先に帰ってください。」

ジルさんはまた複雑そうな顔をしたが「分かった」と了承してくれて、ニタニタ顔のニールさんと騎士たちを連れて帰っていった。

そのあとハニルさんの言った通り、ランドルフ様の質問攻撃にあったけど、僕はハニルさんと恋人になれた喜びと番になる約束のおかげで全部ニコニコしながら答えられた。
隣に座っていたハニルさんと、後ろの方で何故か立っていたダレスさんは2人ともランドルフ様に呆れていたみたいだけど、ランドルフ様はそんな2人を気にも留めず、終始楽しそうだった。あ、もちろん膝の上には恥ずかしそうなナディル様がいたけどね。
このくらい熱々になってみせる!と僕は気合が入って、そのままの勢いでリリー姉さんにも報告を済ませた。

「パウロに振り回されて疲れた時はいつでも言ってくださいね」とリリー姉さんは言っていたけど「仕事でも振り回されなれてるので大丈夫です」とフォローにもなってない言い方でハニルさんは答えていた。


こうして成人までは恋人となった僕とハニルさんのが始まったのだった。
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