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05. それは人生はじめての
しおりを挟む解いたネクタイが引き抜かれることはなかった。
理仁はオレの額についばむようなキスを落としたと思うと、こめかみ、まぶた、頬に鼻先と、その形の良い唇で軽いリップ音と共にオレを辿っていく。その間にもプツリプツリとシャツやベストのボタンを手際良く外した理仁の手が、するりと肌を撫でてくる。
「あっ……」
腹からゆっくりと確かめるように胸まで。しっとりと汗ばんだ肌と大きく熱い手の感触に、ひくりと身体が揺れる。思わずもれた声には甘さが滲んでいて、我ながら恥ずかしくて手で口を押さえた。
昨夜抱かれたばかりの身体はまだ敏感になっていて、些細な快感すら容易く拾ってしまう。
(こういうの、はしたないって言うんだっけ……)
それとも、浅ましい?
理仁と付き合うようになってから、オレの身体はすっかり変えられてしまった。今まで知らなかった快楽を教え込まれて、もう前の自分には戻れないだろうし、なんだか得体の知れない恐怖がある。
無意識にふるりと震えたけれど、そんな事も忘れさせるように理仁のキスは止まらなかった。首筋から鎖骨をかすめて胸元をきつく吸われる。
「やぁ……っ!」
抗議の声を上げれば、少し顔を上げた理仁がペロリと口端を舐めながらこちらに視線だけを投げてくる。ふ、と笑みを見せた理仁の目は熱いほどの欲を孕んでいて。ゾクリ、と腹の奥から湧き上がる感覚に一瞬身体が震えたけれど、恐怖なのか羞恥なのか期待なのか、それとも別の何かなのか、または全てが混ざったものなのか。それすらも分からない。けれどそんな事もどうでも良くなってしまうほど、じわじわと追い詰められていく。
理仁のキスは執拗で、昨夜のセックスの名残りのように残されたキスマークをなぞり、更に証を増やしていく。
「ん……っ、あ、まって……、あっ!」
胸元から脇腹を辿ってゆるゆると背中に移動した理仁の手に背骨をなぞられて、ビクリと身体が仰け反った。
「りひと……っ、や……、だまってんの、やだぁ……っ、なんか……いって……っ」
いつもはこちらが恥ずかしくなるようなことを饒舌に語り聞かせてくる理仁が、今日はほとんど喋らないことに、小さな不安が胸に巣食う。
貧相な身体の真っ平らな胸に申し訳程度にポツリと存在する尖りを、もう片方の手でカリカリと引っ掻いたり軽く摘まれたりすると、訳が分からないくらいに気持ちがいい。この身体は、そう理仁に教え込まれた。
「あ、ひぅ……、や……だめ……だめ、りひと……っ」
泣きたくないのに、快感が過ぎて涙がこぼれる。
ボタンというボタンは全て外されて、胸も腹も曝け出されていた。
理仁の腕に腰を抱かれ、同時に胸を愛撫されたら、下腹部に熱が溜まるまであっという間だった。膝を立てた爪先にギュッと力が入るのと、理仁の口がズボンのファスナーを咥えたのはどちらが早かっただろうか。
「……っ、あ……」
我に返ったのは、胸の愛撫から解放されたと思う間もなく、流れるような動きで両足の太腿をガッチリと抱え込まれたから。逃げることなど出来ない体勢で、理仁がその口でゆっくりとファスナーを下げ、あまつさえ下着の上から存在を主張し始めたモノを咥える様を、信じられない思いで見ることしか出来なかった。
「り……ひと……」
名前を呼んだ声は自分でも情けないほどで、身体がカタカタと小さく震えてしまうのは何故だろう。
そんなオレの声に応えるように理仁はオレの顔を見上げ、咥えていたモノを離すとにこりと笑った。こんな時でもイケメンで、何やら恐ろしい。
「ここ。してあげた事なかったなと思って」
やっと喋ってくれたと思ったら、オレの足を抱えたまま器用に下着の中からペニスを取り出してキスをしてくる。
「は……、え……?」
言葉を理解する暇もなく、ぺろりと舐め上げられて先端を口に含まれた。
「うぁっ!?」
ねろりとしたその熱さと感触に、身体がビクンと跳ねる。
クプリクチュ、と熱くやわらかいものに包まれ転がされて、ぬるぬるとした熱い舌が鈴口を擽るようにして離れていったと思ったら、今度はペニスにキスを繰り返し、裏筋をれろォーと舐め上げ、再びその熱い口腔へ、ぐぷりと咥えこんでいく。
その全てがオレにとって初めての経験であることは言うまでもない。何かを考える余裕があるはずもなく、ただただ理仁に喘がされるだけだった。
「うそ……っ、や、だ……! あぅ、あ、ひ……んっ!」
理仁の些細な息遣いにさえ、身体がビクビクと反応してしまう。
過ぎる快感は恐怖にも似ていて、何がなんだか分からないまま逃げようとした腰は理仁に引き戻される。引き離そうと伸ばした手が理仁の髪をくしゃりと掴むけれど、なんの抵抗にもならなかった。
じゅぷじゅぷと、まるで抽挿しているかのような感覚に、思わず閉じようとした脚はむなしく宙を掻いた。
「は……、や、あ、だめ……、あぅ……っ」
強過ぎる刺激を逃す先を求めて、右腕は枕元のクッションに辿りついた。ギリ、と力いっぱい握るけれど、気休めにもならない。
「んぁ、あ……っ、だめ、イ……っ、はな……し……っ!」
部屋中に響く、オレの快楽にまみれた声と、淫猥な粘つくような水音。荒く乱れた2人分の呼吸音。
いつもとは違うコレも気持ちがいいのだと、頭で理解できなくてもイキそうなのは身体が理解する。
掴んだ髪ごと理仁の頭を押しやろうとすれば、ふ、と笑うような吐息が触れる。ぷは、とオレの昂ったモノから離した理仁の唇と、オレのペニスの間を、粘ついた白い体液が糸を引くように繋いだ。
理仁の口に出さずに済んだことに、ホッとする間もなかった。
「イきそう? いいよ、このまま……」
その形のいい口端にこぼれる、唾液かオレの先走りか分からないものを綺麗な親指で拭いながら、理仁が妖艶とも言える笑みさえ浮かべながら言って、ブルブルと震えて本気で泣きそうなオレの昂りを再び咥え込む。
「ひぅっ!」
ビクンッ、と大きく仰け反ったオレは、もはや泣きそうではなく本当に涙をこぼしていた。
うしろの気持ちよさとも、自慰とも違う。初めて与えられる感覚が、気持ちいいを通り越して、こわい。
「あ、や……っ、ん、んぅ、……っあ!」
ぼろぼろと涙が溢れて止まらないオレはもう、理仁にされるがまま。スーツが汚れるとか皺になるとか、そんな常識的なことさえも考えられなくなっていた。
吐精を促すようにヂュウッと吸われて、反射的に身体がビクンッと跳ねる。
「あぅっ! あ、あっ、────っ!」
目の前がチカチカする。ビクリと震えて達した瞬間は声も出せず、一瞬だけ意識がトんだ気がする。
クタリと弛緩しながら、絶頂を迎えた余韻を散らす間もなかった。
ぎしりとベッドを軋ませて、オレの身体をその四肢で閉じ込めてくる男。荒い呼吸を繰り返しながら見上げれば、きちんと着こなしたスーツを乱すことなく、けれどその目は獰猛な欲と熱を孕んだ雄のそれ。他の誰でもない、オレ自身に欲情した理仁が、そこに居る。
背徳感さえ覚えるようなこの状況に、言いようのない何かに全身を支配された気がしてゾクリと震えた。
「礼旺──」
名前を呼びながらグイとそのネクタイを緩めた理仁が、まだ呼吸が整わないオレの唇をキスで塞いだ。
「んぅ……」
ねっとりと絡んでくる舌は精液の味を纏わせていたけれど、それすらも感じられなくなるほど執拗に口腔内を蹂躙していった。
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