華燭の城

文字の大きさ
9 / 199

- 8

しおりを挟む
「お前に拒否権は無い」
 
 シュリがまだ何か言いかけるのを、ガルシアの強い声が遮った。

「お前が拒否すればこの国はどうなる?
 この程度の国、我が軍ならば……そう……一日。
 明日にはこの国は地図から消えているだろう。
 ああ、働ける男は連れ帰り捕虜として使ってやってもよいが、女、子供はいらぬ」

「国を……滅ぼすと言うのか……」

「有無を言わさず欲しい物は手に入れる。それがワシのやり方だ。
 お前が嫌だと言うなら、そうなるだろうな。
 今も一気に攻め込み、国を滅ぼし、お前を奪っても良かったのだ。
 それをわざわざこうして出向き、順立てて話しをしてやっているだけでも恩情だ。
 ああ、そうだ、言っておくが……。
 1対1で始まった国同士の争いに、他国は“不戦不介入”
 誰も手出しならぬのは、お前も知っておるはず」



 この時代、世界中で次々と国同士の戦さが勃発していた。
 そのほとんどが自国の領土拡大と労働力を狙うものだ。

 そんな終わりなき戦いが続く中、各地の小さな争いが次々と隣国を巻き込み、世界の大戦にまで発展させぬようにと自然発生的に決まっていたのがこの“不戦不介入”の暗黙の掟。言わば不文律だった。


「この戦、誰も助けてはくれぬぞ?
 それ以前に、我が大国が相手と知って刃向かおうと言う馬鹿な国も無いだろうがな。
 なぁ、シュリよ、利口になれ。
 大人しくワシについて来れば、この国も、家族である国王一家も、そして自国の民も全て今まで通り。
 いや、今まで以上に平和に暮らせる。
 包囲され、大砲を向けられた事さえも、今なら何も知らずに済むのだ。
 だが、お前が自分可愛さに拒否すれば……」

 ガルシアは感情の無い冷めた薄い目で、床に散らばる砕けたガラスの破片を見つめ、そして侍従達の後ろ……かばわれるように隠されるジーナをジロリと見た。
 
「見たところ、この国にはもう一人皇子がいるではないか。
 お前がどうしても嫌だと言うなら、そこの弟皇子でも構わんぞ?
 さぁ、どうする。お前の気持ち一つだ」

 自分の名を呼ばれ、驚いたように顔を上げたジーナは、無意識に小さく首を振る。
 その幼い手は、しっかりと母親のドレスの端を握り締めていた。


「ジーナ様! ヤツを見てはなりません!」
 ジルが自らの背で、ガルシアの視線からジーナを遮る。

「やめろ……! 弟は病気だ! 絶対に手を出すな……!」

「そうか、ならば話は決まりだ。すぐに出発する、用意をして来い。
 見送りは要らん。
 全員ここで、おとなしくしていろ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

少年達は吊るされた姿で甘く残酷に躾けられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...