刻印

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 頸動脈に触れ、匠の確かな脈動を感じながら、胸の中央を真っ直ぐに切り裂いた傷へと下りて行く。
 その上を指がなぞり、後を追うように浅葱の舌が這った。

「ん……っ…………!」
 
 上体を支えていた腕が震え、力が入らなくなっていた。
 ベッドの端に腰を掛けた状態のまま、浅葱の圧に負け、押し倒されるようにして体を横たえた。

 背中の傷の痛みに思わず「ンッ……」と呻いたが、浅葱は少しも動じる様子がない。
 隣に座り、匠の体の横に手を付くと、腰下に腕を差し入れ、匠をベッドの中央へと移動させる。
 そのまま覆い被さり、匠の胸で唇を動かしていった。


 匠の体を包んでいたタオルを大きくはだけさせると、そこには、しなやかな肉体があった。
 まだ消えない無残な傷痕さえ、その体を美しく引き立たせる飾りのように見える。
 その一つ一つを確認するように、浅葱の舌が動く。

「……ぁっ……ん……っっっ……!」

 胸の先端に舌が触れ、噛まれると、傷の痛みなのか、唇の感覚なのか……匠は思わず声を漏らしていた。
 浅葱はその反応を見つめながら、匠の体をわずかに横にし、脇腹にまで伸びた龍の刻印に唇をつけた。

「……んっ! ……ぁぁっ……や……っ……!」
 反射的に匠が拒否の声をあげる。


 だが、浅葱は止めなかった。
 これが……匠の龍……。

 指がそっとなぞっていく。
 いたわるように、愛しむように……そして悔やむように触れた後、その龍さえも凌駕しようと、浅葱は掌で、そして舌で覆った。
 その刻印は、滑らかな匠の肌とは思えないほど、異様な質感をもっていた。

 これは浅葱自身の戦いでもあった。
 これが匠の……愛しい者の体なら……俺は、全てを受け入れる……。


「……っ……や…………。……いやだ……」

 匠は自分の刻印を……あのおぞましい傷の上を、浅葱の舌が這っている。そう思うだけで体が震えた。

「いやだ……や……め……! 見ないで……!」
 思わず脇腹の傷を隠すように腕を回した。

「……手を退けろ」
 浅葱の声がした。

「いや……だ……」

 匠が首を振ると、浅葱は匠の両腕を無理矢理に掴み、グイと持ち上げる。

「……痛っ……!!」
 
 匠が呻いても、浅葱の手は緩まず、掴んだ腕をそのまま頭の上まで持ち上げ、側にあったタオルで両手首を一つに縛った。


「……な……っ……、、
 ……いやっ! ……やめっ!!」

「じっとしてろ!」

 手首を頭の上で縛られ、無防備に体を曝け出す姿は、鎖で両手を縛られていた時を思い出させた。
 ドンと頭の上に腕を組み伏され、思わずその痛みと、蘇る恐怖とで顔を逸らす。

「……いやだ……!
 やめ……っ……!!」

 だがその願いは聞き入れられない。
 手首を縛られたまま、体をわずかに傾けられ、再び龍に唇を落とされた。

「ぁあ……! んぁっ……!」

 片膝を立て、体を仰け反らせる。
 背中の傷が擦られ、疼いた。

 腰にかかっていたタオルが落ち、浅葱の目の前に匠の肢体が曝け出される。
 その体は地下室での凄惨な日々を、そのまま物語っていた。

 あの男が……ハルが、この体を抱きボロボロにした……。
 こんなになるまで、匠の体を弄んだ……。
 そう思うだけで、言いようの無い悔しさと苛立ちが込み上げ、浅葱は唇を噛んだ。
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