143 / 232
-142(改)
しおりを挟む
「来週か……。思ったより早かったな」
「ああ。向こうも一刻も早く……そう思ってんだろ。
匠が少しでも弱ってるうちに……ってな。
一週間でどれほどの罠を張って来るのかは知らねぇが……、
いつになるにしても、匠と流には話さねぇとな」
「……わかった」
「じゃあ、もう匠のとこに戻ってやれ。
目を覚ました時に、お前が側にいないと不安になる」
「匠は今、俺の部屋だ」
「了解した。匠が起きたら様子を見に行くよ」
匠が目を覚ました時には、もう夜が明けようとしていた。
10時間近く眠っていた事になる。
目の前には浅葱の姿があった。
まだ腕枕をしたままで、浅葱の腕はしっかりと自分を守るように抱いてくれている。
匠は身動きもせず、じっとその浅葱の顔を見つめていた。
「何かついてるか?」
いきなり浅葱の声がして、匠はクスリと笑った。
「やっぱり、起きてたんですね……。
腕枕……ありがとうございます。
痛くないですか……?」
「俺を誰だと思ってる……」
その言葉に匠はなぜか嬉しくなる。
「……はい……」
抱きついていた腕に、精一杯の力を込めた。
「ん? 何だ……? おかしなヤツだな……」
そう言う浅葱の声も優しかった。
目を閉じたまま話す浅葱のその唇を、自分から奪ってみたい衝動に駆られ、そっと体を伸ばそうとした時だった。
左腕に激痛が襲った。
「……ンッッ!!」
甘い時間は一気に現実へと戻される。
「ァッ……クッ……ンンッッ……っ!!」
思わず声をあげ、腕を押さえ、痛みが引くのを待つが、それは一向に治まらない。
痛みは体中に広がり、呼応した背中がズキズキと痛み始める。
「ンンっ!! ……ンンァアアッッ! ……!!」
「匠!……匠……!!」
いきなり苦しみ始めた匠を、浅葱は思わず抱きしめた。
「あ……あさぎ……さ……」
しかし、その痛みは治まる事なく匠を襲い続ける。
「待ってろ。オヤジを呼んで来る!」
そう言って浅葱はリビングへと向った。
深月は珍しく早朝から目を覚ましていた。
昨日、あのまま会えなかった匠の事も気になり、ゆっくり眠れたとは言い難い体の怠さがある。
ベッドでゴロゴロしていても気持ちが落ち着かず、一人起き出し、リビングに続くキッチンで水を飲もうとしていた時だった。
浅葱が入って来たのを見て、
「おはようございます」
と声を掛けた。
だが、それに返す事も無く、
「オヤジは!?」
と聞く浅葱の声が急を要していた。
「おやっさんは、まだここには……。
匠さん!? 匠さん、どうかしたんですか!?」
そう聞いた時には、浅葱はもうオヤジの部屋へ向かっていた。
その後を深月も追いかける。
乱暴に置いたコップが、シンクでカラカラと音を立てた。
オヤジの部屋の前でノックをし、
「オヤジ、起きてるか? 匠を診てやってくれ」
早口でそう声を掛けると、扉はすぐに開いた。
「朝早くからすまない……匠が……」
言い掛ける浅葱の肩をオヤジはポンと叩く。
深月の前を行く二人は、匠の部屋を通り過ぎ、浅葱の部屋へと入って行った。
え……浅葱さんの……部屋……?
……なんで……?
訝しみながら、深月も二人に続いて浅葱の部屋に入った。
そこには浅葱のベッドで苦しむ匠の姿があった。
「ああ。向こうも一刻も早く……そう思ってんだろ。
匠が少しでも弱ってるうちに……ってな。
一週間でどれほどの罠を張って来るのかは知らねぇが……、
いつになるにしても、匠と流には話さねぇとな」
「……わかった」
「じゃあ、もう匠のとこに戻ってやれ。
目を覚ました時に、お前が側にいないと不安になる」
「匠は今、俺の部屋だ」
「了解した。匠が起きたら様子を見に行くよ」
匠が目を覚ました時には、もう夜が明けようとしていた。
10時間近く眠っていた事になる。
目の前には浅葱の姿があった。
まだ腕枕をしたままで、浅葱の腕はしっかりと自分を守るように抱いてくれている。
匠は身動きもせず、じっとその浅葱の顔を見つめていた。
「何かついてるか?」
いきなり浅葱の声がして、匠はクスリと笑った。
「やっぱり、起きてたんですね……。
腕枕……ありがとうございます。
痛くないですか……?」
「俺を誰だと思ってる……」
その言葉に匠はなぜか嬉しくなる。
「……はい……」
抱きついていた腕に、精一杯の力を込めた。
「ん? 何だ……? おかしなヤツだな……」
そう言う浅葱の声も優しかった。
目を閉じたまま話す浅葱のその唇を、自分から奪ってみたい衝動に駆られ、そっと体を伸ばそうとした時だった。
左腕に激痛が襲った。
「……ンッッ!!」
甘い時間は一気に現実へと戻される。
「ァッ……クッ……ンンッッ……っ!!」
思わず声をあげ、腕を押さえ、痛みが引くのを待つが、それは一向に治まらない。
痛みは体中に広がり、呼応した背中がズキズキと痛み始める。
「ンンっ!! ……ンンァアアッッ! ……!!」
「匠!……匠……!!」
いきなり苦しみ始めた匠を、浅葱は思わず抱きしめた。
「あ……あさぎ……さ……」
しかし、その痛みは治まる事なく匠を襲い続ける。
「待ってろ。オヤジを呼んで来る!」
そう言って浅葱はリビングへと向った。
深月は珍しく早朝から目を覚ましていた。
昨日、あのまま会えなかった匠の事も気になり、ゆっくり眠れたとは言い難い体の怠さがある。
ベッドでゴロゴロしていても気持ちが落ち着かず、一人起き出し、リビングに続くキッチンで水を飲もうとしていた時だった。
浅葱が入って来たのを見て、
「おはようございます」
と声を掛けた。
だが、それに返す事も無く、
「オヤジは!?」
と聞く浅葱の声が急を要していた。
「おやっさんは、まだここには……。
匠さん!? 匠さん、どうかしたんですか!?」
そう聞いた時には、浅葱はもうオヤジの部屋へ向かっていた。
その後を深月も追いかける。
乱暴に置いたコップが、シンクでカラカラと音を立てた。
オヤジの部屋の前でノックをし、
「オヤジ、起きてるか? 匠を診てやってくれ」
早口でそう声を掛けると、扉はすぐに開いた。
「朝早くからすまない……匠が……」
言い掛ける浅葱の肩をオヤジはポンと叩く。
深月の前を行く二人は、匠の部屋を通り過ぎ、浅葱の部屋へと入って行った。
え……浅葱さんの……部屋……?
……なんで……?
訝しみながら、深月も二人に続いて浅葱の部屋に入った。
そこには浅葱のベッドで苦しむ匠の姿があった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
118
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる