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「お前が持っていろ、ジンの形見だ」
そう言う浅葱に、ハルが手を差し返す。
「……いや。
見せてもらえただけで十分だ」
浅葱にタグを返すと、ハルは匠の方を振り返った。
ベッドの上でまだ苦しそうに息をしながら、匠もハルの方を見ていた。
二人の視線が合うと、ハルは匠の瞳を見つめたままスッと手を伸ばした。
その行動に驚いたのは深月だ。
「や……やめろ!
まだ何かするつもりなのか!
匠さんにそれ以上触るな! やめろ!」
声を上げ叫ぶが、ハルに深月の声は届いていない。
そのまま手を伸ばし、匠の頬に両手をあてがい、包むように触れた後、その体を強く抱き締めた。
背中に回した手が、自ら灼き付けた刻印を確かめるように、ゆっくりとなぞり始める。
「……ンッ……」
今まで何度も何度も、文字通り体に刻み込まれ、繰り返されたハルの手の感覚。
匠は、発作を起こし声を上げそうになるその感覚に息を詰め、強く目を閉じ体を硬くする。
浅葱もピクリと反応し眉を顰めた。
咄嗟に伸ばしかけた手を握り留め、ハルの行動の真意を見極めるためにクッと唇を嚙む。
その浅葱の気で、静穏を取り戻しつつあった部屋の空気が、一瞬にしてピンと張り詰める。
「ジンと同じ瞳……。
……愛しいタクミ……、、、、、」
匠を強く引き寄せ、その刻印を抱いたまま、耳元で囁くようなハルの声がした。
だが、その最後の言葉は、周囲には聞こえはしなかった。
「……行きましょう……」
ハルは腕を解くと匠に背を向け、側に来ていたオヤジに向き直る。
「……ああ、行こうか」
ハルを先に歩かせ、その後にオヤジが続く。
ベッドから降り、歩きはじめたハルの姿は、匠の目ではすぐに追えなくなった。
ハルが見えなくなると、匠は浅葱へと視線を向けた。
その浅葱の顔もハッキリとは見えない。
だが、匠は辛そうな浅葱の横顔を見たような気がした。
ハルはそのまま、何の抵抗もする事なく、部屋を出て行った。
静かに扉が閉められ、ハルの気が部屋から消えた途端、張り詰めていた緊張の糸が切れたように、匠は小さく呻き、前のめりにベッドへ倒れ込んだ。
「匠……! 匠!」
浅葱がぐったりとする匠を抱き起こす。
素早くネクタイを外し、刺されている左腕の止血を行うと、自分の上着を脱ぎ、匠の肩に掛けた。
「よく頑張ったな、匠……」
その声に、苦しさに耐えながら匠が頷く。
浅葱の両腕がしっかりと匠を抱きしめると、
「浅……葱さん……」
匠は右手をその腕に重ねるようにして体を預け、安心したように目を閉じた。
「よかった……」
深月が安堵の声を漏らした。
そう言う浅葱に、ハルが手を差し返す。
「……いや。
見せてもらえただけで十分だ」
浅葱にタグを返すと、ハルは匠の方を振り返った。
ベッドの上でまだ苦しそうに息をしながら、匠もハルの方を見ていた。
二人の視線が合うと、ハルは匠の瞳を見つめたままスッと手を伸ばした。
その行動に驚いたのは深月だ。
「や……やめろ!
まだ何かするつもりなのか!
匠さんにそれ以上触るな! やめろ!」
声を上げ叫ぶが、ハルに深月の声は届いていない。
そのまま手を伸ばし、匠の頬に両手をあてがい、包むように触れた後、その体を強く抱き締めた。
背中に回した手が、自ら灼き付けた刻印を確かめるように、ゆっくりとなぞり始める。
「……ンッ……」
今まで何度も何度も、文字通り体に刻み込まれ、繰り返されたハルの手の感覚。
匠は、発作を起こし声を上げそうになるその感覚に息を詰め、強く目を閉じ体を硬くする。
浅葱もピクリと反応し眉を顰めた。
咄嗟に伸ばしかけた手を握り留め、ハルの行動の真意を見極めるためにクッと唇を嚙む。
その浅葱の気で、静穏を取り戻しつつあった部屋の空気が、一瞬にしてピンと張り詰める。
「ジンと同じ瞳……。
……愛しいタクミ……、、、、、」
匠を強く引き寄せ、その刻印を抱いたまま、耳元で囁くようなハルの声がした。
だが、その最後の言葉は、周囲には聞こえはしなかった。
「……行きましょう……」
ハルは腕を解くと匠に背を向け、側に来ていたオヤジに向き直る。
「……ああ、行こうか」
ハルを先に歩かせ、その後にオヤジが続く。
ベッドから降り、歩きはじめたハルの姿は、匠の目ではすぐに追えなくなった。
ハルが見えなくなると、匠は浅葱へと視線を向けた。
その浅葱の顔もハッキリとは見えない。
だが、匠は辛そうな浅葱の横顔を見たような気がした。
ハルはそのまま、何の抵抗もする事なく、部屋を出て行った。
静かに扉が閉められ、ハルの気が部屋から消えた途端、張り詰めていた緊張の糸が切れたように、匠は小さく呻き、前のめりにベッドへ倒れ込んだ。
「匠……! 匠!」
浅葱がぐったりとする匠を抱き起こす。
素早くネクタイを外し、刺されている左腕の止血を行うと、自分の上着を脱ぎ、匠の肩に掛けた。
「よく頑張ったな、匠……」
その声に、苦しさに耐えながら匠が頷く。
浅葱の両腕がしっかりと匠を抱きしめると、
「浅……葱さん……」
匠は右手をその腕に重ねるようにして体を預け、安心したように目を閉じた。
「よかった……」
深月が安堵の声を漏らした。
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