王子の僕が女体化して英雄の嫁にならないと国が滅ぶ!?

蒼宮ここの

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第120話 全身ヌルヌルで……

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朝になると、ルシウスは自室に帰っていく。シャワーを浴びて一眠りするそうだ。
一緒に国交にきている身なのに、やっていることが本当にただの旅行‪……‬というか、婚外交渉に励む爛れたカップルのようで、落ち込む‪……‬まあその通りなんだけどさ。

「朝食をお持ちしました」

マナトさんの声だ。シャキッと背筋を正してベッドから飛び起きる。服がめくれたりしていないかしっかりと確認して、そろそろと扉を開けた。

「おはようございます‪……‬」
「おはようございます。昨晩はよく眠れましたか?」
「ええ。一昨日よりかは‪……‬」

とはいえ、あのエッチ専用下着で盛り上がってしまったので睡眠時間はなかなかに短い。マナトさんはまだ僕が体調不良だと思っているのか、ベッドの上で食べられるように朝ご飯をセットしてくれた。ご厚意に甘えてベッドで食べさせてもらう。
マナトさんはなぜだか出て行く気配がなく、ベッド際に椅子を置いてニコニコしながらそこに座る。どうやら今日も僕の食事を見守ってくれるつもりのようだ。

「マナトさん、お仕事は‪……‬?」
「最近部下達が育ってきて、私はほとんど執務中心なんです。夜にやればすぐ済みますし、なにせ王が不在なので」

マナトさんは王付きの執事だという。王がいなければそれは仕事も激減しているだろう。

「ベル様さえよければ、お食事後にまたマッサージさせてください」
「え、そんな‪……‬いいんですか?」
「今朝もお疲れのようですし」
「ウッ」

朝から疲れているなんて変だよな‪……‬マナトさんにはやっぱり気付かれているのかもしれない。連日ルシウスとのエッチのしすぎで身体がバキバキになっているって‪……‬。

「いただきます」と手を合わせるとマナトさんは「はいどうぞ」と朗らかに返してくれる。
ルシウスはエッチが終わって少ししたら部屋に帰っちゃうから、やっぱりさみしい気持ちもある。それを詳細を伏せてマナトさんに話したから、気を遣ってくれているのだろう。素直に嬉しい。お仕事の邪魔にならないのなら、ここは甘えて話し相手になってもらっちゃおうかな。

「時にベル様。昨夜は侍女がルシウス様にとんだ失礼を」
「え?」
「‪……‬ああ、ベビードール使われなかったのですね。よかった‪……‬」
「べびぃどぉる‪……‬」

一体なんのことだろう。考える素振りで手を顎にあてると、その拍子に何かが床に落ちた。マナトさんがそちらに視線を向けて硬直する。僕も遅れて覗き込み――――ヒュッと息を呑んだ。
鮮やかなシースルーのオレンジ。昨夜ルシウスに着せられたエッチな下着だ。

「これって‪……‬」
「ああああこれは!! ちがっ、違うんです!!」

拾ってくれたマナトさんの手から勢い余って奪ってしまった。だって僕が素肌に身につけたものだ。下着なのだ。それが関係を持っていない男の人の手の中にあるのが耐えられなくて‪……‬焦りと、真っ赤な顔を、隠し切れなかった。

「ああ‪……‬お使いになったのですね‪……‬?」
「これは‪……‬ルシウスが、むりやり‪……!‬」
「大丈夫ですよ。他言いたしません。ただ私としましては、ベル様に我が国の下品な文化を知られることに少し、抵抗がありまして‪……‬」
「下品ではないですっ‪……‬女人を綺麗に見せてくれる衣装がたくさんで、素敵だと思います‪……‬!」
「ありがとうございます。ええ、ベル様ならさぞ‪……‬いえ‪……‬」

僕につられたかのように、マナトさんの頬にもサッと朱が射す。想像、したのだろうか。今の間は、したよな。
これがルシウスなら殴りかかっているけど、マナトさんにそうするわけにはいかない。何より想像させたのは僕の落ち度だ。この気まずさに、耐えるしかない‪……‬‪……‬。
せめてもうこれ以上視界に入れないようにと、ベッド横の小さなチェストに下着を突っ込む。

「冷めますのでお召し上がりください」との気遣いに、僕はもそもそと食事を始めた。
ヤマト国の超一流の朝ご飯‪……‬なのに、なんだか味がしない。恋人でもないマナトさんにあの下着をつけた姿を想像されたと思うと、なんだか‪……‬‪……‬生唾が‪……‬‪……‬‪……

……‬あれ? なんか僕‪……‬喜んで、いないか‪……‬?


「今日はそれぞれの国の生態系のお話でもしましょうか。おそらく気候もまるで違うでしょうし、どんな影響があるのか気になります」
「あっ、ハイ‪……‬!」

マナトさんがなんでもない顔で話題を提供してくれた。さすが気遣いの人。僕も一生懸命に切り替えて、ルアサンテの牧場で見たことのある家畜の話をした。

ウチには基本的に食べられる動物か、乗り物となる馬しか存在しないが、ヤマト国には愛玩動物なるものがいるようで。なんでも、より愛らしい見た目になるよう研究をして、品種改良をしているらしい。
どんな科学力をもってすればそんなことができるのか想像もつかないが‪……‬とても興味がある。今度城で飼っている番犬を見せてもらう約束をして、年甲斐もなくワクワクしてしまった。

「ベル様達が知らないだけで、山にはタヌキくらいいるのかもしれませんねえ」
「それは‪……‬駆除する必要などないのですか?」
「ありませんね。よほど人間に害を加えるものでなければ、森の中はそっとしておくべきです。野生動物と共生をしていかなければ、人間はどんどん傲慢になります」
「なるほど‪……‬」

人間以外の動物は役立つもの以外駆除しなければならない。これがルアサンテ王国の基本的な教育だ。それが己に染み付いていたという事実にゾッとした。
父上を滅ぼしてもまだ、長年培われてきた国の考え方は変わっていないのだ。それを一番嫌悪しているはずの僕が、無意識に遵守しようとしているなど――――
情けなさにかぶりを振る。いや、染み付いているものは仕方がない。これから変わればいいのだ。国も、僕も。

「ごちそうさまでした」

食事を終えると、マナトさんは何も言わずともマッサージの準備をてきぱきと始めてくれる。あっという間にシーツにはビニールが被せられた。

「これは‪……‬?」
「オイルを使いますので、ベッドが汚れないようにいたしました。その関係で、本日はこちらをお召しいただけますか」

そう言ってマナトさんが白くてすべすべした布を取り出す。ずいぶんと面積が小さいが‪……‬。

「上にバスローブを羽織っていただいて構いません。ベル様のお下着も汚れるといけないので、よろしければ」

その一言に安心した。脱衣所で服を脱ぎ、改めてマナトさんから手渡されたものを広げる。
これは‪……‬下着だ。完全に胸当てとパンツだ。防水性がありそうな生地感から察するに、マッサージ専用のものなのだろう。薄手で少し心許ないが、バスローブを羽織るならさほど恥ずかしくはないか。

準備を整えて、笑顔のマナトさんに迎えられた。まずは座った状態で、肩を揉んだり鎖骨の部分を擦られたり。それだけで蕩けるくらいに気持ち良くなってしまうのだから、やっぱりマナトさんのマッサージの技術は素晴らしい。

「少しお身体が冷えていますね。食後ですのに、少し心配です」
「産後に冷え性になってしまったんですよね‪……‬」
「女性は出産で体質が変わりますからね。しっかりと温めていきましょう」

男の人なのに女人の身体について知り尽くしていて、すごいな。マナトさんのような人がルアサンテに居てくれたら、安心して生活できる女人も増えるだろう。
ヤマト国の男は皆こんなふうに女人への理解を持てるよう、教育を受けているのかな。それについても今度マナトさんに聞いてみよう。テキストなんかがあるならすぐにでも取り入れたい。

「それではオイルを使っていきますね。最初はヒヤッとしますが、すぐに温まりますから」
「はい‪……‬」

首の辺りに冷たいものが垂らされる。水のように垂れ落ちることはなく、ゆっくりと首筋を伝う。独特の粘度を感じる間もなく、マナトさんが手の平で丁寧に塗り広げた。彼の手の熱を宿したように、オイルを塗られた部分がジワジワと熱を持つ。
ほんとうにこんなふうに温まるんだ。それに‪……‬。

「いい匂い‪……‬」
「ローズヒップのオイルです。リラックスしてくださいね」

滑りの良くなった肌をマナトさんの指が滑る。よりいっそう的確にツボを押しているかのように、鎖骨に沿ってグッグッと指先が押し込まれる。
こんなところを刺激したことはないけど‪……‬解れる感じがして、気持ち良いな‪……‬‪……‬。

「ここはご自身でも揉んでみてくださいね」
「ふぁい‪……‬」
「ふふ。眠ってしまってもいいですよ」

そんな、さっき朝食を食べたばかりなのに居眠りなんて‪……‬僕があまりに気持ち良さそうだから、気遣ってくれているんだよな‪……‬でも今寝たら絶対にヨダレ垂れるから寝ない、寝れない。
オイルが足されて、マナトさんの手が首筋から脇まで勢い良く滑っていく。その道筋で横乳に触れられているのがたまらなく恥ずかしかったけれど‪……‬マナトさんはきっとそんなのちっとも意識していない。思わず振り返って確認してしまったけれど、いつも通りの涼しい顔で呼吸のひとつも乱れていなかった。
城中の男に欲情されることに慣れきっていて‪……‬こうも心を殺して僕の身体に触れられる男がいるのだという事実に、打ちのめされた。

「何か?」
「いえ‪……‬なんでも!」

笑顔で返して元通り正面を向く。僕、完全に自惚れている。こんなの、真摯にマッサージしてくれているマナトさんに失礼だ‪……‬。
自己嫌悪に陥って猫背気味になると、さりげなく肩を掴まれて矯正される。縮こまることも許されず、僕はマナトさんの手の熱さを意識しないように、必死に別のことを考えて口にした。

「あの、さっきの話‪……‬いぬ? とは一体どんな動物なのでしょう」
「ああ、あれは賢いですよ。躾をすれば人間の手伝いもしてくれるんです」
「へえ‪……‬馬だけじゃないんですね」
「城にいるのは屈強な番犬ばかりですが、姫様の愛犬は幼子でも抱きかかえられるサイズなのですよ。そちらもご覧に入れましょう」

話しているといくらか煩悩も霧散した。ただのマッサージだと思えば、男の人の手が少し胸に触れるくらいなんてことはない。
現に、自分でも驚くくらいすぐに慣れた。きっと、煩悩など一つも抱かずにマッサージに集中してくれているマナトさんのおかげだ。

「それでは横になってください」

仰向けで寝かされて、バスローブを自然にはだけられてしまった。下着姿を晒すのは恥ずかしいけど、マナトさんならまあ、いいか‪……‬なんせ僕に下心も何もないのだ。
今までオイルを塗った首元や胸の周りに改めて塗り広げられる。すっかりリラックスできるようになっていて心地よい。だけどその熱い手の平がまだ触れていない場所に差し掛かると、身体が勝手にピクンと反応してしまう。胸の下、お腹部分に新しいオイルを塗られて「ふ」と声が漏れてしまった。

「くすぐったいですか?」
「はい、あの、その‪……‬すみません」
「私は気にしないので、好きなように声は出してください。お嫌だったら遠慮なくお申し付けくださいね」

さすがに、普段性行為の時でも触れられることの少ない腹部は敏感のようだ。だけど呼吸を落ち着ければすぐになんてことなくなった。
じんわりと温められて、気持ちが良い‪……‬妊娠中にこれをやってもらったら、きっと心身ともに落ち着いて、つわりも軽減されるのだろうなあ‪……‬。

「あ‪……‬」

マナトさんの両手が、僕の下乳を、持ち上げて‪……‬いつも乳に隠れている部分の肌に、オイルを塗っている‪……‬。
チラリと顔を盗み見る。マナトさんはいたって真剣な表情だ。意識しているのは僕だけで‪……‬だから、僕も反応するべきではないと瞬時に悟る。
だけどこれ‪……‬大人しく、おっぱい触らせているみたいで、すごく‪……‬背徳感が‪……‬いやいや僕、何考えてるんだ。マナトさんにはまったくそんな気がないのに。

「はぁ‪……‬ん‪……‬」

思わず息が漏れる。けどマナトさんは顔色ひとつ変えず、僕の胸を見下ろして、持ち上げては、下ろしてを繰り返すのみだ。付き合ってもいない男の人にこんなこと‪……‬でも、マッサージだから‪……‬いいのか‪……‬?

「アッ‪……‬」

マナトさんの手が、持ち上げる格好から、ごく自然に膨らみ全体を包む動きに変わった。下着越しに、おっぱい揉まれている‪…‪……‬…‬と言っても、全然いやらしい動きじゃなくて、あくまでオイルを塗り広げるためだけの手つきで‪……‬僕ばっかり意識して、恥ずかしい‪……。
‬顔を横に逸らして、口元を手で隠して、必死に羞恥に耐える。胸当てがあるのが救いだ。直接触られたら間違いなく発情してしまうけど‪……‬これならなんとか耐えられる。

「では、下半身も失礼いたします」
「は‪……‬はい」

下半身。その言葉にずくんと下腹が重くなる。落ち着け僕。マナトさんにそんな気はないんだってば。オイルを塗ってマッサージしてもらうだけなんだから。
腰回りをマナトさんの手が滑る。荒くなる息を手の中に押し隠す。だけどその手が内股の肉を持ち上げるような仕草を繰り返すと、くすぐったくて、感じてしまって‪……いつの間にか目に涙が浮かんでくる。

「ハァ‪……‬ハァ‪……‬」
「力抜いてくださいね。いっぱい息していいですよ」
「アァン‪……‬」

手が、股間部分を薄く撫でて‪……‬それだけでビクンって反応して、軽くイってしまった‪……‬‪……‬。

「大丈夫ですか?」
「はい‪……‬あの‪……‬すみませ‪……‬」

アソコ、濡れてる。気付かれたくない。
即座に股を閉じて、これ以上そこに触れられないように防御する。マナトさんの手はまた腰回りに戻って、円を描くように何度も撫でまわした。

「身体が熱くなってきたでしょう? 全身くまなく塗ったので、これからしっかりとマッサージさせていただきますね」
「え? あ‪……‬ハイ‪……‬」

マッサージは、これからなんだ‪……‬。
抗う間もなく、両腕を上げさせられる。脇の下にオイルを足されて、ぬるぬると押し込まれて‪……‬ああ、くすぐったい、気持ち良い。もうアソコ、ビショビショだよう‪……‬。
スリスリと太腿を擦り合わせて気まずさに耐える。すべてが性感帯になったみたいに、敏感になってしまっている。

「リラックスしてくださいね‪……‬」

すべてを見透かしているかのように目を覗き込まれる。もうダメ。恥ずかしすぎる。僕はついに耐え切れず、下着姿の身体を横に向けて、小さく折り畳んだ。

「おや‪……‬?」
「あ、あの‪……‬ちょっと‪……‬恥ずかしくて‪……‬」
「‪……‬‪……‬ああ」

マナトさんはきょとんとした後、我に返るかのように小さく頷く。

「失礼しました。私、マッサージに夢中になると周囲が見えなくなってしまう性質で」
「いえ‪……‬すみません、僕こそ‪……‬こういうの、不慣れで‪……‬」
「そうですよね。申し訳ございません。ベタベタ触ってしまって」
「いえ‪……‬! マナトさんは悪くないです、僕が、その‪……‬」

淫乱な娼婦だから。なんて言えるわけもなく、そそくさとバスローブを羽織る。マナトさんが丁寧に手をハンカチで拭いて手袋を戻すのを見て、終わったんだと安堵した。

「私、押し付けがましかったですよね‪……‬ご迷惑ならもう、施術は‪……‬」
「いえ! 滅相もない! すごく気持ち良くて‪……‬その、またしてほしいです‪……‬!」

食い気味に言葉を差し込むけど、マナトさんは了承も拒絶もせず、少し寂しそうな笑顔を湛えているだけだ。反射的にその手を握った。手袋ごしでは体温が伝わらない。食い下がるように、あえて素肌に触れられる手首に指を這わせると、マナトさんは手の向きを変えて、僕の手を握り返してくれた。

「……では、もっと上等なオイルを用意しておきます。ご期待ください」
「はい‪! 楽しみです」

どうして反射的に触れてしまったのだろう。
なんだか自分が“女”であることを利用したかのようで、その後は一日中、気分が晴れなかった。
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