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その三
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昨日は紛らわしく誤字のまま更新しちまってご免。書き直そうかと思ったけど、あのままにしとく。だって臨場感あると思うからさ。
で、俺はこの通りピンピンしてるぜ。今、ちょうど昼飯をご馳走になって寛いでいるところだ。野菜は畑から、猪の焼き肉が案外美味いのに驚いたよ。村人達は自給自足の生活らしい。え? 場所は何処か? て? 勿論『鵺の里』さ。あれから長老の家にお邪魔している。本当にあったんだよ、『鵺の里』! 伝説なんかじゃなかったんだ! ただ、限られた人しか辿り着けないだけで。
どういう事か説明するよ。昨日は、目の前から三人の村人の亡霊が、刃先から血が滴り落ちるチェーンソーを持って向かって来た時は、恐怖のあまり硬直して動けなくなっちまった。ブログを途中で更新し、立ち竦む。
まさに『蛇に睨まれた蛙』状態さ。村人達はドンドン近づいて、目の前までやって来た。三人ともチェーンソーを振り上げ、一斉にウィーンと刃先が動く鈍い音が響いた。刃先からボタボタと血が滴り落ち……。
もう駄目だ、お終いだ。ミンチになるんだ。俺は携帯と懐中電灯を落とし、頭を抱えこんで膝を胸につけるようにして地面に臥した。さぁ、胴体からか、首からか、腕か……チェーンソーで刻まれる。超痛いだろうな。痛みですぐに気絶しますように。
俺は死を覚悟した。
「兄ちゃん、大丈夫かね?」
そんな声が聞こえた。
「脅かしてすまんかったね」
別の声……怖々顔を上げる。そこには、チェーンソーを止めて下に下ろした三人の村人。皆中年のおじさん、て感じだ。
「立てっか? 兄ちゃん」
おじさんの一人が、俺の前にしゃがみ込む。
「ひっ」
やっぱり怖くて悲鳴を上げた。
「いやぁ、わしらは普通の人間だから。安心してな」
そう言って、三人のおじさん達は俺を助け起こした。そしてそれぞれが土を払ってくれる。よく見たら、皆手に懐中電灯を持っていた。
「あ、あの……?」
意味が分からず問いかける。
「とにかく、寒いだろう。夕飯でも食べて落ち着こうや」
やけに親しげだ。もしかして、俺はとっくに刻まれて、死後の世界……なのか?
「で、でもその、チェーンソー……血が。皆さん、か、返り血も……」
連れて行かれたら、今度こそ最期かも……?
「ん? あーすまんすまん。これ、ペンキなんだわ」
「えっ?」
ペンキ? 意味が分からない。
「いやぁ、胆試しに来る奴らが村を荒らしたりしないように脅かしてたんだよ。俺達は夜の見回りでね。三人で交代交代でやってるんだ」
「とにかく、村に行こう。歩きながら説明するよ」
「は、はい」
改めてよくみると、皆普通のおじさんだ。
そんな訳で、しばらくこちらに滞在させて頂く事にしたんだ。来客用の家があるっていうんで、今そこにいる。普通に青い屋根の一階建ての民家に案内さえれた。長老のお宅から200mほど上に上った場所に一軒ぽつんと立っていた。森の中の家、て感じだ。村人の話によると、最近リフォームしたばっかりで、畳も浴室も新しくしたそうだ。壁も塗り変えてあるから少し匂うかも、て事だった。
だからかな。ほんの少し鉄臭い匂いがしたのが気になったんだ。まぁ、すぐ慣れたけどな。かれこれもう六日も立つ。水やお湯はしっかりと出るし、携帯も充電出来るし。ただ、テレビやパソコンが無いけれど、別に不自由しない。携帯があれば見ようと思えばテレビも見られるしな。備え付けの机と椅子、昔懐かしいちゃぶ台にふかふかの赤い座布団。布団は一式押し入れに入っているし、食器類やフライパン、鍋をはじめ、キッチンやエアコンも完備されている。冷蔵庫も中には、お米やお茶の包みやインスタントコーヒーが入っていたのは驚きだ。消費期限は2020年8月、案外、滞在する人がいるのかもしれないな。
空気は澄んでるし水は美味い。食材は毎朝村人が畑で取れたばかりの野菜や、その時とれたであろうウサギや鹿、猪の肉をさばいて持って来てくれるし。野菜ほとんどそのまま、肉はシンプルに焼いて粗塩で食うのがまた美味いんだ。至れり尽くせりでまるで田舎のペンションに泊りに来た気分だよ。村には同じくらいの歳頃の男子も女の子もいない上にゲーセンやコンビニはおろか郵便局も銀行もないけど、全然気にならないや。むしろ人と関わらなくて済んで気が楽だよ。
俺は生まれて初めてこの世の春を満喫した、そう言いたい気分だ。この機会に、日記の他に憧れ(笑)だったBチャンネルにも今までの経緯をあげて、日記と連動してリアルタイムにあげて行こうと思う。……どうせ殆ど誰も読まないだろうけどな。まぁ、自己満足、てやつだ。
唯一少し気になったのは、満月の夜に山の神? だかに子ヤギなんかの生贄を捧げる儀式があるんだとか。だけどよそ者の俺には無関係の話らしい。俺も深入りしないつもりだ。ホラーを演出するのは、公の力が働いて村が撤去されないようにしている理由もある、て言ってたし。何か事情があるんだろう。
で、俺はこの通りピンピンしてるぜ。今、ちょうど昼飯をご馳走になって寛いでいるところだ。野菜は畑から、猪の焼き肉が案外美味いのに驚いたよ。村人達は自給自足の生活らしい。え? 場所は何処か? て? 勿論『鵺の里』さ。あれから長老の家にお邪魔している。本当にあったんだよ、『鵺の里』! 伝説なんかじゃなかったんだ! ただ、限られた人しか辿り着けないだけで。
どういう事か説明するよ。昨日は、目の前から三人の村人の亡霊が、刃先から血が滴り落ちるチェーンソーを持って向かって来た時は、恐怖のあまり硬直して動けなくなっちまった。ブログを途中で更新し、立ち竦む。
まさに『蛇に睨まれた蛙』状態さ。村人達はドンドン近づいて、目の前までやって来た。三人ともチェーンソーを振り上げ、一斉にウィーンと刃先が動く鈍い音が響いた。刃先からボタボタと血が滴り落ち……。
もう駄目だ、お終いだ。ミンチになるんだ。俺は携帯と懐中電灯を落とし、頭を抱えこんで膝を胸につけるようにして地面に臥した。さぁ、胴体からか、首からか、腕か……チェーンソーで刻まれる。超痛いだろうな。痛みですぐに気絶しますように。
俺は死を覚悟した。
「兄ちゃん、大丈夫かね?」
そんな声が聞こえた。
「脅かしてすまんかったね」
別の声……怖々顔を上げる。そこには、チェーンソーを止めて下に下ろした三人の村人。皆中年のおじさん、て感じだ。
「立てっか? 兄ちゃん」
おじさんの一人が、俺の前にしゃがみ込む。
「ひっ」
やっぱり怖くて悲鳴を上げた。
「いやぁ、わしらは普通の人間だから。安心してな」
そう言って、三人のおじさん達は俺を助け起こした。そしてそれぞれが土を払ってくれる。よく見たら、皆手に懐中電灯を持っていた。
「あ、あの……?」
意味が分からず問いかける。
「とにかく、寒いだろう。夕飯でも食べて落ち着こうや」
やけに親しげだ。もしかして、俺はとっくに刻まれて、死後の世界……なのか?
「で、でもその、チェーンソー……血が。皆さん、か、返り血も……」
連れて行かれたら、今度こそ最期かも……?
「ん? あーすまんすまん。これ、ペンキなんだわ」
「えっ?」
ペンキ? 意味が分からない。
「いやぁ、胆試しに来る奴らが村を荒らしたりしないように脅かしてたんだよ。俺達は夜の見回りでね。三人で交代交代でやってるんだ」
「とにかく、村に行こう。歩きながら説明するよ」
「は、はい」
改めてよくみると、皆普通のおじさんだ。
そんな訳で、しばらくこちらに滞在させて頂く事にしたんだ。来客用の家があるっていうんで、今そこにいる。普通に青い屋根の一階建ての民家に案内さえれた。長老のお宅から200mほど上に上った場所に一軒ぽつんと立っていた。森の中の家、て感じだ。村人の話によると、最近リフォームしたばっかりで、畳も浴室も新しくしたそうだ。壁も塗り変えてあるから少し匂うかも、て事だった。
だからかな。ほんの少し鉄臭い匂いがしたのが気になったんだ。まぁ、すぐ慣れたけどな。かれこれもう六日も立つ。水やお湯はしっかりと出るし、携帯も充電出来るし。ただ、テレビやパソコンが無いけれど、別に不自由しない。携帯があれば見ようと思えばテレビも見られるしな。備え付けの机と椅子、昔懐かしいちゃぶ台にふかふかの赤い座布団。布団は一式押し入れに入っているし、食器類やフライパン、鍋をはじめ、キッチンやエアコンも完備されている。冷蔵庫も中には、お米やお茶の包みやインスタントコーヒーが入っていたのは驚きだ。消費期限は2020年8月、案外、滞在する人がいるのかもしれないな。
空気は澄んでるし水は美味い。食材は毎朝村人が畑で取れたばかりの野菜や、その時とれたであろうウサギや鹿、猪の肉をさばいて持って来てくれるし。野菜ほとんどそのまま、肉はシンプルに焼いて粗塩で食うのがまた美味いんだ。至れり尽くせりでまるで田舎のペンションに泊りに来た気分だよ。村には同じくらいの歳頃の男子も女の子もいない上にゲーセンやコンビニはおろか郵便局も銀行もないけど、全然気にならないや。むしろ人と関わらなくて済んで気が楽だよ。
俺は生まれて初めてこの世の春を満喫した、そう言いたい気分だ。この機会に、日記の他に憧れ(笑)だったBチャンネルにも今までの経緯をあげて、日記と連動してリアルタイムにあげて行こうと思う。……どうせ殆ど誰も読まないだろうけどな。まぁ、自己満足、てやつだ。
唯一少し気になったのは、満月の夜に山の神? だかに子ヤギなんかの生贄を捧げる儀式があるんだとか。だけどよそ者の俺には無関係の話らしい。俺も深入りしないつもりだ。ホラーを演出するのは、公の力が働いて村が撤去されないようにしている理由もある、て言ってたし。何か事情があるんだろう。
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