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第四話
狛……兎???【五】
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そしてテーブルの上に腕組みをして偉そうに見下ろしていたのが……
この日比谷昴なのである。金茶色の髪にネオンブルーの瞳の美丈夫に変化《へんげ》していたのだ。本当によく化けたものである、まぁ、世を忍ぶ……忍んでないよね。だってその姿でお役所行ったりする訳でしょ?……言わないけど。という事はおいて置いて、世を忍ぶ仮の姿で、真《まこと》の姿は薄茶色のネザーランドドワーフ。月の使者でツクヨミノミコト様の付き人、侍従みたいな感じかしらね。兎の姿のままの方が、可愛らしいし。アレルギーがあったり、苦手では無い限り女性のクライアントにも好評だと思うのだけど……
「何、ボーッと見惚れているんだよ? 言っておくが、俺に惚れても無駄だぜ?」
……という事が三日前にあり、取りあえず一週間ほどこの男があたしの占い実践練習に付き合ってくれる、という手筈となった訳だ。場所は、鑑定室兼粋蓮の自宅の離れにある事務所。二階に、日比谷の生活する部屋があるらしい。かの粋蓮は、三日ほど前から一週間ほど鑑定をお休みしている。何でも、あたしに合わせてくれているそうだ。正直言って、かなりのプレッシャーだ。八日目には実践突入となるからだ。
……どうやらボーッとしていたようだ。拙い、そしてこの男、何やら奇怪な事を口走ったな。
「いいえ、時々、これが現実に起こっている事なのかどうか確認したくなって。だから、見惚れていたというよりも兎ちゃんの姿、可愛かったのになぁ、としみじみと思っていただけです。見惚れるなんてとんでもない! 私は生まれてこの方、恋愛感情とやらの感覚がよく分かりませんので。どうぞご安心を」
ここはハッキリと答えておく。この男、言う事が一々癇に障るのだ。仮の姿のままで言われたなら、可愛いなぁ、で済むというのに。
「あー、左様ですか。こっちは人間の本心を読む事なんか朝飯前に出来るけども、だ。一応神々の掟とやらで、『必要に迫られる時以外は勝手に人間の心の奥を暴かない事』というのを厳守して、だ。ん? ツキヨ……粋蓮様の御命令通り、わざと厄介なクライアントのふりをして、お前さんの社交術を鍛えてやろうと心と時間を割いてやってる訳だよ」
つまり、もっと敬い給え、て事か。でも確かに、労力を割いてくれているのは間違いないものね。
「はい、おっしゃる通りですね。本当に感謝しております。有難うございます」
と頭を下げる。彼はぷぅっと不服そうに頬を膨らませた。やっぱり、兎ちゃんだ。うふふ。
「まぁ、いいや。で? 粋蓮様がお前さんを敢えて人間見習いの師匠に選んだ理由は?」
そうそう、タロットでその理由を探る事は課題だったのだ。目の前に三枚ほど並列したカードを見る。因みに、ウェイト版タロット78枚フル使用だ。
一枚目、『運命の輪・正位置』。これは単独で見ればご縁、偶然、人間が逆らえない運命。
二枚目、『ソードクーン・正位置』。理知的、頭脳明晰、沈着冷静な女性、頭脳明晰はともかく、これはあたしの事か。つまり、恋愛感情を抱かない女。
三枚目、『愚者・正位置』。奇人変人、どこにも属さない自由人、お馬鹿さん……。
以上をあたし流に解釈すると、
「つまり、理屈では説明し難い御縁を感じた。私は誰にも恋愛感情を抱かない女なので二人きりになってもおかしな展開にはならない。どんな出来事が起ころうと『ま、いっか。そんな事もあるよね』と受け入れてしまえる変わった人……」
うーん、でも決め手に今一欠けるわね。残りのタロット75枚を裏返しにしままシャッフルし、一つの束にすると左手でサッと扇形に崩す。その中で一枚、ピンと来たカードを一枚引き、表に返して四枚目に並べた。出たカードは……
『ペンタクルの10の逆位置』この場合は、カードの意味というよりは絵柄から連想される事が答えだ。つまりあたし限定の特殊な解釈。あたしの立ち場、どこにも寄る辺のない……あぁ、そういう事か。
「つまり私は、凡人代表でもあるので。人間見習いには最適であると総合的に判断された、そういう事だと思います!」
そう言い切って、日比谷を見つめた。この、ピタリとした解釈が出来た時の爽快感、とても好きだ。充実感とそれに伴ってじわじわと来る高揚感がたまらない。
彼はニヤリと笑った。
「へぇ? やるじゃん! お見事!!」
と拍手をしてくれた。つまり、大正解だ。
この日比谷昴なのである。金茶色の髪にネオンブルーの瞳の美丈夫に変化《へんげ》していたのだ。本当によく化けたものである、まぁ、世を忍ぶ……忍んでないよね。だってその姿でお役所行ったりする訳でしょ?……言わないけど。という事はおいて置いて、世を忍ぶ仮の姿で、真《まこと》の姿は薄茶色のネザーランドドワーフ。月の使者でツクヨミノミコト様の付き人、侍従みたいな感じかしらね。兎の姿のままの方が、可愛らしいし。アレルギーがあったり、苦手では無い限り女性のクライアントにも好評だと思うのだけど……
「何、ボーッと見惚れているんだよ? 言っておくが、俺に惚れても無駄だぜ?」
……という事が三日前にあり、取りあえず一週間ほどこの男があたしの占い実践練習に付き合ってくれる、という手筈となった訳だ。場所は、鑑定室兼粋蓮の自宅の離れにある事務所。二階に、日比谷の生活する部屋があるらしい。かの粋蓮は、三日ほど前から一週間ほど鑑定をお休みしている。何でも、あたしに合わせてくれているそうだ。正直言って、かなりのプレッシャーだ。八日目には実践突入となるからだ。
……どうやらボーッとしていたようだ。拙い、そしてこの男、何やら奇怪な事を口走ったな。
「いいえ、時々、これが現実に起こっている事なのかどうか確認したくなって。だから、見惚れていたというよりも兎ちゃんの姿、可愛かったのになぁ、としみじみと思っていただけです。見惚れるなんてとんでもない! 私は生まれてこの方、恋愛感情とやらの感覚がよく分かりませんので。どうぞご安心を」
ここはハッキリと答えておく。この男、言う事が一々癇に障るのだ。仮の姿のままで言われたなら、可愛いなぁ、で済むというのに。
「あー、左様ですか。こっちは人間の本心を読む事なんか朝飯前に出来るけども、だ。一応神々の掟とやらで、『必要に迫られる時以外は勝手に人間の心の奥を暴かない事』というのを厳守して、だ。ん? ツキヨ……粋蓮様の御命令通り、わざと厄介なクライアントのふりをして、お前さんの社交術を鍛えてやろうと心と時間を割いてやってる訳だよ」
つまり、もっと敬い給え、て事か。でも確かに、労力を割いてくれているのは間違いないものね。
「はい、おっしゃる通りですね。本当に感謝しております。有難うございます」
と頭を下げる。彼はぷぅっと不服そうに頬を膨らませた。やっぱり、兎ちゃんだ。うふふ。
「まぁ、いいや。で? 粋蓮様がお前さんを敢えて人間見習いの師匠に選んだ理由は?」
そうそう、タロットでその理由を探る事は課題だったのだ。目の前に三枚ほど並列したカードを見る。因みに、ウェイト版タロット78枚フル使用だ。
一枚目、『運命の輪・正位置』。これは単独で見ればご縁、偶然、人間が逆らえない運命。
二枚目、『ソードクーン・正位置』。理知的、頭脳明晰、沈着冷静な女性、頭脳明晰はともかく、これはあたしの事か。つまり、恋愛感情を抱かない女。
三枚目、『愚者・正位置』。奇人変人、どこにも属さない自由人、お馬鹿さん……。
以上をあたし流に解釈すると、
「つまり、理屈では説明し難い御縁を感じた。私は誰にも恋愛感情を抱かない女なので二人きりになってもおかしな展開にはならない。どんな出来事が起ころうと『ま、いっか。そんな事もあるよね』と受け入れてしまえる変わった人……」
うーん、でも決め手に今一欠けるわね。残りのタロット75枚を裏返しにしままシャッフルし、一つの束にすると左手でサッと扇形に崩す。その中で一枚、ピンと来たカードを一枚引き、表に返して四枚目に並べた。出たカードは……
『ペンタクルの10の逆位置』この場合は、カードの意味というよりは絵柄から連想される事が答えだ。つまりあたし限定の特殊な解釈。あたしの立ち場、どこにも寄る辺のない……あぁ、そういう事か。
「つまり私は、凡人代表でもあるので。人間見習いには最適であると総合的に判断された、そういう事だと思います!」
そう言い切って、日比谷を見つめた。この、ピタリとした解釈が出来た時の爽快感、とても好きだ。充実感とそれに伴ってじわじわと来る高揚感がたまらない。
彼はニヤリと笑った。
「へぇ? やるじゃん! お見事!!」
と拍手をしてくれた。つまり、大正解だ。
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