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第五話
(仮初)夫婦のコミュニケーションだとかエトセトラ……【三】
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爽やかな風、抜けるような青空。柔らかく降り注ぐ陽射しは、地上に生きとし生ける者に等しく光を当てる。ただ、太陽は太陽であり続けるだけだ。光を受ける側が、その時のタイミングで日が当たったり当たらなかったりするだけで。人生もきっと、そのようなものだろう。あたしはそれを『運』と呼ぶ。
……などと。あたしは今、真面目に人生について考えている。そうでもしないと、まともなメンタルを保つ自信がないからだ。
ゴソゴソと、膝の上に乗せたバスケットが動く。バスケットの中で、本来の姿に戻った日比谷が動き回っているのだ。バスケットの中には、食用の牧草を敷き詰め、スティック状にカットした人参を入れている。そして兎用のウォーターサーバーがついているから、お出かけにとても便利である。正直に言うと、結構自由気ままで束縛されるのが苦手そうな印象に日比谷だったが、人間見習いには人間のペットとして飼われる経験も必要だとの事。案外真面目に取り組む姿に、少しだけ見直した。
だが、今はバスケットの中からで良いから、何か話しをして欲しいと切実に思っていまう。哲学めいた事を考え続けるのも限界がある、いや……元より長続きしない。
それは、隣でハンドルを握る粋蓮の事だ。そう、あたし達はあれから早速、森林公園に行こうとなり、粋蓮の所有する車で向かう事となったのだ。彼が車を所有していて、当然のように彼自身が運転する事に驚いた。やはり彼も人間見習いの一環として必要と判断したそうだ。てっきり付き人の日比谷が運転するものだと思っていた。何事も思い込みはよくない。運転免許は人間のやり方で取得したのかは……その内聞いてみようと思う。
因みに、車はクラウンとの事。車には疎いが、漆黒の艶やかなボディーが野生の黒豹を思わせ、素人目にも高級そうだな、と感じた。
話を元に戻そう。血縁にない異性が運転する車の助手席に乗ったのは、人生初だ。思いの外距離が近く、そして逃げ場がない事に気付いた。勿論、別に何かされる訳ではない。ただ、浮世離れした凄まじい美形と二人だけという空間が、どう接して良いか分からず場が持たないのだ。しかも、彼は陽射しが眩しいとかで黒っぽい偏光サングラスとやらをかけている。美しい瞳が隠される分、さほど緊張しないかと思ったら……甘かった。スッと上品な高い鼻に、形の良い珊瑚色の唇、滝のように流れる艶やかな漆黒の髪は、月の光を宿したような白磁の肌に映え、危険なほどの色気を醸し出していた。
自意識過剰で対人スキルが乏しいあたしの心情をどうか察して欲しい。日比谷に、何か話をして欲しくなるのも仕方のない心理状態なのだ。
……などと。あたしは今、真面目に人生について考えている。そうでもしないと、まともなメンタルを保つ自信がないからだ。
ゴソゴソと、膝の上に乗せたバスケットが動く。バスケットの中で、本来の姿に戻った日比谷が動き回っているのだ。バスケットの中には、食用の牧草を敷き詰め、スティック状にカットした人参を入れている。そして兎用のウォーターサーバーがついているから、お出かけにとても便利である。正直に言うと、結構自由気ままで束縛されるのが苦手そうな印象に日比谷だったが、人間見習いには人間のペットとして飼われる経験も必要だとの事。案外真面目に取り組む姿に、少しだけ見直した。
だが、今はバスケットの中からで良いから、何か話しをして欲しいと切実に思っていまう。哲学めいた事を考え続けるのも限界がある、いや……元より長続きしない。
それは、隣でハンドルを握る粋蓮の事だ。そう、あたし達はあれから早速、森林公園に行こうとなり、粋蓮の所有する車で向かう事となったのだ。彼が車を所有していて、当然のように彼自身が運転する事に驚いた。やはり彼も人間見習いの一環として必要と判断したそうだ。てっきり付き人の日比谷が運転するものだと思っていた。何事も思い込みはよくない。運転免許は人間のやり方で取得したのかは……その内聞いてみようと思う。
因みに、車はクラウンとの事。車には疎いが、漆黒の艶やかなボディーが野生の黒豹を思わせ、素人目にも高級そうだな、と感じた。
話を元に戻そう。血縁にない異性が運転する車の助手席に乗ったのは、人生初だ。思いの外距離が近く、そして逃げ場がない事に気付いた。勿論、別に何かされる訳ではない。ただ、浮世離れした凄まじい美形と二人だけという空間が、どう接して良いか分からず場が持たないのだ。しかも、彼は陽射しが眩しいとかで黒っぽい偏光サングラスとやらをかけている。美しい瞳が隠される分、さほど緊張しないかと思ったら……甘かった。スッと上品な高い鼻に、形の良い珊瑚色の唇、滝のように流れる艶やかな漆黒の髪は、月の光を宿したような白磁の肌に映え、危険なほどの色気を醸し出していた。
自意識過剰で対人スキルが乏しいあたしの心情をどうか察して欲しい。日比谷に、何か話をして欲しくなるのも仕方のない心理状態なのだ。
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