ツクヨミ様の人間見習い

大和撫子

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第十一話

(仮初)夫婦の別居生活!?【一】

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「まぁまぁ、少しゆっくりしてさぁ」

  日比谷はそう言って、顔色を窺うようにあたしを見た。

「有難う、でも……」
「まぁそう焦らなくても大丈夫さ。未だ見習い占い師の内は今まで通り仕事として続けて良い、てお許しも出たんだしさ。この機会に占いのスキル
も磨いて、本柿的に他に就職しても良いだろうし、もっと力をつけて自分でフリーで活動とかも良いかもしれんて」

 物凄く、気を遣ってくれているのは分かる。それこそ腫れものに触れるみたいに。

「うん、そうだね。今すぐ結論出さなくても良いかもね」

 さっきまで気が立っていた筈のあたしも、ここは彼に合わせようと素直に思える。実際、あたしのように何の資格も経験もない奴が、やみくもに焦って就職口を探して上手く行くなら何年も前から『就職氷河期』なんて言葉が出来る筈もなく。ここは冷静になって、使えるものは有り難く使わせて頂こうと思い直したところだ。

 つい先ほど、ツクヨミ&咲夜バカップルとの理不尽かつ不毛なやり取りを経たところ、日比谷の突然の助け船でそのお言葉に甘えてすぐ様彼の住み家にお邪魔したところだ。

 普通……という表現は、人によって普通の基準が異なるから極力使いたくはないのだが話の便宜上使用させて頂く……「俺の家に来いよ」と言われて、交際をしている訳でも想いをかわした訳でもない一人暮らしの男の家にホイホイと転がり込む事は軽率だと思う。そうは思うが、日比谷の場合は何の心配もいらない。彼はあたしに何の下心もない上に、そういう事にはならないと断言出来るからだ。

 何故なら彼は……

「うーん、まぁ。お前の複雑な気持ち、何となくだけど理解出来るよ」

 そう、日比谷は……

「うん、有難う。あたしも、日比谷の気持ち何となくだけど分かるよ」
「え? マジ??」
「うん。一応、半人前と言っても占い師の端くれだしね」

 ちょっとムッとしか表情から、慌てて否定する。誤解は早めに解いておかないと。

「あ、許可なく占ったりしてないよ。何となくの勘……て感じかな」
「そっか」

 彼はほんの少し寂しそうに笑った。

 そう、日比谷はずっとツクヨミ様に片想いをして来たのだ。報われない恋心をずっと。悟られぬよう、ひたすらお仕えする者として永遠とわの忠誠を誓って。

「いつから、気付いてたんだよ?」
「うーん、咲夜さんとツクヨミサマが出会ってから、かなぁ」
「何だ、ついさっきじゃねーか」
「ははは、そうだね。何となくそうかなーって感じて。確信したのはほんのついさっき。あたしを自宅に来るように助け船を出してくれた時だよ」

 そうなのだ、実は唐突にあの時に気付いたのだ。だって、何の魅力も持たないあたしに、家に来いよなんて言う理由は、『同情』。これしか思い当たらない。では、どうして同情するのか? それはあたしの気持ちを慮る事が出来るからだ。それは何故か? そう連想していけば思い当たる。

 彼は軽く溜息をつくと、やや自嘲気味の笑みを浮かべた。

 
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