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ラスティアの街
異世界マッピング
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「そろそろ撤退するぞっ!」
地下ダンジョンの探索からの帰り、冒険者達とすれ違う。
人の姿が見えなくなるまで物陰でやり過ごし、残った残党を処理していく。
ウルグとの話し合いで、ここの探索を仕事として依頼された形だ。
「……どうせ倒すなら、助ければ良かったのに」
「感謝されたくてやってるわけじゃないし、同行するつもりも無いからな」
あの日、フィーネから様々な事を聞いた。
その全てを信じたわけではないが、否定できる根拠も無い。
一つ、分かっている事はフィーネは危害を加えるつもりが無い事だろうか。
あの時に聞いた魔力の総量、それは言ってしまえば魔力の制御能力だ。
体内に魔力を取り込み、それを使っているわけではなく
自分が使いやすいように、周囲の魔力を変質させて扱っている。
――だから、魔力をどれだけ奪われても、死なない。
「ところで……どうして付いて来るんだ? フィーネ」
「なんとなく?」
何故かオレの後ろをずっと付いてくる、奥深くまで行った時に気づいた。
見通しのいい場所が見つかったので立ち止まり、地図を広げる。
もっとも、これは下書きでちゃんと測量された地図でも無いが。
地図に通った道を書き込み、その広さにうんざりする。
「危険だから付いて来るなと言ったはずだよな」
「……ここで地図書いてる、レティーに言われたくないし――」
火弾がオレを掠めて飛んでいく、それを目で追いかければ。
それを身に受けた魔物が一瞬で灰になっていた。
「私は守ってもらうほど弱くないよ」
「…………せめて声ぐらい掛けろ、驚くだろうが」
「つかれたー、魔力ちょうだい」
「戦えるのはわかったが魔力はやらんぞ? 頼んだわけじゃないしな」
――さっきの魔術は熱さを感じなかった――
その上で灰に変えるほどの熱量を持っている?
当の本人は雑に扱われる事に気分を害した様子は見せず
『まりょく、ちょうだいー』と催促してくるだけ。
(? まずいか、フィーネを保護してるのはオレだったな)
「どうしてオレの魔力を欲しがる?」
「美味しいから」
「そうか、因みにオレでもできるか?」
「…………さあ?」
「地上に戻ったら魔力をやってもいい、条件付きで」
癇癪を起こして面倒事になったら困るので、譲歩できる条件を付ける。
正直、全力で戦ったとしたらフィーネを押さえ込める自信は無い。
そんな事を考えながら地図に書き込みをしてると、何か違和感を感じた。
今は、昼時か? なら時間は大丈夫そうだな。
(距離がわからないのは不便だな)
違和感を感じた場所まで戻って辺りを見る、T字路で立ち止まる。
実際に通った時には感じなかった違和感。
地図を眺めて見ると、この通路は不自然な気がする。
それに、ここだけが他よりも長い通路だった覚えがある。
あちこちに目線を走らせていると、フィーネがこちらを観察していたのが見える。
「フィーネこの場所に何か違和感を感じないか?」
「私は、手伝わないよ?」
「……それは、何に対して手伝わないと言ってる?」
「レティーは自分のしたい事をすればいい、私の事なんて気にせずにね」
無理だな、素人がどれだけ観察した所で、違和感を見つけたわけじゃない。
地図を取り出し現在位置に印を付けて地上へと戻った。
「みなさーん、沢山あるので、焦らないでくださいね」
屋敷の庭まで戻ってくると人が集まって何かをしていた。
今は冒険者の準備用として、庭にテントが張られている。
そこで各々、休憩したり装備の最終確認などもしているようだ。
中央で動き回るミリアの姿が見えた、そこから料理を持った冒険者が離れていく。
安らぎの宿は出張で料理の出店でも出したのか?
屋敷に戻ろうとした所で、先ほどまでと違うざわめきが聞こえてくる。
「あ、あの……なんでしょうか?」
「…………」
フィーネがミリアを至近距離から見つめていた。
アイツは一体何をしているんだ。
「ミリア……だったか? 悪いな、気にせず仕事に戻ってくれ」
「あの、えっと?」
フィーネを屋敷へと引きずっていく、奇異の視線に晒されるのは今更だ。
厨房があった事を思い出して、そっちに向かう。
地下に行く前に支給された食べ物より、自分で作った方がいいな。
少しだけ口にしたが、アレを毎日食えと言われたらオレは逃げ出してしまうだろう。
「さっきも思ったけど、それ何?」
「見たままだ、名称は知らん」
「それで何してるの?」
料理を知らない? そういえば支給された飯も、食っている様子が無かったな。
「…………食うか? というか食えるのか?」
試しに食べさせてみたが、普通に食べられるようで。
美味しそうに完食して追加の料理を催促されたので、手早く作って席を立つ。
外に居た適当な人間に、ウルグの居場所を聞いて探す。
「ウルグ話があるんだが」
「……今度はなんだ?」
「正確な地図が作りたい、具体的には地下の地図だが」
まずはどのように作るのか方法を提示して、提案を出していく。
どのように測量するか問題だが、ロープを使えばズレはある程度抑えれるだろう。
単位を定めたいわけでは無く、変な空洞が無いかどうかが知りたいだけだしな。
「そこまでする理由が、ちゃんと説明できるのか?」
「これを見てみろ」
「……作ったのはお前か? これだけで十分じゃねぇか」
「ここに行くのに、どれくらい掛かると思う?」
適当な地点を選び問いかける。
「戦闘が行われなければ30分もありゃ着くだろうよ」
「1時間は掛かるな、他にも気になる事もあるが、そもそも広すぎるんだ
地図があるからと慢心して、時間も気にせず動かれると面倒だろう?」
説得に苦労するかと思っていたが、こちらが拍子抜けするほどあっさりと決まった。
そうして、管理人として最初の大仕事は地図作成という事になった。
地下ダンジョンの探索からの帰り、冒険者達とすれ違う。
人の姿が見えなくなるまで物陰でやり過ごし、残った残党を処理していく。
ウルグとの話し合いで、ここの探索を仕事として依頼された形だ。
「……どうせ倒すなら、助ければ良かったのに」
「感謝されたくてやってるわけじゃないし、同行するつもりも無いからな」
あの日、フィーネから様々な事を聞いた。
その全てを信じたわけではないが、否定できる根拠も無い。
一つ、分かっている事はフィーネは危害を加えるつもりが無い事だろうか。
あの時に聞いた魔力の総量、それは言ってしまえば魔力の制御能力だ。
体内に魔力を取り込み、それを使っているわけではなく
自分が使いやすいように、周囲の魔力を変質させて扱っている。
――だから、魔力をどれだけ奪われても、死なない。
「ところで……どうして付いて来るんだ? フィーネ」
「なんとなく?」
何故かオレの後ろをずっと付いてくる、奥深くまで行った時に気づいた。
見通しのいい場所が見つかったので立ち止まり、地図を広げる。
もっとも、これは下書きでちゃんと測量された地図でも無いが。
地図に通った道を書き込み、その広さにうんざりする。
「危険だから付いて来るなと言ったはずだよな」
「……ここで地図書いてる、レティーに言われたくないし――」
火弾がオレを掠めて飛んでいく、それを目で追いかければ。
それを身に受けた魔物が一瞬で灰になっていた。
「私は守ってもらうほど弱くないよ」
「…………せめて声ぐらい掛けろ、驚くだろうが」
「つかれたー、魔力ちょうだい」
「戦えるのはわかったが魔力はやらんぞ? 頼んだわけじゃないしな」
――さっきの魔術は熱さを感じなかった――
その上で灰に変えるほどの熱量を持っている?
当の本人は雑に扱われる事に気分を害した様子は見せず
『まりょく、ちょうだいー』と催促してくるだけ。
(? まずいか、フィーネを保護してるのはオレだったな)
「どうしてオレの魔力を欲しがる?」
「美味しいから」
「そうか、因みにオレでもできるか?」
「…………さあ?」
「地上に戻ったら魔力をやってもいい、条件付きで」
癇癪を起こして面倒事になったら困るので、譲歩できる条件を付ける。
正直、全力で戦ったとしたらフィーネを押さえ込める自信は無い。
そんな事を考えながら地図に書き込みをしてると、何か違和感を感じた。
今は、昼時か? なら時間は大丈夫そうだな。
(距離がわからないのは不便だな)
違和感を感じた場所まで戻って辺りを見る、T字路で立ち止まる。
実際に通った時には感じなかった違和感。
地図を眺めて見ると、この通路は不自然な気がする。
それに、ここだけが他よりも長い通路だった覚えがある。
あちこちに目線を走らせていると、フィーネがこちらを観察していたのが見える。
「フィーネこの場所に何か違和感を感じないか?」
「私は、手伝わないよ?」
「……それは、何に対して手伝わないと言ってる?」
「レティーは自分のしたい事をすればいい、私の事なんて気にせずにね」
無理だな、素人がどれだけ観察した所で、違和感を見つけたわけじゃない。
地図を取り出し現在位置に印を付けて地上へと戻った。
「みなさーん、沢山あるので、焦らないでくださいね」
屋敷の庭まで戻ってくると人が集まって何かをしていた。
今は冒険者の準備用として、庭にテントが張られている。
そこで各々、休憩したり装備の最終確認などもしているようだ。
中央で動き回るミリアの姿が見えた、そこから料理を持った冒険者が離れていく。
安らぎの宿は出張で料理の出店でも出したのか?
屋敷に戻ろうとした所で、先ほどまでと違うざわめきが聞こえてくる。
「あ、あの……なんでしょうか?」
「…………」
フィーネがミリアを至近距離から見つめていた。
アイツは一体何をしているんだ。
「ミリア……だったか? 悪いな、気にせず仕事に戻ってくれ」
「あの、えっと?」
フィーネを屋敷へと引きずっていく、奇異の視線に晒されるのは今更だ。
厨房があった事を思い出して、そっちに向かう。
地下に行く前に支給された食べ物より、自分で作った方がいいな。
少しだけ口にしたが、アレを毎日食えと言われたらオレは逃げ出してしまうだろう。
「さっきも思ったけど、それ何?」
「見たままだ、名称は知らん」
「それで何してるの?」
料理を知らない? そういえば支給された飯も、食っている様子が無かったな。
「…………食うか? というか食えるのか?」
試しに食べさせてみたが、普通に食べられるようで。
美味しそうに完食して追加の料理を催促されたので、手早く作って席を立つ。
外に居た適当な人間に、ウルグの居場所を聞いて探す。
「ウルグ話があるんだが」
「……今度はなんだ?」
「正確な地図が作りたい、具体的には地下の地図だが」
まずはどのように作るのか方法を提示して、提案を出していく。
どのように測量するか問題だが、ロープを使えばズレはある程度抑えれるだろう。
単位を定めたいわけでは無く、変な空洞が無いかどうかが知りたいだけだしな。
「そこまでする理由が、ちゃんと説明できるのか?」
「これを見てみろ」
「……作ったのはお前か? これだけで十分じゃねぇか」
「ここに行くのに、どれくらい掛かると思う?」
適当な地点を選び問いかける。
「戦闘が行われなければ30分もありゃ着くだろうよ」
「1時間は掛かるな、他にも気になる事もあるが、そもそも広すぎるんだ
地図があるからと慢心して、時間も気にせず動かれると面倒だろう?」
説得に苦労するかと思っていたが、こちらが拍子抜けするほどあっさりと決まった。
そうして、管理人として最初の大仕事は地図作成という事になった。
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