処刑された悪役令嬢は敵国に華麗に転生する

くしゃみ。

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愛ってなんだったかしら

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 ドレスではなく、年の近いメイド見習いから私服を借りて、着替えてからギル王子が乗る馬車の荷台にこっそりと忍び込む。
 …こんな真似お父様にバレたら叱られてしまうだろうな。悪い子でごめんなさい、と心の中でつぶやく。いいえ、元々復讐で婚約破棄しようと目論む悪い子だったわ。お父様がこのことを知ったら幻滅しちゃうかしら……。

 暫くして、ギル王子が乗り込んだ音が聞こえて、バレてしまったときの言い訳も、帰り方も考えないまま馬車が出発した――。


 思っていたよりも帝国と王国の距離は近いらしい。半日もしないうちに王国の城に着いていた。真夜中だったおかげで、荷を下ろすのは朝にやるらしい。その場から人気が消えた辺りで荷物の隙間から顔を覗かせる。

(い、今さらだけど不法入国だわ…!)

 王国へ帰る…という気持ちが強すぎたせいで気付かなかった。家族や、懇意にしてくれていた人たちのことだけ確認をしたら早く戻らなくては。

「待って!」

 不意に声が聞こえて、慌てて荷物の間に身を隠す。…この声は、聞いたことがあるような。
 そっと覗くと――

「アリア、何度も言うが俺には妻子がいるんだ」
「ガイ、どうして……」

 夜でもきらきら輝く金髪、甘ったるい声色。この国の妃、アリアが泣きながら男に縋っていた。
 男の方は見たことない人だ。鎧をつけていることから兵士だろうか。

「君がエドワード陛下と共になると決めたときに、俺も身を引くことを決めたんだ」
「そんな…!本当に愛しているのはあなただけなの!」

 …………これは。聞いてはいけないことを聞いてしまったのではないか。
 くすんくすんと鼻を啜ると音が聞こえる。

「お願い…私を連れて、逃げて……!」
「それはできない。俺は…家族が大事なんだ」
「ガイ!」

 縋りつくアリアをガイと呼ばれた男が振り払って奥の方へと行ってしまった。アリアはその場に崩れ落ちて泣いている。
 …エドワード王子とアリアは愛し合っていたのではないの?
 何のために自分の命を奪われたのかわからなくて、混乱していると泣いているアリアに誰かが近付いている。

「ニコル…」

 泣いていた、と思っていたのにうっとりした声が聞こえる。
 ニコルはエドワードの昔からの幼馴染で…今は側近でもやっているんじゃないだろうか。
 静かに二人が抱きしめあって、暗くなっている物陰に移動して――少しして声を抑えた嬌声と、がさがさ物音がした辺りでそっと抜け出した――。
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