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本編・第二部
91 *
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智さんの大きな手が、私の身体を縦横無尽にまさぐっていく。
「力いっぱい、シーツとか枕とか握りしめてさ?気持ちいいの、逃がしながら…イくの我慢してる顔も、すげぇそそるけど」
熱くざらりとした舌が、私の首筋に這わされて。
「ん、ぅ……」
低く、甘く。智さんの声が。壁掛け時計の秒針の音だけが響く、静かなリビングに……ゆっくりと溶け込んでいく。
「俺にしか、しがみつけない場所で。気持ちいいのから逃げれらんなくて………イき狂って啼いてる顔の方が。100倍可愛い」
囁かれた言葉に、どくり、と。身体の奥が震える。
「……っ、もぉっ! ばかぁっ!!」
全身が沸騰して、力が抜けていく。ふっと、智さんが笑った声がした。
穏やかな光が差し込むリビングで。私たちは、ゆるやかで、激しい快楽の海へ。
ふたりで―――堕ちていく。
キスの雨が降る。目、頬、耳、耳たぶ、そして、唇。カットソーが捲り上げられ、鎖骨にも口付けられて。チリチリと、所有痕をつけられていく。
「あっ……ぅ、も、ほんと、付けすぎ、だってばっ……!」
お風呂に入るたびに鏡で確認して恥ずかしくなる。もう私は智さんのものだと十分に理解しているから、少しは控えて欲しいのだけれど……!!
「……もう、俺のそばからどこにも行かせない。俺だけの、知香」
熱に浮かされたように智さんが呟く。
所有痕を付けている間にも、智さんの両手は休まず服を脱がせにかかる。あっという間に下着だけになってしまった。
するりと智さんの手が私の背中に回る。つぅ、と、背中を撫でられていく。
「ひゃ、ぁっ……!!」
ぞわりとした感覚にくんっと背中が反り返る。
「ん~。いー声。たぁまんねぇ…」
掠れたような智さんの笑い声が響く。
パチンと音がして、ブラジャーのホックを解かれたことを認識した。ブラジャーに支えられていたふくらみが自由になって。すっかり尖ってしまった蕾があらわになる。
外気に晒された蕾を指先で玩ばれる。何度も転がされ、摘まれて。くりくりと、弄ばれていく。
「……ぅ、やぁ、……んんぅっ……」
不意に、ぱくりと蕾を口に含まれた。
「やぁっ! んっ、んぅぅ、あっ……」
指でされていたように舌先でも転がされて。押し込んで、何度も舐め上げられて……甘く噛まれる。
「はぁっ、んんっ……あ……あぅっ……」
ぎゅう、とソファを掴む。掴みどころがないソファだから、智さんから与えられる快楽から―――逃れられない。
「んっ……あ、ああっ……」
もう何も考えられず、胸元にある智さんの頭を抱きしめ、ぎゅっと目を瞑って。丁寧に、甘く、深く施される愛撫に必死で耐えた。
智さんの空いた手が、するりと下腹部に降りて。濡れ具合を確認するかのように、ショーツの上からゆっくりと撫で上げられていく。
「あぅっ、やぁっ、あああっ」
ショーツの上からぷっくりと主張する秘芽を擦り上げられていく。指先で強く蕾を摘み上げられ、口の中で転がしていた蕾を甘噛みされる。
ぞわりと迫るアノ感覚。それに耐えきれず、私は、智さんの頭を力いっぱい抱き締めたまま。
「ふ、ぁ、あああああっ!!!」
ばちん、と、まぶたの裏が白く弾けた。きつく閉じたまぶたから涙が滲む。
くすくすと笑う声が聞こえる。呼吸が乱れて、ゆっくり目を開くと、目の前に智さんの顔があって。
「……イく時の、啼いてる顔。たくさん見せてくれねぇ? 俺だけがみれる…特別な表情を、さ?」
欲を孕んだ切れ長の瞳に、強く射すくめられる。身体の奥が疼いていく。とろとろと際限なく蜜が溢れて、ショーツに広がっていく。
智さんに、こんな風に懇願されては。断れるわけ、ないじゃないか。
「ほんと……さとしさん……ずるい……」
私を絡めとって、離さない。その声で、その表情で、その大きな手で。
私は、智さんに捕えられたまま―――その愛と快楽に、溺れていくだけ。
どんなに逃げたくても逃げられない、まるで海の中に張り巡らされた網の中に……追い込まれているようで。
「もう、智さんから…逃げられないって、じゅうぶん……わかってるから……」
荒くなった息を整えながら智さんの瞳を見つめ返す。すると、智さんが不敵に笑った。
「当たり前だろ? ……出会った瞬間から、知香が逃げられねぇように仕向けたんだから」
「……え…?」
紡がれた言葉の意味がわからず、呆けたような声が出た。
その間にも。智さんの手が私の下腹部に伸びて、するりとショーツが剥がされていく。
「知香を、落とす時。俺、かなり用意周到に罠を張ってた。知香は気づいてねぇだろうけど」
ことも無さげに言葉を紡ぎながら、智さんの角張った長い指が私の夥しいほど湿っている秘裂に触れる。
「ぁうっ……ちょっ、まっ……!」
くぷりと指を埋め込まれる。先ほど迎えた絶頂の余韻で蠢いているソコにゆっくりと馴染ませるように、最奥まで沈められていく。
「俺、別に呑めねぇわけじゃねぇんだ。呑みたいと思わないだけで」
「……え、えぇ!?」
驚きのあまり身体が硬直する。その言葉の意味が飲み込めず、あんぐりと口を開ける。
「肉食系の見た目だからさ? 呑めないって言うだけで、ギャップがあんだろ? ……それを利用して。知香の意識を、目の前に座った俺に向けさせた」
智さんが言葉を紡ぎながら。その長い指の腹で、泥濘んだ秘裂のナカの……私の弱い場所。入口の上の壁を擦りあげていく。
「ひ、ぁあっ、やだっ、そこ、だめえっ…!」
突然の快感に全身が戦慄く。ぞわり、ぞわりとアノ感覚がふたたび迫り上がってくる。
「藤宮が酔いつぶれたのは想定外だったけど。車で送り届ける時に話していた雑学。あれも、俺の罠」
淫らな水音が響く中、淡々と智さんが言葉を紡いでいく。
「や、ぁうっ、な、そんなっ、いみ、わか、んないっ、うぁぁっ」
「遊び人みたいなこの見た目だからこそ……知識の深さが刺さるんだ。それすらも利用して。あなた呼び、名前呼びを使い分けた」
あの夜。最後だけ……名前を呼んでくれたこと。あれすらも……。
「っ、あ、あれっ、わざとっ……!?」
「ん。わざと」
にこりと、屈託のない笑顔で。思いもよらない事実を突きつけられる。そのまま、ゆっくりと。智さんの長い指が私の最奥を揺らしていく。
「あああっ、やだっ、ぅんんっ!!」
「ハロウィンの時。芸能人の話しになったろ?俺さ、別にショートヘアの女優が好きなわけじゃねぇんだ」
「やぁっ、お、く、だめっ……ああああっ!!」
深い快感が私を襲っていく。まぁるく、それでいて尖ったような快感が、足元から脳を貫いた。肩を大きく上下させながら荒くなった息を懸命に抑えた。脳がくらくらするような強烈な余韻をやり過ごし、智さんの言葉の意味をぼんやりと飲み込んでいく。
「そ、れじゃ…わたし…真にうけて、髪、切ったのも……さいしょから、嵌められて……」
「ん、そう。知香は、頭から足先まで、ずっぽり。俺に嵌ってた、ってわけ」
心底愉しそうな笑みが、目の前にある。不意に、熱い昂ぶりが私の泥濘んだ秘裂に押し付けられた。
「……あん時。俺、初めて手ぇ繋いだろ? ……あの時、知香の手が汗ばんでたから。堕ちたなって確信したんだ」
ふっと。また、智さんが、口の端を歪ませて。ぐっと腰が押し進められていく。
「あああああっ!!」
強い余韻が残る私のソコには、堪えがたいほどの快楽で。くんと背中が反り返り、ナカが蠢いて、智さんの昂りを締め付ける。この体勢では胸のふくらみを智さんに突き出すような形になっててしまった。すかさず、智さんは腕を伸ばして硬くなった蕾をくりくりと弄んでいく。
「やぁ、っ、ぅあっ、だめ、やだぁっ」
ゆるい律動と、蕾への刺激。2箇所から産み出される果てしない快感に涙がぼろぼろと零れる。汗が滲み出て、つぅ、と、首筋を伝っていく感覚すら、私の身体の熱を上げていく。
「だから、言ったろ? ……知香は、俺から逃げられねぇって」
その言葉を皮切りに、ゆるゆるとした律動が始まる。ぐちゅり、ぐちゅりとナカを攪拌されて。最奥を貫かれていく。ゆるい律動と同時に、蕾を弄ぶ智さんの指の動きは止まらない。数度達した身体には強すぎる刺激に、手が、膝が、ガクガクと震え出す。
「んんっ、ぁああっ、だめっ、まって、またっ……ぅぅぅぅうんっ!!!」
「……っ、くぅっ……や、べ……っ」
喉の奥が、下腹部が痙攣して、汗と涙が止まらない。智さんの声と共に律動が止む。細く整えられた眉が歪んで、智さんから滲み出た汗がポタリと私の頬に落ちてくる。その汗の一滴ですら……愛おしく感じて。
「あ、ぁっ…」
白く染った視界が元に戻り出す。ガクガクと震える腕を懸命に動かし、汗ばんだ智さんの額に手のひらを当て、大きく息を吐いて襲い来る余韻を逃がしながら震える声で呟いた。
「さとしさんだって……っ、あ、わたし、から、逃がさない、から……」
私の言葉に、智さんがふっと口の端を吊り上げて不敵な笑みを浮かべた。
「……逃げねぇよ。俺だって、知香から逃げられやしねぇんだから」
そう呟いて、ふたたび最奥を貫かれていく。
「あ、ああっ」
「っく、知香のナカ……ほんと、良すぎんだっつの……」
ゆるやかだった律動が容赦なく叩きつけられるようなストロークになっていく。
「も、むりぃ、あああっ、」
いやいやと頭を振る。迫ってくる途方もない快感に腰が揺れる。思わず智さんの腕に縋り付いた。その縋りついた手をするりと恋人繋ぎにされて、ソファに縫い止められる。
「……その啼く顔に……っ、俺はこれから先ずっと、何度だって…堕とされんだろうなぁ……」
ふっと。困ったように智さんが笑い、その瞬間、ずん、と一際強く突き上げられて、私はまた、あっけなく……大きな波に攫われていく。
「―――――っっ!!!!」
「……ッ………!!」
智さんが顔を歪ませて、2、3度腰を叩きつけて。楔が大きく爆ぜた。
「……知香。片桐のこと、ちょっと見直してるだろ?」
ゆったりと夕食を取りながら、智さんに唐突に尋ねられた。
……見直している、という意味がわからない。だって、休憩中は隙を見計らって纏わりつかれるのだから。
「え。そんなことないよ? 凄くバッサリ断ってるのに未だに休憩時間は堂々と絡んでくるから、仕事中以外ではウザいし」
今日のメインディッシュである鮭のホイル焼きを口に頬張りながら、ヘーゼル色の瞳を思い出し、思わず嫌な顔をした。
「……そうか。なら、いいんだが」
ふう、と。智さんが箸をテーブルに置いて、私に向き直った。
「俺がアイツを嫌いなのは、知香を狙ってるっつーのもあるけど。……同族嫌悪なんだ」
「えぇ? 智さんと片桐さんって正反対じゃない。全然違うよ?」
飄々とした態度で、他者を弄ぶように言葉を紡ぐ片桐さんと、チャラそうな見た目だけれど話すとしっかりとした芯があることが分かる智さん。
ふたりとも、正反対の人なのに。
さっぱり意味が理解できず、きょとん、と、隣の智さんを見上げる。
「いや……そこじゃなくてだな」
智さんが苦笑しながら私に視線を合わせた。ダークブラウンの瞳が、真っ直ぐに私を貫いていく。
「あいつは、俺と同じ。口が上手くて……囲い込みを得意とするタイプだ」
お昼にシていた時に告げられた、智さんが私を落とすために張り巡らされていた罠のこと、だろう。お昼の私の痴態を思い出し、顔が火照る。
「片桐が、この前の知香の仕事の抱え込みを指摘したのも、もしかしたら。……アイツの、策略かも知れねぇ」
「……あ…」
智さんが紡いだ言葉に、火照った身体が一気に冷えていく。
………仕事のことを同僚として叱り、アドバイスをし、好感度を徐々に上げて。私の警戒心を解く。
そうして。私を。―――智さんから、引き離そうとしている、かもしれない、ということ。
「だから……気をつけて、欲しい」
智さんの真剣な瞳に射抜かれて。私は……背筋がじんわりと凍るのを感じながら。こくりと、頷いた。
「力いっぱい、シーツとか枕とか握りしめてさ?気持ちいいの、逃がしながら…イくの我慢してる顔も、すげぇそそるけど」
熱くざらりとした舌が、私の首筋に這わされて。
「ん、ぅ……」
低く、甘く。智さんの声が。壁掛け時計の秒針の音だけが響く、静かなリビングに……ゆっくりと溶け込んでいく。
「俺にしか、しがみつけない場所で。気持ちいいのから逃げれらんなくて………イき狂って啼いてる顔の方が。100倍可愛い」
囁かれた言葉に、どくり、と。身体の奥が震える。
「……っ、もぉっ! ばかぁっ!!」
全身が沸騰して、力が抜けていく。ふっと、智さんが笑った声がした。
穏やかな光が差し込むリビングで。私たちは、ゆるやかで、激しい快楽の海へ。
ふたりで―――堕ちていく。
キスの雨が降る。目、頬、耳、耳たぶ、そして、唇。カットソーが捲り上げられ、鎖骨にも口付けられて。チリチリと、所有痕をつけられていく。
「あっ……ぅ、も、ほんと、付けすぎ、だってばっ……!」
お風呂に入るたびに鏡で確認して恥ずかしくなる。もう私は智さんのものだと十分に理解しているから、少しは控えて欲しいのだけれど……!!
「……もう、俺のそばからどこにも行かせない。俺だけの、知香」
熱に浮かされたように智さんが呟く。
所有痕を付けている間にも、智さんの両手は休まず服を脱がせにかかる。あっという間に下着だけになってしまった。
するりと智さんの手が私の背中に回る。つぅ、と、背中を撫でられていく。
「ひゃ、ぁっ……!!」
ぞわりとした感覚にくんっと背中が反り返る。
「ん~。いー声。たぁまんねぇ…」
掠れたような智さんの笑い声が響く。
パチンと音がして、ブラジャーのホックを解かれたことを認識した。ブラジャーに支えられていたふくらみが自由になって。すっかり尖ってしまった蕾があらわになる。
外気に晒された蕾を指先で玩ばれる。何度も転がされ、摘まれて。くりくりと、弄ばれていく。
「……ぅ、やぁ、……んんぅっ……」
不意に、ぱくりと蕾を口に含まれた。
「やぁっ! んっ、んぅぅ、あっ……」
指でされていたように舌先でも転がされて。押し込んで、何度も舐め上げられて……甘く噛まれる。
「はぁっ、んんっ……あ……あぅっ……」
ぎゅう、とソファを掴む。掴みどころがないソファだから、智さんから与えられる快楽から―――逃れられない。
「んっ……あ、ああっ……」
もう何も考えられず、胸元にある智さんの頭を抱きしめ、ぎゅっと目を瞑って。丁寧に、甘く、深く施される愛撫に必死で耐えた。
智さんの空いた手が、するりと下腹部に降りて。濡れ具合を確認するかのように、ショーツの上からゆっくりと撫で上げられていく。
「あぅっ、やぁっ、あああっ」
ショーツの上からぷっくりと主張する秘芽を擦り上げられていく。指先で強く蕾を摘み上げられ、口の中で転がしていた蕾を甘噛みされる。
ぞわりと迫るアノ感覚。それに耐えきれず、私は、智さんの頭を力いっぱい抱き締めたまま。
「ふ、ぁ、あああああっ!!!」
ばちん、と、まぶたの裏が白く弾けた。きつく閉じたまぶたから涙が滲む。
くすくすと笑う声が聞こえる。呼吸が乱れて、ゆっくり目を開くと、目の前に智さんの顔があって。
「……イく時の、啼いてる顔。たくさん見せてくれねぇ? 俺だけがみれる…特別な表情を、さ?」
欲を孕んだ切れ長の瞳に、強く射すくめられる。身体の奥が疼いていく。とろとろと際限なく蜜が溢れて、ショーツに広がっていく。
智さんに、こんな風に懇願されては。断れるわけ、ないじゃないか。
「ほんと……さとしさん……ずるい……」
私を絡めとって、離さない。その声で、その表情で、その大きな手で。
私は、智さんに捕えられたまま―――その愛と快楽に、溺れていくだけ。
どんなに逃げたくても逃げられない、まるで海の中に張り巡らされた網の中に……追い込まれているようで。
「もう、智さんから…逃げられないって、じゅうぶん……わかってるから……」
荒くなった息を整えながら智さんの瞳を見つめ返す。すると、智さんが不敵に笑った。
「当たり前だろ? ……出会った瞬間から、知香が逃げられねぇように仕向けたんだから」
「……え…?」
紡がれた言葉の意味がわからず、呆けたような声が出た。
その間にも。智さんの手が私の下腹部に伸びて、するりとショーツが剥がされていく。
「知香を、落とす時。俺、かなり用意周到に罠を張ってた。知香は気づいてねぇだろうけど」
ことも無さげに言葉を紡ぎながら、智さんの角張った長い指が私の夥しいほど湿っている秘裂に触れる。
「ぁうっ……ちょっ、まっ……!」
くぷりと指を埋め込まれる。先ほど迎えた絶頂の余韻で蠢いているソコにゆっくりと馴染ませるように、最奥まで沈められていく。
「俺、別に呑めねぇわけじゃねぇんだ。呑みたいと思わないだけで」
「……え、えぇ!?」
驚きのあまり身体が硬直する。その言葉の意味が飲み込めず、あんぐりと口を開ける。
「肉食系の見た目だからさ? 呑めないって言うだけで、ギャップがあんだろ? ……それを利用して。知香の意識を、目の前に座った俺に向けさせた」
智さんが言葉を紡ぎながら。その長い指の腹で、泥濘んだ秘裂のナカの……私の弱い場所。入口の上の壁を擦りあげていく。
「ひ、ぁあっ、やだっ、そこ、だめえっ…!」
突然の快感に全身が戦慄く。ぞわり、ぞわりとアノ感覚がふたたび迫り上がってくる。
「藤宮が酔いつぶれたのは想定外だったけど。車で送り届ける時に話していた雑学。あれも、俺の罠」
淫らな水音が響く中、淡々と智さんが言葉を紡いでいく。
「や、ぁうっ、な、そんなっ、いみ、わか、んないっ、うぁぁっ」
「遊び人みたいなこの見た目だからこそ……知識の深さが刺さるんだ。それすらも利用して。あなた呼び、名前呼びを使い分けた」
あの夜。最後だけ……名前を呼んでくれたこと。あれすらも……。
「っ、あ、あれっ、わざとっ……!?」
「ん。わざと」
にこりと、屈託のない笑顔で。思いもよらない事実を突きつけられる。そのまま、ゆっくりと。智さんの長い指が私の最奥を揺らしていく。
「あああっ、やだっ、ぅんんっ!!」
「ハロウィンの時。芸能人の話しになったろ?俺さ、別にショートヘアの女優が好きなわけじゃねぇんだ」
「やぁっ、お、く、だめっ……ああああっ!!」
深い快感が私を襲っていく。まぁるく、それでいて尖ったような快感が、足元から脳を貫いた。肩を大きく上下させながら荒くなった息を懸命に抑えた。脳がくらくらするような強烈な余韻をやり過ごし、智さんの言葉の意味をぼんやりと飲み込んでいく。
「そ、れじゃ…わたし…真にうけて、髪、切ったのも……さいしょから、嵌められて……」
「ん、そう。知香は、頭から足先まで、ずっぽり。俺に嵌ってた、ってわけ」
心底愉しそうな笑みが、目の前にある。不意に、熱い昂ぶりが私の泥濘んだ秘裂に押し付けられた。
「……あん時。俺、初めて手ぇ繋いだろ? ……あの時、知香の手が汗ばんでたから。堕ちたなって確信したんだ」
ふっと。また、智さんが、口の端を歪ませて。ぐっと腰が押し進められていく。
「あああああっ!!」
強い余韻が残る私のソコには、堪えがたいほどの快楽で。くんと背中が反り返り、ナカが蠢いて、智さんの昂りを締め付ける。この体勢では胸のふくらみを智さんに突き出すような形になっててしまった。すかさず、智さんは腕を伸ばして硬くなった蕾をくりくりと弄んでいく。
「やぁ、っ、ぅあっ、だめ、やだぁっ」
ゆるい律動と、蕾への刺激。2箇所から産み出される果てしない快感に涙がぼろぼろと零れる。汗が滲み出て、つぅ、と、首筋を伝っていく感覚すら、私の身体の熱を上げていく。
「だから、言ったろ? ……知香は、俺から逃げられねぇって」
その言葉を皮切りに、ゆるゆるとした律動が始まる。ぐちゅり、ぐちゅりとナカを攪拌されて。最奥を貫かれていく。ゆるい律動と同時に、蕾を弄ぶ智さんの指の動きは止まらない。数度達した身体には強すぎる刺激に、手が、膝が、ガクガクと震え出す。
「んんっ、ぁああっ、だめっ、まって、またっ……ぅぅぅぅうんっ!!!」
「……っ、くぅっ……や、べ……っ」
喉の奥が、下腹部が痙攣して、汗と涙が止まらない。智さんの声と共に律動が止む。細く整えられた眉が歪んで、智さんから滲み出た汗がポタリと私の頬に落ちてくる。その汗の一滴ですら……愛おしく感じて。
「あ、ぁっ…」
白く染った視界が元に戻り出す。ガクガクと震える腕を懸命に動かし、汗ばんだ智さんの額に手のひらを当て、大きく息を吐いて襲い来る余韻を逃がしながら震える声で呟いた。
「さとしさんだって……っ、あ、わたし、から、逃がさない、から……」
私の言葉に、智さんがふっと口の端を吊り上げて不敵な笑みを浮かべた。
「……逃げねぇよ。俺だって、知香から逃げられやしねぇんだから」
そう呟いて、ふたたび最奥を貫かれていく。
「あ、ああっ」
「っく、知香のナカ……ほんと、良すぎんだっつの……」
ゆるやかだった律動が容赦なく叩きつけられるようなストロークになっていく。
「も、むりぃ、あああっ、」
いやいやと頭を振る。迫ってくる途方もない快感に腰が揺れる。思わず智さんの腕に縋り付いた。その縋りついた手をするりと恋人繋ぎにされて、ソファに縫い止められる。
「……その啼く顔に……っ、俺はこれから先ずっと、何度だって…堕とされんだろうなぁ……」
ふっと。困ったように智さんが笑い、その瞬間、ずん、と一際強く突き上げられて、私はまた、あっけなく……大きな波に攫われていく。
「―――――っっ!!!!」
「……ッ………!!」
智さんが顔を歪ませて、2、3度腰を叩きつけて。楔が大きく爆ぜた。
「……知香。片桐のこと、ちょっと見直してるだろ?」
ゆったりと夕食を取りながら、智さんに唐突に尋ねられた。
……見直している、という意味がわからない。だって、休憩中は隙を見計らって纏わりつかれるのだから。
「え。そんなことないよ? 凄くバッサリ断ってるのに未だに休憩時間は堂々と絡んでくるから、仕事中以外ではウザいし」
今日のメインディッシュである鮭のホイル焼きを口に頬張りながら、ヘーゼル色の瞳を思い出し、思わず嫌な顔をした。
「……そうか。なら、いいんだが」
ふう、と。智さんが箸をテーブルに置いて、私に向き直った。
「俺がアイツを嫌いなのは、知香を狙ってるっつーのもあるけど。……同族嫌悪なんだ」
「えぇ? 智さんと片桐さんって正反対じゃない。全然違うよ?」
飄々とした態度で、他者を弄ぶように言葉を紡ぐ片桐さんと、チャラそうな見た目だけれど話すとしっかりとした芯があることが分かる智さん。
ふたりとも、正反対の人なのに。
さっぱり意味が理解できず、きょとん、と、隣の智さんを見上げる。
「いや……そこじゃなくてだな」
智さんが苦笑しながら私に視線を合わせた。ダークブラウンの瞳が、真っ直ぐに私を貫いていく。
「あいつは、俺と同じ。口が上手くて……囲い込みを得意とするタイプだ」
お昼にシていた時に告げられた、智さんが私を落とすために張り巡らされていた罠のこと、だろう。お昼の私の痴態を思い出し、顔が火照る。
「片桐が、この前の知香の仕事の抱え込みを指摘したのも、もしかしたら。……アイツの、策略かも知れねぇ」
「……あ…」
智さんが紡いだ言葉に、火照った身体が一気に冷えていく。
………仕事のことを同僚として叱り、アドバイスをし、好感度を徐々に上げて。私の警戒心を解く。
そうして。私を。―――智さんから、引き離そうとしている、かもしれない、ということ。
「だから……気をつけて、欲しい」
智さんの真剣な瞳に射抜かれて。私は……背筋がじんわりと凍るのを感じながら。こくりと、頷いた。
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神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
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彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
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え……。
誰……?
誰なの……?
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その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
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