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本編・第三部
242
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通り沿いに屋台や露店が並び、かなりの賑わいだ。気を抜くと行き交う人に飲み込まれてしまいそう。
「人……多いねぇ」
私が手縫いした雪花絞りの柄の浴衣を身に纏った智が先導してくれる。交差する人にぶつかったりしないように、風避けならぬ人避けをしてくれているのだろう。そんな智の背中に向かって小さく呟くと、絡められた手がぎゅっと握られた。
「俺の手、離すなよ?この人の多さだったらぜってぇ迷子になるから」
智が首だけを後ろに向けて、ふっと楽しそうに笑った。その笑みはなんだか、童心に帰ったような、子どもっぽい、くしゃりとした笑みで。
嗅覚が鋭敏な智はこういった人ごみをなるべく避けて行動していることは、一緒に過ごしてきた8ヶ月の中でなんとなく勘付いていた。きっと色んなにおいが混ざってしまうのがだめなのだろう。けれど、年始に初詣に行くとか、後輩たちと花火大会に行くとか、私や周囲のひとのためなら進んでそういったところに出向いていく、ということも……私は知っている。
(……夢みたい)
心の中で小さく呟きながら、繋がれた手に視線を落とす。智の紺と白、私の赤みが強い紫と白……それぞれ色違いの同じ雪花絞りの柄の浴衣が視界を占領する。
今年は近郊の花火大会が全て終わってしまった。それに、私たちはまだ公にできない関係だ。だから、こうやって私が手縫いしたお揃いの柄の浴衣を着てふたりでお祭りに出かける、というささやかな願いがこんなにも早く叶うなんて、本当に夢でも見ているみたいだ。
カラコロと。私たちの下駄から奏でられる軽快な足音が、喧騒に混じって聞こえてくる。
お盆の最中だからなのか、集まっている人たちは非常に多い。帰省客も含まれているのだろうか。この場所は都心から離れているのに、まるで都心を彷彿とさせるような人出だ。
屋台や露店の店員さんがお客さんを呼び込もうと声を張り上げている。行き交う人たちの笑い声、小さな子どもたちの歓声。たくさんの音が、周囲を埋め尽くしている。
「知香、何食べたい?」
智は私の手を引いて、食べ物を取り扱っている露店が並んでいる方へ歩き出した。
目の前には……お好み焼き、はし巻き、たこ焼きの粉物を取り扱う露店や、クレープやソフトクリーム、わたがしや林檎飴を取り扱っている露店。食べたいと思ったものを買っては、周囲を見物しながらふたりで買ったものが入った袋を手に下げて、前後になりつつ歩いていた。
肉が焼けパチパチと油が弾ける美味しそうな音に誘われて、視線が釘付けになる。
「あ、フランクフルト!アメリカンドッグもいいなぁ。美味しそう……」
「お、いいな。あれも買うか?」
ぽつりと心のままに呟くと、智が私の返答を待たずに手元の小財布からお金を取り出そうとしていた。思わずぎゅっと智の腕を引っ張ってその行動を制止する。
「待って、食べたいけど、ちょっと買いすぎだと思うの」
たくさんの袋がぶら下がっている手元に視線を落としてそう声をあげると、智は楽し気に笑って言葉を紡いでいく。
「こんな時じゃねぇとこういうの食わねぇし、いいじゃん」
自宅から遠く離れた場所で、非日常の空間。智は財布の紐が緩みに緩んでいる。きっと、こうやって過ごす時間を心から楽しいと思ってくれているのだろう、けれども。
「え~。そうしたらお腹いっぱいでスイーツ食べられなくなっちゃう」
ぷぅ、と頬を膨らませながら、不満気に隣のダークブラウンの瞳を見上げた。既に私たちの両手にはこんなにたくさんの食べ物がぶら下がっている。これ以上買ってしまえば、お祭りの醍醐味である露店スイーツが食べられなくなってしまうではないか。
じっと智を見つめながら口の先を尖らせていると、智はふっと、口の端を愉しそうにつり上げた。
「デザートは別腹だろ?」
「……そりゃそうですけど!」
紡がれた言葉に、口の先がさらに尖っていく。私も立派な女子ですから!デザートは別腹だけれども、羽目を外しすぎるのもいかがなものかと思う。これ以上食べてしまえば、連休明けからダイエットに精を出さなければならなくなるのは目に見えている。通関士試験の勉強もしないといけないのに、ダイエットなんて絶対手が回らない。
そんなやり取りをしながら露店が並ぶ通りを抜けると、荘厳な神社に辿り着いた。
辿り着いた鳥居をくぐり、手に下げた袋をお互いに預けて交代で手水舎で身を清め、石畳の参道を歩いていく。
神社の境内では、石畳で造られた参道を向かって右側の砂利が敷き詰められた場所に櫓が組まれているようだった。その櫓を見つめながら、智が小さく呟いていく。
「この花火大会は、この神社のトギョサイを兼ねているらしい」
「と、ぎょ……?」
聞き慣れない言葉に思わず目が点になる。
智曰く、渡御祭とは、神霊の宿った御神体を神輿に移し、氏子が地域内を移動し、五穀豊穣、地域安全等を祈願する祭りなのだそう。要するにこのお祭りで、氏子さんたちが神輿を担いで市内を練り歩き、あの櫓を中心に盆踊りが開かれ、締めに花火があがる、というもので。
「なるほどねぇ。地元でいうところのおくんちみたいなものかな?」
私の出身地の周辺のいくつかの土地で毎年秋に開催される『くんち』。あれも神社の秋季大祭だ。特に有名なおくんちでは船をモチーフにした山車が引き回され、奉納踊りには龍踊りが用いられて、アンコールを意味する「もってこーい」の掛け声に街が大変賑わう。それと同等のお祭りということだろう。
本殿にお詣りし、組まれた櫓の周りにたくさんの人が集まっているその横を通り過ぎる。境内を少し歩くと舞殿もあった。その横には艶のある漆塗りの大きな神輿と、大勢の人たち。きっとここで奉納踊りがなされてから神輿を担いで市内を練り歩き始めるのだろうと察する。
「折角だから、見て行くか」
「うん」
人ごみの間を縫って歩きつつ、ふたりで視線を彷徨わせながら空いている場所を探す。舞殿からは少し遠いけれども、石で造られたベンチのような場所にぽつぽつと人が座って露店で買ったであろう食べ物を口にしている。そこに私たちも腰かけて、両手に下がっている袋から先ほど買ったたこ焼きやフランクフルトなどを食べつつ、奉納踊りが始まるのを待った。
「あっつう!」
買ってからしばらく時間が経っているたこ焼き。とっくに冷えているだろうと考えて、何気なく、ぱくん、と口に含むと、思わぬ熱さが舌に触れて眉を思いっきり顰めた。すると、智が愉しそうにニヤリと口の端をつり上げる。
「………知香。この前のお粥みたいに冷ましながら食わせてやろうか?」
「っ!」
誰も見ていないはずだった自宅でさえもあんなに恥ずかしかったのに。さすがにこんな公衆の面前ではやめて欲しい!顔を赤らめながら、意地悪く細められた智の瞳を睨みつけた。
他愛もない話をしながらふたりで買った食べ物たちを分け合っていると、やがて、夕闇からグラデーションを纏った藍色、そうして夜の群青へと空が代わり、舞殿の周囲に篝火が灯された。
いよいよ奉納踊りが始まる。舞殿を囲む人たちから聞こえてきていた喧騒がしんと静まり返り、太鼓の音が響きだす。その太鼓の音に龍笛や和琴の音が交じりだし、押し寄せる波のように、それらの響きが境内のぴんと張り詰めた空気の中に木霊していく。
私たちは手に持った食べ物を口元に運ぶのも忘れて、ただただ、言葉もなく、魔を打ち払い、豊穣を願う舞と雅楽を堪能した。
奉納踊りが終わり、神輿が境内から送り出されていく。周囲に座り込んでいた見物客が神輿の後を追ったり、奉納が終わった舞殿を眺めに行ったりと思い思いに腰を上げだした頃、智がふわりと立ち上がって、私に向かって手を伸ばした。
「知香、俺たちも行こう。もうすぐ予約した時間だから」
「……予約?」
予約した時間、とはどういう事だろう。このお祭りで花火を観るのが目的なのではなかったのか。私がフランクフルトが刺さった串を持ってベンチに腰掛けたまま、きょとん、と立ち上がった智を見上げていると。
「花火の特等席。予約してんの」
にっと。智がこれまた嬉しそうに笑みを浮かべた。
露天の電飾が煌々と光る中を、智に手を引かれて辿り着いた、桟橋。目の前に広がる光景に、一瞬、口から心臓が飛び出るかと思った。
「ご予約の邨上様ですね。こちらへどうぞ」
朱い提灯の光が海面にゆらゆらと揺れている。目の前には江戸情緒が感じられる、屋根と座敷が備えられた船。……楼船、いわゆる、屋形船だ。しかも中に人気はなく、どう見ても貸し切り。
(ええええ???)
大混乱中の私の手を引いた智が、躊躇いもなくさらさらと。船頭さんが差し出しているクリップボードに何かを書きつけていく。
川に屋形船を出し、そこから花火を見物することができる場所がある、というのは知識としては知っていた。けれど、まさか、記念日でも誕生日でもなんでもない普通の日に、こんなサプライズのようなことをされるとは。
目の前の船はテレビで観るような大型の屋形船ではなく、こじんまりとした船だけれども。こういう屋形船を貸し切るにはかなりの金額が必要なはず。きっと大枚をはたいたのだろうと察して慌てて智の浴衣の袖を引っ張った。
「ちょっ……かなり高いでしょここ!」
ひそひそと、船頭さんの後ろを歩いて船に乗り込もうとする智の耳元で囁いた。目の前に広がる光景に思考と感情、その全てが追い付かない。
半ばパニックになっている私の表情を視認したはずの智だけれど、ふっと口の端をつり上げて、余裕ぶった笑みを見せていく。
「ボーナス、思ってたより多かったから。知香には春先から色々と迷惑かけたし、これくらいは、な?」
そうして、智は。カランと下駄の音を軽快に鳴らし船に乗り込んで、桟橋からせり出している乗り場に立ち竦んだままの私に……するり、と、手を伸ばした。
「知香」
やわらかく、それでいて優しく……愛おしそうに。智が私の名前を呼んだ。伸ばされた手と、智の穏やかで楽しそうな笑みを、混乱したまま交互に見比べる。
「おいで、知香」
智がふたたび名前を呼んだ。優しいその声に、まるで魔法にかかったかのように身体が動いていく。伸ばされた智の手をおずおずと取って、船に足を踏み入れた。
下駄を履いていても、足の裏から、ふわふわした水面の感覚が伝わってくる。船に酔うことはないだろうけれども、身体がなんとも不思議な感覚に包まれていく。
スタッフさんに案内された屋形船のお座敷は、四角く長い晩餐テーブルを挟んで両方の窓際に畳み張りの長椅子が設置されていた。室内は冷房が効いており、天井には和紙で彩られた丸い照明が下がっている。船内は和モダンがテーマとなった内装のようだった。天井が高く作られているからか、船内にいても窮屈さを感じさせない造りになっている。
「こっち」
繋がれた智の手に引かれて、そっと右側の椅子に腰かける。浴衣越しに伝わる畳のひんやり感が心地よい。
そのあとすぐ、船が動き出す独特の浮遊感があった。ゆらゆらと左右に揺れる、不思議な感覚が全身を包んでいく。実際に水面に浮いているのだろうけれども、ふよふよと浮いては沈む、言葉にできないような不思議な感覚に、思わずぎゅっと籠バッグの持ち手を握り締める。
(……どうしよう)
クルージングなんて、これまで経験したこともなかった。しかも、こんな……貸切の船に乗ることも、人生で初めてだ。まだ混乱しているのか、変な汗がじわりと湧き出てくる。
そっと智に視線を向けると、智は椅子に腰掛けたままするりと腕と脚を組んで、ぼうっと外の景色を眺めている。私もそれに倣うように、窓の外に視線を向けた。
深くなった空と海の境界線は、もう見えない。ふい、と、反対側の左の窓を見遣ると、街の灯りがぼんやりと浮かんでいる。
いつ、この貸切の屋形船を予約したのだろう。いつ、こんなサプライズのようなことを思いついたのだろう。毎日一緒に過ごしているはずなのに全く知らなかった。
仕事中に予約したりしたのだろうか、けれど管理職に昇進したからお昼休みもあまり取れていないと聞いていた。だから私から離れている仕事中に手配をしたわけではないのだと思う。
そんなことをグルグルと考えていると、ふっと。ひとつの結論に辿り着いた。
(……あ)
もしかすると。ここ最近、智が……愛用の手帳を持たずにベランダに出て、なにかを話していた時。それが、この屋形船の予約の手配をしていた電話だったりするのではないだろうか。
多忙な日々の合間を縫って遠方の花火大会の情報まで集めて、あまつさえこうして貸切の手配までして……私を、喜ばせようと、してくれている。
胸に込み上げる、嬉しさとか、こそばゆさとか。そんなものが綯い交ぜになったまま。私はそっと籠バッグから手を離し、目の前の智に手を伸ばして。浴衣の袖を、そっと握り締めた。
「………ありがとう」
ダークブラウンの瞳を見つめながら、小さく呟くと。
「俺の方こそ。浴衣、ありがとな」
智は満足そうに。緩やかに微笑んだ。
やがて身体を芯から揺るがすような大きな音をさせながら花火が上がり始めた。数多の大輪の花火が、漆黒の夜空を彩っている。
「……綺麗」
座敷の窓ガラス越しだけれど、それでも花火の音と光の束が、手を伸ばせば届いてしまうような距離にあると錯覚してしまう。思わず感嘆のため息を漏らしながら、心に浮かんだ言葉をぽつりと吐き出した。
「だなぁ……」
私の言葉に、智も同じように。ゆっくりと長く息を吐き出しながら、小さく呟いた。ふい、と視線を真横に座る智に向ける。
智の整った顔に花火の明かりが反射して、とても綺麗だった。男の人にしては長いまつ毛に彩られた切れ長の瞳に、キラキラと花火の光が映り込んでは鮮やかに消えていく。
「……わ…」
どぉん、と、鈍い音がした。視線を隣の智から夜空に移すと、一際大きな牡丹花火が上がり、赤から緑の光に変化しながらその色が夜空に消えていく。
(………今の…片桐さんの、瞳みたい)
宵闇に消えていった緑の光。中央が黄色で、周囲が緑だったからか……ヘーゼル色の瞳を連想させた。彼の瞳は、瞳孔付近は茶色でその周辺が緑がかっている…宝石のような瞳だから。
「………今の。片桐の目に似てたな」
ぽつり、と。智が小さく呟いた。心の中を読まれてしまったように感じて、思わず目を泳がせてしまう。そんな私の様子に、智がふっと笑みを浮かべた。
「同じこと。考えてたんだな、俺たち」
そうして、智の熱い手のひらが私の頬に伸ばされていく。私を真っ直ぐに貫いている、ダークブラウンの瞳。そこには、一言では言い表せない…たくさんの感情が入り混じっているように思えた。
「知香。連休明けから、帰りは社内の誰かと一緒に駅まで歩くようにしてくれ」
「……え?」
突如告げられた思わぬ『お願い』に面を食らった。色を失くしたままの私に、智は私の頬に手を当てたまま静かに言葉を続けていく。
「……黒川のこと。朝は出勤ラッシュで大勢の人間の目があるから狙われねぇだろうが、帰りの時間は疎らな人出になるだろう。昨日は片桐に言伝を頼んだ、だから知香がひとりになることはないと思っていた。俺の推測が正しければ、片桐は……」
智はそこまで口にして、珍しく言い淀んだ。何かを迷うように、目の前の私から視線を外していく。
するり、と。智の手のひらが私の頬から離れていく。そうして、智は緩く握った拳の小指だけを私に差し出した。
「………とにかく、時間が合う時は俺が迎えにいく。夕方は絶対にひとりにならない、俺にそう約束して欲しい」
感情が籠っていない智の淡々とした声が、ひゅるひゅると甲高い花火の発破音とともに、耳に届く。私から逸らされた智の視線は、差し出された小指に落ちている。約束、誓い。そんな意味を持った、指切りの……仕草。
「………」
智が、何を考え、何を迷っているのかはわからない。まだ確信を持っていない、推測の段階だ、と……智は言っていた。だから、その内容を無理に聞き出すことはしない。
私は―――智を、信じているから。
「…………約束、する」
ゆっくりと。目の前に差し出された小指に、私の小指を絡めていく。
そうして繋がった、智の日焼けした肌と、私の肌を。
屋台船に差し込む、色とりどりの鮮やかな光が。
いつまでも―――照らしていた。
「人……多いねぇ」
私が手縫いした雪花絞りの柄の浴衣を身に纏った智が先導してくれる。交差する人にぶつかったりしないように、風避けならぬ人避けをしてくれているのだろう。そんな智の背中に向かって小さく呟くと、絡められた手がぎゅっと握られた。
「俺の手、離すなよ?この人の多さだったらぜってぇ迷子になるから」
智が首だけを後ろに向けて、ふっと楽しそうに笑った。その笑みはなんだか、童心に帰ったような、子どもっぽい、くしゃりとした笑みで。
嗅覚が鋭敏な智はこういった人ごみをなるべく避けて行動していることは、一緒に過ごしてきた8ヶ月の中でなんとなく勘付いていた。きっと色んなにおいが混ざってしまうのがだめなのだろう。けれど、年始に初詣に行くとか、後輩たちと花火大会に行くとか、私や周囲のひとのためなら進んでそういったところに出向いていく、ということも……私は知っている。
(……夢みたい)
心の中で小さく呟きながら、繋がれた手に視線を落とす。智の紺と白、私の赤みが強い紫と白……それぞれ色違いの同じ雪花絞りの柄の浴衣が視界を占領する。
今年は近郊の花火大会が全て終わってしまった。それに、私たちはまだ公にできない関係だ。だから、こうやって私が手縫いしたお揃いの柄の浴衣を着てふたりでお祭りに出かける、というささやかな願いがこんなにも早く叶うなんて、本当に夢でも見ているみたいだ。
カラコロと。私たちの下駄から奏でられる軽快な足音が、喧騒に混じって聞こえてくる。
お盆の最中だからなのか、集まっている人たちは非常に多い。帰省客も含まれているのだろうか。この場所は都心から離れているのに、まるで都心を彷彿とさせるような人出だ。
屋台や露店の店員さんがお客さんを呼び込もうと声を張り上げている。行き交う人たちの笑い声、小さな子どもたちの歓声。たくさんの音が、周囲を埋め尽くしている。
「知香、何食べたい?」
智は私の手を引いて、食べ物を取り扱っている露店が並んでいる方へ歩き出した。
目の前には……お好み焼き、はし巻き、たこ焼きの粉物を取り扱う露店や、クレープやソフトクリーム、わたがしや林檎飴を取り扱っている露店。食べたいと思ったものを買っては、周囲を見物しながらふたりで買ったものが入った袋を手に下げて、前後になりつつ歩いていた。
肉が焼けパチパチと油が弾ける美味しそうな音に誘われて、視線が釘付けになる。
「あ、フランクフルト!アメリカンドッグもいいなぁ。美味しそう……」
「お、いいな。あれも買うか?」
ぽつりと心のままに呟くと、智が私の返答を待たずに手元の小財布からお金を取り出そうとしていた。思わずぎゅっと智の腕を引っ張ってその行動を制止する。
「待って、食べたいけど、ちょっと買いすぎだと思うの」
たくさんの袋がぶら下がっている手元に視線を落としてそう声をあげると、智は楽し気に笑って言葉を紡いでいく。
「こんな時じゃねぇとこういうの食わねぇし、いいじゃん」
自宅から遠く離れた場所で、非日常の空間。智は財布の紐が緩みに緩んでいる。きっと、こうやって過ごす時間を心から楽しいと思ってくれているのだろう、けれども。
「え~。そうしたらお腹いっぱいでスイーツ食べられなくなっちゃう」
ぷぅ、と頬を膨らませながら、不満気に隣のダークブラウンの瞳を見上げた。既に私たちの両手にはこんなにたくさんの食べ物がぶら下がっている。これ以上買ってしまえば、お祭りの醍醐味である露店スイーツが食べられなくなってしまうではないか。
じっと智を見つめながら口の先を尖らせていると、智はふっと、口の端を愉しそうにつり上げた。
「デザートは別腹だろ?」
「……そりゃそうですけど!」
紡がれた言葉に、口の先がさらに尖っていく。私も立派な女子ですから!デザートは別腹だけれども、羽目を外しすぎるのもいかがなものかと思う。これ以上食べてしまえば、連休明けからダイエットに精を出さなければならなくなるのは目に見えている。通関士試験の勉強もしないといけないのに、ダイエットなんて絶対手が回らない。
そんなやり取りをしながら露店が並ぶ通りを抜けると、荘厳な神社に辿り着いた。
辿り着いた鳥居をくぐり、手に下げた袋をお互いに預けて交代で手水舎で身を清め、石畳の参道を歩いていく。
神社の境内では、石畳で造られた参道を向かって右側の砂利が敷き詰められた場所に櫓が組まれているようだった。その櫓を見つめながら、智が小さく呟いていく。
「この花火大会は、この神社のトギョサイを兼ねているらしい」
「と、ぎょ……?」
聞き慣れない言葉に思わず目が点になる。
智曰く、渡御祭とは、神霊の宿った御神体を神輿に移し、氏子が地域内を移動し、五穀豊穣、地域安全等を祈願する祭りなのだそう。要するにこのお祭りで、氏子さんたちが神輿を担いで市内を練り歩き、あの櫓を中心に盆踊りが開かれ、締めに花火があがる、というもので。
「なるほどねぇ。地元でいうところのおくんちみたいなものかな?」
私の出身地の周辺のいくつかの土地で毎年秋に開催される『くんち』。あれも神社の秋季大祭だ。特に有名なおくんちでは船をモチーフにした山車が引き回され、奉納踊りには龍踊りが用いられて、アンコールを意味する「もってこーい」の掛け声に街が大変賑わう。それと同等のお祭りということだろう。
本殿にお詣りし、組まれた櫓の周りにたくさんの人が集まっているその横を通り過ぎる。境内を少し歩くと舞殿もあった。その横には艶のある漆塗りの大きな神輿と、大勢の人たち。きっとここで奉納踊りがなされてから神輿を担いで市内を練り歩き始めるのだろうと察する。
「折角だから、見て行くか」
「うん」
人ごみの間を縫って歩きつつ、ふたりで視線を彷徨わせながら空いている場所を探す。舞殿からは少し遠いけれども、石で造られたベンチのような場所にぽつぽつと人が座って露店で買ったであろう食べ物を口にしている。そこに私たちも腰かけて、両手に下がっている袋から先ほど買ったたこ焼きやフランクフルトなどを食べつつ、奉納踊りが始まるのを待った。
「あっつう!」
買ってからしばらく時間が経っているたこ焼き。とっくに冷えているだろうと考えて、何気なく、ぱくん、と口に含むと、思わぬ熱さが舌に触れて眉を思いっきり顰めた。すると、智が愉しそうにニヤリと口の端をつり上げる。
「………知香。この前のお粥みたいに冷ましながら食わせてやろうか?」
「っ!」
誰も見ていないはずだった自宅でさえもあんなに恥ずかしかったのに。さすがにこんな公衆の面前ではやめて欲しい!顔を赤らめながら、意地悪く細められた智の瞳を睨みつけた。
他愛もない話をしながらふたりで買った食べ物たちを分け合っていると、やがて、夕闇からグラデーションを纏った藍色、そうして夜の群青へと空が代わり、舞殿の周囲に篝火が灯された。
いよいよ奉納踊りが始まる。舞殿を囲む人たちから聞こえてきていた喧騒がしんと静まり返り、太鼓の音が響きだす。その太鼓の音に龍笛や和琴の音が交じりだし、押し寄せる波のように、それらの響きが境内のぴんと張り詰めた空気の中に木霊していく。
私たちは手に持った食べ物を口元に運ぶのも忘れて、ただただ、言葉もなく、魔を打ち払い、豊穣を願う舞と雅楽を堪能した。
奉納踊りが終わり、神輿が境内から送り出されていく。周囲に座り込んでいた見物客が神輿の後を追ったり、奉納が終わった舞殿を眺めに行ったりと思い思いに腰を上げだした頃、智がふわりと立ち上がって、私に向かって手を伸ばした。
「知香、俺たちも行こう。もうすぐ予約した時間だから」
「……予約?」
予約した時間、とはどういう事だろう。このお祭りで花火を観るのが目的なのではなかったのか。私がフランクフルトが刺さった串を持ってベンチに腰掛けたまま、きょとん、と立ち上がった智を見上げていると。
「花火の特等席。予約してんの」
にっと。智がこれまた嬉しそうに笑みを浮かべた。
露天の電飾が煌々と光る中を、智に手を引かれて辿り着いた、桟橋。目の前に広がる光景に、一瞬、口から心臓が飛び出るかと思った。
「ご予約の邨上様ですね。こちらへどうぞ」
朱い提灯の光が海面にゆらゆらと揺れている。目の前には江戸情緒が感じられる、屋根と座敷が備えられた船。……楼船、いわゆる、屋形船だ。しかも中に人気はなく、どう見ても貸し切り。
(ええええ???)
大混乱中の私の手を引いた智が、躊躇いもなくさらさらと。船頭さんが差し出しているクリップボードに何かを書きつけていく。
川に屋形船を出し、そこから花火を見物することができる場所がある、というのは知識としては知っていた。けれど、まさか、記念日でも誕生日でもなんでもない普通の日に、こんなサプライズのようなことをされるとは。
目の前の船はテレビで観るような大型の屋形船ではなく、こじんまりとした船だけれども。こういう屋形船を貸し切るにはかなりの金額が必要なはず。きっと大枚をはたいたのだろうと察して慌てて智の浴衣の袖を引っ張った。
「ちょっ……かなり高いでしょここ!」
ひそひそと、船頭さんの後ろを歩いて船に乗り込もうとする智の耳元で囁いた。目の前に広がる光景に思考と感情、その全てが追い付かない。
半ばパニックになっている私の表情を視認したはずの智だけれど、ふっと口の端をつり上げて、余裕ぶった笑みを見せていく。
「ボーナス、思ってたより多かったから。知香には春先から色々と迷惑かけたし、これくらいは、な?」
そうして、智は。カランと下駄の音を軽快に鳴らし船に乗り込んで、桟橋からせり出している乗り場に立ち竦んだままの私に……するり、と、手を伸ばした。
「知香」
やわらかく、それでいて優しく……愛おしそうに。智が私の名前を呼んだ。伸ばされた手と、智の穏やかで楽しそうな笑みを、混乱したまま交互に見比べる。
「おいで、知香」
智がふたたび名前を呼んだ。優しいその声に、まるで魔法にかかったかのように身体が動いていく。伸ばされた智の手をおずおずと取って、船に足を踏み入れた。
下駄を履いていても、足の裏から、ふわふわした水面の感覚が伝わってくる。船に酔うことはないだろうけれども、身体がなんとも不思議な感覚に包まれていく。
スタッフさんに案内された屋形船のお座敷は、四角く長い晩餐テーブルを挟んで両方の窓際に畳み張りの長椅子が設置されていた。室内は冷房が効いており、天井には和紙で彩られた丸い照明が下がっている。船内は和モダンがテーマとなった内装のようだった。天井が高く作られているからか、船内にいても窮屈さを感じさせない造りになっている。
「こっち」
繋がれた智の手に引かれて、そっと右側の椅子に腰かける。浴衣越しに伝わる畳のひんやり感が心地よい。
そのあとすぐ、船が動き出す独特の浮遊感があった。ゆらゆらと左右に揺れる、不思議な感覚が全身を包んでいく。実際に水面に浮いているのだろうけれども、ふよふよと浮いては沈む、言葉にできないような不思議な感覚に、思わずぎゅっと籠バッグの持ち手を握り締める。
(……どうしよう)
クルージングなんて、これまで経験したこともなかった。しかも、こんな……貸切の船に乗ることも、人生で初めてだ。まだ混乱しているのか、変な汗がじわりと湧き出てくる。
そっと智に視線を向けると、智は椅子に腰掛けたままするりと腕と脚を組んで、ぼうっと外の景色を眺めている。私もそれに倣うように、窓の外に視線を向けた。
深くなった空と海の境界線は、もう見えない。ふい、と、反対側の左の窓を見遣ると、街の灯りがぼんやりと浮かんでいる。
いつ、この貸切の屋形船を予約したのだろう。いつ、こんなサプライズのようなことを思いついたのだろう。毎日一緒に過ごしているはずなのに全く知らなかった。
仕事中に予約したりしたのだろうか、けれど管理職に昇進したからお昼休みもあまり取れていないと聞いていた。だから私から離れている仕事中に手配をしたわけではないのだと思う。
そんなことをグルグルと考えていると、ふっと。ひとつの結論に辿り着いた。
(……あ)
もしかすると。ここ最近、智が……愛用の手帳を持たずにベランダに出て、なにかを話していた時。それが、この屋形船の予約の手配をしていた電話だったりするのではないだろうか。
多忙な日々の合間を縫って遠方の花火大会の情報まで集めて、あまつさえこうして貸切の手配までして……私を、喜ばせようと、してくれている。
胸に込み上げる、嬉しさとか、こそばゆさとか。そんなものが綯い交ぜになったまま。私はそっと籠バッグから手を離し、目の前の智に手を伸ばして。浴衣の袖を、そっと握り締めた。
「………ありがとう」
ダークブラウンの瞳を見つめながら、小さく呟くと。
「俺の方こそ。浴衣、ありがとな」
智は満足そうに。緩やかに微笑んだ。
やがて身体を芯から揺るがすような大きな音をさせながら花火が上がり始めた。数多の大輪の花火が、漆黒の夜空を彩っている。
「……綺麗」
座敷の窓ガラス越しだけれど、それでも花火の音と光の束が、手を伸ばせば届いてしまうような距離にあると錯覚してしまう。思わず感嘆のため息を漏らしながら、心に浮かんだ言葉をぽつりと吐き出した。
「だなぁ……」
私の言葉に、智も同じように。ゆっくりと長く息を吐き出しながら、小さく呟いた。ふい、と視線を真横に座る智に向ける。
智の整った顔に花火の明かりが反射して、とても綺麗だった。男の人にしては長いまつ毛に彩られた切れ長の瞳に、キラキラと花火の光が映り込んでは鮮やかに消えていく。
「……わ…」
どぉん、と、鈍い音がした。視線を隣の智から夜空に移すと、一際大きな牡丹花火が上がり、赤から緑の光に変化しながらその色が夜空に消えていく。
(………今の…片桐さんの、瞳みたい)
宵闇に消えていった緑の光。中央が黄色で、周囲が緑だったからか……ヘーゼル色の瞳を連想させた。彼の瞳は、瞳孔付近は茶色でその周辺が緑がかっている…宝石のような瞳だから。
「………今の。片桐の目に似てたな」
ぽつり、と。智が小さく呟いた。心の中を読まれてしまったように感じて、思わず目を泳がせてしまう。そんな私の様子に、智がふっと笑みを浮かべた。
「同じこと。考えてたんだな、俺たち」
そうして、智の熱い手のひらが私の頬に伸ばされていく。私を真っ直ぐに貫いている、ダークブラウンの瞳。そこには、一言では言い表せない…たくさんの感情が入り混じっているように思えた。
「知香。連休明けから、帰りは社内の誰かと一緒に駅まで歩くようにしてくれ」
「……え?」
突如告げられた思わぬ『お願い』に面を食らった。色を失くしたままの私に、智は私の頬に手を当てたまま静かに言葉を続けていく。
「……黒川のこと。朝は出勤ラッシュで大勢の人間の目があるから狙われねぇだろうが、帰りの時間は疎らな人出になるだろう。昨日は片桐に言伝を頼んだ、だから知香がひとりになることはないと思っていた。俺の推測が正しければ、片桐は……」
智はそこまで口にして、珍しく言い淀んだ。何かを迷うように、目の前の私から視線を外していく。
するり、と。智の手のひらが私の頬から離れていく。そうして、智は緩く握った拳の小指だけを私に差し出した。
「………とにかく、時間が合う時は俺が迎えにいく。夕方は絶対にひとりにならない、俺にそう約束して欲しい」
感情が籠っていない智の淡々とした声が、ひゅるひゅると甲高い花火の発破音とともに、耳に届く。私から逸らされた智の視線は、差し出された小指に落ちている。約束、誓い。そんな意味を持った、指切りの……仕草。
「………」
智が、何を考え、何を迷っているのかはわからない。まだ確信を持っていない、推測の段階だ、と……智は言っていた。だから、その内容を無理に聞き出すことはしない。
私は―――智を、信じているから。
「…………約束、する」
ゆっくりと。目の前に差し出された小指に、私の小指を絡めていく。
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