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(第三部)第三章 囚われの王子を助けに行く姫
01 初めて見た夢
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偽サグラダ・ファミリア、真ん中の塔の上層部では、宇宙から流星と共ににやってきた侵略者が部下と話していた。
『なんだ、この中途半端さは……』
侵略者は、道化師の仮面をカタカタ言わせる。仮面の裏側から生える触手は、塔の壁と一部、一体化している。
仮面は複数の人間が同時に喋っているような、気味悪い声で続けた。
『生命の力を手にいれたのに、世界の塗り替えは四割未満。完全に世界を上書きするには遠い……それと言うのも、イツキが最後まで抵抗しているからだ。地球が嫌なのではなかったのか……?』
『すいませんでしゅー! 僕の調査不足でしゅー!』
仮面の前で浮遊する、黄色くてフワフワ丸い鳥が、気を付けの姿勢で謝罪した。それは樹がヒヨコと呼ぶ霊鳥だった。
ヒヨコの近くの壁では、触手に囚われた少年が眠っている。
青ざめた少年を取り囲むように、光の蔦が弱々しく光っていた。ギリギリ最後の瞬間に、本能的な精霊の防御の力が働いたのだ。
『説得するのだ……』
『聞いてくれましゅかね……?』
『そこを何とかするのが、お前の仕事だ』
重々しく命令されて、ヒヨコは震えた。
どこの世界でも上司の無茶ぶりは酷い。
『イツキの精神世界に潜り込んで、こちらに都合の良いように誘導するのだ……』
『承知しましたでしゅー』
ヒヨコは渋々、了承すると、眠っている少年に近付いて、胸の中へ飛び込んだ。黄色い毛玉は光に変わり、少年の肌に溶けるように消える。
塔の中に静寂が戻った。
樹は、夢を見た事がない。
それというのも、いつも夜になると魂は異世界の世界樹の元に行ってしまうので、夢を見る暇がないからだ。
これは初めて見る本物の夢だった。
『ほほう、これが地球か。興味深いの』
樹はフクロウを連れて、学校の中を歩いている。
異世界の喋るフクロウのアウルに、学校を案内しているのだ。
密かに樹は、異世界の友達を地球に連れてきて案内したいと思っていた。この夢は、その願望を反映しているのだろう。
どこかで冷静に樹はそう判断する。
現実の自分は侵略者に囚われているのだと、樹は知っていた。
『……イツキ様、異世界でずっと過ごしたいんじゃ、なかったんでしゅか?』
唐突に第三者の声がした。
振り返ると、黄色い毛玉がフヨフヨ廊下に浮かんでいる。
地底まで一緒に旅をしたヒヨコだ。
「ふーん。君はスパイだったって訳」
樹は、夢にひたるのを止める。
意識さえすれば、夢を操作するのは簡単だった。
幻のフクロウを消すと、ヒヨコに向き直る。
舞台は学校のままにする。
校庭では子供たちが遊び、教師が廊下を通りすぎるが、樹とヒヨコには見向きもしない。当然だ、これは夢なのだから。
「僕の夢が地球の学校だから、疑問に思ってるの? 異世界が好きなら、異世界で冒険する夢じゃないかって?」
『その通りでしゅ』
樹はヒヨコに向かって、フフンと笑った。
「別に僕、地球が嫌いだなんて、一言も言ってないけど」
『なんでしゅってー?』
「異世界には異世界の苦労があるに決まってるじゃん。僕は二つの世界の良いとこどりして、楽をしたい」
『楽?!』
「それよりも……」
侵略者の目論見どおりにならない予感を覚えたヒヨコは、小さな羽をバタバタさせた。
樹は空中に手を伸ばして、ガシッとヒヨコを捕獲する。
「それよりも僕、君が何で敵のスパイやってたか、気になるなあー」
『ふっ、僕はそう簡単に口を割らないでしゅ!』
「ここが僕の夢だって忘れてる? 拷問器具出そうか?」
『わーすーれーてーたー!』
フフフフと笑いながら、ヒヨコを手のひらで揉む。
ヒヨコは自分が窮地だと悟って悲鳴を上げた。
「さあ、キリキリと情報を吐け!」
『ああっ、そんなところを揉まないでー、禿げちゃうでしゅー!』
すぐにヒヨコは降参した。
樹は飛び込んできた手掛かりを逃さないように、黄色い毛玉をしっかり掴んで問を投げ掛ける。
「最初から敵の側だったのか?」
『イエスでしゅ。メテオラ様は毎年地球の近くを通るんですが、ここ数年、地球でキラキラ光ってる魂がある事に気付いて、気になってたでしゅ。その魂、イツキ様がまだ子供だと知ったから、今なら手に入るのではないかと思われたでしゅ』
どうやら計画的な犯行だったようだ。
何年も前から目を付けられていたと知って、樹は気味悪く思った。
「へえ。何で僕? キラキラ光ってる物が欲しいって、カラスみたいじゃないか」
『当たらずも遠からずでしゅね。メテオラ様は、滅んだ星の欠片でしゅ。寂しくて冷たいから、暖かい光が欲しいんでしゅ。生きてる星が憎いんでしゅ。だからイツキ様の力を奪って、滅びのイメージで世界を上書きしてるんでしゅ』
「詳しいな」
外はカオスな風景になっているが、実際の地球を変化させている訳ではないらしい。まずは滅んだ世界のイメージを作って、そのイメージで最後に地球を上書きする。樹を消化すれば、上書きに必要な力が足りるのだとか。
ふむふむ。
ということは、まだ間に合うということだ。
樹はヒヨコを握りながら思考を巡らせた。
「ところで何で、ヒヨコはメテオラの部下になってるんだ?」
『ヒヨコじゃなくて、僕の名前はパドでしゅ』
「名前あったんだ」
『失礼でしゅねー。ぷんぷん。僕がメテオラ様に仕える理由は、不死鳥に進化させてもらうためでしゅ! いつまでも小さくて可愛い僕じゃないでしゅよ!』
ヒヨコ、いやパドの希望を聞いて、樹は少し沈黙した。
まさかあれだけ自分でも色々と世界樹の精霊について喋っておいて、気付いていないのだろうか。
「……そんなこと、僕でも出来るけど」
『え?』
「メテオラに叶えてもらう必要、ある?」
突っ込むと、黄色い毛玉は固まって動かなくなった。
どうやら世界樹の精霊である樹なら願いを叶えられると、全く気付いてなかったらしい。
『なんだ、この中途半端さは……』
侵略者は、道化師の仮面をカタカタ言わせる。仮面の裏側から生える触手は、塔の壁と一部、一体化している。
仮面は複数の人間が同時に喋っているような、気味悪い声で続けた。
『生命の力を手にいれたのに、世界の塗り替えは四割未満。完全に世界を上書きするには遠い……それと言うのも、イツキが最後まで抵抗しているからだ。地球が嫌なのではなかったのか……?』
『すいませんでしゅー! 僕の調査不足でしゅー!』
仮面の前で浮遊する、黄色くてフワフワ丸い鳥が、気を付けの姿勢で謝罪した。それは樹がヒヨコと呼ぶ霊鳥だった。
ヒヨコの近くの壁では、触手に囚われた少年が眠っている。
青ざめた少年を取り囲むように、光の蔦が弱々しく光っていた。ギリギリ最後の瞬間に、本能的な精霊の防御の力が働いたのだ。
『説得するのだ……』
『聞いてくれましゅかね……?』
『そこを何とかするのが、お前の仕事だ』
重々しく命令されて、ヒヨコは震えた。
どこの世界でも上司の無茶ぶりは酷い。
『イツキの精神世界に潜り込んで、こちらに都合の良いように誘導するのだ……』
『承知しましたでしゅー』
ヒヨコは渋々、了承すると、眠っている少年に近付いて、胸の中へ飛び込んだ。黄色い毛玉は光に変わり、少年の肌に溶けるように消える。
塔の中に静寂が戻った。
樹は、夢を見た事がない。
それというのも、いつも夜になると魂は異世界の世界樹の元に行ってしまうので、夢を見る暇がないからだ。
これは初めて見る本物の夢だった。
『ほほう、これが地球か。興味深いの』
樹はフクロウを連れて、学校の中を歩いている。
異世界の喋るフクロウのアウルに、学校を案内しているのだ。
密かに樹は、異世界の友達を地球に連れてきて案内したいと思っていた。この夢は、その願望を反映しているのだろう。
どこかで冷静に樹はそう判断する。
現実の自分は侵略者に囚われているのだと、樹は知っていた。
『……イツキ様、異世界でずっと過ごしたいんじゃ、なかったんでしゅか?』
唐突に第三者の声がした。
振り返ると、黄色い毛玉がフヨフヨ廊下に浮かんでいる。
地底まで一緒に旅をしたヒヨコだ。
「ふーん。君はスパイだったって訳」
樹は、夢にひたるのを止める。
意識さえすれば、夢を操作するのは簡単だった。
幻のフクロウを消すと、ヒヨコに向き直る。
舞台は学校のままにする。
校庭では子供たちが遊び、教師が廊下を通りすぎるが、樹とヒヨコには見向きもしない。当然だ、これは夢なのだから。
「僕の夢が地球の学校だから、疑問に思ってるの? 異世界が好きなら、異世界で冒険する夢じゃないかって?」
『その通りでしゅ』
樹はヒヨコに向かって、フフンと笑った。
「別に僕、地球が嫌いだなんて、一言も言ってないけど」
『なんでしゅってー?』
「異世界には異世界の苦労があるに決まってるじゃん。僕は二つの世界の良いとこどりして、楽をしたい」
『楽?!』
「それよりも……」
侵略者の目論見どおりにならない予感を覚えたヒヨコは、小さな羽をバタバタさせた。
樹は空中に手を伸ばして、ガシッとヒヨコを捕獲する。
「それよりも僕、君が何で敵のスパイやってたか、気になるなあー」
『ふっ、僕はそう簡単に口を割らないでしゅ!』
「ここが僕の夢だって忘れてる? 拷問器具出そうか?」
『わーすーれーてーたー!』
フフフフと笑いながら、ヒヨコを手のひらで揉む。
ヒヨコは自分が窮地だと悟って悲鳴を上げた。
「さあ、キリキリと情報を吐け!」
『ああっ、そんなところを揉まないでー、禿げちゃうでしゅー!』
すぐにヒヨコは降参した。
樹は飛び込んできた手掛かりを逃さないように、黄色い毛玉をしっかり掴んで問を投げ掛ける。
「最初から敵の側だったのか?」
『イエスでしゅ。メテオラ様は毎年地球の近くを通るんですが、ここ数年、地球でキラキラ光ってる魂がある事に気付いて、気になってたでしゅ。その魂、イツキ様がまだ子供だと知ったから、今なら手に入るのではないかと思われたでしゅ』
どうやら計画的な犯行だったようだ。
何年も前から目を付けられていたと知って、樹は気味悪く思った。
「へえ。何で僕? キラキラ光ってる物が欲しいって、カラスみたいじゃないか」
『当たらずも遠からずでしゅね。メテオラ様は、滅んだ星の欠片でしゅ。寂しくて冷たいから、暖かい光が欲しいんでしゅ。生きてる星が憎いんでしゅ。だからイツキ様の力を奪って、滅びのイメージで世界を上書きしてるんでしゅ』
「詳しいな」
外はカオスな風景になっているが、実際の地球を変化させている訳ではないらしい。まずは滅んだ世界のイメージを作って、そのイメージで最後に地球を上書きする。樹を消化すれば、上書きに必要な力が足りるのだとか。
ふむふむ。
ということは、まだ間に合うということだ。
樹はヒヨコを握りながら思考を巡らせた。
「ところで何で、ヒヨコはメテオラの部下になってるんだ?」
『ヒヨコじゃなくて、僕の名前はパドでしゅ』
「名前あったんだ」
『失礼でしゅねー。ぷんぷん。僕がメテオラ様に仕える理由は、不死鳥に進化させてもらうためでしゅ! いつまでも小さくて可愛い僕じゃないでしゅよ!』
ヒヨコ、いやパドの希望を聞いて、樹は少し沈黙した。
まさかあれだけ自分でも色々と世界樹の精霊について喋っておいて、気付いていないのだろうか。
「……そんなこと、僕でも出来るけど」
『え?』
「メテオラに叶えてもらう必要、ある?」
突っ込むと、黄色い毛玉は固まって動かなくなった。
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