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*三年前* その背中を追いかけて
52 手紙
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(※リュンクス視点に戻る)
夜が更けるまで、ねっちり責められ、リュンクスは疲労困憊だった。
「もうノクト先輩とは話さない……」
「それはいいが、オルフェの情報は聞けたのか」
「あ!」
カノンが巻貝を捨てるのを止めるために「ノクト先輩にオルフェの事を聞いたらどうかな?!」と言って説得したのだった。
すっかり忘れていた。
既に起床してきっちりローブを羽織ったカノンは、まだ床の中のリュンクスを見下ろして呆れている。
「まあ、あまり期待していなかったが」
「つ、次の時に聞くから!」
「その時は俺も一緒に聞かせてくれ。ノクト先輩と話したい」
いったいどんな話になるのだろうか。
不安にリュンクスは身を震わせた。
残念ながら、サーヴァントのリュンクスに拒否という選択肢はない。
今日は、塔の授業は休みだ。
自堕落に一日ベッドでごろごろ過ごしても問題ない。体もだるいし、夕方まで寝ていようかと、リュンクスは考えた。
その時、部屋のドアの隙間から、白い便箋が舞い込んできた。
「……伝言紙の魔術か」
「オルフェ先輩からだ! うっ」
紙を拾おうとして、寝台から落ちた。
カノンが苦笑しながら伝言紙を取り上げる。
伝言紙の魔術は、文字ではなく音声が仕込まれている。
カノンが封を破くと、便箋からオルフェの声が流れた。
『……本日、ミスティアの街に買い出しに行くことになった。リュンクス、お前に荷物持ちを命じる』
「はぁ?!」
「オルフェのサーヴァントになったのか?」
「まさか」
契約を結んでもいないのに、命令口調。
オルフェはいったい何を考えているのだろうか。
便箋を持ったカノンは不機嫌になっている。
買い出しの集合時間は、午後の太陽が頂上に来る頃。二時間ほどしか余裕がない。
リュンクスは布団から這い出して準備を始めた。
「行くのか?」
「うん」
カノンは真剣な顔をして言った。
「くれぐれも気を付けて……必ず無事に俺の部屋に帰ってきてくれ」
部屋を繋げたのは、無事を確認するためだったのだと、今更ながら気付き、リュンクスは胸が熱くなった。
カノンに体調を回復させる魔術を掛けてもらい、リュンクスは集合場所に赴いた。
意外なことに、オルフェは取り巻きを連れず一人だった。
「荷物持ちはしませんよ。けど、オルフェ先輩が何を買うのか気になって来ました」
開口一番、そう告げると、オルフェは仏頂面になった。
「本当に生意気な奴だ。ノクト・クラブスとも、そんな調子で話をするのか?」
「ノクト先輩は、俺の言い返しを結構楽しんでましたよ」
帰れと言われなかったので、リュンクスはオルフェと共に、ミスティアの街への転送扉をくぐった。
「ノクト・クラブスとは、いつもどんな話をする?」
「先輩はいつも、俺に魔術を教えてくれるから、授業みたいな話が多いかな」
魔術のレクチャーをしている時は、ノクトは真面目なのだ。
しかしノクトは卒業だ。連絡手段があると言っても、就職したノクトが長々と講義してくれる機会は少なくなるだろう。
リュンクスは少し切なくなった。
「サーヴァントに魔術を教える? 何を考えてるんだ?」
オルフェの怪訝な呟きで、リュンクスの感傷は断ち切られた。
「サーヴァントなんて、単なる魔力貯蔵用のタンクだろう。魔術を教えて何になる」
夜が更けるまで、ねっちり責められ、リュンクスは疲労困憊だった。
「もうノクト先輩とは話さない……」
「それはいいが、オルフェの情報は聞けたのか」
「あ!」
カノンが巻貝を捨てるのを止めるために「ノクト先輩にオルフェの事を聞いたらどうかな?!」と言って説得したのだった。
すっかり忘れていた。
既に起床してきっちりローブを羽織ったカノンは、まだ床の中のリュンクスを見下ろして呆れている。
「まあ、あまり期待していなかったが」
「つ、次の時に聞くから!」
「その時は俺も一緒に聞かせてくれ。ノクト先輩と話したい」
いったいどんな話になるのだろうか。
不安にリュンクスは身を震わせた。
残念ながら、サーヴァントのリュンクスに拒否という選択肢はない。
今日は、塔の授業は休みだ。
自堕落に一日ベッドでごろごろ過ごしても問題ない。体もだるいし、夕方まで寝ていようかと、リュンクスは考えた。
その時、部屋のドアの隙間から、白い便箋が舞い込んできた。
「……伝言紙の魔術か」
「オルフェ先輩からだ! うっ」
紙を拾おうとして、寝台から落ちた。
カノンが苦笑しながら伝言紙を取り上げる。
伝言紙の魔術は、文字ではなく音声が仕込まれている。
カノンが封を破くと、便箋からオルフェの声が流れた。
『……本日、ミスティアの街に買い出しに行くことになった。リュンクス、お前に荷物持ちを命じる』
「はぁ?!」
「オルフェのサーヴァントになったのか?」
「まさか」
契約を結んでもいないのに、命令口調。
オルフェはいったい何を考えているのだろうか。
便箋を持ったカノンは不機嫌になっている。
買い出しの集合時間は、午後の太陽が頂上に来る頃。二時間ほどしか余裕がない。
リュンクスは布団から這い出して準備を始めた。
「行くのか?」
「うん」
カノンは真剣な顔をして言った。
「くれぐれも気を付けて……必ず無事に俺の部屋に帰ってきてくれ」
部屋を繋げたのは、無事を確認するためだったのだと、今更ながら気付き、リュンクスは胸が熱くなった。
カノンに体調を回復させる魔術を掛けてもらい、リュンクスは集合場所に赴いた。
意外なことに、オルフェは取り巻きを連れず一人だった。
「荷物持ちはしませんよ。けど、オルフェ先輩が何を買うのか気になって来ました」
開口一番、そう告げると、オルフェは仏頂面になった。
「本当に生意気な奴だ。ノクト・クラブスとも、そんな調子で話をするのか?」
「ノクト先輩は、俺の言い返しを結構楽しんでましたよ」
帰れと言われなかったので、リュンクスはオルフェと共に、ミスティアの街への転送扉をくぐった。
「ノクト・クラブスとは、いつもどんな話をする?」
「先輩はいつも、俺に魔術を教えてくれるから、授業みたいな話が多いかな」
魔術のレクチャーをしている時は、ノクトは真面目なのだ。
しかしノクトは卒業だ。連絡手段があると言っても、就職したノクトが長々と講義してくれる機会は少なくなるだろう。
リュンクスは少し切なくなった。
「サーヴァントに魔術を教える? 何を考えてるんだ?」
オルフェの怪訝な呟きで、リュンクスの感傷は断ち切られた。
「サーヴァントなんて、単なる魔力貯蔵用のタンクだろう。魔術を教えて何になる」
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