モンスターに転生したけど種族が決まって無い(仮題)

最強願望者

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1章『自分の姿決め編』

『歌』

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俺は昔、自分がギルドに登録する時にどんな魔法を使うかなーなんて考えたことがあった。

それがこれです。

「『全てを見据え、恨み、妬み、望んだ怨恨よ!理想を語るは絶望の影!あぁ破壊よ!あぁ絶望よ!あぁ苦しみよ!狂いに狂った我の言葉に耳を傾けよ!全てを齎しもたらし全てを還す終焉よ!歌えよ歌え!』」

ここまでが詠唱。えっ?意味が分かんない?まぁ良いじゃん。自分が気持ちよく言えるものを想像・・・具現化したんだから。

「『終焉の歌エンド・オブ・ソング』」

魔法の言葉、文字通りのその詠唱は闇の魔法などではなく、光の魔法。

闇は闇の光があるからこそ光を塗りつぶし、闇とする。

この世界にある魔法で言う『輝く闇スパーク・ダーク』という、視覚を完全に潰す物だ。

しかし、この魔法は歌。
全てに干渉し、全てを破壊する魔法。

「──ッ!!」

誰かが叫び声を上げた。
だが、誰も動かない。
この先を見なくては、この先を見届けなくては。

「『全ての耳に届きし歌!それを支える伴奏前菜により!終焉はもたらされん!』」

もう一つの魔法。

否、続きを聞いたものは戦慄した。

「『悪魔の囁きデビル・ウィスパー』」

先の詠唱、今の詠唱、その音は全ての者の胸にストンと落ち、狂う事を許さない。

自分が立っているのが不思議に思う冒険者。
ふと目の前に立つ少年・・・いや、幼児に目を向け、再度戦慄した。

両の手を上へと向け、詠唱を始めたのである。

「『舞台は地上!全ての準備が終わった今!何を待つ必要がある!さぁ始まりだ!!全てを破壊し尽くさん!!!』」

最早人はいなかった。冒険者と呼ばれる観客いけにえは、その舞台ぎしきを見れる事に歓喜を覚え、目を見開いた。

「『神の指揮者ロード・オブ・コマンダー』」

ようやく始まる。

全てが始まる。

左手に現れた指揮棒を振るい、四拍子を刻む。

スライムの背後には三つの魔法陣、その魔法陣が全て、赤く輝く。

グカァビャァジャギュジュリョブダェギャァァァァァァァァア!!!!

ドゥボーングワオーンジャードゥ!!

同時に響く異形が奏でる繰り返しだけの狂想曲。
スライムが小さく指揮棒を振るうと小さくなり、大きく振るうと大きくなる。

なかなかどうして、その狂想曲は歌になっていた。


スライムが早く、さらに早く、更にさらに早く指揮棒を振るい、頂点で止める。

同時に止まる狂想曲。

「三重魔術『始まりの終わりリ・エンド』」

ゴーーン、ゴーーン、ゴーーン

何処までも、大きな大きな鐘の音が鳴り響く。

その音はどんどん膨れ上がり、まるで近づいているかのようで・・・

ゴーーン、ゴーーン、ゴーーン、ゴー・・・

ピタリと、止まった。

すると、ギルドを中心に超巨大魔法陣が展開され、天空に魔法陣が幾重にも連なった。

その中心は体育館の的。

そして、スライムは最後の言葉・・・

否、曲名を紡ぐ。

「狂想曲第一番『天罰』」

次の瞬間、世界の時が止まった。

全ての生命が立ち止まり、突如現れた空の魔法陣を見つめ、固まる。

次の瞬間、世界は闇に包まれた。
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