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しおりを挟むあれ以降というものの、一度本心を明かしたことで吹っ切れたのかアレク様とエヴァ様はそれはもうラブラブでいらっしゃいます。
長年遠回りに遠回りをされていた反動でも出たのでしょうか、見ている私としては微笑ましくて何よりなんですけれども。
休日が来る度にお二人で仲良くお出かけされています。
アレク様に愛されているという実感がそうさせたのか、エヴァ様は少しずつデレの部分をアレク様に見せられるようになりました。
それはそれはとても可愛らしいデレですのでアレク様は毎日悶絶しておられます。
あれではいつ手を出されてもおかしくありませんわね。
アレク様の理性に期待するしかありません。
あとは結婚までおだやかに過ごされてくれればいいと、私はようやく安堵しておりました。
それとは別に、私には自分の問題があったのです。
オディマを「男」として意識するようになってからというものの、なぜかオディマの顔をまともに見れなくなってしまったのです。
オディマの姿を見るだけでドキドキしていたたまれなくなってしまいます。
どうしたというのでしょうか。なにか悪い病気にでもかかったのかしら……。私は自分の変化に戸惑うばかりでした。
そんな折、隣の王国から王女が訪問してくることになりました。
王国を上げての歓迎ごと。もちろん、警備に護衛にと騎士団は大忙しです。
「しばらく、休日が取れそうにない。すまない、これが終わったらいつでも後埋めはするから」
「仕方の無いことですわ、お仕事ですもの。無理をなされないようお祈りしておりますわ」
「ありがとう、愛しているよエヴァ」
王女訪問前の最後の休日。
アレク様の言葉にエヴァ様は頬を赤くされながらも笑って帰られるアレク様を見送られておりました。
そしてアレク様が伯爵家を訪れなくなって1ヶ月後、事件は起きました。
私はもうすぐ控えたエヴァ様の誕生日のために所用を済ませに街へでておりました。
用事を済ませてかえってくると、孤児院へ慰問に向かっていたはずのエヴァ様が帰宅されていてベッドに身を投げ出して、さめざめと泣いておられました。
私は慌ててエヴァ様に近寄ります。
「どうなさったのですかエヴァ様!」
「ニーナ……」
エヴァ様はその大きな瞳からポロポロ涙を零しつつ私に告げられました。
「孤児院に向かっいる最中に馬車からアレク様をお見かけして声をかけようと思ったの……。でもアレク様、知らない女の人と楽しげに歩いていたの。私は1ヶ月も会えなくて我慢していたのに。アレク様はもう私を愛していないんだわ……!もう終わりよ……。婚約も破棄だわ!」
私は驚きました。まさかあれだけエヴァ様を愛していらっしゃったアレク様がほかの方に現を抜かすなど有り得ません。
でも実際にエヴァ様は目撃されておられます。
どういうことでしょうか。すぐに確認しなければ。
「エヴァ様。私が確かめてまいりますので気を落とさないでください。真相を確かめてまいります」
「ニーナ……」
私はエヴァ様を励まし、すぐにオディマに会うべく騎士団の詰所に行くことにしました。
騎士団は慌ただしく人が動き回っていました。忙しいようです。
騎士団に何度か出入りしていた私は顔馴染みの方を見つけると言伝を頼んでオディマを呼んでもらいました。
幸い詰所にいたようで、そう間をおかずしてオディマはやって来ました。
オディマの顔を見ると私の心臓の音が少し早くなりましたが、気にしないことにしました。
「どうしたんだ?」
「エヴァ様が、アレク様が女性と楽しそうに歩いている所をみた、と。そう仰ったので真相を確かめに」
私の言葉にオディマは目を見開き、ゴホゴホと咳き込みました。
「げほっ……あー、それは多分……。うん、大丈夫だ。あいにく今俺から言えることはそれしかない。ただ、信じてくれ。うちの主はエヴァ嬢だけを愛してる」
「それをエヴァ様を伝えろと?信じろ、と?実際に場をみていらっしゃるのですよ?納得のいく説明がなければ無理です」
「あー、それは最もなんだが。仕事の関係で俺はこれ以上言えないんだ」
私はオディマの言葉に憤然としました。オディマをにらみつけます。
しかし、オディマも困ったように私を見ます。
本当に言えないようです。
「本当に、仕事上のことなんですね?信じていいのですね?」
「ああ、それは本当だ」
「分かりました。エヴァ様には気にしないようにそれとなく伝えます。お仕事を邪魔して失礼しました」
これ以上聞き出すのは無理そうです。
私はため息をつくと、その場から立ち去りました。
「オディマが言うには、仕事でやっていただけのようです。オディマがアレク様は今でもエヴァ様を愛していると断言しておりました。エヴァ様、会えなくて不安はあると思うでしょうがアレク様が会いに来てくださるまで信じましょう」
「ええ……わかったわ。私もアレク様を信じることにするわ」
エヴァ様は顔を蒼白にしつつも気丈に頷かれました。
私も納得できない気持ちはありますが、オディマがそう告げて、これ以上は言えないと言った以上、騎士団の何らかの任務の最中だった可能性もあります。
それならば信じるしかないのです。
私は頷いてはいたけれど不安そうな表情をしているエヴァ様のことが心配でなりませんでした。
そうして不安を残しながらも私とエヴァ様は日々を過ごしておりました。
エヴァ様の誕生日が近づいており、その支度で伯爵家は慌ただしくなっております。
使用人たちは走り回り、パーティの準備に奔走しているのです。
それは侍女である私も例外ではありませんでした。
パーティに着るドレスの直しの手配や、服飾品選び、その他にもすることは沢山あり目まぐるしく時間が過ぎます。
私は今日も街へでておりました。すると視界の端に見慣れたウェーブがかった黒髪の男性が見えました。
オディマです。こんなところにいるなんて珍しい。立ちどまって声をかけようとした、その時でした。
オディマが知らない女性を連れていたのです。
女性は町娘風の格好をしておりました。陽に輝く金髪に透き通った青い目の美少女です。
町娘風の恰好はしておりますが、まとう雰囲気は高貴なもの。
貴族の方でしょう。
オディマと楽しそうに談笑しておりました。2人で笑いあっています。
(なにかしら?……もやっとする)
私は自分の胸を手を当てました。なんだかすごく不快な気分です。
私はすぐにその場を離れました。なんだかあの二人を見ていたくなかったのです。とくに、私の知らない女性を連れているオディマを。立ち止まらなければよかったと、後悔しました。
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