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21 真意
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瞬けば涙が零れ落ち、頬へと伝う。
複雑に入り混じったこの感情をなんと表せばいいのか私には分からない。ただ、涙が落ちた理由ははっきりとしていた。
「何故、今更……」
ポツリと言葉が漏れ、心に浮かんだ感情を乗せていく。
怒りと、悲しみと。──そして憎悪。
「なぜ今更父親面するのですか。何故貴方がそれを言うのですか。私をこうしたのは貴方でしょう。貴方が私を勝手に見捨てて、そして失望したのでしょう。……触らないでくださいな!」
肩に回されていた父の手を無理やり剥がし、キッと傍にあった赤い瞳を睨みつける。
歯を噛み締め、これ以上ない程の怒りに震えながら父を睥睨する。私のそんな態度に、しかし父はこちらに向かって笑顔を見せた。
「それでいいんだ。決して私を許さないで欲しい、エマ。それがお前の当然の権利だ。私はお前に父親面する資格などない。お前を不幸にしか出来なかった私が父を名乗る資格はない。だからお前はお前の思う通りに生きるといい。お前はもう私を気にしなくていいのだから。お前を縛るものはもう何も無いのだから」
「当然です! 許されると思っていたのなら大間違いですわ。私はもうお父様とは二度と関わりませんもの。私は私の意思で生きていきます! 誰にも縛られることなく、私の心のままに。私は貴方が大っ嫌いです。先程貴方がサフィアに仰ったことをそのまま返しますわ! 二度と私にその顔を見せないで下さい!!」
一気に言い切り、肩で荒く息をする。
内に溜め続けていた父への憎悪を吐き出し、不思議と心がすっきりしていた。
私の言葉を黙って聞いていた父は一瞬だけ顔を歪めると、次の瞬間晴れやかな笑みを浮かべた。
無理矢理笑みを浮かべたような気がしたのだが、父は確かに笑っていた。
「そうか、それを聞いて安心した。『私』という存在がお前の心に植え付けたものを解放できたと言うなら、私にもう思い残すことは無い。嫌な思いをさせたな。……すまなかった」
そう静かに言い残すと、直ぐにヨシュアを呼びよろよろと歩きながら父は去って行った。
パタン、と音を立てて扉が閉まるまで私はそちらを見向きもしなかった。まだ父への怒りは治まってはいない。けれど心の底からの父への本音が言えたおかげか妙に頭がすっきりしている。
暫くそのまま微動だにせず固まっていたが、ふと、扉の方へ振り向く。木製の何の変哲もない扉が視界に入るが、私の脳裏には去り際に一瞬だけ見えた父の顔がよぎった。私に向かって浮かべて見せた笑顔を消し、あの時の父は確かに──泣いていた。
違和感を感じて眉根を寄せた私は続けて父の言葉を思い出す。
──『私』という存在が心に植え付けたものを解放できたというのなら私にもう思い残すことは無い。
──思う通りに生きるといい。お前を縛るものはもう何も無いのだから。
私の心に植え付けられていたもの……? 解放……?
私を真に自由にするために自分の話を聞いてくれと告げた父。無理矢理浮かべた作り笑い。去り際に見せたあの表情。
ところどころに感じた違和感を思い出し、考え──そして全てが繋がる。
「まさか、わざと私を怒らせたの……? お父様……」
呆然と呟いて出した結論の答えを確かめるように父が去った方を見つめるが、そこには固く閉ざされた扉があるのみだった。
複雑に入り混じったこの感情をなんと表せばいいのか私には分からない。ただ、涙が落ちた理由ははっきりとしていた。
「何故、今更……」
ポツリと言葉が漏れ、心に浮かんだ感情を乗せていく。
怒りと、悲しみと。──そして憎悪。
「なぜ今更父親面するのですか。何故貴方がそれを言うのですか。私をこうしたのは貴方でしょう。貴方が私を勝手に見捨てて、そして失望したのでしょう。……触らないでくださいな!」
肩に回されていた父の手を無理やり剥がし、キッと傍にあった赤い瞳を睨みつける。
歯を噛み締め、これ以上ない程の怒りに震えながら父を睥睨する。私のそんな態度に、しかし父はこちらに向かって笑顔を見せた。
「それでいいんだ。決して私を許さないで欲しい、エマ。それがお前の当然の権利だ。私はお前に父親面する資格などない。お前を不幸にしか出来なかった私が父を名乗る資格はない。だからお前はお前の思う通りに生きるといい。お前はもう私を気にしなくていいのだから。お前を縛るものはもう何も無いのだから」
「当然です! 許されると思っていたのなら大間違いですわ。私はもうお父様とは二度と関わりませんもの。私は私の意思で生きていきます! 誰にも縛られることなく、私の心のままに。私は貴方が大っ嫌いです。先程貴方がサフィアに仰ったことをそのまま返しますわ! 二度と私にその顔を見せないで下さい!!」
一気に言い切り、肩で荒く息をする。
内に溜め続けていた父への憎悪を吐き出し、不思議と心がすっきりしていた。
私の言葉を黙って聞いていた父は一瞬だけ顔を歪めると、次の瞬間晴れやかな笑みを浮かべた。
無理矢理笑みを浮かべたような気がしたのだが、父は確かに笑っていた。
「そうか、それを聞いて安心した。『私』という存在がお前の心に植え付けたものを解放できたと言うなら、私にもう思い残すことは無い。嫌な思いをさせたな。……すまなかった」
そう静かに言い残すと、直ぐにヨシュアを呼びよろよろと歩きながら父は去って行った。
パタン、と音を立てて扉が閉まるまで私はそちらを見向きもしなかった。まだ父への怒りは治まってはいない。けれど心の底からの父への本音が言えたおかげか妙に頭がすっきりしている。
暫くそのまま微動だにせず固まっていたが、ふと、扉の方へ振り向く。木製の何の変哲もない扉が視界に入るが、私の脳裏には去り際に一瞬だけ見えた父の顔がよぎった。私に向かって浮かべて見せた笑顔を消し、あの時の父は確かに──泣いていた。
違和感を感じて眉根を寄せた私は続けて父の言葉を思い出す。
──『私』という存在が心に植え付けたものを解放できたというのなら私にもう思い残すことは無い。
──思う通りに生きるといい。お前を縛るものはもう何も無いのだから。
私の心に植え付けられていたもの……? 解放……?
私を真に自由にするために自分の話を聞いてくれと告げた父。無理矢理浮かべた作り笑い。去り際に見せたあの表情。
ところどころに感じた違和感を思い出し、考え──そして全てが繋がる。
「まさか、わざと私を怒らせたの……? お父様……」
呆然と呟いて出した結論の答えを確かめるように父が去った方を見つめるが、そこには固く閉ざされた扉があるのみだった。
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