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27 従者に忍び寄る魔の手
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「んー、見つからないなぁ」
一方グレイブル王国王都周辺で、リーン・アストライアは望遠鏡を片手にとある人物の探索を行っていた。
その方向は華やかなレ・ザンデル宮殿の下方――平民街。俗に下町と呼ばれる場所であった。
「おっかしいなぁ、直ぐに見つかると思ったのに」
イベントシーンではもうすぐ定期的に訪れている孤児院に馬車で向かっていく途中で、何日も飲み食いせず行き倒れそうになっていたゼストに会う、というのが物語の大筋である。
「食べ物に困ってるのなら孤児院の周辺を探していれば見つかると思ったんだけどなぁ。イベントシーンの日まで待つしかないかなぁ?」
つまんなぁい、とリーンは独りごちる。
ゼストをオとすならば、早めに恩を売るに越したことはないと思ったのだが、簡単にことは進まないらしい。
普通の攻略キャラならばイベントや好感度を逆手に取り、ある程度攻略を早めることはできた。
けれどゼストは隠れ攻略キャラ。何せ悪役令嬢の従者だったのだから攻略は普通の難易度では無理だろう。
「まぁでも、ゲームではサクサク攻略できたしリーンなら余裕でしょ!」
ゲームの攻略アイテムである『恋い慕う相手をチェック☆乙女チック望遠鏡』を懐に戻しながらリーンは考える。
「こうやって私がかつてゲームで使ってたアイテムは使えるし、惚れ薬とかの特殊系アイテムは消えてたけどこれらを駆使すればまぁ楽勝よね。こんなに手厚い置き土産してくれるなんて、本当にここはリーンのための世界よねー」
お陰様で逐一好感度はチェックすることができたし、持ち運びに便利な異次元収納であるアイテムパックまで使えている。
異世界転生しただけでも驚きなのに、こんなに特典までついてくるなんて。
ピンクサファイアの瞳を細めて、リーンはふと思う。
もう一人の聖女は今頃どうしているのだろう、と。
キネーラとかいう野蛮の国に追いやった悪役令嬢クラリス。彼女が実は聖女の一人であったというのはゲームでは有名な話だ。
しかしそこは悪役令嬢。彼女は聖女でありながらレイン王子に追放された恨みと、主人公に対する妬みを『障り』に見染められ、闇堕ちする。
そうして大きくなった闇は天敵である聖女を有する彼女の祖国、グレイブル王国へと牙を剥くのだ。
ゲーム最終イベント、流転の災禍。
今頃はキネーラで王女が一人、死んでいる頃かもしれない。
「まぁ全部、リーンにはどうでもいいんだけど~」
所詮、ここにいるのは自分の世界を盛り上げるためのエキストラ。用意された配役たちだ。
自分のためにこのゲームを盛り上げてくれさえすればいいだけの存在。
と、ここで午後の鐘が鳴り、宮殿の見晴らしがいいテラスから外を覗いていたリーンは、下町の方向から顔を背ける。
「あ、レイン王子の剣の稽古が終わる時間だ。迎えに行こっと!」
いそいそと机の上に広げていたアイテム群をアイテムパックに放り込み、スカートをパタパタとふってシワを伸ばす。
最後にテラスから部屋に入り、備え付けの鏡で自分の状態を確認する。
レースが愛らしいピンクのワンピースに、控えめながらも可愛らしいデザインの靴。
そして完璧に結い上げた髪に、愛らしい顔立ち。
これぞヒロイン。正しくヒロインと言われるリーン・アストライアだ。
「よし、今日も完璧!」
にこりと鏡に笑いかけ、リーンは王子を迎えに行くために部屋を後にした。
一方グレイブル王国王都周辺で、リーン・アストライアは望遠鏡を片手にとある人物の探索を行っていた。
その方向は華やかなレ・ザンデル宮殿の下方――平民街。俗に下町と呼ばれる場所であった。
「おっかしいなぁ、直ぐに見つかると思ったのに」
イベントシーンではもうすぐ定期的に訪れている孤児院に馬車で向かっていく途中で、何日も飲み食いせず行き倒れそうになっていたゼストに会う、というのが物語の大筋である。
「食べ物に困ってるのなら孤児院の周辺を探していれば見つかると思ったんだけどなぁ。イベントシーンの日まで待つしかないかなぁ?」
つまんなぁい、とリーンは独りごちる。
ゼストをオとすならば、早めに恩を売るに越したことはないと思ったのだが、簡単にことは進まないらしい。
普通の攻略キャラならばイベントや好感度を逆手に取り、ある程度攻略を早めることはできた。
けれどゼストは隠れ攻略キャラ。何せ悪役令嬢の従者だったのだから攻略は普通の難易度では無理だろう。
「まぁでも、ゲームではサクサク攻略できたしリーンなら余裕でしょ!」
ゲームの攻略アイテムである『恋い慕う相手をチェック☆乙女チック望遠鏡』を懐に戻しながらリーンは考える。
「こうやって私がかつてゲームで使ってたアイテムは使えるし、惚れ薬とかの特殊系アイテムは消えてたけどこれらを駆使すればまぁ楽勝よね。こんなに手厚い置き土産してくれるなんて、本当にここはリーンのための世界よねー」
お陰様で逐一好感度はチェックすることができたし、持ち運びに便利な異次元収納であるアイテムパックまで使えている。
異世界転生しただけでも驚きなのに、こんなに特典までついてくるなんて。
ピンクサファイアの瞳を細めて、リーンはふと思う。
もう一人の聖女は今頃どうしているのだろう、と。
キネーラとかいう野蛮の国に追いやった悪役令嬢クラリス。彼女が実は聖女の一人であったというのはゲームでは有名な話だ。
しかしそこは悪役令嬢。彼女は聖女でありながらレイン王子に追放された恨みと、主人公に対する妬みを『障り』に見染められ、闇堕ちする。
そうして大きくなった闇は天敵である聖女を有する彼女の祖国、グレイブル王国へと牙を剥くのだ。
ゲーム最終イベント、流転の災禍。
今頃はキネーラで王女が一人、死んでいる頃かもしれない。
「まぁ全部、リーンにはどうでもいいんだけど~」
所詮、ここにいるのは自分の世界を盛り上げるためのエキストラ。用意された配役たちだ。
自分のためにこのゲームを盛り上げてくれさえすればいいだけの存在。
と、ここで午後の鐘が鳴り、宮殿の見晴らしがいいテラスから外を覗いていたリーンは、下町の方向から顔を背ける。
「あ、レイン王子の剣の稽古が終わる時間だ。迎えに行こっと!」
いそいそと机の上に広げていたアイテム群をアイテムパックに放り込み、スカートをパタパタとふってシワを伸ばす。
最後にテラスから部屋に入り、備え付けの鏡で自分の状態を確認する。
レースが愛らしいピンクのワンピースに、控えめながらも可愛らしいデザインの靴。
そして完璧に結い上げた髪に、愛らしい顔立ち。
これぞヒロイン。正しくヒロインと言われるリーン・アストライアだ。
「よし、今日も完璧!」
にこりと鏡に笑いかけ、リーンは王子を迎えに行くために部屋を後にした。
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