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狭雲月

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第二話。関係崩壊

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「柿崎先輩か……」 
「うん、偶然会って。それで、彼写真家なんだけど仕事の都合で、結婚したら一緒に海外に……」 
「ダメだ! そんなの許さない」 
「!!」 

 私は初めて、侑大が声を荒げるところを見て、びくっとする。 
 どんなときにもニコニコやさしい彼が、しかもこんな公衆の面前で大声を出すのはらしくない。 
 案の上、私たちは店内で注目の的だった。
 もとから居心地の悪い店内が、より一層居心地の悪いものへと変わる。

 でも義弟おとうととしては、姉に突然カメラマンなんて職業の人種と結婚するなんて言われたら、びっくりしても仕方がないし、一般的に家族なら、不安になって反対するのがあたりまえだろう。 
 けど、今までの付き合いで、私の言うことをなんでも聞いてくれた侑大は、応援してくれると思ってた私の当てが外れた。ずるいけど、こういう時は侑大さえ味方につければ、両親の陥落はすぐだと思ったので、侑大に先に話したのに。 
 これだけの拒絶は予想外だった。 

「ちょっと、侑大?」 
「…………」 
 侑大は私の腕を強引につかむと、私の抗議の声を無視して店を出る。 
 このまま、実家に連れられてお説教コースなのかも。そう思ったのに、侑大は私には無言のまま腕を離さずタクシーにそのまま乗り、向かった先は侑大のマンションだった。 
 私が一人暮らしするといって家を出た後に、侑大も就職が決まって一人暮らしすることになった。 
 私の収入では細々としたアパートだけど、侑大は高級マンションだ。 
 侑大は一緒に住もうと言ってくれたけど、「一緒に居たくない」なんて本音を言えなくて、家賃折半できるほどのお金はないという理由で断った。事実折半しても私のアパートより高い金額で。 
 いつでも来ていいよ、と合鍵を渡されたけれど、私は一度も使っていないし、使う気もなかった。一応、何かあった時のためのスペアを預かってる気持ち。

 モデルルームのように、完璧に整えられたリビングに入ると、侑大はやっと手を放した。解放されて、ほっとしながら私は外ではできなかった話を侑大にし始める。
 
「カメラマンと結婚するなんて言うと心配だろうけど、柿崎君は意外とすごい人でねびっくりしちゃった、写真集とかいっぱい出てて……」 

 騙されてるんじゃないのかとか言われそうだなと思っていた私は、柿崎君がそれなりに有名であることを説明する。 
 事実、私は柿崎君は売れないカメラマンだと思ってた。 
 でも有名じゃなくても、貧乏カメラマンでも、私は柿崎君のプロポーズを受けていただろう。 
「知ってる」 
「え?」 
「柿崎……姉さんが唯一気にしていた男だったよね、忘れるわけない」 
「知ってたの?」 
 私が柿崎君のことを好きだって知ってたなんて、びっくりだった。 
 だってそんな話、侑大だけじゃなく誰にもしてなんかない。 
 柿崎君との思い出は私の中で別格で、ほかの誰にも知られたくない宝物のようだったから。 

「ど、どうだっていいでしょ、とにかく、私。柿崎君と結婚するから」 
「僕が……嫌だって言っても?」 
「どうして、侑大の許しがいるの?」 

 柿崎君との大切な思い出を、踏みにじられたような気分になっていた私は、いらだっていた。 
 目の前に侑大がいるのに、もう柿崎君との未来しか考えられなくて侑大から逃げきった気分でいた。 
  
「私が誰と結婚しようと、侑大には関係ないでしょ!」 
「弟がこんなに頼んでも?」 
「本当の弟じゃないくせに!」 

 売り言葉に買い言葉だったので、私のいつもの本音がするりとでた。 
 弟だなんて思ってない。
 侑大は私のコンプレックスを、刺激させる元凶の男だってだけだ。 

「そうだよね、本当の弟じゃないよね、僕は…………だから、いいよね。姉さん」 

 泣きそうな顔だった。
 そして、私の姉を演じている仮面がはがれたのと同じように、侑大の仮面もはがれた。 

「!!」 

 異変を感じて逃げるのが遅れた私は、壁を背にしてあっさりと侑大の腕の中に納まってしまう。 

「ちょっと、姉さんに何をする気!」 
 姉の仮面を最初に脱ぎ捨てたくせに、それにすがる私。 
 状況は最悪だった、嫌いな人間に触られる嫌悪。 

「ずっと、ずっと好きだったんだ……姉さん」 
「い、嫌! やめてっ私は侑大のこと嫌い、嫌い、大嫌い!!」 
 何をされるか……わかっているけどわかりたくなくて……なぜかこんな私を好きという侑大に、混乱している私は、もうかなぐり捨てて本音を吐露する。 

「知ってたよ」 

 私の動きが止まった。 
 侑大は情けない顔をしている。 

「だからもう、これ以上嫌われても変わらないなら……とことん嫌われるよ」 
「やだ、やだやだっ!!」
 
 ゾッとした。 

 嫌いだけど……弟だと認識していた人間から、性的な目で見られるなんて。 
 抵抗してみても、男の力にかなうわけない。 
 手が侑大のメガネにあたって、床に派手な音を立てて転がったが、侑大は気にも留めないで私の首筋に唇を這わす。鳥肌が立った。 
 壁を背にしながら……足を侑大の体で押し広げられ、スカートはめくりあげられて、ショーツの隙間から大事な場所を指でじかに触られる。 
 今まで侵入されたことのない場所に異物が入ってくる感覚に耐え切れず、体は硬直しずるずると私は床にへたり込むと、そのまま侑大は私に覆いかぶさってきた。 

 怖い……なんで、どうして、こんなことされているのか。 
 私が嫌いって知っていたのに……侑大は私のことが好き? ありえない。 

 あまりの衝撃に抵抗する事も出来ずにいた私の服ははだけ、いつの間にやら下着は脱がされていた。あらわになった胸が、外気に触れる感覚にびくっと震える。 

「っ!」 

 胸の先端を口に含まれ、舌で弄られると、何とも言えない感覚が体中に走る。 
 まるで、食べるかのように、侑大は私の胸を好き勝手にする。 

 嫌いな男に、犯されてるのに……。 

 ぴちゃぴちゃといつの間にか、指で弄られていた下半身からは粘着質な音が聞こえていた。 
 こういうことは初めてだけど、濡れてる意味はさすがに分かる。 
 柿崎君とはまだハグしあったり、手をつなぐだけの関係で、満たされたのに。 
 侑大から触られても、ただただ違和感しか心は感じない。
 触られれば触れられるほど心は冷えていく。
 でも体は――裏腹に、ほてる。
 びくびくと反応し、下半身は侑大の指を痛みと共にあっさりと飲み込んでいく。
 嫌なのに、嫌なのになぜこんなに体は反応するんだろう。悔しくて涙が出てくる。 

「や、やぁ! いやぁんっ!」 

 毅然と「嫌だ」と言っているつもりの自分の声に、自分でびっくりした。 
 触られている個所から熱と疼きがわく。刺激を与えられるたびに反応してしまう自分の体に考えられなくなりそうになる。 
 今まで痛かった中に入れられていた指の感覚さえも、痛さとは違った感覚がだんだんと強くなっていた。 

「ひっ!」 

 押し広げるように、指を抜かれると、代わりに熱くてかたいものが当たる。 
 入り口でじらすようにこすりつけられて、私はそれがなんなのかわかっているからこそ、視線を向けられない。 

 
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