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横須賀騒乱編

午後5時10分 奈落からの脱出。そして、基地中心部へ。

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孝太郎が悲嘆にくれている時だ。前方の漆黒の闇に覆われている入り口から何やらゴトゴトという音が聞こえてきた。
音の正体は何なのか耳を澄ましてみる。
この音はトロッコだろう。小さい頃に洞窟に行った時に聞いた事がある。そう言えば、横須賀基地の底には極秘に武器弾薬や兵士を運ぶためのトンネルを開けていると聞いていたが……。
(恐らくここがそうなんだろうな……そして、このトロッコの音。恐らく島の奴がオレを始末しに誰か刺客を寄越したに違いないぜ)
孝太郎はそう考えた瞬間に、咄嗟に他の3人に伏せるように指示を出す。
そうして、孝太郎を含む四人が近くの陰に隠れた後に、トロッコが孝太郎たちの視界に入る。そこから、3人の武装した男たちが降りてきた。
男の一人はビームライフルを構えながら、孝太郎たちを捜索している。
孝太郎は先程、離れる前に拾っておいたレーザーガンを懐に仕舞う。だが、その手は確実に引き金に手を当ていた。
そして、男の一人が孝太郎の方向に近づいて来たと時だ。
孝太郎は素早く近づき、男の頭部にレーザーガンを突き付ける。
「おっと、動くなよ、オレがレーザーガンであんたのどたまをブチ抜くのとあんたの仲間がオレをビームライフルでオレを撃ち抜くの……どっちが早いかな?」
孝太郎のその言葉に男は降伏の姿勢を取るしかない。早々に手を上げ、孝太郎に降伏する。
「安心しろ、殺しはしない……」
孝太郎のその言葉を聞き、男は安堵の顔を見せる。
そして、中央の光が差す場所に向かい、男に銃を突きつけながら、自分には人質を取っていることを男の仲間に分かりやすく伝えてやる。
「動くなよ、変な真似をすると、オレがこいつの頭を撃ち抜くぜ、お前らの銃とオレの銃。どちらが、早いのかを試したいのなら、オレはそれでいいけどな……」
男はもはや、この場の主導権を握っているのは孝太郎だと悟った。
次々に彼らはビームライフルを捨てていく。
「おっと、お前らの他の武器も捨ててもらおうかな」
孝太郎の情け容赦ない言葉に男たちは泣きながら、ガンベルトに備えていたレーザーガンや服に備え付けてあったスタングレネード等を地面に落とす。
「よし、それでいいぞ、あとは何の抵抗もしなければ、見逃してやるよ」
孝太郎はそう言って、もう抵抗はできないとばかりに、人質にした男を解放し、全員に呼びかけ、トロッコに乗り込もうとしたのがいけない。男の一人はサバイバルナイフを隠しておいたのを孝太郎には隠しておいたのだ。刀狩りの時に刀を隠し、孝太郎の先祖である豊臣秀吉に逆らった百姓のように。
男は叫び声を上げながら、孝太郎に向かってナイフを持って突っ込む。
が、孝太郎はこんな事に怯えよる男ではない。むしろ、男が大きな声を上げてくれたお陰で、気づいたというものだ。
「やれやれだよ、オレに何もしなければ、見逃してやろうと思っていたんだが……」
と、孝太郎はレーザーガンを使って、男の脚を撃ち抜く。
男は脚を抑え、その場でのたうち回る。
「哀れだな、姉貴の魔法なら一瞬で治るんだろうが、姉貴は今はいない、だから、こいつで我慢しろ」
孝太郎は懐から止血剤を取り出し、痛みでのたうち回っている男に投げてやる。
「これを使って、もう二度と島のイカれた計画には付き合うなッ! 」
孝太郎はまるで阿修羅のような怖い声で怒鳴るように言った。
そうすると、男の一人が怯え出し、母親の名を何度も何度も口にしている。
「いいかッ!オレらがトロッコで去ったら、その線路を沿って、サッサと基地から出やがれ! お袋さんに余計な心配かけんじゃあない! 」
その言葉に男は震えるばかりだ。
「さてと、行こうぜ」
孝太郎はトロッコに乗り込み、3人に合図する。
トロッコはガタガタと不安定に揺れている中で、孝太郎はこのトロッコの行方が気になってしょうがない。
一体、どこに繋がっているのだろうか。
そうして、何十分或いは何分かゴトゴト揺れていると、光が見えた。
孝太郎は全員にトロッコから降りるように指示を出し、光の方へと向かっていく。
光の先にあったのは先程までの鍾乳洞の中とは違い、まさに基地の中という雰囲気が漂う無機質な壁の部屋だった。
そうして、その何もない壁を開けると……。
「驚いたな、まさか、こんなところに天体観測所があるとは……」
孝太郎は思わず口元を右手で覆う。
「とにかく、入ってみましょう。もしかしたら、この観測所が島和夫の部屋へと行くための、一番の近道かもしれないし」
明美の言葉に全員が首を頷かせる。
「よし、行くぞ……」
孝太郎がレーザーガンを持って、部屋の中に突っ込むと。
「フハハハ、よく来たね、中村孝太郎くん……私はずっと、キミが来るのを待っていたんだよ! レベル5のウィルスを撃ち込むのは私自身も躊躇っていたからね、心の何処かでは止めてくれるのを期待していたのかもしれない……」
「あんたも止めるに止めれない所まで来たんだ。話なら、オレが聞いてやるよ、だからさ……」
孝太郎は観測所の星を壁に映し出す機械の前に立っている島に手を差し伸べるのだが……。
「いいや、私はここで死ぬべきなのだ。大勢の部下を巻き添えにしたのに、私一人だけが、生き残ってどうする?」
「いいや、あんたには生きていてもらう。だから、オレと共に来てくれ……」
島は何も答えない。そして、返答代わりとばかりにレーザーガンを孝太郎に突き付ける。
「……」
「残念だよ、キミとは良い友人になれるかと、思っていたのに……」
島がレーザーを発射するよりも前に、淳一が見えない刃を島に投げつける。
淳一の刃は島に右腕をかすめ、島にレーザーガンを捨てさせるのには充分すぎるほどのダメージを与える。
「よし、オレの魔法を使ってやってもいいかもしれんな、オレの魔法はこれだッ!」
島は壁に映し出させれている星を指差し、それからその指をそのまま淳一へと向ける。すると……。
「なっ、何だ!?壁の星がオレに向かってきただと!?」
「これが、私の魔法だよ、私の能力は映像や画像から、好きなものを取り出す魔法なのさ、だから、こうやって武器雑誌を持ち出せば……」
確かに、島の言葉は当たっていた。何故なら、島が指をさすだけで、雑誌の中の武器が、次々と現実世界に現れていくのだから。
「こいつはグリースガンと言ってな、第二次世界大戦で使われた武器なんだ。当時はあのトンプソンに並んで恐れられた武器なんだ」
そう言って、彼は雑誌を懐に仕舞い、他の大勢の武器を自分の周辺に置いたままにしておき、そのままグリースガンを孝太郎たちに向かって発砲する。
「くっ、厄介だぞ! 」
孝太郎はグリーズガンを自分の魔法を使い、防御する。また、自分がその集中砲火を受けることにより、他のメンバーに銃弾が当たることを避けたのだった。
「昔の武器も侮れんだろ?言っておくけど、性能は本に書かれている通りだよ」
その言葉を聞くなり、孝太郎は銃口から白い煙が出ている島のグリースガンを目視する。
「さてと、第二波だ……」
島は次々と弾丸を撃ってくる。
だが、その弾の数は明らかに先ほどよりは減っていた。恐らく本から取り出したために、弾丸の予備がないのだろう。
孝太郎は今度は自分の破壊の魔法で、グリースガンの弾を破壊していく。
「無駄な努力だッ!」
「オレはそうは思わんねッ!オレはあんたに引導を渡し、この馬鹿げた計画を中止させるんだッ!」
「そうなのかい?孝太郎くん、こちらも全力でいかせてもらうよォォォォォォ~!!! 」
孝太郎はもはや引けないところまで来た島を哀れと思いつつも、彼と本気で向き合う事にした。
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