いじめられ勇者が世界を救う!?〜双子のいじめられっ子が転生した先で亡国の女王を助け、世界を救うと言うありふれた話〜

アンジェロ岩井

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第一部 第二章 ヴァレンシュタイン旋風

オットー王子の謀略

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オットー・フォン・シュヴァルツ・クロインツは高い丘の上で自慢の長い銀髪の髪をたなびかせていた。
長く美しい髪が風に流れていく。風の心地よさにオットーが酔いしてれている時だ。
腹心の部下である、魔道士リッテンハイムが自身の膝下に跪き、
「恐れながら、閣下……あの王女どもが、エリザベートを始末しました」
エリザベートの始末と言う言葉にオットーはたまらずに崖に向けていた視線をリッテンハイムに向ける。
その瞳には確実に憎悪の火が宿っていただろう。
猫背のリッテンハイムは、オットー王子がエリザベートに特別な感情を抱いていた事を容易に推察した。
リッテンハイムは口元を歪めつつも、直ぐに顔を「お気の毒ですが」と言わんばかりの表情を浮かべて、オットーの顔を覗き込む。
「エリザベートが殺されたなどと、信じられんッ!誠にエリザベートは殺されたのか!?」
フレーゲル・フォン・リッテンハイムは返答の代わりに首を縦に動かす。
オットーはエリザベートの死を事実だと認識したらしい。口元を一文字に歪めて、拳を強く握り締めている。
「許さんッ!エリザベートを殺した奴をオレがこの手で殺してやるッ!」
オットーは腰に携えている剣の塚を強く握り締める。
「僭越ながら、申し上げますと、あなた様の愛すべき、エリザベートは我らの仇敵ガラドリエルに殺されたらしいですな、それも喉を貫かれ、まるでそこら中に赤ワインをぶちまけたかのような、真っ赤な血が飛び散っていたと言う」
リッテンハイムは小さくかしこまりながら、オットーの憎悪を叩きつけていく。
その作戦は確実に成功したらしい。オットーは歯をギリギリと鳴らして、自身の旅のための物資を載せた王族御用達の高価な刺繍を施した幌を付けた馬車に戻っていく。
そこから、自身の家の家紋である黒色の十字架シュヴァルツ・クロインツが描かれた大きな盾を取り出す。
「見よ、リッテンハイム。この盾はな、オレの家の紋章が描かれた由緒ある盾なのだ。きっと、我らの偉大なる祖先ルードヴィッヒの守護がもたらされるに違いないッ!こうなれば、ワシが直々に戦うぞ!」
オットーは剣を手に取り、馬車の中に戻っていく。
オットーはリッテンハイムが自身の側に付いている事を確認してから、馬車の業者をなじり、北に進むように指示を出す。
オットーが思うように早く進まない馬車に向かって悪態を吐いていると、馬車の横に座る魔道士の男はオットーの近くにまで身を乗り出し、
「閣下、私から一つ進言があるのですが……」
「進言?何だ?申してみよ」
「はい、私に一つ計画がございましてな、北へと向かう道の途中に、大きな都市があります」
「都市?」
オットーの片眉が上がる。
「ええ、その場所にヴァレンシュタイン家の女王も寄ると推測されます。閣下はその街で決戦を仕掛けなさると、良いでしょう」
「なるほど、ヴァレンシュタイン家の生意気女をその場で殺せと言うのだな?」
「ええ、閣下ならば、それができるでしょうな、あなた様の剣の腕と魔法の使用力、それに先祖伝来の盾の力を結集し、我ら一族に刃向かう逆賊どもを閣下の剣で討伐するのです!」
リッテンハイムの言葉にオットーの体全体が疼いていく。
自分自身の剣で相手を斬り刻み、相手を殺すのだ。実現すれば、歴史書に名前が永遠に刻まれるかもしれない。
オットーは自然と笑顔が溢れていく。
「うむ、そうだなッ!でかしたぞ!オレがヴァレンシュタイン家を滅ぼした暁には、必ずお前をオレの最側近に任じてやろう!また、我らが一族お抱えの魔道士になれるように、一族に口も聞いてやろう」
リッテンハイムはオットーの言葉に黙って頷くばかり、だが、オットーに見えないように頭を下げつつも、してやったりと言わんばかりの笑顔を浮かべていた。
エリザベートは自身の手で蘇生の魔法を与えて、蘇らせたのだし、オットーとガラドリエルの一行の勝負では、間違いなくガラドリエルが勝つだろう。
が違う。
リッテンハイムは今は、森で息を潜めているエリザベートに念を送り、作戦の旨を伝える。
無能王子オットーの死は間近だと。




雲一つない青い空の下で、女王の馬車は進んでいく。
サイクロプスの事件の後は、勢いのまま逃げ切って、巨人を振り切った。
そして、巨人が追って来ない事を確認して、夜の森の中でキャンプを広げて眠り、翌朝に出発したのであった。女王の一行は現在、北へと向かう道を急いでいると言う訳である。翌日も災難は続いたが、北に向かう馬車は地面を駆けていく。
馬車の中では、女王の退屈を紛らわすために、二日前の事が活発に話し合われていた。
「まさか、あのタイミングで宝石を掠め取るとは、お前も中々したたかな女よのぅ」
ガラドリエルの半ば呆れたかのような言葉に、ユーノは恥をかくこともなく、不敵な笑顔を浮かべて、
「ふふ、甘くみてもらっても困りますわ、ちょうど宝石は5個ありますし、後で皆さんで分けましょう。そうだ、あなた様には、この太陽のように真っ赤なルビーなどがお似合いでは?」
ユーノに渡された宝石を未来の女王は手に取った。
ガラドリエルは手で少しばかり、宝石を遊んだ後に、丁重にユーノに返す。
「悪いが、今の身分の私には似合いそうにないな、私がそれ相応の身分になるまでは、この馬車の中に置いておいてくれ」
ユーノはブスッと頬を膨らませつつも、自身の仕える女王の命令に従い、宝石を自分の旅行袋の中に入れる。
ユーノが宝石を入れ終えた時だ、御者を務めていたディリオニスが大きな声で今晩の宿を尋ねる。
「決まっておろう!この北へと向かう道の中で、最大の繁栄を誇る街へと向かう!」
女王の言葉にガートールードは思わず、眉をひそめて、
「ま、まさか、陛下……ベリュンブルグに向かう予定ですか?」
「うむ、納得がいかんのか?」
「い、いえ、逃亡中の身でありながら、そのような場所に向かうとは、少なくとも、不用心ではありませんか?」
「そんな事はないと思います」
ガートールードはガラドリエルの横に座っていた、可憐な従者に目をやる。
美しく長い黒髪の従者は真剣な眼差しをガートールードに向けて、
「あたしと兄が昔住んでいた場所にこんな言葉があるんです『木の葉を隠すのなら、森の中、人を隠すのなら、人の中』」
ガラドリエルは鼻を鳴らして、
「成る程、大勢の人間の中に紛れ込めば、探すのは困難……そう言いたいのだな?」
女王の言葉をマートニアは首肯した。
「ならば、話は早い!我らの今夜の宿はベリュンブルグだッ!」
女王の指示に従って、馬の足音が大きく響いていく。
ディリオニスが馬を急かしているのだろう。ガラドリエルは夕方までには着けるだろう、と確信の笑みを浮かべた。
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