いじめられ勇者が世界を救う!?〜双子のいじめられっ子が転生した先で亡国の女王を助け、世界を救うと言うありふれた話〜

アンジェロ岩井

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第一部 第二章 ヴァレンシュタイン旋風

ルフ鳥の巣の上で パート3

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ディリオニスは事の顛末を女王一行に打ち明け、明日の決闘を得るための許可を得る。
寛大な女王は自分の部屋に備え付けられた果物を摘むのと同じくらいにあっさりと許可を与えた。
ディリオニスは礼を述べ、明日の決闘に備え、剣を磨く事にした。
彼が穴の開いた馬車から剣を磨く粉と布切れを探していると、目の前に粉の入った丸い入れ物と磨くための布が出ていた。
少年騎士は差し出した相手に礼を述べるために、頭を上げたが、そこには例の黒色のローブを身に纏った妖艶な魔女が立っていた。
「はい、これでしょ?あなたが明日の決闘に必要な武器は……」
「うん、そうなんだ。決闘なんて初めてだから、ぼくドキドキしてて……」
魔女は様々な物が置かれた馬車の棚に肩を預けながら、
「そりゃあ、誰だってそうだわ。初めての事に緊張しない人はいなくってよ」
ユーノは自分の掌から受け取った粉と布切れを使用し、剣の手入れを行なっている少年の姿を見つめる。
少年は懸命に剣の切れ先をよくするために剣を磨いていた。その姿がユーノには妙に愛おしく感じられた。
ユーノは堪らなくなり、ディリオニスに何故双子の妹にあれ程の執念を見せるのかを問う。
ディリオニスは剣に目を落としながら、ユーノの質問に答えていく。
「ねぇ、ユーノさん。こんな経験はないかな?例えるんだったら、自分が失敗したせいで、他の人を巻き込んじゃったって事……」
ユーノは自分から視線を逸らす騎士の姿を見る事が出来なかったが、彼の言葉には重みがあった。
女王の騎士は暗い表情のまま剣を磨きながら話を続けていく。
「ぼくが……ぼくがあの時に嫌でもあれを受け取っていれば、こんな事にはならなかったと思うんだ」
視線を落とす少年の姿がユーノの目には重く映る。
彼の中に何があったのだろう。ユーノは自らの魔法を使用し、少年の過去を探りたかったのだが、流石に落ち込む彼の様子を見て、過去を覗くのは残酷過ぎると言うものだろう。
ユーノは代わりに、背後から優しく少年を抱擁する。
からかい要素のない純粋な抱擁。少年は手に持っていた武器を馬車の上に落としてしまう。
このまま永遠にこの時間が続いて欲しいと願っていた時だ。背後から女王の大声が響き、ユーノを呼び付けた。
ユーノは頬を膨らませて、不満そうに鼻を膨らませている。
「もう、こんな時に女王陛下がお呼びらしいですわ、悪いけれど、ディリオニス……この続きはまた今度ね」
ディリオニスは優しい目でウィンクをするユーノに感謝の言葉を投げ掛ける。
ディリオニスは馬車の中で平穏を得ていた。そして、この平穏を得るために、翌日の決闘には必ず勝とうと決意した。






太陽はもう天の上に登っていた。ディリオニスは自分の愛剣を腰に携えてルフ鳥の巣があった丘の上に上がった。
リカルドは満面の笑みを見せ、下唇を舐め回す。次の獲物が来たと思ったのだろう。
リカルドは腰から昨日と同じ剣を取り出し、ディリオニスにその刃先を向ける。
ディリオニスも自らの剣を抜き、リカルドと同じ土俵に立とうと考えたのだろう。浅い考えだ。リカルドは髭に覆われた唇を舐めて、目の前の少年を見つめる。
リカルドは目の前の少年騎士が剣を抜くのと同時に自らも剣を抜き、少年に向かって剣を振り回し、鞭のように動く剣に少年を絡ませようと試む。
少年は即座に逃げ出すと考えたが、その反対に剣を構えた騎士はリカルドの元へ向かって突撃し、リカルドの真上から斬りかかっていく。
リカルドは向けていた剣を自らの元へと引っ込め、剣を元の形に戻し、頭上からの攻撃に備えて構える。
二つの剣と剣が大きな音を立ててかち合う。激しい火花を散らし、囚われた女の兄は地面に着地し、今度は下の段から剣を振り上げ、攻撃を試みた。
リカルドは即座に剣を分離させ、突撃して来るディリオニスの迎撃を自らの剣に課した。
ディリオニスは攻撃の途中に向かって来た刃と鎖に向けて対処を試みたらしかったらしい。
ディリオニスは大きな声を叫び、次々と向かって来る刃を弾いていく。
リカルドはディリオニスとの間に距離を取り、もう一度鞭のような攻撃を繰り出す。
今度はディリオニスの剣に鎖を引っ掛け、彼の手から剣を奪おうと考えたのだ。
リカルドの刃と鎖によって構成された鞭がディリオニスの頭を狙うように向かっていく。
声変わりも果たしていない少年はリカルドの策略に引っ掛かる筈だったのだが、少年はリカルドの鞭が頭上に迫るのと同時に剣の代わりに自らの腕に絡ませたのだった。
リカルドは絡ませる予定とは違った箇所に絡まった事には流石に目を丸くしそうになったが、これを好機と捉え、ディリオニスを自らの元へと引っ張ろうと試みたが、ディリオニスはその瞬間に黄金の光に包まれ、同時に黄金に光る剣でリカルドの鞭を粉々に砕いたのだ。
リカルドは大きく息を吸い込み、「信じられない!」とでも言いたげに口を開いていた。
同時にリカルドは武器を失った事にも気が付き、慌てふためく表情を浮かべていた。
「ま、待て!坊主!おれが悪かった……仲直りしよう!な?」
だが、風を切る勢いでリカルドの前に迫ったディリオニスは彼の命乞いに構う事なく、妹の居場所を問う。
リカルドは震える手でルフ鳥の巣を指差す。
ディリオニスはもう一度リカルドを鋭く睨んでから、藁の山へと向かっていく。
藁の中には長い黒髪の少女が雛鳥を抱きながら涙を流して眠っていた。
ディリオニスは雛鳥に囲まれる妹の頭を撫でて起こす。
妹は涙いっぱいに広めた目を浮かべて、最愛の弟の元へと飛び込んでいく。
ディリオニスは優しく妹の頭を撫でて、
「ごめんな、もう兄ちゃんはお前をあんな奴らに捕らえさせたりはしないからッ!絶対に守ってあげるから!」
優しく抱き締める兄の抱擁を妹は安堵の涙を流しながら受け止めていく。
「ありがとう、お兄ちゃん……愛してるよ!」
「うん、ぼくも……マートニアを愛しているよ」
二人が互いと互いの唇を重ね合わせようとしていた時だ。大きな砂埃が上がっていく事に気が付く。
二人が頭上を見上げると、そこには一頭の前の世界における巨大なジェット機と同じくらいの大きさの鳥が飛んでいた。
鳥は二人を睨み付け、二人の頭に自分の思念を送りながら、この惨劇の犯人を問う。
二人は大きな鳥に違うと送り返し、代わりに十文字傷のリカルドを犯人だと告発した。
大きな鳥はリカルドを鎌のように大きなかぎ爪で掴み上げ、空中へとさらっていく。
リカルドは大きく両腕と両足を大きく振り上げ、抵抗したが、彼は抵抗も虚しく連れて行かれてしまう。
と、ここでディリオニスの頭上に一枚の紙が落ちていく。
ディリオニスは頭上に落ちた紙を持って、この紙に書かれていた内容を見て目を輝かせていた。
「これだよッ!ベリュンブルグへと行く道が描いた地図!」
「え、そうなると?」
「うん、目標は達成だね!」
双子の兄妹は明るい笑顔でハイタッチを行う。
その様子を見たのだろうか、雛鳥達が嬉しそうな声で鳴きながら、小さな羽で必死に親が落としたと思われる鳥の羽を持ってきて、兄妹に手渡す。
マートニアは自分自身に指を指しながら、本当にくれるのと問い返す。
雛鳥達は二人にテレパシーを送って、お礼にと言った。
困惑した表情を浮かべるマートニアとは対照的にディリオニスは優しい微笑を浮かべて雛鳥達にお礼を言い返す。
そして、あの鳥が帰って来るのを待ち、雛鳥と親鳥がまた一緒になるのを見届け、主人の元へと戻っていく。
双子の騎士の成果に女王も満足そうに笑っていた。
女王は地図を開くなり、女王は出発を告げる。
その後にディリオニスは御者を務めながら、森の中を馬車を走らせていく。
ディリオニスは苦笑しながらも、これから訪れる街を楽しみにしていた。
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