王道マジックファンタジーの世界で、俺だけが異端

羽野 奏

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第一章 聖女の誕生と異端審問

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馬車の中では意識を失う様にして眠りこけ、気付けば国境の検問所で順番待ちの列に並んでいた。
マリアも、ほとんど時を同じくして目を覚まし、車窓ら外を眺めているのが見えた。
カメリアはタイミングを見計らって馬車を降り、しばらくして戻ってきた。
「お腹、空いたでしょう?いろいろ買ってきたわ」
手にした包には串焼きの肉やらパン、果物などもあった。
この辺りでは、順番待ちをしている旅人相手に露天を開いているらしい。
言われてみれば、道端にそれらしい屋台が見受けられた。

食事を済ませて一息ついた頃、いよいよロッテン達は検問官の前にたどり着いた。
「身分証を確認します」
検問官の声に、カメリアとアドリアノは手首の腕輪を見せる。
「これは!神殿の関係者様でしたか」
アドリアノは銀環、カメリアは金環、それぞれ身分に応じて腕輪の材質が違うのだという。
「ええ、私は巡礼官のカメリア。こちらは僧兵のアドリアノです。貴方に主神の御加護のあらんことを」
カメリアは落ち着き払って、祈りを捧げると、検問官も首を垂れて受け入れた。
「失礼ですが、車内と荷台を念のため検めます」
恐縮している様子で、それでも自身の職務を全うするために、検問官は申し出た。
「構いません、どうぞ」
すんなり受け入れて、扉を開いたカメリアに、明らかに安堵した様子で検問官は中を覗いた。
「彼らは?」
双子をみつけ、検問官はカメリアに問う。
「ヒスピリアの教会で育った孤児です、特別な属性を神より賜った子たちなので、本部に招待する事になりました。身分証の様なものは成人してないので持っておりません。ーーこれは本部寄りの通達書です」
カメリアが差し出した書面を確認して、検問官は頷いた。
「身分を確認するために、ステータスボードの名前と所属、犯歴欄の開示をして貰えるかな?」
口調を崩し、双子に優しく微笑んだ検問官はタブレットを差し出す。
双子は互いに頷き、タブレットに触れると、そこに魔力を流す。
「「ステータス開示」」
タブレットの名前等の欄に、それぞれの情報が焼き付く様に現れた。
ステータスボードの内容は基本的には他人には見えないが、タブレットという特殊な石板を通せば開示が可能なだ。
「うん、名前も通達文書のものと一致するし、所属もヒスピリア内の教会で間違いない、それから犯歴もナシ….はい、問題ありません、どうぞお通りを」
検問官はタブレットの内容を検分して、通達書をカメリアに返す。
検問所を出る時、検問官は手を振ってくれたから、馬車の窓から双子は手を振り返した。
「さあ、これでセブ聖国に入れたわね、馬車で2日もあれば回れちゃう程小さな国だから、夕刻には本部に着くわよ」
カメリアはそう言って二人を励ます。
「んーん、マリア達よりアドリアノさんの方が大変なのー」
マリアはブンブンと頭を振った後、アドリアノの居る方を指差した。
「あ!ええ、そうよね。アドリアノありがとう、お疲れ様」
ふふっと笑ってカメリアはアドリアノに話しかける。
「いや、これが仕事だ」
と、アドリアノは素っ気なく応えるが、声色はいつもより明るかった。

カメリアの言う通り、夕刻には神殿の本部に着いた。
馬車から降りたロッテンはため息混じりに声を上げる。
「うわー、でけぇー!」
マリアも声は上げないが興奮した様子で、繋いだ手にキュッと力が入るのを感じた。
「七芒星教本部、皆んなが神殿と呼ぶここは7つのブロックに分かれているわ」
カメリアは、神殿の顔とも言える正面の大聖堂に向かう、横に広い七段の階段を登りながら説明してくれる。
7つのブロックとは
大聖堂を中心に据え、それを取り巻く様に左から時計回りに建物が並ぶ。
基本的な生活物品の揃う商業区
巡礼官などの役職員の事務所及び官舎のある官公区
西の国との境にある森を一部取り込んだ神木や聖獣などの保護区
魔法の研究施設や練習場などがある学術区
有事の際は市民にも解放される農地などの食料区
そして、治癒院や薬屋のある病院区
全てが神殿の運営で動き、セブ聖国の領土の約半分を占めるほどの規模があるというのだ。
「大聖堂の中も7つの役割がある」
今度はアドリアノが、開かれたままの礼拝堂の扉をくぐりながら、指を折って教えてくれた。
礼拝堂や懺悔室などの祈りの場
修道士たちの修行の場
聖人や聖女の生活の場
教皇や枢機卿の謁見の場
聖書や聖遺物の保管の場
大魔法の発動に使われる儀式の場
そして、地下の牢屋だ。
「7が好きなんだな」
「七芒星教って言うくらいだものね」
ロッテンの呟きに、マリアが頷きながら賛同した。
四人は、礼拝堂にならぶ長椅子に腰掛けて祈りを捧げた。
途端、人々の視線が注がれ「おおっ!」と声があがる。
「マリア?」
横にいる妹の方がやけに眩しい。
薄目で顔を向けると、後光の様に、マリアを淡い虹色の光が包んでいた。
その光は祭壇奥の主神像から一直線にマリアだけに向けて注がれていた。
「こんな奇跡が…?」
「なんと眩い光か!」
その輝きに、その場に居合わせた人々は口々に賞賛の言葉と祈りを捧げた。
マリアが無心の祈りを終えると、光は失われて行った。
「こちらの少女は?」
祭祀服に身を包んだ司祭があらわれ、カメリアに問うた。
「我らが招待した聖女候補のマリアです」
カメリアは通達書を開いてそれを司祭に見せる。
「おお!なるほど、ならばこの現象も得心できますな」
「ええ、では我々はこれより官公区にて手続きが有りますので失礼致しますわね」
通達書を仕舞いながら立ち上がるカメリアに合わせ、双子も席を立つ。
「お疲れ様でございました」
と、司祭は一礼し道を開けた。
マリアがその前を通る時、すこし屈んでマリアに視線を送ると手を振りながら穏やかに微笑んだ。
「またお会いしましょうね」
マリアはおずおずと手をふり返し、ロッテンはカメリア達にはぐれない様にと、その背中を押した。
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