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第二章 神殿の魔王、魔塔の賢者
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朝のホームルーム開始のチャイムを受け、教師は手早く出席を取ると、廊下に待たせていたロッテンを手招きする。
「今日からこのクラスに編入する仲間を紹介しよう、ロッテン君どうぞ」
同じ制服を着た、数十人の視線がロッテンに集まった。
「ロッテンと言います、今日から皆さんと魔法の知識について学びます。よろしくお願いします」
愛想良く笑うでもなく、淡々と言葉を連ね、一礼をする。
ロッテンへの評価は、すぐにヒソヒソと戸惑い囁き合う声として耳に届いた。
「え?小さくない?」
「同じ年じゃないよね、たぶんうちの妹くらいだわ」
「え、6歳くらいってこと?」
そう、その憶測は正しい。
アレッサンド王国の教育機関は、魔塔の各属性ごとに分かれた研究機関の外縁部に置かれている。
ここは、闇属性の研究区域に接する王立魔法学園の闇学部。
将来学者となり、研究機関に勤めることを目指すものが試験を経て入学する。
基本的に10歳から入学し、16歳までの6年間を貴族平民分け隔てなく過ごす。
初めの2年は属性関係なく魔法の基礎知識を、次の2年で各属性に特化した知識の初級から中級までの知識を、最後の2年は上級の知識を得て、卒業間近ともなれば卒業論文を片手に、内部の研究機に自ら足を運んで就職先を探す。
「じゃあ、席は一番後ろの廊下側のあそこに掛けてね」
教師は空いた席を示す。
視線を一身に受け止めたまま、ロッテンは着座し、ホームルームは滞りなく終わった。
「よろしく、お隣さん」
ロッテンに最初に話しかけたのは、隣の席の茶髪の少年だった。
「よろしく」
と、ロッテンが返すと、ニンマリと笑って、その頬にエクボが見えた。
「俺、ハイトって言うんだ。なあ、ロッテンでいい?ロッテンって、10歳じゃないよな?」
ズバリと聞きたいことをストレートに聞いてくる素直さは、裏表のない性格の表れだ。
「ロッテンでいい、オレもハイトって呼んでいい?四つ年下なんだけど、生意気だってんなら、"さん"か"君"つけるけど」
「いや、呼び捨てで構わないぞ。そうか、ロッテン6歳であの試験パスしたのか、天才かよっ」
2人の会話にクラス中が聞き耳を立てているようだ、6歳というハイトの言葉に場がざわついた。
「まあ、な、あはは」
実を言うと、ロッテンは入学試験を受けていない。
なぜなら、レガリアがこの学部の学部長も兼ねていて、試験なしで入学許可証が発行されたからだ。
ただ、本来は試験があること、ロッテンは試験を受けなかったことは他言無用と仰せつかっている。
「でも、そんな天才がなんで普通クラスに居るんだ?」
「あー、それはオレが孤児だから、かな」
「なる、特進は王族もいるからなぁ」
「そういうこと」
この会話のやりとりも想定内の出来事だった。
魔法学園のクラス分は、成績順に分かれている。
最高位に特進クラス
次点にAクラス
以降B、Cと続いて底辺が普通クラスだ。
学園内では、貴族平民の分け隔てなく教育を受けられるとはなっているが、入学までの10年間を貴族の子供は恵まれた教育環境で過ごし、平民の子供はどうしても出遅れる。
身分の差は無いと謳っていても実際は上のクラスへ行くほど身分が高いものが占拠している状態なのだ。
更に、今年は第一王子が特進に通っている。
つまり、貴族からすれば特進に進むというのは強力なステータスなのだ。
そこに、なんの後ろ盾もない6歳の少年が特例で編入するとどうだろう、おそらく陰湿なイジメの対象となるのは火を見るより明らかだ。
ロッテンが必要とする知識を得るだけならば普通クラスで事足りるのだから、要らぬ軋轢は避ける方が賢い。
だけれどハイトのように"特例で編入してきた優秀な者のはずなのに、なぜ特進クラスではないのか?"と疑問に感じるものも居るだろう。
だから、用意した答えが"孤児だから"なのだ。
そう言っておけば、ロッテンが普通クラスになった理由に誰しもが学園側の配慮だと納得するだろう。
ハイトが視線を外し、会話が途絶えた。
「孤児とは話したくないか」
ロッテンのガッカリした様な声に、ハイトは我に返って首を振る。
「いや、オレもただの商人の四男だし、孤児とか気にしないって。ただ、悔しかったろうなと思ってさ、なんか想像したら勝手に向かっ腹が立ったっていうか…黙り込んでごめん、不安にさせた?」
「いや、良い。こっちこそ孤児は倦厭されるって邪推してゴメン」
ロッテンは特進に行ける実力があるのに、普通クラスに編入させられたんだとハイトは思って、その不当な扱いに憤ってくれたんだと気付く。
(ハイト、すごい良い奴だ。これから仲良くして欲しいな)
「今日からこのクラスに編入する仲間を紹介しよう、ロッテン君どうぞ」
同じ制服を着た、数十人の視線がロッテンに集まった。
「ロッテンと言います、今日から皆さんと魔法の知識について学びます。よろしくお願いします」
愛想良く笑うでもなく、淡々と言葉を連ね、一礼をする。
ロッテンへの評価は、すぐにヒソヒソと戸惑い囁き合う声として耳に届いた。
「え?小さくない?」
「同じ年じゃないよね、たぶんうちの妹くらいだわ」
「え、6歳くらいってこと?」
そう、その憶測は正しい。
アレッサンド王国の教育機関は、魔塔の各属性ごとに分かれた研究機関の外縁部に置かれている。
ここは、闇属性の研究区域に接する王立魔法学園の闇学部。
将来学者となり、研究機関に勤めることを目指すものが試験を経て入学する。
基本的に10歳から入学し、16歳までの6年間を貴族平民分け隔てなく過ごす。
初めの2年は属性関係なく魔法の基礎知識を、次の2年で各属性に特化した知識の初級から中級までの知識を、最後の2年は上級の知識を得て、卒業間近ともなれば卒業論文を片手に、内部の研究機に自ら足を運んで就職先を探す。
「じゃあ、席は一番後ろの廊下側のあそこに掛けてね」
教師は空いた席を示す。
視線を一身に受け止めたまま、ロッテンは着座し、ホームルームは滞りなく終わった。
「よろしく、お隣さん」
ロッテンに最初に話しかけたのは、隣の席の茶髪の少年だった。
「よろしく」
と、ロッテンが返すと、ニンマリと笑って、その頬にエクボが見えた。
「俺、ハイトって言うんだ。なあ、ロッテンでいい?ロッテンって、10歳じゃないよな?」
ズバリと聞きたいことをストレートに聞いてくる素直さは、裏表のない性格の表れだ。
「ロッテンでいい、オレもハイトって呼んでいい?四つ年下なんだけど、生意気だってんなら、"さん"か"君"つけるけど」
「いや、呼び捨てで構わないぞ。そうか、ロッテン6歳であの試験パスしたのか、天才かよっ」
2人の会話にクラス中が聞き耳を立てているようだ、6歳というハイトの言葉に場がざわついた。
「まあ、な、あはは」
実を言うと、ロッテンは入学試験を受けていない。
なぜなら、レガリアがこの学部の学部長も兼ねていて、試験なしで入学許可証が発行されたからだ。
ただ、本来は試験があること、ロッテンは試験を受けなかったことは他言無用と仰せつかっている。
「でも、そんな天才がなんで普通クラスに居るんだ?」
「あー、それはオレが孤児だから、かな」
「なる、特進は王族もいるからなぁ」
「そういうこと」
この会話のやりとりも想定内の出来事だった。
魔法学園のクラス分は、成績順に分かれている。
最高位に特進クラス
次点にAクラス
以降B、Cと続いて底辺が普通クラスだ。
学園内では、貴族平民の分け隔てなく教育を受けられるとはなっているが、入学までの10年間を貴族の子供は恵まれた教育環境で過ごし、平民の子供はどうしても出遅れる。
身分の差は無いと謳っていても実際は上のクラスへ行くほど身分が高いものが占拠している状態なのだ。
更に、今年は第一王子が特進に通っている。
つまり、貴族からすれば特進に進むというのは強力なステータスなのだ。
そこに、なんの後ろ盾もない6歳の少年が特例で編入するとどうだろう、おそらく陰湿なイジメの対象となるのは火を見るより明らかだ。
ロッテンが必要とする知識を得るだけならば普通クラスで事足りるのだから、要らぬ軋轢は避ける方が賢い。
だけれどハイトのように"特例で編入してきた優秀な者のはずなのに、なぜ特進クラスではないのか?"と疑問に感じるものも居るだろう。
だから、用意した答えが"孤児だから"なのだ。
そう言っておけば、ロッテンが普通クラスになった理由に誰しもが学園側の配慮だと納得するだろう。
ハイトが視線を外し、会話が途絶えた。
「孤児とは話したくないか」
ロッテンのガッカリした様な声に、ハイトは我に返って首を振る。
「いや、オレもただの商人の四男だし、孤児とか気にしないって。ただ、悔しかったろうなと思ってさ、なんか想像したら勝手に向かっ腹が立ったっていうか…黙り込んでごめん、不安にさせた?」
「いや、良い。こっちこそ孤児は倦厭されるって邪推してゴメン」
ロッテンは特進に行ける実力があるのに、普通クラスに編入させられたんだとハイトは思って、その不当な扱いに憤ってくれたんだと気付く。
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